2016/09/27 のログ
ご案内:「屋上」にシング・ダングルベールさんが現れました。
シング・ダングルベール > 「はあ、どうも。こっちも流石に連日連夜となると、流石に……。」
「そっちはどうですか? ああ、そりゃまあ……ハハ。」

最初はあんなにも新鮮だった携帯端末が、今ではもうあって当然のよう。
人間慣れるもんだなあとせせら笑いながら、鉄柵に肘を置く。
この一週間で駆り出されること8度。酒場の酔っ払い程度ならまだしも、相手は武器を所持した強盗犯やらテロリスト。
遺跡地帯で翼竜の確保なんてのもあった。冒険譚でも綴ろうかとたまに思う。
荒唐無稽過ぎて没を食らうのが目に見えてるか。文才ないしね、俺。

「それで、今度はどんな案件ですか?」
「空の次は海底だなんて言わないでしょ? いやあ……まさか。」

表向きは善意の協力者って立場だけど、公安・風紀に駆り出されるのはままあった。
元々いきなりこの島へ来たわりに、スムーズに転入できたのもそいつが大きい。
見返りってやつかな。俺はあんまり必要ってわけじゃなかったけど。
いつまでもおやっさんとこで世話になりっぱなしってのもね。
そんなこんなで、だいたいはこうやって受話器越しに依頼が飛んでくる。
緊急の案件があれば、そりゃもう空でも飛んでいくさ。魔法使いらしくね。

シング・ダングルベール > 「えっああ遊びに? 俺と!? どうしたんですか、過労ですか……?」
「脳にクるんでしたっけ……? あっ、すいませんジョークですよ! ジョーク!」

俺の依頼主は普段人使いが恐ろしく荒いわりに、変なところで気を遣う。
公安の人らしいけど、素性まではあまりよくわからないんだよな。事件事件でバタバタして。
まあ誘われて悪い気はしないよな。俺は参加意思を表明して通話を終える。

「……さって、こう静かな夜は久しぶりだなあ。」

故郷じゃ月夜は煌々と星が映えるものだったけど、ここじゃ地面の方が痛いほどに眩しい。
似通ってるのは、さらりと吹き抜ける風ぐらいか。
ローブがはためく感触は心が落ち着く。

シング・ダングルベール > ここから見る夜景は、島の中央だけあって文字通り一望できる。
それも、日に日にその姿を変える。
……なんて聞こえはいいけれど、頻発する事件事故でズタズタなだけ。
それでも復旧工事がはじまれば元の姿を取り戻す。まるでこの島は生き物だ。

「あー……でも、流石にあそこはまだ手付かずか。」

ネオン街の一角に、不自然に崩壊したビルの残滓。
今は見る影もないが、そいつは30mぐらいはあったはず。
異能犯罪者の確保に仕方なく……獣化の異能相手だったし……再生力すごかったし……。
動きを止めろってオーダーに、ビルごと埋めたわけなんだけど……結果的に戦意喪失。そのまま風紀委員に連れてかれた。

「まあ、誰も死ななかったから奇跡だよね。ほんと。」

ふわあとあくびをひとつ。
でも帰るにもまだ時間が勿体ない気がして。
俺は自然と、繁華街を目指した。

ご案内:「屋上」からシング・ダングルベールさんが去りました。