2017/04/25 のログ
■楊柳一見 > 左端のやつを箸で掴み上げる。
そうしても崩れないように、しっかり握り固められていた。
だって食べようとしてポロッと行かれたら興醒めじゃない?
そんな所にばかり掛ける労力だけは一人前。
「うぅん、磯の風味と砂糖醤油のハーモニーがたまりませんなぁ」
おかかに舌鼓を打って、ますます顔の硬度がダダ下がった。
どうでもいいがなぜいちいちレポートするのか。
ついでにこれは自画自賛に当たるんじゃないのか。
…まあ幸い辺りに人影はないので、恥をかき捨てるには問題ないだろう。
腹が一杯になって正気に戻れば多少の慙愧の念も芽生えようが。
さしあたって刹那的極まる少女にとって、そんなものは些事中の些事であった。
「やぁん、塩昆布超おいし★」
……本当、後で死ぬほど後悔するんだろう。
何がやぁんだ。
■楊柳一見 > 最後の締めに、紫蘇漬けの梅が入ったやつをいただく。
酸味に思わず目も口もきゅっと閉まる。
しかし白米のまろい香味が、それを後からふんわり包んでくれる。
「ああ…ヤバいよ……最強だよこの組み合わせ…」
菩薩の来迎でも見たのかって具合の表情で呟き、名残を惜しむようにもしゃもしゃと食べ終わる。
「いやー、満足満足」
ペットボトルのお茶の残りも飲み干して、ほっと一息。
うどんのおつゆは――インスタントだし、食堂の流しにでも捨てちまおうか。
空になったランチボックスを藤色のクロスで包み、空になったペットボトルを、
「よっと」
近場のくず籠へ投げた。こーんと間の抜けた金属音。
縁に当たったそれは、地面に物悲しげに転がった。
「……チッ」
またケチが付いた。そんな舌打ち。
■楊柳一見 > 片手にランチボックス。もう片手にはおつゆ入りカップ。
別にどっちかをベンチに置けば済む話なんだけど――
「……めんどいし」
アタシゃ知りません、てなばかりに視線を外し、階下に続く階段をつったか降りて行く。
無人の屋上に転がるボトルは、風になぶられ右往左往と惑うのだろう。
誰かがその手を伸べぬ限りは――。
ご案内:「屋上」から楊柳一見さんが去りました。