2016/01/22 のログ
ご案内:「屋上」に雪城氷架さんが現れました。
雪城氷架 > 「ふぁ……」

貯水塔の壁に背を預けて小さく欠伸をする少女
校内校外共に妙に静かなのは講義時間の真っ最中だからであろう

「徹夜しすぎたかな…」

眠そうに片目を擦る
ちょっと新しいゲームが出た、ということで寮のルームメイト達と盛り上がってしまった
最終的には自分ばかりやっていた気もするが

座学の時間なのでちょっとしたサボりである
なぁにレポートをちゃんと出せればいいのだ

雪城氷架 > うっすらと欠伸で出た涙でぼやける視界のまま空を眺める
蒼天、とは言いづらいものの、天気自体は悪くない
さすがに屋上は寒さを感じる時期だ、とてもサボって昼寝できる気温ではない

「(やっぱ保健室かな…)」

冷暖房完備にベッドもある完璧な場所だ

ただあそこも兄貴こと来島教諭がいる時ならサボれるものの、
うっかり括流のいる時にサボりにいこうものなら小言である

ままならないものである

雪城氷架 > 「異能の講義は…今日はもうないか、あとは実習区寄ってー……」

取り出したスマホを眺めながら今日の予定をひとりごちる

正直に言ってしまえば友人と共に受けている授業以外、
さらに言えば異能関係以外の講義には積極性が薄い

元々勉強自体が苦手というか、嫌いなのだった
異能に関しては自分のこと、ひいては周りのこともあって身が入るのだが

「(それでも大分、慣れたよな)」

なんとなく指先に小さく炎を灯す

此処に来たばかりの頃なら、この程度の能力の行使ですら、
長時間行えば心臓が張り裂けそうな程にこの虚弱な肉体に負担がかかったものだった

それが力の調度良い扱い方を覚え、力への理解を深めるだけで随分と改善されたものである

ご案内:「屋上」に日下部 理沙さんが現れました。
日下部 理沙 > 昼前。
午前中の講義は当然あるにも関わらず、新入生、日下部理沙の姿は教室にも講堂にも、ましてや実習場にもなかった。
かわりに、理沙が現れたのは、第一教室棟の屋上。
サボりではない。たまたま理沙のとっている講義が休講だっただけだ。
同じ講義をとっていた他の生徒が食堂やラウンジに向う中、理沙は大きな翼を揺らしながら、ふらふらとこの屋上へと足を運んでいた。

以前なら絶対に来なかった場所なのだが……最近理沙は、何かにつけて此処に足を運ぶようになっていた。
今日も今日とて、屋上の隅にまで移動しては、フェンス越しに広がる景色を見る。
そして、小さく溜息をひとつ。
そのまま、空を見上げる。

当然、給水塔に寄り掛かる誰かがいるだなんて理沙はしらないので。
 
「!?」
 
そこで初めて、銀髪の少女がいることに気付き、驚愕する。
まさか、講義中のこの時間、自分以外の人間が屋上にいるだなんて思わなかったのである。

雪城氷架 > 「ん…」

誰かが屋上に出てきた
少し身構える、以前教師が来たこともあったからである

が、それは杞憂だったらしく、どうやら生徒…
ただ、どうしても身を引くその大きな翼に目を奪われて

「(天使…?)」

そんな考えが頭を巡る

給水塔の位置は高い、相手が離れた位置から見上げたりしない限りは視界には入らないだろう
が、ちょうど良い場所でその生徒はこちらを見上げてしまう

ちょうど、なんというかバッチリ目があってしまって

驚いている顔に、ちょっとだけバツが悪い

「やぁ ……お前もサボりー?」

もっと他にかける言葉ないのかと思いつつ、口をついて出たのはそんな程度の言葉
相手がついていた溜息なんかには、さすがに距離もあってかきづけなくて

日下部 理沙 > 日を受けた細雪のような銀髪と、サファイアのような蒼瞳。
そんな現実離れした容姿から出てきた言葉は、非常に気安いものだった。
だが、初対面の、それもほとんど奇襲のようなタイミングで出会った女子に対して理沙が咄嗟の反応など出来る筈もなく。
 
「い、いえ……わ、私はその……ちょ、ちょうど講義が休講でし、て……」
 
そんな風に、しどろもどろに返答する事しかできない。
おろおろと両手を胸の前で彷徨わせながら、サボりで女の子がこんなところにいる理由を考える。
そして、早速理沙は頓珍漢な回答を導き出す。
 
「も、もしかして……あの、あれですか、サボり仲間の誰かと、待ち合わせ……とか?
あ、もしそうなら、私すぐに引き上げますので、お構いなく……!」

雪城氷架 > 「休講かぁ、1コマ丸々空くと時間持て余すもんな」

外見とは裏腹すぎるような男の子のような口調で言葉が続き、
あまり上から言葉を投げかけ続けているのも何だと思ったのか、ひょいっと貯水塔から飛び降りた
相当に身が軽いのか、しなやかに屋上へと着地する
同じ高さに立てば高いとはとても言えないその身長と、足首近くまである長い髪が印象的にも映るかもしれない

「別に待ち合わせとかそんなんじゃないから、気にしなくていいよ」

なんでそんな慌ててんの?と思わず小さく吹き出すように笑ってしまう

日下部 理沙 > 「あ、いや、その……」
 
人並みの平均身長を持つ理沙からすれば、規格外の長さの銀髪を持つその少女はかなり小柄である。
先ほどとはうって変わって、今度は理沙が少女を見下ろす形になるが、態度は何一つ変わらない。
視線の高さだけを変えて、それこそ先ほどと同じようにしどろもどろになりながら。
 
「……もし、逢引きとかの邪魔をしてしまったのなら……申し訳ないな、と思いまして。
間が悪かったかなぁ……って」
 
そう、呟いた。

雪城氷架 > 「逢引きって」
再び少女が笑う

「私達と同じ世代じゃなかなか口にしない言葉が出て来たね。
 まぁ、そういうんじゃないよ。ホント気にしなくていいって」

特に逃げられなければぽんっとその胸を手で軽く叩いて

「それよりさ、凄いねその翼。でっかい。
 それが君の異能?」

この学園の人間なら特別な存在以外は異能を大体が有している
視覚的に目立つそれは、当然最初に疑問を投げかけるべきパーツであった

日下部 理沙 > 「あ、はは、す、すいません……田舎に住んでたもので……え、あ……はい、そうです」
 
軽く胸を叩かれながらそう問われれば、少し複雑そうな顔で、そう返す。
翼を軽く揺らして、苦笑しながら。
 
「5年前からついてるもので……御察しの通り異能です。
少し、持て余し気味ですけどね……ははは」
 

雪城氷架 > 「田舎?そういえばこんな目立つ翼があるのに今まであんまり見なかったもんな。
 もしかして新入生だったりとか?」

見覚えがないかどうかを記憶と照らしあわせているのか、その顔をじーーーーっと見つめる

「5年前かぁ、私の異能が発症したのと同じくらいの時期だね。
 なんかその時期に異能に目覚めたヤツって結構多いみたいだ」

へー、ふーん、とか言いながら、翼に興味津々の様子
やはり飛べるのだろうか
そんな疑問が湧くももし飛べなかったら相手を傷つけそうだという思いもあって、口にだすのが憚られる

日下部 理沙 > 「あ、はい、御察しの通りでして……去年の九月からの新入生で、日下部理沙と申します。
発症時期が同じでも、ここでは先輩と後輩ですね……はははは」 

じっと顔を見つめられると、普段、女子にそんなに見つめられる経験があまりない理沙は軽く頬を染める。
そも人の輪から少し外れた場所にいることが多い理沙からすると、女子に関わらず、ここまで近い場所に人がいることはわりと珍しい事だった。
友人がいないわけではないが、それだって少数だ。
真っ先に思い出せる顔といったら、真や美澄、七生とトト、あとは雄くらいなものである。 
 
「アナタも……やっぱり、異能の関係でこの学園に?」

雪城氷架 > 「日下部理沙…なんか女の子みたいな名前だなー」
言い難いことをすぱっと言ってしまう、どうやらそんな性格らしかった
が、別にそれ以上つっこむようなこともせず

「私は氷架…雪城氷架。
 先輩後輩って言っても私もまだ一年だし、同級生みたいなものだよ。
 ……あれ、顔赤いぞ、風邪でもひいてるのか?」

今の時期の屋上は結構冷えるしな、と思いつつ

「うん、そうだよ。
 元々お父さんが異能の研究しててさ、私が異能発症させちゃったもんだから、
 一番研究が進んでいる場所だからって此処へ転入させてくれたんだ」

日下部 理沙 > 「良く言われます……あ、顔が赤いのはなんといいますかその……寒いからですかね、はい」
 
名前については本当に良く言われる事なので、理沙もそれほど気にしてはいなかった。
からかわれることは良くあったが、それにも慣れた。
 
「ああ、そうなんですか、お父さんが……確かに、この島は、異能者にとっては過ごしやすい場所ですしね。
正しい判断だと思います。
……外は、異能者にとっては、あまり居心地のいい場所じゃあないですしね……」

雪城氷架 > 「まぁこの時期の屋上はちょっとなー、晴れてても昼寝できないくらい寒いし…んじゃあ…はい」

さっき軽く叩いた理沙の胸元に再び、今度はゆっくりと掌をあてて
するとそう間もなく理沙を包んでいる周辺の空気がぽかぽかとしたものに変わっていく
少女の持つ異能の力によるものらしかった

「だよな、此処じゃ皆異能を持ってても普通だから、みんな同じだと思うとそれだけで気が楽だよ。
 外の世界じゃ目立ってしょうがないもんなー」

そう言ってこちらも苦笑を返す
特に、このような翼などは人一倍目立つものだろう
それが5年、と考えればそれがこの男子に与えた影響の大きさは推し量れるというものだった

日下部 理沙 > 「これは……」
 
一瞬で、周囲の空気が暖気に満たされ、先ほどまで感じていた若干の肌寒さが消え失せる。
氷架の異能。名前に反して、暖気を齎したそれに、理沙は若干目を細める。
異能を見事に操作したこともそうだが、それ以上に……みんな同じと言ったことに。
やはり、その身にあったであろう、気苦労を思って。
 
「雪城さんも……やはり、外では……」
 
そこで、ハッとなり、口に手をあてる。
気安く聞いていいことではない。外で何かあってここにきているのなら、余計に。
己の過失に理沙は顔を顰め、静かに頭を下げる。

 

雪城氷架 > 「コントロールを離れたらあんまり長くは持たないけどな」

にこっと笑ってみせ、手を下ろす
ここで立ち話をしている間くらいは寒さを防いでくれるだろう、程度のものらしい

「別に謝ってもらうほどのことじゃないよ」
理沙の言動は普段鈍いほうである氷架にもちゃんと伝わってくる

「私の場合は力自体は外には見えないからな。
 むしろこの外見のせいでよくいじめられたりはしたけど。
 まーそれも終わった話だし、此処じゃ髪の色がヘンとかなんてどうでもいいってレベルだからなー」

うん、とそこで一度言葉を切って、顔を見つめなおす

「見た目も異能も此処じゃ単なる個性で異端にはならない。
 割と皆割りきって生きてると思うよ。まぁ、えっと…んー……だから、とにかく気にしなくていいってこと!」

日下部 理沙 > 真正面からまた顔を見つめられて、改めて、目を細める。
浮ついた感情からではない。
氷架の言葉と、笑顔から伝わる気遣いに対して……どうにか、微笑み返す。
 
「雪城さんは……強いんですね」

苦笑や、無理に作った笑いではない。
ただ心から、嬉しいと感じて。

「真っ直ぐ、そう言えるのって、とっても凄いし……カッコいいと思います」
 
理沙も、翼が突然生えたことで「異端」として心無い扱いを受けたことがある。
だが、氷架のように割り切って、「終わった話」と片付けられてはいない。
未だにそれを怖れているからこそ……獅南の言葉に答えを出せないでいる。
 
「雪城さんは、いい人なんですね」
 

雪城氷架 > 強い、と言われれば気恥ずかしげな表情を浮かべて頬を掻く

「今だから言えるってだけだよ」

この学園に来たばかりの頃はそれはもう色々あった
変な事件に巻き込まれもしたし、
自分の力に振り回されもした

「でもまぁ…やばい時に支えてくれるヤツがいたからな。
 私が強いんじゃなくて、私のまわりが強かったんだ」

家族と、友人と、恩師と
この島にきてからはできすぎたぐらいに恵まれていた

「悪いヤツ、ではないと一応自分では思ってるぞ」
やはり照れくささを感じて笑ってごまかす
そして

「あ、あと氷架でいいよ、氷架で。
 この学園私の家族も何人かいるからさ、教師も含めて。
 そのうち紛らわしいことが起きるかも」

と付け加えた

日下部 理沙 > 何度か照れくさそうに笑う氷架を見て、理沙もまたくすりと笑い返す。
自分にも身に覚えのある顔をしてくれるのは、本当に……「みんな同じ」と思う事が出来て、安心できる。
 
「それじゃあ、氷架さん、と呼びますね。
さすがに、女子を呼び捨てにする勇気はちょっとないので……このへんで勘弁してください」
 
そう、どこか嬉しそうに笑う。
笑みには、笑みを返しやすい。

それに気づいた時、また、理沙はハッと、目を見開く。
 
「あ、そうか……周りが強いって、そういうことなんですね」
 
そして、また、静かに笑う。
どこか、安心と確信を持って。
 
「確かに今は、強い氷架さんが居てくれたお陰で、初対面の女子との会話でもあんまりしどろもどろにならずに済みました。
ありがたいことですね」
 
軽く、冗談めかして。そんな風に。 

雪城氷架 > 「ん、まぁ私は理沙クンって呼ぶのがなんか堅苦しいから理沙って呼ぶよ」
このあたりあも、見た目に似合わぬくだけた性格からのものであろう

「特に私の場合は、家族が一緒に此処に来てくれてるからさ。
 私よりいくつも壁を乗り越えてきてるんだ、そりゃ強いよなって、
 ずーっと凭れかかってばっかりってわけにはいかないけど倒れそうな時は支えてもらえばいいって思ってさ」

そう気づくまでもまた時間がかかったものだった
誰かに助言されたりしなければこうやって偉そうに言うこともできなかったはずである
それも、含めて経験と言ってしまえるのかもしれないが

「ん、何だもしかしてあんまり女の子と会話しないタイプ?
 なんだったら今度女子寮にでも遊びに来て練習するか?」

こちらもこちらで、イタズラくさい笑みを浮かべて冗談を返すのだった

日下部 理沙 > 「恥ずかしながら、女の子どころか普段は人と会話すること自体があまりないもので……じ、女子寮は男子禁制じゃないんですかね!?
ど、どっちにしろ、遠慮しておきます……あ、呼び方の方はお好きにどうぞ」
 
流石に女子寮はあらゆる意味で無理だ。理沙と言えど健全な男子高校生。
女子寮はあらゆる意味で行けない場所の一つである。
 
「家族一緒っていうのはでも……いいですね、とても。
誰かに頼る事や……頼る相手がいることも……あ、そうか、それも……強さなんですね」

支えて欲しいときに、支えて貰う。
倒れそうになったときに、誰かに助けを求める。
それを素直にできるなら、きっとそれも……強さなのだろう。
 
「同級生とはいってくれましたけど、やっぱり氷架さんは大分先輩ですね……凄いです」
 

雪城氷架 > 「あっはは、冗談だよ冗談」

からからと笑って

「理沙にはいないの?頼れる、家族とか…」
みたび、その顔をじっと見て問う
家族は誰しもが持っているものじゃない
友人も然り、みながみな持っているのでは、ない

「そんなことないよ。
 一つだけ大きな壁を、みんなのおかげで乗り越えられただけさ」

日下部 理沙 > 家族の話になると、少しだけ、理沙は苦笑して……首を振る。
少しだけ、曖昧に。
 
「家族はいますが……頼れるかどうかとなると……難しいですね。
父さんも母さんも、ずっと本島にいますから」

そう、東の空を見る。
海を越えた、さらに先の空を。
ただ、目を細めて。
 
「父さんと母さんは……普通の子のほうが良かったみたいですからね。
無理もないとは思います。服を買うたびに背中に穴をあけるのは……結構手間ですしね」
 
そう、軽くいって、出来る限り、笑う。 
 
 

もしも、壁が現れた時。
自分にも……乗り越えられるだろうか。
ただ、そう胸中で思いながら。

雪城氷架 > 「そっか…離れてるんだな」

正直自分たちなどまだまだ子供といって差し支えない
異能を持っているからといって、関係のない部分だ

「理沙の気持ちはわかるよ。
 私も多分、お父さんが異能の研究してたり…あ、お母さんも異能者なんだ、私の家。
 そういう意味では…理解はあったほうだからな」

なんとなく、追随するようにこちらも空を眺めて

「じゃ、何かあったら私を頼れよ。うん、それがいい!
 枯れ木みたいに頼りなくてもないよりはマシだからな!」

日下部 理沙 > 氷架と一緒に彼方の空を眺めながら、無意識に、唇を噛む。
悪意や苛立ちがあったわけではない。
だが、その氷架の言葉の中に思うモノが無かったのかと言えば……きっと嘘になる。
素直にいえば、恐らく、理沙は羨ましかったのだろう。
自分を認めてくれる家族がいる氷架が。
自分よりも先に何かを乗り越えている氷架が。
自分と同じようにある日異能が発現し……故郷にいられなくなり。
それでも、強く今此処に在る氷架が。
 
だからこそ、そう切り出された時。
 
「ふふふっ」

理沙は、つい……笑った。
『だからこそ』結論を持っているだろう氷架の強さと。
恐らくそれには気付いていないだろう本人の、人の良さに。
無論、悪意からではない。
ただ、なんだか嬉しくなって。
 
「本当にやっぱりなんというか……氷架さんって、いい人なんですね。
いいんですか? 私、結構図々しいですよ」

雪城氷架 > 「さっきも言ったけど悪いヤツじゃないつもりではいるぞ、一応な」

にっと微笑んで視線を戻す
理沙も今は笑っていた
本当に人を支えるというのは大変なことだろうけれど
こういう笑顔が見れるなら大変なことでもやってみていいじゃないかと

「図々しさなら私だって負けないし、何もこういうのは一方通行ってわけじゃないぞ?
 私が今この場でフラついて倒れそうになったら側にいるお前は私が倒れないように抱きとめるか何かするだろ?しない?
 まぁそれができなくても誰か呼んだりとかなんかはするだろ、お互い様なんだよこういうのって。
 物理的な話でも精神的な話でも同じさ」

そういって、最初にしたように胸元をトン、と軽く叩く

「お互い名前なのって休み時間(サボりだけど)目一杯話したらもう友達でいいよな」

日下部 理沙 > 「持ちつ持たれつ……ですね」

言われて、気付く。
そう。そうだ。誰かの為にやることは、誰かの為だけじゃない。
自分の為にやることだって、一杯あるはずだ。
それは偽善と詰られる事でもあるのかもしれない。

だが、それでも……『互い』にそれで助かるのなら、それが結局最良ではないか。

凭れ掛かるだけではよくないかもしれない。
だが、相手が凭れてきても互いに均衡がとれるように上手く凭れる事が出来るのならば……それこそが、『強さ』なのではないか。
 
そこまで含めて、やっぱり氷架は分かってるんじゃないだろうか。 
答えはわからない。だが、態度でそう示してくるのなら。

「私で良ければ、それこそ喜んで」

やはり理沙は、笑うのだろう。

「図々しい同士、仲良く出来そうですね」
 
氷架の『強さ』のお陰で。

雪城氷架 > 「これだけ話してコイツ嫌いだって思うことがなければまー大体なんとかなるよ」

にへっと顔に似合わない緩い笑みを浮かべてそう答える

と、同時に鳴るチャイム
今やっていた講義時間の終了を知らせるチャイムであった

「っと、次は知り合いの先生の講義だからさすがに出ておかないとな…」

そう言って肩の鞄をよっこらとかけなおして

「それじゃ、またな理沙」

少しだけ急ぎ足にきびすを返して、一度振り返って大きく手を振りながら、
長い銀髪を揺らして少女は屋上の扉を潜っていった

少女が去ると、理沙を包み込んでいた暖かな空気は少しずつ冷め、冬空の下の冷たさを取り戻してゆくだろう───

ご案内:「屋上」から雪城氷架さんが去りました。
日下部 理沙 > 「はい、また会いましょう氷架さん。
今日は本当に……ありがとうございました」
 
長い銀髪を棚引かせ、奔り去っていく背中を見送り……また空を見る。
今を生きるのか。過去に挑むのか。
選ぶのか。選ばされるのか。
 
それすら、悩むときに一人でいる必要はない。
助けが欲しいときは……素直に言えばいいだけのこと。
それだってきっと、強さなのだ。
 
「……解答、できそうかな」
 
生徒はただ、『課題』に挑む。
提出期限が、あるわけでもないそれに。

ご案内:「屋上」から日下部 理沙さんが去りました。