2016/05/21 のログ
ご案内:「ロビー」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 退院後。見取り稽古を終えて学校へ。
そこから、悠薇は探し始める。
誰かを、探す。唯一の情報は一つだけ。だけど、見つかってくれたら御の字だ。

姉が、変わった。自分にとっては悪い、方向に。
あんなふうに変わってしまうのはなにか、あったからだ。

――おいていかないで、おいていかないで

焦りばかりが生まれる。
いや、おいて行かれるだけならいい。
直接告げられたならそれで――でも今のままじゃ。

――あきらめられないよ。どうして? お姉ちゃん

渦巻く、思い。どうして、自分はこうなのか。
いつも、いつも姉は先に行く。自分はいつも追いつけない。
追いかけても追いかけても――足りないのだ。追いかけるのが。
いつもどこかで転んでしまう。それが姉の負担になっていたというのだろうか。

――知りたい。なんで、ああなってしまったのかを。

だから、探す。

「あのっ! お姉ちゃんと、最近仲の良い女のひと、知りませんか」

――結果は

ご案内:「ロビー」に高峰 司さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「……見つからない……」

聞いて回ったけど、知らないといわれ続けて。
ロビーで少し、足を休める。

『結構引いてたよ。はるっちにしては頑張ったほうだけど』

「……あはは」

苦手とか言ってられなかったのに――

見つからない。

急がなきゃって、どうしてか思うのに

高峰 司 > ふあぁ、と欠伸をしつつ、てくてくと歩いている召喚士。
然したる目的もなく、のんべんだらりと歩いていたのだが……。

「……あ?」

声を上げて人を探している女生徒。あの顔は確か……。

「オマエ、伊都波悠薇か?」

思わず、声を掛けてしまう。
あの顔は、見覚えがある。と言うか、姉である凛霞がしつこいくらいに自慢してきたのだ。正直ウザかった。

伊都波 悠薇 >  
顔を上げる。
誰だろうと思う。名前を知られてるのは、珍しくないけれど。

「……そう、ですけど」

今は余裕もないし、疲労もある。
だから、身構えたりとかもできずに、素で対応する。
いつもなら、ありえないファーストコンタクト。

でも、今日は、なぜか自然だった

高峰 司 > 「…………」

つい、声を掛けてしまった。正直メリットなんてないのに。
いや、あるか。あの姉の妹なのだから、コンタクトは取っておいて損はないだろう。
そう脳内で結論付けて、取り敢えず会話を続ける。めんどくさいけど。

「仲がいいか、っつーとまあ向こうがそう言ってるだけなんだが、アタシは最近伊都波凛霞に連れ回されてる。っつーことは、オマエが探してんのは、もしかしてアタシか?」

伊都波 悠薇 >  
「!!?」

目的のひと。彼女が、一番、だれよりも”お姉ちゃん”をしってる”女のひと”……

「あの!あの、お姉ちゃん。お姉ちゃんに何があったのかしりませんか!?」

詰め寄る。
真に迫る、尋常じゃない、慌て方。
焦り、安堵、不安――

感情が渦巻いて――前髪が、振り乱れる。
見える、素顔。左目に、泣きぼくろ。
それも、いとわず――

高峰 司 > 「は、ハァ!?な、なんだよオマエ、寧ろアイツに何かあったのかよ!?」

違和感がある。
確かに、彼女は悲劇の中にいる。が、それを取り繕って悟らせない笑顔を作る能力も、逸品だった。
つまり、特に隠したいと言っているこの妹に、それを悟らせるような真似はしないはずなのだ。

「オマエ、何か様子がおかしいとか感じたのか?先にそれ言ってみろ」

少し真剣な顔で口にする。
なんせ、唾をつけておいた大事な召喚獣(テゴマ)候補だ。自分がどうにかする前に、本気で潰れられてはたまったものではない。

伊都波 悠薇 >  
「わかりません」

わからないから、ここにきているのだ。
わかるであろうと踏んでここにきているのだ。

「……お姉ちゃんが。私に、作り笑いをしました」

それはよくあることだったかもしれない。
自分が気づかなかっただけかもしれない。
でも――

「お姉ちゃんが。大丈夫って、笑わなかった」

それは些細な違いだ。でも――明確な、違いだ。

「大丈夫って聞いたのに――大丈夫だよ、私は誰にも負けないからって言ってくれなかった! 安心させてくれなかった!!」

それは悲鳴のようだった。
現実で、何よりも起きてほしくなかった――

「”姉さん”が――おいて行っちゃったよぉ……私、妹じゃ、なく――……」

昔の呼び方に、戻る。
姉さんなんて上下がある呼び方じゃなくて――より近い、お姉ちゃんという呼び方――……
でも、今じゃ――……

涙は、流さなかった。でも今にも、泣きそうだった。

「……わたし、が――まだ、追いつけないから……」

どうしようと、告げる。漏れた言葉は――……どこよりも、弱弱しく。

やはり、誰かの前では。妹は強くあれなかった

高峰 司 > 「ハァ!?」

本当は、普通なら、大したことのない出来事だ。
『馬鹿が、ンなモン誰にだってある事だろ。気にしすぎじゃねーのか?』で済ませるものだ。
だが……それを行ったのが伊都波凛霞と言うのならば、話は変わってくる。
『何があっても、妹のために姉は最強でなくてはならない』と言い続けてきたあの姉なのだから。

「嘘だろ……?犯されても笑顔をデフォに出来たアイツが、よりによって妹に……?」

だから。
あまりの衝撃の大きさに、つい、口が滑った。
『何としても伝えないでいたい』と言っていた情報を、口から漏らしてしまった。

伊都波 悠薇 >  
「…………今、なんて?」

顔面が、蒼白になっていく。
今、目の前の女性はなんと、言ったのか。

「どういう、ことですか。なんで、姉さんが? どうして? 何があったんですか」

肩をつかむ力が、強くなる。
痛みは少しはあるかもしれない――

「――誰に……なんでっ!?」

高峰 司 > 「い、痛っ……!」

強く掴まれ、つい痛みを口にする……と共に、己の迂闊を内心で責め立てる。

「(アホかアタシは……!何口滑らせてんだ……!)」

だが、こうなった以上、この妹は止まらない。
止まる気配がないし、あの姉の妹だ。家族愛とやらは人一倍なんだろう。

「……口止め、されてたんだがな。アイツは、同学年の男子にレイプ被害に合ってる。頼まれたら嫌と言えない、且つ相手を傷つける事を躊躇う馬鹿だからな……味を占められて、何度も」

苦渋なような、無表情なような。
そんなしかめっ面で、絞り出すように答えた。

伊都波 悠薇 >  
合点がいく、様子がおかしかったもの。
ピースがはまる。
でも、それだとおかしい。
だって、そこに自分はいない。
失望されたのなら、それでいい。
が、そこに自分がいないのならなぜ、姉は”姉”をやめてしまったのか――。
まだ、全部の面の色がそろわない。

「……なんで。なんで、そんなことになったんですか」

まだだ、まだ逃がさない。
絶対に、逃がしてなるものか。
お姉ちゃんは――誰にも……

高峰 司 > 「知るか、アタシが聞きてぇ!」

思わず。
怒ったような、泣いたような。そんな大きな声を感情任せに吐き出した。

「あの馬鹿はな!アタシがルーンで助けてやるから召喚契約しろ、っつっても、契約が嫌なんじゃなくてアタシを巻き込むのが嫌だっつって蹴った大馬鹿野郎だぞ!?
アタシだって信じられねぇよ!そんなアイツが何より大事にしてたオマエ相手に、姉を捨てるとか考えらんねぇ!
オマエのために意地を張ることはあっても、オマエの前で姉を捨てる事はあり得ねぇ!断言できる!だから……それ以上の、何かがあったんだ」

心が落ち着かない。
おかしい。単なる手駒候補に過ぎなかったハズの凛霞の異常に、何故か心が動揺している。
だが、それに目を向ける前に、まずすべき行動を取っていた。

「……出ろ!フギン、ムニン!!」

北欧神話において、主神オーディンに情報を伝えていた二羽のワタリガラス。
情報収集において、この二羽の右に出る者はそうそういないだろう。

「ヤツの周辺を探れ!今すぐだ!!」

怒鳴り付ける様に指示を出し、それを受けた二羽は即座に飛び立っていく。

伊都波 悠薇 > ――ぽかーん。

まさか、大きな声を出されると思っていなかった。
怒る人がほかにいると、冷静になるというのはこういうことかと初体験。

何分、自分の周りは常に一人だったからそんな経験をすることなんてなかったのだ。

――らしいと、思った。
その考えはすごくらしい。
でも――ならばなぜ、姉は変わったのだろう。

知りたい。自分が足りなかったものを。
もう一度、妹として見てもらえた時に、間違えないように。

隣に立ってほしいって、思われたときに。雑草に成り果てないように。

「……素直じゃない友達って、本当ですね」

なぜか、笑ってしまって。
どこか、おかしくて――、思考がクリアになった

高峰 司 > 「あ”ぁ!?なんで冷めてんだよオマエ!つーかそれどういうことだ!」

こちらは焦りと混乱と苛立ちが止まらない。
あの、あの凛霞が崩れるなんて言うのは、並大抵のことではありえない。
単なる雨垂れに穿たれる意思であったとは思えない。
ならば、何か悲劇が重なったか、後押しがあったのだ。
……後者ならば、それを悪と断ずる権利は司にはない。
凛霞の堕落を以て、契約を為そうとしていたのだから。
だが……そんな道理を吹き飛ばしかねない苛立ちが、司の心の中に渦巻いていた。

「(クソが、どういうことだ……!あの鋼メンタルに何があった……!)」

自分の知る限りにおいて、その条件を満たせそうなのが目の前の妹の異常だ。
だが、寧ろその妹が異常に勘付き、こうして姉を探る頼りを探しに来ている。
なら……一体何が、一体誰が。

伊都波 悠薇 >  
「お姉ちゃんが言ってました。素直じゃない、大事な友達って」

ふわり、笑みを浮かべれば。姉とうり二つの――
思考を回す。足りないピースは、まだたくさんある。

姉の中に、生まれたものは何だ?
何が変わった。
考える――考えて……

「ぁ……」

思い当たる。

「気になる、人……」

どういった経緯で、気になる人になったのか。
姉には聞いていないが、わかる情報としてはそれだけ。
姉が変わったものの、ひとつ。
でもそれは良い変化であると――そう。
    
    信じたかった。

姉の幸福は、自分の幸福でもあるから――

高峰 司 > 「……誰だ」

ドスの利いた声、様々な感情を押し殺したような声で問い掛ける。
気になる人。最後の一押しを行ったかもしれない人物。
重要な手がかりだ。それがわかるなら、片方をそちらに差し向けて監視させる必要がある。

伊都波 悠薇 >  
「わかりません」

名前は、わからない。だって教えてもらえなかった。
思考は、止めない。誰よりも姉を見てきたのだ。
姉のことなら、わかる。いや、隠されて、わからなかったから
自信はちょっぴり無くしたけれど。そんな自分に怒りを覚えるけれど――

――……そういえば。

姉は、随分明るい、憑き物が落ちた表情をしていたのではなかったか。

「あの、お姉ちゃんがその、もにょもにょってされてたのって、今も、ですか?」

高峰 司 > 「……今さっきに関しては知らねぇ。アタシも、四六時中アイツを見張ってるっつーわけじゃねーからな。
が、アイツが継続的に被害に合い続けてたのは事実だ。
それこそついさっき、それがあったとしても何も不思議じゃねえ」

何故監視しておかなかったのか。そんな益体のない後悔が脳裏に渦巻く。
後出しの、結果論。そう分かっていても、何故納得できないのか。それが自分でも分からない。

「後は……ソイツのツラは覚えてるか?その記憶が正確なら、ムニンで追えるかもしれねぇ」

ムニンは「記憶」を言う意味を持つ。
そのムニンの持つ能力は「記憶の共有」だ。対象に自分の見た記憶をイメージとして伝達したり、対象の記憶を元に情報を集めたりすることができる。
その能力を使えば、顔から割り出せるかもしれない。

伊都波 悠薇 >  
首を、横に振る。
見てもいないのだ。ただいるってことだけ。
ということは――

――……ここまで、かな

これ以上は、わからない。
わかるのは、気になる人がきっとピースになるということ。
そして、事柄の重なり。
姉がされたことと、気になる人ができたということ。

姉が、ただ。白馬の王子にさらわれた、ということなら。いいのだけれど――……

自分よりも、その人のほうが大切だって。
自分で、選んだ。覚悟(あい)ならいいのだけれど――……

「ありがとう、ございました。助かりました。あの、またなにかお姉ちゃんのことわかったら教えて、ください」

高峰 司 > 「……そうか」

ならば、取り敢えずフギンとムニンに任せて、自分は待つしかない。
情報収集に関して、司の手持ちにあれ以上はいないのだから。

「いや、アタシも何でペラペラしゃべったのかわかんねーからな……クソ」

一息ついて、自分の「らしくなさ」に舌打ち。
その上で。

「……まあいい、なんかあったらムニンを飛ばす。ムニンは『記憶の共有』が出来るから、それで情報を渡す。そん時に、オマエも何かあったらムニンに伝えろ」

自然と、契約を介さない協力関係を構築していることに気付かないまま。
情報共有を、あっさりと了承したのであった。

伊都波 悠薇 >  
「――優しいですね?」

くすりと、笑った。静かに、静かに。
微笑んで――

「助かります。何も、お返し、できな、い、ですけど」

はっはっと、息が荒く。
ちょっとさっき走った疲れが来たのかもしれない。
深呼吸を、ひとつ。

「なにも、お返しできないですけど……お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」

深く頭を下げた

高峰 司 > 「あ”ぁ!?」

まっっったく想定していなかった言葉に思わず変な声が出る。
優しいとは何だ、優しいとは。オマエの姉の弱みに付け込んで、契約を迫ったクズだぞ。
姉妹揃ってよくわからん、と言う結論に逃げつつ、軽く手を振る。

「いい。アタシもアタシの目的があってやってんだ。それが合致した、それだけだからな」

伊都波凛霞は、大事な■■■■■だ。
好き勝手にされては、たまったものではない。

伊都波 悠薇 >  
「素直じゃない友達、ですね?」

もう一度告げて、頭を深く下げた後。その場を後にする。
そして、曲がって。教室に戻ろうとしたとき――

……ぽた。

赤が、垂れた。

「……? 最近、多いな……」

鼻にティッシュで栓をして、歩く。
その赤の意味を知らずに。

――姉は出会った。少なくとも彼女にとって”プラス”と。
――なら妹は、であってはならない。もしくは”マイナス”と出会わなければならない。

でも、いま、出会ったものは?

さて、バランスを変えようとしたものに圧し掛かる”重さ(つけ)”は

   いかほどか、いかほどか

ご案内:「ロビー」から伊都波 悠薇さんが去りました。
高峰 司 > 「……わけわかんねぇ」

溜息。本当に、姉妹揃ってよくわからない。
とにかく、その場に居る必要もないので、自分も寮に戻る。
……ここまで心が制御できないのは初めてだな、と、自分自身に首を傾げながら。

ご案内:「ロビー」から高峰 司さんが去りました。