2017/07/21 のログ
■美澄 蘭 > 「…ありがとうございます。出来るところまで、頑張ってみたいと思います」
限定的とはいえ、教師に応援されることを素直に受け取れるのは、優等生らしいところだろうか。
抑制された、はにかみ気味の笑みを零して、頭を下げる。
…そして、魔術で上手いこと元に戻したらしい獅南の話を聞いて、目を丸くし、大きく瞬かせて。
「…凄い…あれだけの紙の束、綺麗に元通りですか?まとまりまで?」
それから、感嘆の深い息を吐く。
「…その辺り、掘り下げたら楽しそうですよね…異能関係落ち着いたらまた魔術の勉強も本格的にやろうかなぁ、受験勉強に面白味がないとは言いませんけど、それだけだと息が詰まりそうだし」
割と誘惑に弱いタイプというか、好奇心で駆動するタイプらしい。
「………でも、思うところって…どういうことですか?」
蘭は獅南の特別授業に興味を持ったことがないので、「異能者嫌い・異能嫌い」という、かつて彼が持っていた負の側面への関心が薄かった。
獅南にそう尋ねる蘭の邪気のなさは、逆に性質が悪いとも取れるかもしれない。
■獅南蒼二 > 「完全を求めれば面倒だろうが,重要なものは限られているからな。
…時間操作でも使えば,完全に復元することも可能だろうが。」
獅南が何かを書く時,殆どは記録として残すことを意図してはいない。
実際にあの紙束の殆どは廃棄するものだったのだろう。
そして重要な部分は,すでに頭の中に入っていたはずだ。
「優先順位をどうつけるか,それはお前が考えるべきことだろう。
すべてに手を出してすべてに半端な理解度では,何の意味もない。」
苦笑を浮かべつつも,貴女の好奇心の向かう先を否定しない。
それが努力の原動力になっていることは,理解していた。
「……そうだな。」
小さく呟いて,獅南は立ち上がる。
「……後天的,かつ,無差別に与えられる力は,人にとって害にしかならないのではないか。
今はそうとばかりも思っていないが,私は“異能”をもっていないのでな。」
レポートの束をバインダーに挟み,
「さて,では次の授業へ行かせてもらおう。
…機会があれば,また授業ででも顔を合わせるか。」
獅南は貴女に背を向けて,演習室の方へと歩いて行った。
異能を持たない人間と,異能をもつ人間。徐々に理解は進んでいるとはいえ,いまだに両者の間には溝がある。
獅南は異能者を受け入れたとはいえ,その全てを無条件に受け入れたわけではない。
以前にも増して魔術学の研究に没頭している背景には“異能”を受け入れる土壌として,同時に対抗する武器としての“魔術”という側面が無いとは言えなかった。
獅南は異能者に対して好意的なのではなく,異能を持たぬ者に好意的なのでもなく,
単に努力と研鑽を怠らぬ者に好意的であるのみである。
ご案内:「ロビー」から獅南蒼二さんが去りました。
■美澄 蘭 > 「…あの中から、重要なものを絞り込めるって…それはそれで凄くないですか…?」
頭の中がどれほど魔術学でめいっぱいで、かつ整頓されているのだろう。
想像もつかない境地に、蘭はただただ唖然とするしかなかった。
「「橋渡し役」を引き受けるなら、ジェネラリストにも意味はあると思いますけど…
………まずは、「橋渡し役」の土台作りですかね。今年中にある程度めどがつけばいいんですけど…」
既に、基本となる科目は受験対策の演習授業中心にしている。
同好会の予定がほぼ空く8月上旬には、模擬試験を受ける計画も立てていた。
…そして、受験自体は来年度を予定している。
…しかし、獅南の異能についての考え方を聞けば…
「………「力」は…他の人に働きかけるなら、「責任」がついてきますもんね。
異能でも、魔術でも、それ以外でも同じですけど…対策を立てる、難しさの問題はありますし」
異能に目覚めてはいるが、それを自分の「資源」とすることを重視していない蘭は、「異能者」としての自覚はあるが、アイデンティティにはしていないところがあった。
妙なところで、客観的である。
「…あ、お疲れ様です…
はい、機会があれば、是非!」
立ち上がった獅南を、軽く頭を下げて見送った。
■美澄 蘭 > 「………よし、と」
ジュースを飲みきり、軽く伸びをしてから立ち上がる。
空いたジュースの容器をゴミ箱に入れてから、蘭は部室棟に向かって歩いていった。
何を目指すにしろ、異能、魔術、それ以外、どんな「力」を自らの「資源」とするにしろ。
自分で胸を張るためには、積み重ねるしかないのだから。
ご案内:「ロビー」から美澄 蘭さんが去りました。