2016/09/11 のログ
ご案内:「屋上」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 「好天快晴。 ……いいわね、こういう日の屋上って。」

ふと、授業の終わりに何の気なしに登った屋上。
天候の移り変わりの激しい島内ではあるが、今は絶景と呼べるほどの蒼天。

島内が逆に蒼に曇る程の雲一つない青空が広がっていた。


吹き抜ける風に目を細め、身を任せて空気に浸る。

心穏やかな、『何もない時間』を楽しんでいた。

ご案内:「屋上」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > 「……………あ。」

がちりと屋上のドアを開けたら、既に先客が居た。
たまに屋上で何も考えずにだらだらすることがあるのだが、今日はそういう気分だった。

問題なのは、それが…今一番会いたくて、同時に会いたくなかった女性であること。
どうしたらいいのか分からなくなり、ドアを開け放ったまましばらく立ち尽くしていた。

「………………。」

過去のことが申し訳なくて少しずつ俯き始めている。

谷蜂 檻葉 > きぃ、と風音に混じって別の音が聞こえる。

「――――あ。」

奇しくも、同じ音。
ただ、全く違う内面で彼を迎えた。


「どうしたの、加賀智君。 そんな所でぼーっとしてないで、いい天気だよ。今日。」

へらっとした笑みで、小さく手を振った。

加賀智 成臣 > 「……………………。はい。」

目線をきょろきょろと泳がせたまま、檻葉の元へ向かう。
目の下のクマは普段より更に濃く、目つきもどんよりと濁り、まるでゾンビのようだ。

「…その……え、えぇと……
 
 …いい天気、ですね。」

言い出せなかった。
結果として、オウム返しのように話題を繰り返すだけというよく分からない行動になった。

谷蜂 檻葉 > 「うん、いい天気。
 ただぼーっと見てるだけで、なんか開放的になっちゃう―――気持ちいよね、パァーッと晴れてさ。」

その心を解っているのか、いないのか。
彼の話題を振ることなく、ただ空を見て笑う。

ただ今を楽しむ、平凡な学生の笑顔で空を眺める。

加賀智 成臣 > 「……そう、ですね。開放的に……
 ………。」

どんどんと声が暗くなる。
さわやかな快晴も一瞬で曇って大雨が降ってきそうな声色である。洪水になりそうだ。

そして、意を決して話題を振った。

「…………その。あの……
 ……禁書整理の時、えっと……その………
 …………すみませんでした。」

谷蜂 檻葉 > 「ん。」

加賀智がゆっくりと口を開くと顔を向け、最後まで聞いて小さくうなずいた。


「――――はい、よく言えました♪」


そして、ニパっと。

花の咲くような笑顔を見せて、そう”褒めた”。
それはまぁ、つまり子供に向けるそれなのだけれど。

「危険物は危険物。 ま、作業中に油断して顔向けた私も悪いんだけどね。
 ヒヤリハット……って、あれは事故になる前か。 お互いに悪いところはあったってことで、今後に活かしましょう?」

加賀智 成臣 > 「………は。」

ぽかんとアホのように口を開ける。
怒られるか、軽蔑されるか、そもそも記憶が飛んでいたのか、そんなことを考えていたのに…
『褒められる』というのは、流石に予想外だった。

「……あ、あの、えっと……僕、その……谷鉢さんを、危険な目に…
 それで、その…………お、怒ってたり、とかは……
 いや、してないだろうって思ってるわけでは、なくて……」

おろおろと挙動不審になりながら、目線を泳がせる。

谷蜂 檻葉 > 「そりゃまぁ、禁書庫の危険性解ってるのかー! ……とか。
 あんたは『無敵』だろうが他の人はそうじゃないんだぞー! ……とか?

 なんか、色々いうことはあるんだろうけどさ。

 ……そんな、死にそうな顔してるんだもん。反省なんて、言うまでもなくしてるんでしょ?」


加賀智君が死ぬ時って、もしかしてそういう死に方かもね。


自分よりも遥かに背の高いその顔を見上げて、そう苦笑交じりにまた笑う。

加賀智 成臣 > 「………。すみません。
 …今回は、僕が死んだ程度で済みましたけど……もしかしたら、もっと大事になってたかも知れない…んです、よね。
 ……本当に、すみません。」

深々と頭を下げる。
細くて背の高いその体が二つ折りになってしまうかのように、深く。

「……僕は最低です。
 僕なんかのせいで、人を傷付けてしまうところだった…。」

谷蜂 檻葉 > 「えっ、なにそれ加賀智君あの時死んでたの!? 大丈夫だった?!」

加賀智の告白に、被せ気味で驚く声が重なる。

「『大教主の日記』は読者選定の失神の呪いがあったけど、何か別の呪いもあった……?
 あ、加賀智君の”不死”がトリガー? その、他の子からなにか聞いてない? 変な後遺症とか無いの?」

頭を下げようとする加賀智の肩を掴んで、ゆさゆさと揺さぶる。

加賀智 成臣 > 「え、はい。……いえ、呪いのことは、関係なくて……
 いや、関係はあるんですけど……」

言いにくそうに目線を伏せて、俯く。
しかし、ぼそぼそと意を決したようにつぶやきはじめた。

「……え、と……あの本を見せて、谷蜂さんが失神して。それで、踏み台から落ちそうになって……
 頭から落ちたら不味いと思って、とっさに庇ったんですけど……
 当たり所が悪くて、肋骨が肺に刺さったみたいで……それで、1回死んでしまいました。」

ゆさゆさと揺さぶられつつ、そんなことを言う。
細い首が折れてしまいそうだ。

谷蜂 檻葉 > ドキドキとしながら、言葉を待つ。

待って。


「―――~~~~っ!!!」


カァアッとその顔が一気に朱に染まる。
同時に、加賀智の肩にミシリと力が入り――――



「―――ッシャ!!」



―――裂帛の気合とともに鋭く、しかし音の小さい威力の篭った肉弾音が加賀智の腹で炸裂する。

抱え込み飛び膝蹴り。

加賀智の腰を支点として、利き足で押しこむコンパクトにも速度のある一撃。





そのまま、檻葉はドアに駆け出して振り返らずに屋上を後にした。

ご案内:「屋上」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
加賀智 成臣 > 「えっ……あの、谷蜂さん、肩痛……」

どむんっ。
肉を叩くような音がした。……ような、というか、叩く音がした。

「…………………。」

どしゃっ、とその場に体をくの字に曲げて倒れこむ。
すごい威力だった。最近の女子は力がつよいのだなあ。
弱い内臓を刺激され、かつ水下にジャストフィットする形で膝をねじ込まれ、薄れ行く意識の中でそんなことを考えていた。

「(言わないほうが良かったかなぁ……でも、黙ってるのも嘘つくのも駄目だろうし……
  ……やっぱり言わないほうが良かったかもしれないな……)」



そんなことを考えて、加賀智の命は一旦終わっ

てない。流石にこれくらいでは死ななかった。死ねたほうが幸せだったかもしれないが。
しばらく、地面に突っ伏してケツを突き出した体勢のまま悶え苦しんでいたのは別の話。

ご案内:「屋上」から加賀智 成臣さんが去りました。