2016/10/05 のログ
クロノ > (ミルクコーヒーをちびちび味わいつつ、今日一日の業務日誌にペンを走らせ、一日の記憶を記録していく。ロボットなんだし、電脳の中で作成したテキストファイルを机上のプリンターで印刷することも出来るんだけど、何故か男の子はいつも、こうして鉛筆でいちいち手書きで文字を綴るという人間臭い機械だった。)

……──── 。
(日誌を書いて、コーヒー飲んで、一段落したところでふっと、くるりと回した椅子。何とはなしにぼんやりと眺めるのは、冷たい窓ガラスの向こう、真っ黒な夜空。)

クロノ > (ガラスの眼差しで、ガラス越しに見つめる夜空に浮かぶ星座も、いつしか夏から秋のそれへと変わっている。音もなく、ただ静かに揺らぎ煌めく光の点をぼんやりと見つめる男の子がこうして過ごす季節は、果たしてこれで何度目だろうか。)

……あと何回、この空を見られるだろう…なんてね。
(自分は、星空を観察するために造られたロボットではないので、もちろん毎日しっかりと観測をしている訳ではないけれども。見た目相応の、少年の人格を模して組まれたAIの、人工の魂は不相応にも時々こうして妙にロマンチックな考え事の真似事をする。)

クロノ > (自分の仕事場である保健室の、教卓に並ぶ書籍も、古今東西様々な医学書や薬学、応急処置なんかの本に紛れて…男の子が持ち込んだ以外の、他の教諭が持ってきた本も色々。最近は、こういう仕事の合間のスキマ時間に、同僚たる他の教諭が持ち込んだそれらの本を拝借して読むのも日課のひとつになりつつあった。)

 ……────んーっと。
(ちょっとインテリな感じのサイエンス誌や写真誌、新進気鋭の売れっ子作家の新作小説、そしてDIYやらファッションなんかの趣味雑誌、マンガ雑誌。…もはや自宅の本棚並に好き放題なんでもアリ、という有り様で机の上の本棚がちょっとずつ侵略されていく。)

クロノ > (そんな、養護教諭持ち寄りの共有書架の中にももちろん、この男の子型ロボットが持ってきた本も混じっている訳だけれども。それが何かと言えば、年頃の男の子よろしく読み終わって一周古くなった少年漫画の雑誌であったり、日々のお手製お弁当の参考にしているレシピ本であったり、といったところ。他の養護教諭の誰かがそれを読んでいるかは分からないけど。)

 ……──────。
(ずずず、とミルクコーヒー味わいつつ手に取ってみたのは季節ひとつ分古くなったファッション誌。全身鋼鉄ボディで衣類を着ない男の子がこういう本を読んでいる光景はもはや意味不明だけど、男の子だって、機械とはいえ男の子だし、多少なりともカッコイイものとか、イケてるファッションに興味が無いわけではない…らしい。)

クロノ > (“この夏のトレンドアイテムはこれで決まり!”とかすっかり季節外れになった夏号の特集ページをぼーっと眺めつつ、その中のいくつかによく似た服装やアクセサリーを、思い返してみれば自分の周りでも見たような気がする。)

…… …んー。僕がこれ着てもなー。
(イケメンのモデルがお洒落ポーズでキメているからサマになっているのであって、ゴツくて重量感たっぷりのザ☆ロボット、な男の子ではそもそも袖が通りそうもない。好きな服と似合う服は違う、とはよく言ったもので、良くも悪くも、男の子には白衣と作業着が一番しっくり来る、というのが実情だった。悲しきかな現実の厳しさ。)

クロノ > (ファッション雑誌で宵のちょっとした暇を楽しんで、コーヒーを飲み終えた男の子は机上をぱぱっと整理整頓し、保健室の掃除をする。小さな流し台でマイカップをさっと洗って、リネン類や仕事の小道具を整頓したら、明日の勤務の準備は完了。とりあえず当直当番の夜が明けるまで、また読書の時間はしばらく続く。)
ご案内:「保健室」からクロノさんが去りました。
ご案内:「ロビー」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > いつもと何ら変わりのない授業の終わり,いつもと何ら変わりのない白衣の男。
その授業もまた,いつもと何ら変わりなく難解なものだった。

“魔術を用いて金属球を破壊すること”

与えられたのは,たったこれだけの課題文と,直径10cmの鉄球。
彼の演習形式の授業は,いつもこうだった。

獅南蒼二 > 攻撃系の魔術も含めて一切の制限はなく,全ては生徒に任せられている。
炎で融解させる者もいれば,物理的衝撃を試みる者,
温度操作による破壊を目指す者や,物質の変換と再構成という無駄に高度な術式を用いた者もいた。

「………………。」

その1つ1つ,レポートに記された本人らの記録と,記録術式により記録された生徒1人1人の魔力操作の履歴。
それらを眺めながら,獅南は静かに缶コーヒーを飲んでいた。

獅南蒼二 > 普段と,何一つ変わらないこの男。
だが,その普段通りの姿はあまりにも異様に映るだろう。
あれほど異能を嫌い,異能者を嫌っていたこの魔術学者が,
一切の例外なく異能者を授業に受け入れることを決めたのだ。

ネットワーク上で閲覧できる,彼の担当する授業についての備考欄に,

『受講者については,一切の制限を解除する。』

そんな言葉が追記された。
もっとも,その言葉の真意を聞き出そうとする者も今のところは現れておらず,
その言葉に誘われた新たな受講者も,今はまだほとんどいない。