2017/07/20 のログ
ご案内:「ロビー」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 夏期休業に入る直前の、教室棟。放課後のロビー。
試験に根を詰め、暑さで体力を削られながらも、試験期間を走り抜けた、とある女子生徒は。
「………。」
ロビーの机に突っ伏していた。
試験も終わったし、今週末には演奏会のリハーサルが控えているので部室棟に行きたいのだが…
燃え尽きていて、すぐに動き出すのがしんどいようだ。
ご案内:「ロビー」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 一般的に試験で苦しむのは生徒だと思われがちだが,試験期間に消耗するのは生徒ばかりではない。
その試験内容を考案し,吟味して形式を整え,採点や評価を行う教員の側にも多大なる負担を強いる。
だがどうやら,この男にとってはあまり関係の無いことだったようだ。
この男は試験があろうと無かろうと成績を付ける時期だろうと長期休業だろうと,
自己の魔術学研究によって常に疲労の極みにあるようなものなのだから。
「…………ん?」
普段通りにロビーの机でレポートでも眺めようかと思ったところ,先客の姿が目に入る。
良く知る生徒だが……獅南は声をかけようとしなかった。
寝ているのなら起こす必要は無いし,起きているのなら勝手に気付くだろう。
そんな風に考えて,特に気配を消すことは無く歩み寄り,貴女の向かい側,斜めの位置に腰を下ろす。
■美澄 蘭 > (…誰かいる…?)
気力に乏しい中、人の気配を、足音を感じ取る。
(…あんまりだらしない姿勢じゃ駄目よね…)
「…ん…」
少しばかり苦しそうな声を零しながら、身体を起こしかけて…
「………!」
視界に入ったのは、去年まで履修していた講義を担当していた教師。
びくっと、姿勢を正す。
「…し、獅南先生、お久しぶりです…!」
そこから、机に頭をぶつけそうな勢いで、バネ仕掛けめいたお辞儀をした。
■獅南蒼二 > 貴女が寝ていることを咎めるつもりなどまったく無い。
だからこそ,慌てて姿勢を正してお辞儀をする貴女に,獅南は苦笑を向けた。
「……起こしてしまったか,すまんな。」
そうとだけ言って,視線は手元のレポート用紙へ向けられる。
魔術学応用論Ⅰと,もしかしたら貴女にも覚えのある授業かもしれない。
ただ,読み終わって机に置かれているレポートを見る限り,大筋はともかく,内容は毎年変化しているようだ。
「そのまま寝ていても構わんが,私としては部屋に帰って寝ることを勧めたいところだな。
……私が言えたことではないが,ね。」
…このソファでの居眠り常習者は語る。
■美澄 蘭 > 「いえ、寝てたんじゃないんです…ちょっと動く気力が湧かなかっただけで。
試験が終わってすぐ同好会の演奏会があるものですから…練習しなきゃって思うんですけど、ちょっと参っちゃってて」
若さのおかげもあってか、苦笑いに疲れた感こそ出ているものの、顔色などでいえば目の前の教師よりよほど健康的に見えるだろう(もっとも、蘭は元々血の気の薄い肌色をしているのだが)。
「…ちょっと水分補給をして、気力が戻ったら部室棟に行って…
………でも、今日は軽めの練習で流した方が良さそうですね。忠告、ありがとうございます」
そう言って、今度は自然な動きで軽く頭を下げてから立ち上がると、自販機で果物のジュースを購入する。
疲れているので甘い方がいい、という判断だろう。
■獅南蒼二 > 「なるほど,原因は試験か…。」
小さくそうとだけ呟きながら笑って,貴女の言葉に小さく頷く。
努力家であることは知っていたし,そう意外な事でもなかった。
同時に,体調管理を二の次にするような歪な努力の形を咎めるような獅南でもない。
「…ん,気が済むまでやっても構わんよ。
演奏をするのは私ではない。私の言うことなど,無責任な他者の言葉に過ぎない。」
更なる努力…というよりも酷使を,この教師は止めなかった。
自分なら恐らく,気のすむまでやるだろう,そう思ったからだろうか。
■美澄 蘭 > 「去年の秋頃から異能の発現が分かって…そっちの方の試験が増えたり、あと、大学受験対策中心に時間割を切り替えたりして、色々変わったことも多かったので…ちょっと大変で。
家族が用事で島に来る時に結構助けられたから、今学期は何とか乗り切れたんだと思います…家のこととか、気をつけないと疎かになりがちでしたから」
「後期はもうちょっと何とかなると良いんですけど」と言って、苦笑いをしながら、自分が座っていた位置に戻る。
目の前の教師と違って、一応、努力の形のバランスを取ることをまだ諦めていないらしかった。
「…まあ、そうですけどね…リハーサル前に体調崩しちゃったら本末転倒ですし。
まずはコンディションを整えてこその、本番のパフォーマンスだと思うので」
そして、音楽については勉強よりもバランス感覚が取れるらしい。
ジュースの蓋を開けて、数口飲む。
「………あ、そうだ。
去年の夏頃、先生の研究室でご迷惑をおかけしたことがあったと思うんですけど…覚えてますか?」
それから、何かを思い出したように、獅南の顔を真っすぐ見た。
気持ち、緊張に表情を硬くして。
■獅南蒼二 > 自分の歩む道が人として正道でないことはとうの昔に知っている。
己を改める気はさらさら無いが,他者にまでそれを強要しようとも思わなかった。
……尤も,授業の中ではまた別の話であり,獅南の授業を履修した生徒は多大なる努力を要求される。
「原因がはっきりしているのなら何の問題も無いだろう。
もっとも,状況を変えたいと思うのなら何らかの手立てを見出す必要はあるだろうな。
自分自身か,環境か,いずれかを変えなければ延々と同じことを繰り返すことになる。」
獅南の言葉はいつも通りに実戦的で,本質だけを削り取るかのようだった。
自分自身にそれを適用しないのは,変化を望んでいないからだろう。
「…………あぁ,そう言えばそんなこともあったな。
忘れていたくらいだ,迷惑などとは思ってもみなかったが,ね。」
本当に忘れていたようで,その間は自然だった。
■美澄 蘭 > 去年まで獅南の授業を履修していた蘭は、苦労こそしながらも、それなりに楽しみを見出しながらそれをこなしていた。
それは、彼女が元々持っている知力や魔術の資質もさることながら、獅南の授業で求められる論理構成力、発想力などが他の場面でも活きることを感じ取れる、ラディカルな聡明さもあってのことだろう。
「そうですね…成績を確認しないと何とも言えないですけど、異能関係は前期で大分感覚が掴めてきたので、後期はもう少し要領よくやれるかな、と思います。
…夏休みの間も復習はそれなりにやって、忘れないようにしないといけないですけど、普通の期間に並行するよりはよっぽど楽ですから」
変化の糸口くらいは手元にあるようで、表情に暗さはない。
…そして、去年の出来事について、獅南が鷹揚な反応を返せば…少しだけ困ったように笑い。
「…多分、あれも異能だったんです。
あの時は先生に突き放されたような言い方をされて、ちょっとびっくりしちゃいましたけど…今は色々納得出来ました。
…でも、あの紙の束の整理、大変だったと思うんです…すみませんでした」
気負わぬ声色でそう言って、改めて、少し深めに頭を下げる。
■獅南蒼二 > 「……それは何よりだ。お前の努力と研鑽に期待しよう。」
現時点では貴女は授業を履修している生徒ではない。
であれば,獅南の助言も限定的なものになるだろう。
もっとも貴女が困っている素振りを見せれば,獅南も導くように話すのだろうが…。
「私も,色々と思うところはあってな……。」
獅南自身の,異能への認識そのものは大きく変化してはいない。
だが,獅南の異能者への対応が180度変わった事は事実であり,その噂を貴女も聞いているかもしれない。
「あぁ,手作業で元に戻すのなら面倒だったかもしれんがね。
記憶に残っていないということは,恐らくその時の私は魔術で元に戻したのだろう。」