2016/01/23 のログ
ご案内:「ロビー」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 授業と授業の合間に、この白衣の男がロビーに居ることは珍しいことでもない。
だが、ここで彼が居眠りをしているのは、非常に珍しいことだろう。
この男をよく知る者なら、研究室での居眠りは常習的だということも知っているだろうが、
多くの生徒にとってそれは、やや、意外な一面であるのかも知れない。

「………………。」

腕を組んだまま、静かに、寝息を立てている。

獅南蒼二 > 夢を見ていた。

それは獅南自身にとって珍しいことだった。

夢を見ること自体は、人間であるのだから珍しくも無い。
だが、これほど鮮明にそれを感じ取り、記憶に残る夢はここ数年間、見ていなかった。

獅南蒼二 > 無限に溢れ出る魔力をその身に宿した両親と、弟。
その才能の一切を受け継ぐことのなかった、自分自身。

どれほど努力しても、どれほど研鑽を重ねても、
決して縮まることのなかった、絶望的で理不尽なその差。

僅かな慢心からその身を破滅させた家族たちと、
その破滅を予見し、全てを見抜きながらにして何もできなかった無力な自分。

獅南蒼二 > だが、夢の中では違っていた。
無限の魔力を生成し、蓄積した指輪を嵌め、
いかなる術式をも組み上げることができる自分が、その場に立っていた。

今の自分なら、家族を救うことが出来る。
両親の術式構成の欠陥を書き直し、弟の溢れ出る魔力を抑え込む。
絶望的で理不尽なその差を魔術学という武器によって克服した。


何をやっても評価されなかった凡人が、天才を超えた。

獅南蒼二 > 獅南は魔術学を極限にまで高めることに、全てを掛けている。
それは異能によって破壊された秩序を、魔術学によって取り戻すためだ。
理不尽な力に支配される“凡人”が“努力と研鑽”によってそれを振り払う事ができる世界を作るためだ。

……そう、自分にも、周囲にも、言い聞かせていた。

獅南蒼二 > だが、もしかしたら。

この白衣の男は、凡人である自分が、自分の力によって、
“天才”を超えられることを、証明したいだけなのかも知れない。

ご案内:「ロビー」から獅南蒼二さんが去りました。