2016/01/11 のログ
■倉光 はたた > 「そうか、ごめんなさい。あなたは賢いんだね」
ぺこりと謝罪の意を表するように頭を下げる。
声に篭もる感情はあまりにも希薄なために、
謝ったり褒めたりしているようには聴こえないかもしれない。
「うん。並んでる。
みんなせっかちに動いてるけど、割り込んだりしちゃだめだよ。
あのカウンターの前まで来たら、欲しいものを言ってお金を渡すの。
あと、わたしはニンゲンサンという名前ではなくて、
倉光はたたと言います」
実際のところ自分がニンゲンであるかというのは怪しいものであったが、
それは現在さほど重要な事項ではないので置いておく。
何気ない問いに、コテンコテンと首を何度かあっちこっちに傾けた。
金色の透き通った眼差しがツノ娘を静かに観察する。
「……甘くはない。しょっぱい」
少し間を置いて簡潔に答える。
『甘い』という言葉の意味を脳内で再検索していたのかもしれない。
そんな問答をしている間にもどんどん列は前の方へと進んでいく……
■フィアドラ > 「そうそう分かってくれたらいいんですよ?分かってくれたら?」
あまり他の人と話したことがなかったのでわからないのですが何故か褒められてる気はしません。
賢いって言われたらいつもは嬉しいのになんでだろう?
「割り込みはルール違反で<ブタバコ>送りなんですよね。うん、気を付けます…。
倉光はたた、倉光はたた…。あっなるほど…私はフィアドラです。よろしく倉光はたたさん。」
そう言えば人間にも名前があったんですよね忘れてました…。
うっかりしてました周りに人間がいっぱいいるのに名前が分からないと不便です。
「またまたーそんなこと言っていくら私が世間知らずだからって流石に騙されませんよ!」
だってクリームは甘いものだし、赤っぽいものも甘いから茶色い部分が甘くないわけがないのです。
もしかして、この人間も<ヤキソバパン>を食べたことなくて想像で言っているのかもしれません。
そう思うとなんだか可愛く思えてきます。もしかしたらみんな私をこんな風に見てるのかもしれません。
というまに目の前に購買の人間がいます。
「<ヤキソバパン>ください!」『150円ね』「えーと、はい!」
倉光はたたに言われた通りにすると。とてもスムーズに進みます!
最後に持たされた財布から100円と50円を良く確認して渡すと。
『はい、どうぞ。』
ついに手に入れました。<ヤキソバパン>です!
おもわず倉光はたたの方をみてガッツポーズを取りました。
■倉光 はたた > 「うん、よろしく。フィアドラさん。
………………」
自信満々に焼きそばパンを甘いと主張するフィアドラと名乗る異邦人に、
はたたは返す言葉を探し当てることができなかった。
誰かの常識が他人にとってそうであるとは限らない。
ましてや異邦人であればなおさらだ。
甘いという形容には人間を初めて短い自分では
汲み取りきれないニュアンスが存在する可能性は多分にあった。
そんな考えを、この数瞬の間に巡らせたすえの――沈黙。
はたたは賢いのだ。
さて、そうこうしている間にも、はたたの注文の番がやってくる。
「あんぱん二つとシベリア一つ」
妙に偏ったオーダーを済ませ、それをつつがなく入手する。
フィアドラのほうを見れば無事に焼きそばパンの購入に成功しているようだった。
ガッツポーズを無表情のまま小さく返す。
「あとは食べるだけだね」
買ったパンと菓子を抱えて購買コーナーから離れ、
どこか適当な場所を探す。座れそうな場所などないだろうか……
■フィアドラ > 「ふんふんふーん♪」
嬉しくってスキップしちゃいそうなくらいで、尻尾もいつのまにか揺れちゃっています。
「はい!食べましょう!」
キョロキョロあたりを見て見ますがイスなんかは見当たりません。
仕方ないので適当な地べたに座ります。もちろん人の邪魔にならない隅の方です。
「倉光はたたさーん!ここで一緒に食べましょう。」
部屋の隅っこに座り込んで倉光はたたを呼びます。床が少し冷たいのですが気になりません。
周りの人が見ています無理もありませんこんなにおいしそうな<ヤキソバパン>みんな食べたいに決まっています。
そうだ!倉光はたたにも少し分けてあげましょう!そうすれば本当の<ヤキソバパン>の味が分かるはずです。
■倉光 はたた > どうやら購買部に座れそうな場所はない。
とは言っても、外へと出れば腰を下ろすにちょうどいい場所はいくらでもある。
なんなら食堂やロビーまで脚を運ぶべきか。
どっちにしようかな。などと考えていたらツノシッポ娘は地べたに座っていた。
「…………うん、わかった」
彼女の近くに歩み寄り、尻をぺたんと下ろす。
表情は床の冷たさに負けず劣らずといった感じだ。
元からだが。
食事の場所としてはあまり社会通念的にはよくないロックさであることははたたも承知していたが、
別に校則に、購買部の隅の床で食事を摂ってはいけないとは書いていない。
明文化されていないエチケットを守ることの意味がはたたは理解できていなかったし、
周囲の目線が気になるタイプでもなかったので、別にいいか、と思った。
少なくともこの少女の笑顔を崩すというコストを払うほどのものではない。
とも。
フィアドラに向かい合い、あんぱんとシベリアを手にしたまま彼女が焼きそばパンを食べるのをじっと見守ろうとする。
それを甘いと評した彼女が実際に食して、どんな感想を告げるのか、純粋に気になっていたのだ。
■フィアドラ > <ヤキソバパン>を包む透明の何というか布?を外します。
すると、クリームとチョコレートの溶けそうになるような甘い匂いが…匂いが…
「甘い匂いがしません…。」
パンの匂いは少し甘いですがこれじゃない感じがします。
むしろ、何というか香ばしいというか…食欲をそそるいい香りなのですが思ってたのと違う匂いです。
「で、でも問題は味ですから!いただきます。」
クリームが食べれるように大きめにまず一口食べます。
茶色の何かの香ばしい味に上にかかったクリーム?がまろやかさを…
「…おいしいです。凄くおいしいです!!でも倉光はたたの言う通り確かに全然甘くは無いです。確かにしょっぱい!」
おいしいのに…こんなにもおいしいのに何でこんなに悔しいんでしょう。
分かっています…。これが負けるという事なのでしょうお父さんが言ってました。『負けることで得るものもある』と…
お父さん…フィーはまた一つ大人になりました…。
「あっ泣いてないですからね!これは汗です!」
髪の内側を少し拭ってから倉光はたたに言います。
悔しいけど泣いてないです!
■倉光 はたた > 焼きそばパンのビニールの包装を剥がして口にする一連の様子を黙して見守っていた。
得られた結果としては大方の予想通りだった。
「おいしいならよかった」
とだけ淡々と言って自分もあんぱんにモソモソと口をつけ始める。
しかし、結果オーライではあったが、彼女の期待するところとは違ったらしい。
やはりきちんと会話をして彼女の勘違いを訂正したほうがよかったのだな、
と、はたたは反省した。自分は言葉が足りないところがあるらしい。そのせいでよく誤解される。
「そうなの? わたしには泣いているように見えるけど。
汗なんだよね。うん。泣いてない」
反省したので、もう少し言葉を重ねるようにした。
わかるよ、と言いたげに、無表情のまま頷く。
「甘いのがほしかったなら、こっちも食べる?」
食べてない方のあんぱんを差し出す。
見た目はオーソドックスな、ケシ粒の乗った丸っこいパンだ。
■フィアドラ > 「ううう…。」
たしかに良かったですけど素直に良かったとは言えません。
ちゃんと倉光はたたの言うことも聞いておくべきでした…。
「はい、泣いてないです。頑張ります!」
自分に気合をいれます。すぐに泣いてしまうのは私の悪い癖です。
だから泣いていないんです。
「こっちは甘いんですか?」
おそるおそる受け取って匂いを嗅いでみます特にさっきのように香ばしい匂いはしません。
そして小さめに一口。
「あ、本当に甘い。」
今度は甘いです。でもなんでしょうチョコレートやクリームとは違う甘さです。
なんでしょうこの感じ?どことなく植物性の食べ物のような気がします。
「これは何てパンなんですか?これもおいしいです!」
さっきまで泣きそうになってたのは忘れて声も楽しそうになっちゃってます。
自分のことながらとても単純だと思います。
■倉光 はたた > 「おいしい? よかった」
簡単に楽しげになるフィアドラに、また小さく頷く。
笑顔になるのはいいことだ。
「それはあんぱん。あんこっていう、豆を潰して出来た甘いものが入っているパンだよ。
あんこはこのいろいろなお菓子に入っていてとてもおいしい。好き」
そんな解説を加える。
あんぱんが好きなものであるのは本当らしく、それを食べ終えたはたたは、
無機質だった表情を少しだけ幸福そうに人間らしくほころばせていた。
続いてシベリアを食べ始める。こっちも餡の挟まった甘味である。
これもはたたの好物であった。
「ところで世間知らずって思われたくなかったら地べたよりも
ちゃんと椅子とかベンチとかで食べたほうがいいよ。
みんなどうやらそうしているみたいだし」
地べたで食べながらの、いまさらな忠告であった。
■フィアドラ > 「豆を甘くするって人間凄いですね…。私には絶対思いつかないです。」
植物っぽいのは分かりましたがまさか豆だったなんてあんな小さいのをいっぱい集めてしかも甘くするなんてすごい執念です。
でも確かにこのあんこを食べるためならそれくらいする人もいるかもしれません。
「倉光はたたは、本当にあんこが好きなんですね。私もこれからいっぱいあんこ食べたいです!」
はじめてみた倉光はたたの人間っぽい顔にあんこパワーの凄さを見た気がしました。
あんこ凄いです。あっあんこのサンドイッチみたいなの食べてます。あれ今度私も買いましょう!
「もっと早く言ってください!どうりでみんな私達を見てる訳ですよ!これじゃあもう私は世間知らずを超えたえーと…たくさん世間知らずとして生きていくしかないですよ!」
本当にびっくりしました。びっくりして立ち上がりました。
「えーと、どうしましょう?イスとかここには無いですし。立ったまま食べるのも多分世間知らずみたいでしょう?」
倉光はたたに尋ねました。
少し変だけど倉光はたたは良い人間だと思います。
■倉光 はたた > 「うん。すごいよね。
あんこもいいけどバランスよく栄養を取らないと大きくなれないらしいよ」
言っている本人の食事が明らかにバランス取れていない。受け売りであることは明らかだった。
ちなみにはたたが一番好きな食べ物は羊羹である。
「まあ、いくらでも挽回するチャンスはあるよ。気を落としてはだめ」
シベリアを手にし、つられて立ち上がってスカートの埃を払いながら、他人事みたいにそんなことを言う。
このはたたという少女にも冷たい視線は注がれていたし、
それどころかはたたの名前を悪し様に囁くものまでいたが、
まったく気にしていない様子だった。
何を隠そうはたたは世間やクラスにはまったく溶け込めていなかったのだ。
「世間知らずはいやかあ。
じゃあちょっと歩いたところにベンチとか自動販売機が
置いてあるロビーがあるからそこ行こうか」
賛成するならそちらへと脚を向ける。
喉も渇いているだろうしちょうどいいだろう。
自動販売機の使い方を知らなさそうな気もするが。
■フィアドラ > 「バランス良くってもしかして栄養って種類があるんですか!?倉光はたたは物知りですねっ!」
まったく知らなかった新しい事実です。
これはからは<ヤキソバパン>とあんぱんをバランスよく食べなくては!
「まだ今日は初日ですしね。頑張って世間知らずを卒業して目指せ友達100人です!!」
きっとみんな初日だし許してくれます。
誰だって最初は世間知らずって先生もいってました。
「はい、いやです。自動販売機?販売って何を販売するんですか?自動?」
ベンチは分かります長いいすです。自動販売機はなんでしょう?
購買みたいなものかもしれません。
何にせよ倉光はたたについていけば間違いありません。
■倉光 はたた > 「そうだよ」
淡々と情動を混じえず短く応える。
栄養という概念だけは知っていることのほうがむしろ驚くべきことかもしれない。
まあおいおい学べばよいだろう。
さて、はたたが先導すればそう時間も経たずにロビーへとたどり着く。
目の前に並ぶのは長い椅子、そして自動販売機である。
あたたか~いのやらつめた~いのやらの飲み物がディスプレイされている大きい箱だ。
パンやお菓子も買えるタイプもあるのだがこの自販機は飲み物だけだ。
「自動というのは、つまり人がいなくても勝手に売ってくれるということ。
これにお金を入れて、欲しいものの前についてるボタンを押すと、出てくる」
実践してみせる。
小銭を入れて、つめた~い緑茶のペットボトルのボタンを押す。
ガタゴトとペットボトルが出てくる。取り出す。
「こう。
電撃を当てても出てくるけど、世間知らずのやり方なので、絶対に駄目」
電撃に関しては意味のない補足に思えたが、さも重要であるかのように
口を真一文字に結んで告げた。
■フィアドラ > 「えっそれじゃあお店屋さんいらないじゃないですか!?今日の勉強も意味ないんじゃ…。」
それはそうです。この箱が全部売ってくれるならお店屋さんも購買もいらないのです。
これに任せればお店の人間たちも自由に遊べます。
「私も同じのにします!」
他の商品はまだ怖いです。
見た目だけで選んだらさっきみたいに全然中身が違うみたいなことがに起こりそうです。
お金を入れてボタンを押すと容器が出てきました。
冷たいです。たぶんこの自動販売機は<レイゾウコ>みたいになってるんでしょう。
「電撃?雷ですか?確かにそれはお金払ってないですからね…世間知らずというかルール破りでそれは<ブタバコ>行きで<クサイメシ>ですよ…。」
お金を払わずに売り物を取るのはルール違反です。
確かにとても大事な事なので倉光はたたの言葉に何回も頷きます。
■倉光 はたた > 「本当だ!」
小さく叫んでしまった。
お店屋さんいらないじゃない。考えたこともなかった。
世界の真実をふいに覗いてしまった感覚にはたたは目眩を覚えた。
相変わらずのポーカーフェイスだったが一筋の汗が垂れる。
「きっと何か理由があるんだと思う……」
なんとかそう言葉を絞る。
それを探すのもきっと学びなのだ。
「えっそうなんだ」
ブタ箱や臭い飯というスラングの意味を知っているはたたは目をそらす。
よくないらしいことは知ってはいたがそこまで重い罪とまでは知らなかった。
「じゃあひょっとしてぶつのもぶたばこいき?」
急に叱られて怯える子供のように肩を落とした。
よく見ると背中の翼めいたものもどこか力を失ってしなびているのがわかる。
自販機への暴力行為に関して身に覚えがある様子だった。
■フィアドラ > 「…何かとんでもない理由が隠されてそうな気がします。」
そう考えるとどことなくこの自動販売機が怖く感じます。
一体何なんでしょうか?
「多分少しくらいぶっても自動販売機は箱ですし大丈夫です!でもそれでももし倉光はたたが<ブタバコ>に連れていかれそうになったら私が止めます!<アリバイショウメイ>します!」
確か<アリバイショウメイ>されたら<タンテイ>が来ない限り大丈夫のはずです。
テレビで見ました。
「それでも心配なら先生に謝れば許してくれると思います。」
学校では先生が一番偉いのです。
失敗したら素直に話しなさいって言ってましたし。
■倉光 はたた > 「そう。ありがとう……
わたしも、フィアドラが捕まったら助ける」
頭を垂れる。
言葉の意味はいまいちよくわからなかったが、どうやら好意的なことを言われているのはわかった。
そういえば件の暴行は謝れていなかったような気がするのであとで謝ろうと決めた。
気を取り直してベンチに座ってペットボトルのお茶で喉を潤して一息。
食べかけだったシベリアも平らげて、今日の昼食クエストは完了と言っていいだろう。
「きょうはありがとうございましたフィアドラ。
勉強になりました」
もう一度謝意を示すように彼女に向けて頭を下げる。
世界に関してはかなりわかったつもりになっていたがどうやらまだまだわからないことは多い。
教えるつもりが逆に教えられてしまう格好であった。
■フィアドラ > 「二人とも捕まらないのが一番ですけどね。」
捕まるようなことが無いようにしたいです。
その為にも色々と気を付けなければいけません…。
「いやいやいやいや、こっちこそ倉光はたたにはいっぱい教えてもらって。ありがとうございました!」
そしてここからが本番です。
購買の使い方を教えてもらったぐらいからずっと言おうと決めてました。
大きく息を吸って。言います。言います!言います!!
「倉光はたた!あの、よ、よかったら私とお友達になってください!!」
言えました。何とか言えました。そう言って手を差し出せました。
■倉光 はたた > 「ともだち」
目をパチクリと瞬かせて、大きな声で宣言した彼女を見つめた。
最初、しばらくは意味がわからなかったのだ。
自分がそう求められているということが。
しばらくぶりだったからだ。
しかしやがて。
「ともだち!」
澄み渡るばかりだった眼に輝きが宿った。
差し出された手を、己の両手でしっかりと、強く強く握る。
相変わらずの真顔であったが――心からの喜びを込めて。
「わたしで、いいのなら――よろしく、フィアドラ」
■フィアドラ > 心臓がドキドキしています。
もし断られたらどうしよう、嫌だって言われたら…そんな考えばっかりが頭の中をぐるぐると行ったりきたりしています。
「はい、ともだち。」
私は今まで一人も友達が出来たことがありませんでした。
お父さんとずっと沼地で暮らしていたから、他の人とも会ったことなかったのです。
その沼地と洞窟だけが私の世界でした。
それから色々なことがあって。
それが今こうして初めてのともだちが出来ました。
「こっちこそよろしくね。倉光はたた!」
嬉しいのに涙がでてきますやっぱり私は泣き虫みたいです。
本当に前髪が長くてよかったです。きっと今は誰にも見せられないくらいにびしょぬれの酷い笑顔をしているでしょうから。
ご案内:「購買部」からフィアドラさんが去りました。
■倉光 はたた > 最初から最後まで、こちらの一挙一動に、大げさとも思える反応を示す少女であった。
泣く様を見られることを嫌がるということはもうわかったので、
すっと手を離すと背を向ける。
チャイムが鳴る。
「ともだちは、無敵だよ」
平坦に、しかし情緒的にそうつぶやくと、ロビーから去っていく。
またね――そう言い残して。
ご案内:「購買部」から倉光 はたたさんが去りました。