2017/10/09 のログ
■暁 名無 > 刺激と言えば、キナ臭い方面には近頃とんと縁が無い。
まあ教員という立場上、すき好んで落第街やその近辺には近づいていないし、そもそも学校に缶詰の方が多い。
まあ戦闘力は素人に産毛が生えた程度なので、縁が無いに越したことはないけども……。
「……やっぱりこう、ソーシャルゲームってのは偉大だよな。
節度さえ守れれば。自重さえきけば。」
先日、パチンコにも行ってみたがどうにも騒々しくて落ち着かなかった。
日常の中に非日常を求めるのは、そう簡単ではないのかもしれない。
■暁 名無 > 気が付けばすっかり日も傾いて、ぼんやりと月が浮かんでいる。
数日前ほどの輝きも、円さも無いが、それでも秋空に浮かぶ月は妙に映えている気がした。
「……まあ、満月の日はうかつに月見とか出来ねえけど。」
また魔力が過剰供給されてもかなわない。
面白おかしく発散する方法を逐一考えるのは骨だから。
昨日みたいな、可哀想な子羊が体よくあらわれたりもしないだろうし。
「ちゃんと学んどいたほうが良いのかねえ。」
新しい煙草を咥え、火を点しながらぼんやり、月へと投げかける様に呟く。
ご案内:「屋上」に咲月 美弥さんが現れました。
■咲月 美弥 > 深夜の校内の階段を登っていく音が
静かに響き始めた。
その音は少しゆっくり……普通に歩くよりは遅めの速さで
幾分かの時間をかけて屋上の扉へとたどり着く。
――どれくらい眠っていたんだろう。
今回の眠りは随分と長くって
数か月単位で眠っていたような気さえする。
こうして月の光を浴びに来るのも随分と久しぶり。
かなり魔に寄っていた為に体すら動かすのも久しぶりで
そのせいか実は歩いている感覚すら少々乖離気味。
当然先客がいるなど気が付くどころか思いもせず……
「……少し肌寒いわね」
無防備に伸びをすると同時に辺りに甘い香りが広がっていく。
無意識に放つ魔性の香りの事を意識外に置いてしまうほど
かんっぜんに油断しきっていて。
……ついでに言うと伸びをした際に
豊かな体のラインが強調されるように見えてしまっていても
それも気が付いていなかったり。
■暁 名無 > ぼーっと月を眺めているうちに、気付けば昼間の仕事の疲れが祟ったかこっくりこっくりと舟を漕いでいたらしい。
屋上のフェンスに背を預け、胡坐をかくようにして居眠りしていた俺は、ふと人の声が聞こえた気がして目を覚ました。
「……ふわ……ん、寝ちまってたか。
んだよ、誰か来てんなら起こしてくれりゃ良いの……に?」
何だ、この匂い。
当たりに漂う甘い香りに首をかしげつつ、その出元を探って辺りを見回せば。
「ほう。」
何のご褒美か悩殺ポーズめいた艶姿の女生徒が一人。
……どっかで見たことがある気がするけど、はて何処かで会ったろうか。
まあいい、たまには居眠りもしてみるもんだ。眼福眼福。
■咲月 美弥 > 「ん、んんー……ひゃ!?」
伸びている瞬間に聞こえた声にビクッっと大げさな程に肩を震わせた。
本人的にはいつも通りの感覚なのだから誰かいたら気が付いている筈。
だからこそ余計に驚いてしまって。
見ていて面白いほど動揺した様子で辺りを見渡すと貴方を見つけ
咄嗟に一歩後ずさる。一緒に香りを制御。
見たところ……あてられてはいないみたい。
良かったと少しだけほっとして胸を撫で下ろして……
本人的には内心でも実際に胸に手を当ててため息をついているところを見ると
本当に驚いたというのが相手にも伝わるかもしれない。
■暁 名無 > 「おう、悪い悪い。驚かせちまったな。」
実際居眠りをしていたところに忽然と現れられた此方の方が驚いてるのだが。
まあ、そこは目に優しい光景を披露してくれたことで帳消しで、そうなるとこっちの非が残る。
そんなわけで、素直に謝っておく俺だった。
「そんな警戒しなくても良いぜ、別に取って食うわけじゃねえ。」
改めて目の前の少女を観察する。
均整のとれた、というよりはやや豊かさに傾いた体躯。
そしてこちらに気付いたと同時に薄れた匂い。
……そして今の時間帯と、ははーん、見えてきた。
「ああ、安心してくれ。
職業柄な、そういうのにはちょっと抵抗力があるんだよ。
……楽にしてくれて良いぜ。」
既視感はひとまず脇に置いておこう。
俺はその場に腰を下ろしたまま、ひらひらと手を振って笑みを浮かべる。
■咲月 美弥 > 「ぁー……えっと、こんばんは、『せんせ』
こんな夜にこんな所で奇遇ですね?」
咄嗟に生徒を取り繕うけれど
正直今の状態でちゃんと取り繕えたか自信が無く。
続く言葉にはぁ…と一つため息をつく。
ああ、やっぱり取り繕えてない。
「……ちょっと怖いから抑え気味にさせてもらいますね。
それにしても気が付かなかったり隠しもできなかったり
本当私どれだけ寝てたんでしょうね。」
半分独り言のような言葉を漏らしながら少し離れたベンチに腰掛ける。
足を組んでしまうのは無意識の癖のようなもので……
とは言え今夜は風もそんなに強くはない。
遮るものの無い子の屋上であれば声も十分届くはず。
「本当、運がいいのか悪いのかわかりませんね」
そうしてやっと少しだけ普段の自分を取り戻したように
艶のある微笑みを浮かべて貴方に言葉を投げかけた。
■暁 名無 > 「ああ、こんばんはだ。
まあ寝ぼけてたんならお互い様だ、俺もここで転寝してたわけだしな。」
そう答えると唐突に欠伸が込み上げてきた。
しかし寝直すというわけにもいかない。フェンスとコンクリの床じゃ布団にしては固すぎる。
「お前さん、夜魔の類かい。
それとも夜魔憑きか、まあどっちでも良いけどもさ。
どうせ話をするなら、隣行っても良いか?」
相手の正体が俺の予想通りなら、ある程度の対策は講じれる。
それに、地べたに座りっぱなしだとケツが痛い。
数時間転寝していたのだからそろそろ限界というものだ。
■咲月 美弥 > 「まったく気が付きませんでした。
こんな所で寝ていてドアに鍵かけられても知りませんよ?
特に最近は夜は冷えるんですから……」
夢魔らしくもない事を口にしながら少しだけ眉を顰める。
本心でそう思って心配しているからこそ、すこしだけ困ったような表情になってしまう。
……それほど関りがあるわけでもないけれど。
「ふふ……想像にお任せするという事で如何でしょう?
月に誘われるには十分な理由ですもの。
こんなにもきれいなんですから」
彼女自身俗にいう夢魔……サキュバスや
それに類するものとして扱われる存在。
人にとってはある意味天敵であるともいえるのだから……
明言は流石に避けるけれど大まか相手は把握している様子。
変に誤魔化して不信感を持たれるよりはやんわりと肯定する方が良いかもしれない。
「……は?」
……そんな事を考えていたら相手から隣に座ってよいかと言う提案に
目を白黒させた。
魅了の香りは理性どころか意識を奪う事もあるようなもので
彼女のそれはかなり強い部類に入る。
それを間近で嗅いでしまえばどうなるかと思いつつ
そうなった方が夢魔としては都合が良いのだけれど
そもそも私の性質が分かってるなら平気なのでは?
……なんて事をぐるぐると考えてしまって咄嗟の対応に困ってしまい
そのまま無言で困ったような笑顔で答えてしまう。
それを肯定と取るか否定と取るかは目前の彼次第。
■暁 名無 > 「そん時ゃまあ、朝まで寝てれば開くだろ。」
そもそも鍵はこちら側からサムターンで開けられる気もしないでもないがそれはそれ。
実際朝まで寝倒しそうな勢いだったのは違いないわけだけども。
「夜魔なんてそうそうお目にかかれないしな。
それに、夜魔だろうとなかろうと、可愛い子の近くに寄りたいのは男の道理ってもんだ。」
拒絶されないのを良い事に俺はベンチへと向かう。
なるほど近づけば少しは匂いが強くなる。
人を惹き付けるような甘い香り。彼女自身否定しなかったし、どうやら夜魔──夢魔で違いないのだろう。
そして彼女自身はその力を不用意に奮いたくは無い、と見た。
それなら、
「なあに、そんな身構えなさんなって。
この匂いに俺がやられる前に、俺がお前さんを口説き落とせれば問題ねーだろ?」
なんて冗談を口にしつつ、嗅覚を遮断する。
幻想生物を相手取るからには、自分の五感を自由にオンオフするくらい出来ないと命が幾つあっても足りねえからな。
■咲月 美弥 > 「……実はコンクリートで寝るのが趣味とか?」
常識的に考えればそんな訳はないけれど
そもそも常識が若干迷子。
大真面目にそんな言葉を返してしまって……
「……確かに珍しい事は否定しませんけれど。
普通気が付かれないように近づきますし。」
だからこそ目が覚めている時に夢魔として出会う事は実はとても少ない。
そういう事情を知っている相手なのかもしれない。
推察が早かったことと言い、妙に興味津々な辺り
そういったことを生業にしている相手なのかもしれない。
これは大人しく腹をくくりましょうそうしましょう。
「……その前に口説けるなんて随分自信家ですね。
これでも私美食家なんですよ?」
そうして投げられた冗談に冗談で返しながら
少しだけ横にずれ、座れるようなスペースを作る。
本人は無自覚ながら座れば密着するような絶妙な空間。
ある意味夢魔らしい距離の開け方だったり。
■暁 名無 > 「趣味じゃあねえが、寝れないわけでもねえなあ。」
時間を忘れて研究に没頭したお陰で教室の床で寝たこともある身の上だ。
今更コンクリの上だからと寝れなくなるほどデリケートでもない。
まあ、柔らかな布団の上で寝るのが一番だってのは激しく主張したいけどな!
「ふふふ、此処に居たのが俺で良かったな。
いや、お前さん的には悪かった、のか?」
『食事』目的で来たのか、と考えてみたものの。
どうも来たばかりの、あの緩みきった雰囲気からは寝起き以外の形容が見当たらなかった。
つまり、アレは本気で寝ぼけてたのだろう。
そんな事を考えながら、俺はベンチまで来ると、
「ん、どうも。それじゃ……よっこいせ、と。」
わざわざスペースを作ってくれた彼女に礼を言って、その彼女をまたぐ様にベンチに膝を乗せた。
そしてベンチの背に両手を乗せる。彼女と向かい合う様に、だ。
「……さて、これで話もしやすいな?」
■咲月 美弥 > 「……起きた時全身がバキバキになってそうです」
少なくとも良い目覚めではないだろうなぁと思いつつ
この場所なら起きた時の景色もきれいそうだしそうでもないのかしら?
……なんて真面目に考える程度にはちょっとちょろかった。
「どちらなんでしょう?
私としてはあまり無関係な方を巻き込みたくはないのですから
魅了されない相手で助かったというべきかもしれませんけれど…」
夢魔としては相手が正体を失ってくれた方が都合は良かったかもしれない。
けれどそこに一つ重大な問題があった。
この少女、場と人慣れしているような雰囲気と色香を放ちながら……
「なんと言いますか……襲われるのはやはり怖いですもの
種としては間違っているのでしょうけれど」
存在としては限りなく純種に近い存在とは言え、
メンタルがそれに見合うかどうかは別問題。
■暁 名無 > 「ああ、その通り。
節々が軋んで仕方ねえんだ。」
苦笑しつつ頷く俺である。あれはおいそれと何度も経験したいものじゃあない。
特に一人では。誰か一緒ならそうでもないかもしれねえけど。
「別に絶対魅了されないってわけじゃねえぜ?
その匂いは抵抗する術があるってだけで、カオもカラダも見るからに上玉だもんな。」
至近距離で相手の姿を改めて見回す。
と言っても見えるのは最も近い顔、そして着崩された制服に収められた豊潤な肢体。
正直、嗅覚を塞いでいても魅了されそうで、俺は大きく息を吐くと体勢を変えて大人しく相手の隣に座った。
「にしたって言うことは随分ウブなんだな。
それなら夜魔そのものってよりは、やっぱり夜魔憑きか?」
■咲月 美弥 > 「……やっぱり家にかえって柔らかいお布団で寝ましょう?
楽しめるものも楽しめませんよ?」
本人はいたって親切のつもりの忠告をしつつ
隣に座った相手に寄り添い、その顔を覗き込むようにして見上げる。
その濡れたような瞳でじっと見つめた後二コリとほほ笑むと
ゆっくりと体を離して。
「ふふ、誉め言葉として受け取っておきますね。
こんなことを言うのもなんですけれどなかなか素敵でしょう?
殿方が魅了されてくださるのは悪い気はしないですもの」
幾ら相手の理想に合わせてある程度姿形を変えるとは言え
この美貌は元々の部分がかなり多い。
夢魔として完全に変化しなくとも他者を魅了しうる外見を持つというのは
やはり自分事とは言え誇らしい部分もあり、悪びれない様子で微笑んで。
「とは言えそれが災いして襲われる事も珍しくはなくって……
初心とは言いますけれど
襲われて楽しめるのは本当ごく一部なんですからね?
特にこの島では私達以上に幻想世界に
足を踏み込んでいる人だってたくさんいますし……」
質問自体には曖昧に応えつつ
そっと自身をかき抱くように少しだけ俯く。
そういった相手に”狩られた”者も
この島は他地域に比べて圧倒的に多い。
もっとも……完全に魅了が入ってしまえば
その状況をひっくり返される事自体はめったにないけれど。
■暁 名無 > 「ああ、そうするとも、さ。
ただ、今は布団よりも魅力的な柔らかさが目の前にあるもんでね。」
たとえ硬いコンクリートの上でも、その身体を抱ければ気にならないかもしれない。
なんて、そんな事を口走りかけて我に返る。やっぱり嗅覚を遮断しても、じわじわと思考は侵されていくらしい。
恐るべしだ。いや半分素だろって言われても否定できねえけど。
「おやおや、ちょっとおだてりゃすーぐ乗っちゃってまあ。
けれどまあ、自分の容姿に自信があるのは良い事だな。
その自信に免じて、骨抜きにされてやろうかい?」
なんて軽口を叩いて平常心を保つ。
いや油断してると本当に心奪われそうになるわけで。
それは流石に彼女にとって不誠実な結果に繋がりそうだ。
と、そんな葛藤を秘めていたわけだが、急に怯える様な素振を見せる彼女に我に返る。
「……ん、まあ、何だ。
悪かったな、変なこと言ってよ。
けどそういう窮地も人間を手玉にとって脱するのがお前さんらの種族だと思うんだがな。
まだまだ未熟者ってことなのかね。」
そんな慰めを口にしつつ、俺の目は彼女が自身の身体を抱く事で寄せられたたわわな果実へと向けられる。
……と、いかんいかん、俺も未熟者か。いやそりゃ未熟者だけど!
■咲月 美弥 > 「……あんまり”生徒”にセクハラしてると上司に怒られますよ?
そう言いたくなるのは判らないでもないですけれど」
やはりある程度は影響を受けているのかもしれないと
相手の言葉を受けてぼんやりと思う。
少し前ならある程度その状態も把握できたけれど、
今はほとんどわかっていないのでまさか半分素だとは思ってもいなかった。
「あら、骨抜きになっていただけるんですか。
それは私としては好都合ですけれどそれで平気なんですか?」
くすくすと正に小悪魔と言った様子でこらえ切れないような笑いを零す。
まるで計算されたかのような角度と表情は夢魔でなかったとしても蠱惑的に映ったかも。
これでほぼ無意識なのだから質が悪い。
「……せんせ、謝らないでください。」
ああ、気を使わせてしまった。そんな事したいわけではないのに。
此方を眺めて揺れた瞳にはっと我に返り
身を寄せ、貴方の唇にそっと人差し指を当てる。
そうして至近距離で貴方の瞳を見つめながらゆっくり、ゆっくりと言葉を紡いで……
「間違ってはないですし……
そう気を使っていただけるだけでも十分。
ね?つまらない話はこれまでにして、
もっとタノシイお話しましょう?」
まるで恋人に囁くかのような甘い声で。
じっと見つめあう姿はさながら秘密の逢瀬のようにも見えるかもしれない。
■暁 名無 > 「お前さんが本当に生徒、ならな?」
少しばかり冷静になった頭で言い返す。
彼女が本当に正規の生徒であれば、どこかしらで見かけている筈だ。
しかし遥か以前、霞んだ記憶の中に既視感がある気がするものの、生徒として知っているわけではない。
何より、知っていたら一度は名前を呼んでいる筈だ。
「たまにはそう言うのも悪くないってね。
仕事仕事で疲れてるところ、可愛い子に癒して貰えるなら本望さ。」
まあ、軽口なんだけど。
一夜の夢に溺れてみるのも、まあ悪くは無いと思っているのは本心だ。
蠱惑的な笑みに、少し心揺れるのもまた事実。
「……ああ、すま……そうだな。」
謝るな、と言われれば再び反射的に謝ろうとしてしまったのをぐっと堪える。
そして間近に彼女の迫った彼女の瞳に吸い込まれそうになるのもまた、踏み止まった。
がんばれ俺の理性、お前はまだやれる子だ。たぶん。
「タノシイお話、ね。
それは果たして言葉になる様な『お話』かな」
すい、と顔を寄せ俺は問う。
この距離ならいつでも唇は奪えるし、崩れた服へと手を滑らせて柔い肌に触れるのも可能だ。
でもそうしたくなるのを理性がどうにか引きとどめる。
■咲月 美弥 > 「学び舎に集い師を仰ぐ者ならすべて生徒……なのでしょう?
昔の偉い人もそう言っていましたもの」
距離はそのままくつくつと笑う。
そう、少なくともあの子は生徒だったはずだから
この体の半分はここの生徒……だった。
「せーとに手を出したら怒られたりするんでしょうか?
でもこの島ですもの。生徒なのかせんせいなのか
わからない事も多いですし……
その辺りは自己責任で寛容なのかしら?」
ちらりと本性に近い魔性の部分が顔を出す。
誘うような瞳を細めて微笑んだまま
唇に当てた指をそのまま首筋、胸元へと滑らせて
指先を胸板で踊らせて。
本当に楽しくて仕方がないようにくつくつと笑う。
「せんせは、どんなお話が好みです?
言葉で語らうお話?それとも……」
それ以外がイイ?と顔を寄せ耳元で囁く。
たとえ未熟でも、初心でも、夢魔は夢魔。
意識せずとも人の理性を崩すための所作を感じ取り無意識に誘惑していく。
もう片方の手は貴方の足に添えられ、普通より少し高い体温を伝えていて……
「知りたいなぁ、私、興味があります。
一体どんなコト、してくれるのか
せんせは、どんなコト、教えてくれるんですか?」
ゆっくりと吐き出され、貴方の耳元に触れる吐息も
また熱を帯びているように感じるかもしれない。
■暁 名無 > 「果たしてお前さん誰を師として、何を学ぶつもりで居るんだい。」
全く、ああいえばこう言う。
しかも楽しみながら言うのだから性質が悪い。
怒るに怒れないどころか、気分を害されてる気すらしないから本当に性質が悪い。
「無理やり手を出せばそりゃあ怒られるだろうな。
けれどまあ、見つからなければ無いも同じ、と言うだろうし。
そうだな、自己責任は付いて回るかもしれない。」
指先が俺の身体をなぞっていく。そのくすぐったさに僅かに身を捩る。
抵抗の声を上げようにも、彼女は本当に、本当に楽しそうで。
制止の声すら思わず飲み込んでしまった。
代わりに押し殺し切れなかった吐息が漏れる。
「お前さんとならどんな話でも夢心地だろうな。
まったく、ついさっきまで寝ぼけ眼だったってのによ。」
ぞわり、と背筋が粟立つ。
言の葉から、吐息から、彼女という夢魔が俺の理性を蝕んでいく。
もっと頑張れ理性、こんなところで折れるような子に育てた覚えはありませんよ!!
「さあ、何から教えようか。
哀れにも妖艶な夜魔に弄ばれる男の末路、かね。
そのかわり、朝までの特別講義だ。だいぶ長丁場は覚悟しろよ?
いや、それはどちらかと言えば俺が教わる立場かねえ。」
それは流石に立つ瀬が無くなるってもんだ。
ミイラ取りがミイラっても程がある。
俺はなけなしの理性を総動員させて目の前の少女を抱き締めようとする腕を制する。
代わりに、その頭をそっと撫でてやろう。
「でも、その為には先生と生徒という立場を取っ払わないとな。
……どちらかがどちらかに堕とされるまでのお楽しみ、だ。」
■咲月 美弥 > 「ヒトの在り方……なんてどうでしょう
どうすれば悦ぶのか、なんて……良い講義内容でしょう?
せんせ、ちゃぁんと教えてくださるのですよね」
眠りから覚めたばかりだからこそ……
喉も乾くしお腹もすいているのかもしれない。
問題はその事に無自覚だという事で……
「ふふ、こんな場所、だぁれかくるかもしれませんけれど
目覚めたままの夢なんてロマンチックで良い響き。
ねぇ、……夢を見ましょうか。
それとも、素敵な夢、見せてくれますか?」
その”乾き”を、”欲求”を意識しないまま
瞳に魔性を宿して。
それはある意味、本性そのもの。
裸の欲望を無意識のままにさらけ出すような……
「ウソは二人でつくものですもの。
どうせならイイ夢を……
立場も境遇も忘れて
飛び切り気持ちの良い夢(ウソ)を見ましょう?」
決壊しそうな理性を感じ取ったのか
くすくすと笑い声を響かせながら首筋に唇をうずめて……
そっと触れるようなキスをと共に舌を這わせ
「……あら?」
頭部に感じる温かさと程よい重みに
その瞳から急速に魔の気配が薄れていく。
戸惑ったように身を放し、やっと自身の現状と
口にした言葉の意味に思い当たり
夜明けに日が差す様にさぁっと頬に朱が差した。
「ああもう、私ったらまたこんなことを……
ごめんなさいね。しばらく休んでいたので
気を抜くと眠気が戻ってきてしまって……」
弾かれたように体を放し
わたわたと手を振りながら真っすぐに顔を見る事も出来ずに
斜め下を見つめて弁明する。
色々と色んな意味で揺れるものがあったけれど
それはこの際無視する事にして。
積極的かと思えば急に貞淑になる。
そのギャップはある意味止めになりかねない動きで
更に悪化しかねないと言う点は頭に入って居なかったりもする。
■暁 名無 > 「なるほどな、実に興味深い題目だ。
けれど、それを俺に教わるとお前さんが決めたら、途中で師を乗り換えるなんてしないでくれよ。
そんな事されたら沽券に関わるんでね。」
無自覚な、それでいて強烈に純粋な誘惑が俺を襲う。
言葉の端々から感じる彼女の魔としての本能に、容易く感化されそうになる己を懸命に引き止める。
このままは、ダメだ。理由なんて考える余裕も無いけど、今は、良くない。
俺にも、この子にも。何故かそんな気がしてならない。
だから俺は立て続けにぶつけられる彼女の乾きを、全て耐えた。
もうすごいしんどかった。俺だって男なんだし。
首筋を這う舌の感触なんてもはや暴力としか言えないのに、それすらも耐えた。
耐えないと、いけない気がした。
「………うん。」
素に戻ったのか、慌てふためく彼女を見て、ようやく一息吐く。
どうにか耐えきる事は出来たが、代わりに彼女の危うさを垣間見てしまった。
あるいは、魅せられてしまったのかもしれない。
俺はしおらしくなった彼女の頭にそっと顔を寄せ、ついさっき彼女がやった様に耳元で告げる。
「大丈夫、謝る事は無いさ。
それより、本当に君が求めるのなら。
俺から奪い取ってみせると良い。」
自分でも恥ずかしくなる様なセリフがつらつらと零れ出る。
至近距離で夢魔の気に晒された所為か、どうにもそっちに引っ張られてしまっているようだ。
「自慢じゃないけど、極上の夢を約束しよう。
これは課題だよ。生徒だという君への最初の課題。
夜魔として、確りと男を籠絡してみせるがいいさ。」
ひいてはそれが先刻みせた彼女の、怯えを拭い去る事に繋がるのだろう。
であれば、助力は惜しまない。たとえ下心に塗れていても。
……やっぱり、魅せられてるかもしれない。
■咲月 美弥 > 「あああ……全くもう……」
実感を伴った深ーーいため息が一つその口唇から漏れた。
この性質でトラブルを引き込みそうになるのは初めてではない。
今のこの体になるまでの間にも何度も何度もあった事。
ある意味ひっじょうに残酷な事を現在進行形でやってしまっているものの
その原因は別の問題で内心頭を掻きむしっていて完全に無頓着。
実に被害者は可愛そう。
……その事に気が付いていないことが割と根本的な問題なのだけれど。
「奪い取ってみせろ、と?」
そこにため息とともに投げかけられた言葉に
きょとんとしながら耳を傾ける。
その意味を理解し、少し戸惑ったような表情を浮かべて。
「……それは私に惚れろと仰っているんですか?
それとも……離れられなくなるようにすればいいです?」
さり気なく際どい発言が素の表情で飛び出してきた。
純粋に疑問符を浮かべるような表情で、しかし続く言葉に何処か
嬉しそうで、どこか悲しそうな笑みを浮かべて。
「……夢魔は恋をしないんですよ?
だって……」
言葉を失ったかのように口をつぐむ。
夢魔が人として誰かを愛してしまう事。
それは悲しみしか呼ばない。
どちらかが息絶えるしか、なくなってしまうから。
だからこそ、彼女は本気には成れない。
……それでもいいのかと。
その言葉を飲み込み、首を振る。
今私はこの島では生徒。
私だけの体ではないけれど、それでも
彼女の為にも生徒で居られるというのなら……
「ふふ、知りませんからね?
夢魔に狙われて人の身で抗いきった人なんて
片手で数えるくらいしかいないんですから」
妖艶な、けれどどこまでも儚い笑みを見せて
背を向け、ゆっくりと立ち上がって……
――くるりと振り向いてお辞儀をするように身をかがめる。
先ほどとは違った、別の感情を込めた
けれど同じくらい深い感情で。
もしも貴方が気を抜いていたら頬に先ほど首筋に感じたような
柔らかい感触を感じるかもしれない。
■暁 名無 > 「ふふふ、やっぱりここで俺にあったのは君には悪い方に転がったらしい。」
溜息を吐く彼女の姿を見て、俺はようやく緊張の糸を緩めた。
彼女はどこまでも人間らしく、そして魔性らしい。
その狭間で何度苦悩してきたのか、俺には見当もつかない程だけど。
それでも、こうして彼女は、彼女たちは生きているし、生きていかなきゃならない。
「そう、奪い取ってみせるんだ。」
我ながら憑き物が落ちたような、さっぱりとした笑みで頷く。
非常に酷な事を告げた気がするが、そもそも人にも魔にも振り切れなかった彼女の責任でもある。
「惚れるか、惚れさせるか。
そのどちらでも結果は同じ、それは断言しよう。
滅茶苦茶を言ってるかもしれないけど、変に放っといて校内の風紀を乱されても困るからな。
生徒として、ちゃんと課題に取り組んで貰うぞ。」
夢魔がどの様な種族かは、幻想生物学なんて専攻している身としては百も承知。
だからこそ全力で取り組んで貰わなければならないし、それに応えなければならない。
ある意味、俺自身にも課題を出しているわけだ。
それに、
「課題を出されてそれをこなすからには、紛れも無くお前さんはこの学校の生徒だからな。
ただ漫然と過ごし、眠るよりは、仮初でも青春を謳歌してみたらどうだ。」
へらへらと笑う俺に背を向け立ち上がる彼女、そしてこちらを振り返って。
「………っ。」
頬に覚えのある感触があって、俺の顔はたちまち熱を帯びた。
■咲月 美弥 > 「……逃げてばかりもいられないと思えば
これも必然かもしれません」
偶然という言葉は嫌いなのだけれど。
それでも与えられた機会だもの。大事にしないとね。
そう胸中で呟いて。
「ある意味夢魔の最も得意な分野ですし、
もてあますよりは……使いこなした方が良いわよね、うん」
若干口から漏れていた。
隙が無さそうに見えてわりと隙の多い性格なのは
周りが面白がって指摘しないからだったりもする。
「本気で遊べっていうなら、そうね。
火傷しない程度にがんばってみますね?せーんせ」
何処かで割り切ったのかまた最初の頃に見せた
悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
何処までも遊び、予行演習。そう思えばこそ……
「せんせも火傷、しないでくださいね」
頬から唇を放し、くすくすと笑って。
それは少女から大人になっていく中間の
どちらとも言えない両方の魅力を含んでいて
今日一番の夢魔らしい、誘蛾灯のような笑み。
「他の子に流れても良いですけど
ちゃぁんと、騙しきってくださいね?
さもないと、ちょっかい出しに行っちゃいますから」
そう告げると静寂を願う時の様に唇に人差し指を当て、瞳を閉じて……
そのままその指を貴方の唇にそっと当てた。
それと同時に漆黒の翼がばさりと音を立てて広がった。
「”おやすみなさい”せんせ。
また楽しい夢を見られる日が来るまで。
そのときがきたら、また」
遊びましょうね。
最後は言葉にせずに囁いた。
言い切ると風鳴りの音と共に一瞬闇が濃くなり……。
それを待っていたかのように夜明けの光が屋上にさした。
……屋上に残ったのは甘い香りの残滓とそれと戯れたただ一人だけ。
■暁 名無 > 「心中お察しするよ。
いや、他人事の様に聞こえるかもだけど、本当に察せるんだ。」
何処か遠い目になる俺であった。
そしてぼそぼそとした独り言が耳に入る。
やっぱり持て余してたんだなあ、と更に遠くを見る様に胸中で独りごちて。指摘?しないよ、面白いしね。
「遊び、そうゲームみたいなもんさ。
……え?ああ、うん。火傷と言うかなんか後ろから刺されたりしそうな。
気のせいかな?んん?」
背すじを冷たい汗が伝う。
まだ夜明け前だというのに。嫌な汗が。
まあ、うん。気のせいだと思う事にしておこう。
……え、ええい。それよりもちらちらってレベルじゃないほど視界に映る谷間を隠しなさい。
そんな戯言を告げる間もなく、見せられた彼女の笑顔と、そして俺の唇に触れる人差し指。
思わずドキリと心臓が跳ねる。実はとんでもない事してしまったのか、と思っても今更過ぎた。
しかし、羽音に我に返れば俺の覚悟も、改めて決まる。
「ああ、“おやすみ”
もし俺とよりも楽しい夢を見たら少し拗ねるからな。」
最後の最後に、そんな軽口を叩く。
まあ、お互い様って言われそうだけど、仕方ないね!
風切音と共に夢の様に姿を消し、それでも残り香に確かに此処に居たことを託した彼女を見送って。
俺は朝日に目を眇めるのだった。
ご案内:「屋上」から咲月 美弥さんが去りました。
ご案内:「屋上」から暁 名無さんが去りました。