2016/10/17 のログ
ご案内:「保健室」に綾瀬音音さんが現れました。
綾瀬音音 > (目が覚めれば、知らない天井だった。
思わず慌てて身体を起こすと、世界が軽く回った。

ベッドに手をついて身体を支え、それで、ああ、ここは学校の保健室か、と思い至る。
人の気配はない。
少しの間目を閉じていつの間にか早鐘を打っていた心臓と早まっていた呼気を抑えるようにしてから、サイドテーブルに視線を向けた。
そこには丁寧な字で、
立ち上がった所で倒れて運ばれたということ。
ただの貧血かなにかだと思うから、確りと食べて確りと寝なさい、と言うこと。
母子手帳を見るとまだ安定期でも無いのだから、無理は厳禁だと言うこと。
自分は席をはずすが、戻るなら自由に戻っていいということ。
そんなことが付箋紙に書かれていた)

……――。
(書かれていることの全て、守っていない)

綾瀬音音 > (“あれから”眠りは酷く浅かったし、吐き気も酷い時が多く、食事もあまり取れていなかった。
そんな状況で無理や無茶もしているし、辛いと思ってもいつもどおりに学校には通ってきていた。
恐怖に怯えるのではなく“日常にしがみ付くように”生活しているのだ。
そうでもしなければ、気が狂いそうになってしまう)

――あー、あ

(自分も新しい命も顧みないような行為なのは解っているのだが、
どうしてもそれを止められない。
現実逃避なのは百も承知で、それを続けている。
現実と向き合う勇気はない。

自分が一体“何であるのか”なんて、もっと考えたくはない。

良いじゃないか。
好きな人に愛される何処にでもいるような女の子で、
もうすぐ結婚する予定で、
ちょっと頑張って来年の春には卒業して、
それからもう少し先にはお腹の子を産んで――。









そんなに我儘なことを望んでいるわけではないのに、
何で世界はこんなにも優しくないのだろう)

綾瀬音音 > (急な吐き気に襲われて、思わずうずくまる。
流石にここで戻してしまう訳にはいかない。
何やら酸っぱいものを飲み下すのはいつの間にか慣れた行為で、
思った以上にそれはあっさりと出来ることが出来た。

暫くそのままの体勢でやり過ごし、ふと腕時計を見る。
午後の授業はとっくに始まっている。

慎重に身体を起こし、ベッドの付箋にありがとうございました、と書き足してから、
ベッドから足を下ろして探るようにローファーを履く。

もう少し寝ていたかったが、今受けてる予定だった講義の教師は自分に対して風当たりが強い。
――というか、彼氏持ちの女子に対する風当たりが強くて有名だ。
変な理由で単位を貰えなかったら堪ったものではない。



返さなければならないメールには、返信できていない。
本当に日常だと思うのならばあっさりと出来るはずのことは、すこぶる努力が必要で。
それでも、縋るように、“日常”と言う名の仮初の世界に埋もれることを望んでいた)

ご案内:「保健室」から綾瀬音音さんが去りました。