2016/09/22 のログ
獅南蒼二 > 新たな研究にはまだ着手していない。
中途で実験が頓挫している魔力生成の術式も,不完全ながら十二分の効力を発揮している。
そして何より,それを発展させるのは獅南一人では不可能だ。

「………………。」

穏やかな時間。そう言えるような時間を過ごしたのは,久しぶりだった。
だが,こんな時間が永遠に続いてほしいとは微塵も思わない。
この男にはやはり,目指すべき目標,通過点が必要だった。

獅南蒼二 > だが,目標などそう簡単に見つかるものではない。
世界を変えるなどと意気込むのも良いが,今はそんな気になれなかった。
それが一時的な心境の変化なのか,あの男と関わったことによる獅南自身の変容なのかは,まだ分からない。

「…………。」

ポケットから煙草を取り出して,手のひらで弄ぶ。
さすがに教室の目の前にあるこの場所で,火をつけることはしなかった。

ご案内:「ロビー」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > 「あぁ、いたいた」

ふらりと教室から出てきた生徒。
ようやく課題をこなしたのか、教師を探していたようだ。
軽くあくびなどしながら、教師へと近づく。

「はい、課題の結果です、っと」

烏丸が取った手段は至極簡単。

『お昼の放送担当を金で釣って、全校放送に仕込んだ暗号を相手に伝える』

人間、自分を含めた周囲の人間全員に聞こえる音には存外注意しない。
意識の盲点を突く事を主眼に置いた、言ってしまえば大雑把な回答である。

獅南蒼二 > どう考えても真面目な生徒ではないだろう貴方を,肩をすくめたまま見上げ,
それを受け取った獅南は呆れ顔ながらも,楽しげに笑った。

「前半は非常に良い発想だ,意表を突くやり方は周囲の視線も逸らしやすいだろう。
 だが,その方法には重大な欠陥がある。」

そのレポートを目の前のローテーブルに置いてから,
他のレポートから,モールス信号を使った回答を取り出して横に置く。

「第一に,暗号というのはそう簡単に伝えられるほど容易いものではない。
 第二に,“暗号を相手に伝える”という行為そのものを何らかの方法で隠蔽しない限り,情報は筒抜けになりかねん。」

どう思うね?と,相変わらず楽しげに笑いながら。

烏丸秀 > 自販機からお茶を選ぶ。
それを取りながら、教師の出したレポートを見る。
ご丁寧にモールス信号を使った生徒が居るらしい。
何年昔に生きているのやら。

「第一の回答ですけど、ボクも面倒な事は大嫌いなたちでして」

スマホを取り出し、机の上に置く。
そして見せた画面は――古典的な、ダイヤル画面。

「暗号それだけで、文章みたいな意味を含む相手に伝えようとするから面倒なんですよ。でも、まったく無意味な数列――電話番号を相手に伝えるだけなら、そんな難しい暗号はいらない」

そしてぴぽぱとダイヤルをすれば。
出てくるのはこれまた古典的なサービス……留守番電話。

「もちろん、これじゃあ盗聴し放題、防諜には不安が残る。
そこで、先生の第二の疑問への回答」

そして指で自分を指し。

「だからね、ボク、教室の後ろで寝てたでしょ。
それが、最大の防諜行為でして」

『学校でも有名なサボリ魔だし、こいつはこの授業を投げた』
その先入観こそが、彼の防諜だと。

獅南蒼二 > 獅南が抱いた感想もまったく同じものだった。エニグマとか持ってこられても困るが,モールスとは。
……しかしながら,獅南は後に,まったく言語化されていない魔力波のみで構成された“メッセージ”の有用性に,気付くことになる。
それはまた,別の話なのだが。

「メッセージそのものではなく,その在処を伝達する,か。
 確かにその方が効率は良い…留守番電話では心許ないが,応用は利くだろう。」

こちらは飲み干したコーヒーの缶をひょいと放った。
魔術を使ったのかどうか,見事にゴミ箱に収まる。
そして貴方の回答の続きを聞けば……獅南はがくっと項垂れるように視線を下げてから…

「ははははは、なるほどなぁ。」

…より一層楽しげに,笑った。

「確かにお前の言う通り,見ろ,お前を警戒していた生徒は誰も居なかった。」

並べたレポートは,もう1つの課題…つまり,それを読み取ろうとする努力をまとめたものだ。
ものの見事に誰からも完全無視されていて,貴方を注意深く見ていた生徒は誰も居なかった。

「まったく……今度からは,魔術を用いて,とでも課題に一筆入れるとするか。
 しかしお前,こんな間抜けなレポートで私を笑わせるために,今まで残っていたのか?」

烏丸秀 > 「いやはや、女の子から暗号解読されるのとか、待ってたんですけどねぇ」

へらへらと笑いながら答える。
どこまでも不真面目だが、これでもこの男、本気である。

「ん? いえね、ボク最近面白い女の子見つけまして。
その子の秘密を探る、なんというんですか……予行演習?」

さらりととんでもない事を言い出し。

獅南蒼二 > 「この場合は解読された方が成功か…まったく。」

貴方について多くを知っているわけではないが,
そのへらへらとした表情ほどにはいい加減な男ではないと,そう感じる。
……もっとも,真面目な男かと言われればそれも否だが。

「ほぉ?何だ,思いの他に女々しいことをするものだな。
 失敗が許されない大勝負なのだとしたら,それも良いだろうが…。」

貴方の言葉を表面上は,そのまま受け止めた。
けれどそれから,小さく息を吐いて…煙草をポケットにしまい込む。

「…防諜も,その逆も,いわば相手に対する不信の表れだ。
 私は女心など知りたくもないが,あまり褒められたことではないな。」

烏丸秀 > 目の前の教師は、色々と有名な男だが。
烏丸はそれに物怖じする様子もなく、いつも通りである。
一応教師なので、多少の敬意は払っているが。

「そうですかね?
ボクは相手の事を深く知りたい、という一心でして。
何せボク、魔術とかそういう方面の心得、からっきしでしてねぇ」

はぁ、と軽く溜息をついてみせる。
そういう才能が無いのを後悔した事はないが。

獅南蒼二 > 普段通りの貴方を前にして,白衣の教師も普段通りに笑う。
そして貴方の目的を聞いても,それを軽蔑することも咎めることもなかった。

「ほぉ…正面から聞けん事情でもあるのか?
 付け焼刃の魔術で諜報活動など…まるで見つけてくれと言わんばかりだな。
 私としては魔術を使うより,お前のレポート通りに“金”を使う方法を推奨するが?」

貴方の演技じみたため息を見て,小さく肩をすくめる。
それから,少し考えて…

「要は,お前の基礎はわかっているようだが…感知されないこと…それが肝要だ。
 人間の感覚,魔術的な知覚,異能による知覚,科学的な知覚…
 …それらの脅威のうち,どこまでに対応するか,それによって用いる術式は変わってくる。」

具体的なアドバイスではないが,具体的な貴方の行動指針も示されていないので仕方がない。

「……犯罪に手を染めるつもりなら,私を巻き込むなよ?」
最後にそうとだけいって,笑った。

烏丸秀 > 「いえ、ね。
たぶん、正面から聞いて聞きだせる事じゃないんですよねぇ。
あの子の歪みは……」

と、そこまで呟いてから、こほんと軽く咳払い。
あまり教師に聞かせる話でもなかった。

「ご丁寧にありがとうございます。
犯罪なんて恐ろしい事、ボクはしないのでご安心を」

そして軽く微笑むと、会釈する。
引き止められなければ、そのまま去るだろう。

獅南蒼二 > 貴方の呟きと,それからその時に見せた表情。
判断材料はそれだけで十分だった。

「……待て。」

会釈をして背を向けた貴方に,声を掛ける。

「…歪みを孕むものには確かに往々にして理由がある。
 だが,お前はなぜそれを知りたがる?その歪みを正すためか?」

貴方の答えが返らずとも,貴方が振り向きさえしなくとも,
獅南は言葉を続けるだろう。

「“理解したいだけ”なのだとしたら,張り子の裏側を無理に覗くような真似はしない方がいい。
 “正そうと思っている”のなら……共に歪む覚悟か,必ず正す力と自信を手にするまで手を出すな。」

そこまで言ってから,らしくなかった,と思い直して苦笑し,

「と,まぁ,女心なら私よりお前の方がよくわかっているか。
 ……精々,上手くやるんだな。」

烏丸秀 > 「その答えはひとつです」

軽く振り返り、教師の顔を見る。
あぁ、そういえば――

「ボクは、愛しているんですよ。歪みと、その歪みを生み出す子を」

正すなんてとんでもない、と言いながら。
烏丸は去った。

(……そういえば、あの先生の名前、なんだっけ?)

ご案内:「ロビー」から烏丸秀さんが去りました。
獅南蒼二 > 振り返った貴方の表情を見た瞬間に,
ふっと,安堵のため息が漏れた。

「……なるほど,どうやら要らぬ心配だったようだ。」

立ち去る貴方の背中を見る…それから,貴方のレポートに『見所あり。』と記入して,点数をつけた。

術式構成力 採点不能
魔術的知識 採点不能
魔術的発想 採点不能 ……等々

12点。ぶっちぎりの最低点である。

ご案内:「ロビー」から獅南蒼二さんが去りました。