2016/10/01 のログ
■寄月 秋輝 >
「……教養として、ですか……」
なかなか教養としても、そんなことを覚えたりはしない気がする。
ちゃんとした神社ってすごいなと思う。
「上手いかどうかではないんですよ。
……少し、聞いていたいんです。
なのでお願いします」
そう頼み込んで、もう一度空に顔を向け、目を閉じた。
心が鎮まる。
平穏にに満たされる。
あの感覚が、もう一度欲しい。
■阿曇留以 > 「えぇ、教養。
一応、跡取りだから。
妹とどっちが後取りになるかはまだ決まってないのだけれどね~」
妹と自分。どっちが跡取りになるかは分からない。
が、妹はそんなに乗り気ではないのでおそらくは自分だろうと思っているので、それに向けて頑張っているわけで。
「んー……、そう?
それならいいのだけれど……変でもわらわないでね?」
恥ずかしそうに言いながら、今度は歌詞を置いて見ながら歌いだす。
みて歌えば、ある程度は綺麗に歌えるため。
■寄月 秋輝 >
「これって教養のうちに入るんでしょうかね。
僕は教わったるように言われた事が無いんですが」
跡取り候補とはいえ、使うかどうかわからないことを覚えるというのも大したものだ。
「笑いませんよ」
ぽつりと答え、空に顔を向けながら歌を聞く。
曲に合わせて頭を揺らし、心を鎮める。
歌の知識のない秋輝には、それが子守歌のようにも聞こえる。
少しだけ、幸せだった。
■阿曇留以 > ひとしきり歌い終え、ふぅ、と息をつく。
「と、こんなものかしらぁ~。
龍笛で吹くのが本来だから、本当はそっちも頑張らないといけないのだけれどね」
龍笛を右手でもち、かるくふりふり。
■寄月 秋輝 >
静かに聞いて、時折首を振って。
手すりの上、ぱちぱちと拍手をした。
「素晴らしいものですね」
優しくそう呟いた。
手すりの上でくるりと体を回し、内側を向く。
「なんでも出来るようにならなければいけないんですね。
でもちゃんとこなせているのがすごいというかなんというか……」
笛を見ながら呟く。
あれを練習しろと言われても、彼は出来る気がしなかった。
■阿曇留以 > 「ふふっ、ありがとう寄月くん。
結局はどれだけ練習するか、よ。
寄月くんだって刀を振るうのにたくさん練習したでしょ?
歌うのも、笛を吹くのも、同じよ~。
私の場合は器用貧乏型になることを求められてるからやってるだけだけど~」
きっと、寄月くんもやればできるわ、といってみる。
そういってから、今度は同じ曲を龍笛で吹き始める。
横笛、それもフルートのような綺麗な音ではなく、割と独特な音をだす横笛で。
それを神秘的ととるか。不可思議と取るか、理解不能ととるかは人に寄るだろう。
■寄月 秋輝 >
「そういうものでしょうか……
あまり考えたくはないですが、世の中には素質というものがあるので……」
自分の魔術の素質しかり、他の武器の素質しかり、ネゴシエート能力しかり。
人には向き不向きを越えて、出来ることと出来ないことがあると思っている。
だから出来るようになる、などとは到底思えない。
続いて流れ始めた笛の音。
今度は留以の姿を見つめながら、じっとその音に耳を傾ける。
■阿曇留以 > 笛のほうは、はっきりと分かるほど練習中といった感じだ。
何度か音を外したり、呼吸が続かなかったり。
たまに音を鳴らす事も出来ていない。
途中で吹くのを止めて、照れた顔で苦笑する。
「素質はあると思うけれど、それはプロとか、そういう人のレベルじゃないかしら~。
ある程度、少なくとも軽く人に教えられる程度なら、そんなに素質はいらないとおもうわ」
■寄月 秋輝 >
確かにこれは頑張らなければならないようだ、と思う。
素人からしても、彼女の演奏はちょっとぎこちない。
「いえ、出来るかどうかそのものが、という点でも。
どちらかというと、僕は持たざる者なので……そう感じます」
そう呟く。
『寄月秋輝』が持っていない物は、あまりに多すぎる。
■阿曇留以 > 笛をしっかり拭き、手入れをしてから箱にしまう。
横笛はカビとかを気をつけないといけないので大変。
「持たざる……もの?
っていうと……えーと……どういうことかしら?」
首をすこしかしげ、髪の毛を揺らして疑問符を浮かべる。
■寄月 秋輝 >
「最初から持ってない人間ですよ、僕は。
……本当に、何も」
ほんの少しだけ声のトーンを落とした。
「僕にあったのは、魔術の資質と母だけでした。
だからわかるんです。
持ってない人間は、それを取り返すことは出来ないんですよ」
もう一度、手すりの上でくるりと回って、外を向いた。
その静かな表情は見えるだろうか。
■阿曇留以 > そう、なのだろうかと首を傾げる。
それを理解できないのは、自分が持っている人間だから、なのか。
いや、それでも、と首を振り。
「……ごめんね、私はそうは思わないわ。
『やればできる』とか『根性がたりない~』なんていうつもりは全然ないのだけれど。
でも、練習して時間をかければある程度のことはできると思うの。
その『ある程度』っていうランクも、他の人と比べると雲泥の差がでちゃうけれど。
更にその先、プロとか有名になろうとか、そういうレベルになってくると、運も時間も素質もなにもかもがかかってくるとはおもうけれど……」
自分はそう思う、と言葉を告げる。
■寄月 秋輝 >
「まず、治癒術が使えません」
一つ目、明確な弱点。
「次に、体質のせいで属性を伴う魔術が一切使えません」
二つ目、体質による弱点。
「最後に、家族を知りません」
すとん、と着地する。
ベンチからは離れたところ。
「剣も、楽器も、歌も踊りも、きっと練習すれば出来るでしょう。
けれどどうしても出来ないことはある。
知らなくて、どうしようもないことがある。
……僕も、欲しかったものがたくさんあるんです。
けれど、無いものをどうやったって伸ばすことは出来ないんです」
■阿曇留以 > 「んぅ……」
困った顔をしながら呻く。
治癒術は、現代の医療である程度肩代わりはできるはずだ。
じゃあその他二つはときかれると、それの解決案は思い浮かばず。
「……うん、ごめんなさい。
そういうの、全然思い浮かばなくて。
たしかにそういうのは……素質に関わってくるかもしれないわね」
■寄月 秋輝 >
「……そういう問題じゃないのはわかっているんですけれど」
頭を押さえて、小さく息を吐く。
ひどく頭が痛む。
こんなことをしゃべってしまう自分が憎い。
なのに、何故か語らずにいられない。
「……やれば少しは出来るなんてものは、それ自体が素質ですよ。
だからそれを持っている人は……きっと誇るべきなんです。
器用貧乏とは、それをもらえた幅が広い人のことだと思います」
言葉が勝手に紡がれる。
こんな話をしている自分を殴りたい。
■阿曇留以 > 持たない人と、持つ人。
例えば足の無い人に、走れ、といってもそれは無理な話で。
今だからこそ義足もあるし、この常世島なら足を生やす事もできるのかもしれないが。
そして彼の出来ないことは、そういう”何かで補うことが出来ない”という世界のもの……なのだろうか。
そして留以はそういう世界に属すことはなく、安寧と平和を享受する世界でしか生きておらず。
「――そう、ね。
うん、そういう意味なら……私が違ってたわ。
ありがとう、寄月くん。
器用貧乏って、誇っていいのかしら?」
自分なりに彼の言葉を解釈し、飲み込み、理解し。
ならば、自分の器用貧乏は誇れるだろうと思い。
ちょっとだけ笑顔で、しかし首をかしげて問う。
■寄月 秋輝 >
「……いえ……」
違う、きっとそれは『八雲秋輝』の持つ劣等感、負の遺産が出した間違いだ。
だからそれだけは否定して。
「……誇るべきものだと思います。
素質、武器、家族、楽器、環境……
あなたは数多の祝福を受けてきた。
そして何より、それを伸ばす努力が出来る『素質』も。
留以さんは、それらを持っている」
悲しげな笑顔を浮かべて、そう呟いた。
全面的な肯定だ。
あまりに眩しくて、目がくらみそうなほどに。
彼女が美しかった。
■阿曇留以 > 「んっ。
器用貧乏を誇れ、って言われたのは初めてだけれど~。
ふふっ、そういう考えも出来るわよね~」
嬉しそうにしながら笑い。
「でも、素質がないことにもやっていかなきゃね~。
なにに素質がないかわからないけれど~。
じゃないと、生き残れないもの~」
退魔師であるがゆえに。
非力な人間が、自分より強いものとたたかうために。
もう、鬼と戦ったときのように、運に頼らないですむように。
■寄月 秋輝 >
「出来ることは全て素質です。
素質があるから、練習して伸ばせるんです。
戦いに生き残るのは、素質のフル稼働の結果ですよ」
たとえ敗北しようとも、素質を全力で起こせれば生き残れるものだ。
自身が何度負けても、今日まで生き延びたように。
そして小さく息を吐き出して。
「……居なくならないでくださいね」
呟いた。
■阿曇留以 > 「む~、そうかしらぁ……。
じゃあ……どうすればいいかしら。
出来ないことをできるようにする……のは結局素質の問題になっちゃうのよね。
まほう…にてをつけてみればいいかしら……」
うむむ、とうなり、かんがえ。
考えていたために呟きに気付かず。
「……あら?
寄月くん、いまなにかいった?」
と首を傾げてみる。
■寄月 秋輝 >
「魔術符くらいなら作りますよ。
霊術の札と一緒に使えば、それなりに効果的じゃないでしょうか」
魔術と霊術、巫術は質がかなり違う。
両方扱える身としては、その差を如実に感じるものだ。
一瞬目を逸らし。
目を閉じた。
「……居なくならないでください。
僕はもう、自分の手の届かない時に、大切なものを失いたくはないんです」
■阿曇留以 > 「まじゅつふ……。うーん……」
なんせ魔術の魔もわかっていない。
ちょっと難しそうな顔で悩みつつ。
「ふふっ、大丈夫よ~。
これでもちゃんと生き残る術は考えてるんだから。
心配してくれてありがとうね、寄月くん」
■寄月 秋輝 >
「霊術符と似たようなものですよ。本当に」
少しの焦燥感。
この人はきっと、何もわかっていない。
いや、違う。
(……生きるか死ぬかの瀬戸際なんて、普通の人間が見るものじゃないか……)
それを一般人に理解させないために、自分たちが居るのだ。
命を賭して平和を紡ぐための礎。
先人たちが、その血と汗と命で作り上げた、平和という道を残すために。
「……そろそろ失礼します。
ありがとうございます、留以さん。
ではまた」
手すりの上に立ち、ふわりと浮く。
去り際、ひらりと手を振った。
小さな笑顔と共に。
■阿曇留以 > そう、留以には分からないだろう。
いくら退魔師であっても。
その心構えは教えられても、それを自覚するのは死が目の前に来たときだけで、そのときには全て終わっているのだから。
留以が背負った鬼のトラウマも、それは所詮、人が背負える程度のものでしかない。
「ええ、またね寄月くん。
今度はどこか一緒に遊びに行きましょうね~」
微笑む寄月に、同じく笑みを返して手を振る。
ご案内:「屋上」から寄月 秋輝さんが去りました。
■阿曇留以 > 去っていく寄月を見送ると、しばらくして歌の練習を始める。
「オーラーロ、オールーロォ、ターアーローラ――」
その歌声は、しばらく聞こえ続けていた。
ご案内:「屋上」から阿曇留以さんが去りました。