2015/08/07 のログ
ご案内:「教室」にリビドーさんが現れました。
リビドー >  
 夏季休暇期間のとある一日。
 時刻はお昼を過ぎた頃。
 どうやら、夏季休暇期間の特別授業の様子だ。
 教壇に登り、様子を伺う。参加者の数はまぁ、こんなものだろう。

「まずはこの特別授業、『捻くれもののコミュニケーション哲学』に参加頂いた事を感謝する。
 と云うかキミ達、良くこんな特別授業を取る気になったな。好きだぜ。プリントは全員に行き渡ったかい?」

「さて……ボクはリビドーと名乗っている。夏期休暇明けより復職する事になった教師の一人だ。
 この特別授業はボクがどのような講義を行うかのプレゼンテーションも兼ねている。
 ま、気楽に聞いてくれ。」

リビドー >  
「ま、何分副業が忙しかったせいで学問からは離れていてね。
 もしかすればこんな学問に興味を持つキミ達の方が詳しいかもしれないな。」

 冗句を交えながら挨拶を済まし、片手でノートを開きながら本題へと入る構えを見せた。

「いいかい、コミュニケーションは兎も角哲学ってのはまあ、答えが無い様に見えても一定の歴史があり、学問が有る。
 とは言え、本授業ではこの辺りにはあまり触れる事はない。
 何、夏期休暇に学びに来る様なキミ達ならば既に知っているか、本でも読めば直ぐに理解するだろう。

 まあ、これは王道だ。そして確かな実力と実績を持つ。だからこその王道だ。
 そしてボクの教える哲学、いや、コミュニケーションにしておこう。これは邪道に近いかもしれないな。
 それを踏まえた上で、キミ達には自由な思索に望んで欲しい。」

リビドー >  
「そうだな。キミ達に教えると云うよりは、共感させる事を狙って授業を進めようか。」

 振り向いて黒板へと視界を移す。
 そして生徒たちへと振り向けば、小さく首を振った。

「ああ、板書に関しては期待しないでくれ。
 何分話す方がやりやすくてね。要点はプリントに書いてあるつもりだから、そっちを参考にしてくれれば良いとも。」

「で、まずはこれだ。」

リビドー >  
 
  『キミは今、誰と話している?』

 凛とした声を以って、問い掛ける様に言葉を投げ掛けた。 

「コミュニケーションでも対話形式の哲学でも、此れを忘れちゃいけないな。
 目の前の相手がどんな奴なのか。何処出身で年齢は幾つか、立場はどうか、性格はどうか。そう言う事だな。
 そうだな。プロファイリング・ホット・リーディング、コールド・リーディングと言ったの単語は聞いた事があるだろう。

 聞いたことがなければ、プリントを参照する事。……そうとも。コミュニケーションの技術であり、
 また、詐欺や占い等でも使用される技術の一つだ。おっと、占いを否定するつもりはないからな?

 真占い師においても覗いた未来をより確かに理解する為に必要だろう。
 騙りの占い師でも、相手の願望や心を理解し、的確なアドバイスを投げかける為に必要だろう。
 ……おっと、話題が逸れてしまったな。兎に角、『相手を理解する為の技術』だ。」

リビドー >  
「キミ達が語りたいもの、話したい事、伝えたい事はあるだろう。
 それは本当に目の前の相手が望むのか? それを推し量る事だ。
 その為には相手がどんな奴なのか理解しようとする事は大事、って訳ではあるな。」

 周囲を一瞥する。特に騒ぐ生徒は見受けられない。
 眠っている生徒が一名見えたが、まあ、仕方ない。

「ボクはキミ達がこのような学問、あるいはボクの授業に『興味がある』と判断してこの様に語っている訳だ。
 『捻くれもののコミュニケーション哲学』を学びに来た生徒』を相手に話している、と云う訳だな。
 だからこそ、こうやってボクは語って授業をする訳だ。本来なら対話を重ねて行きたいが、時間が足りないな。」

リビドー >  
「だが、そうだな。云われるまでもなく当たり前と思った人は挙手。」

 言葉を投げかけ、数秒待つ。
 言葉に対する反応を見れば、ふむ、と呟き。

「成る程、この位か。じゃ、次、言われてみれば基本だと思った人は挙手。
 ……ふむ。この位か。この教室内に於いて、少なくてもそれくらいの人数が手を挙げた訳だ。
 だが、初対面では相手を深く知る事はそうあるまい。となると何で判断・推測するかと言えば、見た目や噂、態度になる訳だな。
 これらについては語らないが、そう言った要素も相手を判断する材料になる訳だ。
 当然、判断を間違える事もあるだろう。とは言えこればかりは経験を重ねるしかあるまい。」

リビドー > (ふむ。)

 カリカリと音が響く。
 恐らく生徒がノートに書き込んでいるのだろう。

(数人、ノートを取っているな。少し待つか。)

 ペンを動かす音が止むのを待って、次の言葉を紡ぐ。

「で、次は」

  『相手は何を話したいのか?』『相手はこれに興味を持っているか?』

「だ。要するに傾聴だな。相手がどんな奴かを把握したら、次は相手が話したい意図を察する訳だ。
 相手が興味を持たない話題を論じても、あまり楽しいものにはならないだろう。
 相手の話を聞き、意図を察さなければ、相手は話が通じないと困惑するだけであろう。
 円滑なコミュニケーションの為にも、大事っちゃ大事な訳だ。」

リビドー > 「次。」

 『カラスは黒いよな?』

 幾らかの生徒が不思議そうな顔をしたかもしれない。
 幾らかの生徒は理解をしたかもしれない。いずれにせよ

「つまるところ、『前提』をすり合わせると云う事だ。
 カラスが白いと思っている奴と、カラスが黒いと思っている奴がカラスについて論じようとしても、噛み合う筈がないだろう?

 例えばボクが『この部屋には椅子がある』、と言ったとする。
 ボクは丸椅子のつもりで言ったとしても、キミ立ちは背もたれ付きの椅子をイメージするかもしれない。
 それでは議論が咬み合わず、対話がちぐはぐになる訳だ。
 故に、『前提条件』をすり合わせて、イメージを共有する事が大事にあんる。これは哲学向きの話かもしれないな。
 そして、この前提条件を察する為にも相手を理解すること・相手が何を言おうとするかが大事になる。
 相手を理解していれば、前提条件のすり合わせもスムーズに行くと云う訳だ。」

リビドー >  
(……ふむ。丁度良い、一度半歩下がって要点をおさらいしておくか。理解が及んでいない顔が見える。)

 時計と生徒の顔を見る。
 時間に余裕があると認識すれば、軽い補足や要点の再確認を行う。
 数度の挙手があり、質問に答えた。

「さて、相手を知り、相手の話したい事を察し、前提条件を共有する。
 となればいよいよ相手と話をすると云う訳だ。誰にでもない、『その瞬間の為に相手に用意した言葉』で会話を始める訳だ――
 ――が、これはプリントに記載されている通り、次の特別授業で語るとしよう。今日はここまで。」

 そこまで言った所で、チャイムが鳴り響く。
 授業終了の合図だ。

「お疲れ様だ。ここまで聞いてくれた事に感謝しないとな。
 久々に授業を行ったが、やはりこう言うのも刺激的で悪くない。」

 にっと生徒へ笑ってみせてから、教室を後にした。

ご案内:「教室」からリビドーさんが去りました。