2016/07/04 のログ
ご案内:「教室」にリビドーさんが現れました。
■リビドー >
――神秘文化学。もしくは神秘文化論。元 宗教・魔術文化論。
リビドーが受け持つ講義の一つ。
異なる世界の神秘を理解することを名目する講義であり、哲学や教養――自由取得の科目として設立されている。
今はその講義の中頃だ。
「つまり、悪魔の解釈は多様であるが、ある程度の分類は出来る。
その神秘の原義に因るか、異なる信仰――自分たちの神の敵をそのように扱うものか、
魔を魂――霊的な力を扱う種族か、各神秘の持つ"道徳"に相対する"悪性"か。
後は神と同様に異変に準ずる、物質化した物語存在そのもの――
――は霊的な種族に近いが、在り様や対処法は異なるから覚えておくといい。
――ともあれ、そのものがどのような意図で悪魔を指しているかは慎重に扱わねばならん。
「さて、ここまでが今日の講義分だったな。
大分時間が余ってしまったが、ふむ、何の話をしようか。」
顎を撫でつつ、思案を始める。
思いの他早くシラパス分が終わってしまった。質問が少なかった事でもあるのだが……
■リビドー >
「そうだな。これにしよう。
――今日の余白は『好き』についてだ。」
黒板の余白に、その文字を描く。
流れるように線を引いて文字を示してから、向き直り。
「『愛』に派生する話しでもある。
神秘においてそれらが扱われることもしばしばある。」
「特に形而上――世界の原理や真理・概念――
概念上にある"理想そのもの"、"精神的なもの"など、
抽象的なものを扱う神秘に於いてはよく使われるな。」
デフォルメされた人のモデル――棒人間を書き
その頭の上に形而上、足元に形而下の文字を描く。
「一方で形而下――キミたちが常日頃触れている自然や宇宙の成り立ち、
元素や万象に代表されるものにはあまり使われないな。」
■リビドー >
「さて、前置きはこの程度にしておこう。
好きとは何か、となってくる。――で、これだが……とりあえずボクの見解を置こう。」
板書には―――『よきもの』の文字。
「よきものと思うもの――よきものへ反応、と仮定義しようか。
善、と言ってしまうとちょっと行き過ぎてしまうが……
ひとまず、ここを出発点としよう。」
■リビドー >
「だが、『よきもの』と『好き』。
直感で共感できる生徒もいると思うが、どうにもズレている様にも思えるかもしれないな。
そうだな。よいとは思うが 嫌いなもの などもあるだろう。
それは相手の『よきものを認めている』――理性として差異を扱える話でもあるが、一度置いておく。
なぜ、好きが『よきもの』への反応であると言ったのか、それをこれから話して行こう。」
「まず、好き と いう感情は曖昧な定義で、いくらかのものを統合したものとも云える。
――いつかの定義を用いて”好き"を分解すると、こうなる。」
……黒板の一部を消し、後ろからでもギリギリ見えるか見えないか程度の文字を書き進める。
■リビドー >
[イド(Es)] 本能(Es)
-リビドー(性衝動)
-愛(Eros)
-感情
[超自我(super-ego)] 理性
-理性
-イデア
-大我
-崇拝
-理想
-道徳
-信仰
-愛(アガペー)
[自我(Ego)] 意識・人格・感情
-満たす
-認可
-愛(Storge)
-愛(philia)
-フィール
「……とまぁ、心理学・哲学の用語にまとめ上げればこうなるか。
少々余分に描き過ぎてしまったが、ざっくりまとめて行こう。
調べるにも抽象的だろうから、各要素の紹介はいずれ時間を取り直すよ。
分類……特に愛については補足が要るかもしれないな。」
■リビドー >
「……とまぁ、比較的広く使われる。このモデルで説明するとこうなる具合かな。」
そこまで言ってから、チョークにまみれた粉を拭く。
「つまるところ、本能・理性・自我――
本能的・衝動的・ストレス由来に欲求する故の "好き" か
理性的・理想的・通俗的によいと思う。あるいはよいとされることをよいと思う故の好き、か、
人格的……感情と理性の合間に立った自分の意識、要するに自我を由来とする 好き にあたると解釈できる。
人格的な好き嫌いは感情や理性に分類できるかもしれないが、出力や需要としての形はこれがあると解釈しやすい。」
「概ねはこのあたりのものを使って"好き"を解釈することはできるだろう。
嫌い については話す事も多いから、次回にしよう。
単に好きの反対に出来るかと言えば、危害や実害などが絡む分少し本能的なものが出てくる。」
小さく首を振る。
予想以上に時間を使っている事に気付けば、それを鑑みて次に回す。
もともと余白の話のつもりだ。
とは言え、最初に触れたものには言及しておこう。
「ただそうだね。よいものと思えるけれど嫌い、というのは、
自我で認めつつも理性や感情のどこかでそれを嫌悪する・認めきれない要素があるともいえる。」
■リビドー >
「自分が何故好きなのか分解してしまうのは味気がないかもしれないけれど、
相手がどうしてその文化や風習を好むのか、そのような趣味を持つのか。
それらを解釈するまでは行かずとも、何か起因となる意識が在ることは分かるだろう。
特異な風習も、もとを正せば理性的に導かれた意味のあることかもしれない。
何かしらの大きな事件や災害を経験して、思案の末に導かれたものかもしれない。」
そろそろチャイムがなるだろう、と、必要性の薄い所から消し始める。
「意味はないと思うけどしきたりだからなんとなくやっている。
当初は考えられて出来上がったしきたりで意味のあるだったかもしれないけど、
今は必要に思えない。それでもなんとなくやりたいからやっておく。
「このようにややこしい事はあるけれど、
好き に それなりの理由が付随されている事は分かるかもしれないね。
少なくとも、相手が好む理由を考える幅を広げる定規の一つにはな――」
あと少し、間に合わなかったか。
チャイムでさえぎられれば、言葉を止めた。
「ああ。最後は説明しきれなかったけれど、
どのみちもうちょっと説明のいるものだ。
次週軽くおさらいしてから、もう少し踏み込んで考えてみよう」
■リビドー >
「では、以上だ。」
……長引かせるのもよろしくはない。
そのままさっくりと教室を後にした。
ご案内:「教室」からリビドーさんが去りました。