2017/11/03 のログ
■咲月 美弥 > 普段静かな廊下にぱたぱたと軽い足音が響く。
その足音は部屋の前で少しだけ止まると保健室の扉が音もなく開いた。
音の主はその隙間からするりと滑り込むように中へ入りこんだあと、
そっと外を伺い、また音もなく扉を閉める。
カチャリ、という音がその手元から小さく響くと当時に
やっと落ち着いたかのように胸元に抱えた本を
抱きしめなおすようにほっと溜息をついた。
「……なんとか、ゆっくりできそうですね」
少しだけ息を切らしながら
瞳を閉じ扉に額をつけ、吐息のようなため息を零しながら
少しだけ安心したような雰囲気を漂わせる。
足音が示す様に少し走っていたのだろう。
軽くまとめている髪や服装が若干乱れている。
あまり注視しなくとも随分と緊張していたことが見て取れるかもしれない。
「……はぁ」
瞳を閉じ幾分か乱れた呼吸のまま
安心したのかその場に崩れる様に座りこもうとし……
「あら、せんせ
こんばんは。酔い晩ですね」
貴方に気が付くとそれらがまるで嘘であったかのように
体を向け本を抱きしめたまま姿勢を正し、
少しだけ首を傾けながら微笑んだ。
■暁 名無 > さて、ダラダラすることに決めたは良いが退屈だ。
窓から差し込む月光が、少しばかり忌まわしい。あんなに輝いてなければぶらっと屋上にでも赴くんだが。
そんな事を考えながらコーヒーを啜っていると、不意に足音をが聞こえてきた。
こんな時分に何事かと顔を上げれば、丁度見慣れた姿が息を切らせていて
「……ああ、お前さんか。
どうした、随分とへろへろじゃねえか。」
それに、校舎内で見かけるなんて珍しい。
いや、そうでもないか?いやいや、多分珍しい。
まあどちらにせよ、屋内での彼女の性質は、大分厄介な気がするのだが。
「何かやらかしでもしたか?
お前さんも涼しい顔してどこか抜けてるからな。」
最近会うのはそんな生徒ばっかりだな、と思わず苦笑が浮かんだ。
■咲月 美弥 > 「お気になさらず。良くあることですから。」
呼吸を整えながら大した事は無いと小さく手を振る。
何時もならもう少し意識の流れに鋭敏なのだから
この人が居た事にも気が付いていただろうと思う。
もしも気が付いていれば……と内心ほぞをかみながら
同時に確実に進行していく感覚の衰えを自覚する。
……こればかりはもう、どうしようもない。
「……顔に面倒な生徒に出会った。と出ていますよ?
安心してください。
今日は何もするつもりはありませんから」
冗談めかしてさらっと今の所は。とつけ加えながら
椅子を一つゆっくり引いて腰かける。
胸元に抱えていた数冊の本をそっと机の上に置くと
愛おし気に表紙を指先でそっと撫でて柔らかな笑みを浮かべた。
「……どこか抜けているは余計ですし
私は何もやらかしては……居ないと思います。多分」
続く言葉には……
何処か自信なさげな口調で少しだけ遠くを見つめつつ
控えめに抗議してみたりして。
■暁 名無 > 「よくあること、ねえ。」
本人がそう言うのなら、そうなんだろう。
夜の校舎を息を切らしながら走り回ってたとして、それが彼女にとって普通なら、普通の事なのだ。
……いや全然普通じゃねえし、廊下は走るな。
「そりゃありがたいね。
というか今までは何かする気があったってことかオイ。」
俺はコーヒーを啜りながら、本を眺める姿を観察する。
今まで外の月明かりの下で、
しかも大抵至近距離でしか見ていなかった姿も人工の明かりの下で見るとだいぶ雰囲気が違って見える。
具体的に言えば、今までが幻想の中なら、今は現実といったところ。
「うんうん、お前のパッシヴスキルの厄介さは身に染みて知ってるからな。
ま、今はもう残ってる生徒もそう居ないだろうし、大ごとにはならないだろ。」
■咲月 美弥 > 「はぃ、良くあることです。」
にっこりとほほ笑みながら嘯く。
部屋に逃げ込んで鍵をかけるような状況は
本土の学校であれば滅多にない事でも
……この島では悲しいかな、本当に良くある。
しかも本土以上に扉や障害物は役に立たない事も多いというおまけ付きで。
「……」
何かする気があったのかという言葉に
何か言いたげな表情をした後
はぁ……と一つ万感を込めた溜息を零す。
極めて真面目にこれを発言しているのだから
ある意味とても質が悪い。
まぁそれはもうこの際諦めるとして……
「この島では夜間部の生徒もそれなりに在籍していますよね?
……私としては昼の生徒の方がよっぽど扱いやすくて楽なのですけれど」
夜に学校に残って居たり夜の学校に現れる者は……
往々にして厄介な性質を持っている。
それだけならまだしも、性格や倫理観と言ったものも
それらに準ずる場合もかなり多い為、
思っている以上にこの島の夜は危ない場所だった。
……特に”元純種”にとっては。
■暁 名無 > 「そうか、難儀だなお前さんも。」
笑顔で断じられてしまえばそれ以上言及する事も出来ない。
校舎内でそんな危険があるというのは、
教員としては自分たちの怠慢を突きつけられているようで心が痛いんだけども。
「ん?
……ああ、そうだな。
なるほど、それが心配だっていうなら夜の間はずっと一緒に居るか?」
なんてな。
笑いながら俺はソファから腰を上げ、新たなカップにコーヒーを注ぎに向かう。ついでに俺のカップにも。
淹れたてのコーヒーを両手に持って踵を返し、彼女の前にそっと置いた。
■咲月 美弥 > 「……まぁ仕方がない事です。
それに文句を言う相手はちゃんと”持ってきて”いるので
恨み言はその子に滔々と聞かせる事にします。」
いらない噂を作るのは本当にやめて欲しかったと
諦めたようなため息をつきながらもその口元は笑っていて。
けれど冗談めかして告げられた一言を聞くと一瞬真顔になる。
「……もしかしてせんせ、かなり重度の精神的被虐趣味をお持ちだったりします?」
爆弾発言に爆弾的質問で返した。至って真面目に。
本当にこの人は……といった雰囲気を漂わせながら
よく聞くとそれなりに失礼なことを大変真面目に聞き返すあたり
ある意味よく似ているのかもしれない。
■暁 名無 > 「……“持ってきて”?」
一体何を言ってるのだろう。
この子が少し風変り……いや、だいぶ変わってるのは十二分に承知してるつもりだったけども。
実のところ俺が思う以上に危ない子なのかもしれない。
……いや、危ないと言っても疚しい方面の事では無く。
「え?……何をどうしたらそうなるんだよ。
そんな趣味は持ち合わせてねーし、そもそもそんな目に遭う理由が分からんぞ。
あ、砂糖とミルクは要るか?要るなら取って来るけど。」
精神的被虐趣味……
つまりどういうことなのかさっぱり分からない。
■咲月 美弥 > 「……そうですね、ミルクとお砂糖を頂けますか」
溜息と共に小さく微笑む。
それらが仕舞ってある場所は大体知っている。
その二つを取りに踵を返した貴方の背中を見つめ
「……不慮の事故ではありますけれど
せんせ、今の状況を理解されていますか?」
ゆっくりと立ち上がる。
さながらシーツのように衣擦れの音を静かに響かせながら
共に羽織っていたインバネスコートが床に落ちていく。
「夜の学校の保健室で……」
部屋に漂う程度であった香りが満ち満ちていく。
幻惑と共に体の動きを鈍くしてしまう様な香りを漂わせながら
此方に背を向けた貴方にゆっくり歩み寄って
「秘密の密室……何をしてもだーれも……邪魔しに来ない
そんな場所で……二人っきりで夜を明かしましょう?なぁんて」
その背中に寄り添うよう身を寄せる。
薄布を隔てて伝わる体温と感触、そして香り。
少しだけ高い、柔らかな温度。
「……誘ってくださっているのですか?
それとも、いつものようにただ我慢する事がくせになってしまったの?」
いつもと違う、月明りの元ではない場所。
けれど……蛍光灯の光は別の灯を隠してはくれない。
■暁 名無 > 「はいよー、ちょっと待ってな。」
普段自分が飲むがホットでもアイスでもブラックオンリーだから失念していた。
ええと、確かコーヒーメイカーの脇にまとめて置いてあったよな、と……
「んー?今の状況って……?」
聞き返すより早く嗅ぎ慣れた匂いに囲まれていた。
えっ、そんな気配全然なかったし!?
ていうかついさっき「今日は何もする気は無い」って言ってたじゃねーの!?
「こ、こら、トリルキルティス……
後ろからは危ないから、は、離れて……」
今でも時折不意打ち気味に見る夢が脳裏を過る。
まずい。今の状況は大分マズイ気がするぞ……。
普段であれば屋外だから匂いも多少は散っていくけれど、屋内じゃそれも望めないし‥…。
■咲月 美弥 > 「危ない……
何が危ないんですか?
私が?それとも、……あなたが?」
身を寄せ、瞳を閉じて鼓動の音に耳を傾ける。
脈打つ音が少しだけ早くなるのを感じて僅かに笑みを深くしながら
それに合わせるように問いかけて。
「……ね、教えて?」
部屋に満ちる香りは元々中毒性の方が高いもの。
まかれればまかれるほど深い幻惑に落ちていくような代物で
それに耐性がある人物は……あまり多いとは言えない。
しかもそれは薄まっているものに少しずつ慣らしていくような状況下での話。
「貴方が何を今、感じてるのか
……私に教えて?」
この部屋に入る際に鍵をかけると同時にそこに境界を設けている。
それは元々此方の気配を遮断する人払いの呪いに似たものだけれど
皮肉にも部屋の中のものを外に漏らさない様な役割も果たしていた。
十二分に機能を果たしている今……逃げ場も助けもそこにはありはしない。
■暁 名無 > 「お、俺も……お前さんも、かな。」
俺の方は主に理性が危ない。かなり危ない。
しかし体勢的には二人とも危ない。転んだりしたら怪我……してもまあ保健室だけどさあ此処!
加速度的に強まる香りに、普段以上に思考に靄が掛かっていく
「な、何って……
そんなこと、お前さんだって分かってるだろ?」
甘い言葉が耳を撫でるたびに、理性が一枚、また一枚と剥がされていくような錯覚に陥る。
駄目だ駄目だ、耐えろ耐えろ耐えろ。
……耐えて、それでどうなる。
据え膳喰わぬは何とやら、と思わないでもないけれど。
■咲月 美弥 > 「……まぁ、嬉しい」
危ないと言う言葉に嬉し気な言葉を返す。
そう、色々な意味で危ないというのは彼女にとっては誉め言葉。
そして目前の彼が語る危なさならば……
「……いい、ですよ?
我慢、しなくても。
灼けてしまいそう、でしょう?
他の誰かに火傷、させてしまいそうなほど。
それを振るって誰かを傷つける事が怖くてしようがない位。
でも……」
するりと耳に入り込むような言葉。
まるで網にかかった相手を手繰り寄せる様にゆっくりと口にする。
もしもその顔を見つめる者がいたなら、
何処までも深い許容と、そして波のような涙を湛え、潤んだ瞳を見る。
「私は平気です。
だから……火をつけて?
その熱さが、私はとても嬉しいの」
その繊細な見た目に反して
囁かれる言葉も香りも温度も、
さながら麻薬のようで。
■暁 名無 > 「ぅ、ぐ……」
耐えがたい情動が、確かに自分の中で渦巻いている。
すぐにでも彼女を抱え、ベッドにでもソファにでも押し倒してしまいたい。
だが、そうしてしまえばもう抑えは効かない事だろう。
そしてそれがどれだけの快楽を齎すのかも、分かる。
「……で、も、だ。
やっぱり、まだ、それをするわけにはいかないんだよなあ……」
ギリリ、と歯を食いしばって耐える。
耐えることに何の意味があるのか、自問しても答えは無いけれど。
ただ、ここで耐えなければ俺は絶対後悔するだろうから。
「……やめ、なさ、いってば。
無理矢理、奪うのは、趣味じゃねー、の。」
言葉を掛けるたびに、鼻も口も香りが埋めていく。
ああ、何でこうも意固地になってるんだ、俺は……。
■咲月 美弥 > 「……知ってます。
貴方の心に別の何かが居る事を」
……すとんと雰囲気が変わる。
漂う香りは変わらずとも、ただ誰かに問いかけるような口調は
今までの炎のような印象とは一転し、凪の海のようなもの。
「……どうあっても取り戻せない、
けれど取り戻したくてただ慟哭するような何かが
きっとそこに在ったのでしょうね」
そう、それを守るために
判りやすい殻を被って、自分を守らずにいられないほど。
軽薄な姿を装えば、それ以上踏み込まずに済むのだから。
「いつの日か……貴方はそれをセピア色の思い出として
思い出す事が出来るようになる。
忘れる事を罪と思う優しいあなただからこそ、
いつかその日が来ることでしょう。
それを貴方が今望んで居なくても。
けれど……」
その時私は貴方の隣には居られない。
今も心に在れないように。
そして未来でも寄り添う事は出来ない。
(だって私はもう直ぐ、消えてしまいますから)
背中に当てた手をぎゅっと握る。
それを伝えることはきっとない。
想えばこそ言わない言葉がありそれをただ胸に秘めたまま、
今も昔もこちらに向けられた背中に身を寄せて。
ただ優しげな声で、けれど抗いがたい声色のまま少しだけ背伸びをし、耳元に口を寄せる。
「ねぇ……もう一度、此処から始めましょう?
今を、今ここに在る私を感じてください。
私の熱を、私の声を、ちゃんと今のあなたで
泣き続けている過去の貴方ではなく、今の貴方を感じて。」
そこにきっと奇跡はあるから。
手遅れになってしまう前に今の世界から。
その為なら、魂を抉るような体験を刻み込もう。
決して無視できない快感を、情動を。
例えそれが残酷だと言われたとしても。
「……”今”のあなたは、何を想っているの?
私に教えてください」
■暁 名無 > 「っ……何を、」
一体何が分かるというのか。
彼女に、俺の、何が。
……それっぽく言っているだけだ。彼女は、何も、知らない。
それでも耳に響く声は、何でも見透かしていそうで。
「今、俺は……」
頭が重い、目の奥で光が明滅する。
視界が閃光の様に爆ぜて、そして嘘のように静まり返るのを繰り返す。
「……抗い難いほどに、君を抱きたいと思っているよ。
君の全てを、俺の物にしたいと、そう思ってる。」
観念したように言葉がひとりでに口から零れ落ちる。
それが本当に自分の本心なのか、それとも彼女の力で増幅された物なのかは分からない。
……分からなくても、良いとさえ思えてくる。
■咲月 美弥 > 「……そう」
いつか見せたような優し気な笑みを
身を寄せたまま浮かべる。
私は”欲を掻き立てる者”。
他の誰かが望んだように。
誰もが想像するように。
「……良いですよ?
貴方の、好きにして」
けれど、私は”寄り添うもの”でありたいと願った。
人と共に生き、最期まで寄り添うものとして在りたかった。
夢魔のその側面を知る者はとても少ないけれど
確かにそれは私の一面。
「……過ぎ去っても良い。傷つけても良いの。
例えそれが一時の気の迷いでも……」
私を愛さなくても。
貴方ならば私はそれを許してあげられる。
いや、ある意味それこそが”今の私”の
願っている願いなのかもしれない。
■暁 名無 > 「はは……“貴方の好きにして”か。
もう何度聞いたろうな。」
それこそ顔を合わせるたびに、こうして俺が情動に抗う度に訊かされていた気がする。
その度に何度空想の中で抱いたことか分からない。
「でも、お前さんが思ってる以上に俺は欲深だからな。
一度抱いたらきっと、離したくなくなる。
別れたくなくなっちまうことだろう。
……それは不本意だろう、お互いに。」
だから踏み込めなかった。踏み込まなかった。
間違っても本気にならないように、いつだって自分を殺し続けた。
一度褥を共にして、それで満足できるのならとっくにそうしていただろう。
むしろ、そこから始まってしまうから、それが、怖いんだ。
「それに付き合う覚悟はあるのかい。
行きずりの女では、済まないかもしれないぜ?」
■咲月 美弥 > 「……私が一度でも不本意だなんて言ったことがありましたか?
哀しい事はありますけれど……それでも
私はずっと手を伸ばしているではないですか。」
背中に当てたままの手をそっと体に回す。
ぎゅっとここに居ると伝える様に抱きしめて。
失う事はもう、知っている。
愛される事の恐ろしさも知っている。
それでも、残酷でも、我儘でも
――私はヒトを愛してしまう。
それに……
「……ずっと勘違いされている事があります。
……いつか言いましたよね。出会って間もない私達…と。」
それは半分正しい。
”私”として出会った日々は、どちらかと言えば短い部類に入る。
それだけ見ればただ、目の前にいた獲物に手を出した捕食者。
「……私は体を持つ前からずっと、もう何年も此処に居たの
見えなくても、ずっと」
確かに裏がないと言えば嘘になる。
打算も、利用も確かに此処にはある。
元々私は美弥の願いを叶えるためにここに居るのだから。
思惑だって無いわけではない。
けれど……
「……目の前に偶然いたから、手を引いたわけではないのよ?
ねぇ、見くびらないで。
ちゃんと、私は選んだのだから」
拗ねるように、けれど誇らしげに告げる。
その想いもまた、本当の事。
■暁 名無 > 「そこまで言われたら、敵わないな。」
身体に回された腕に、そっと手を添える。
途端に彼女への愛おしさが沸き起こった。
それもまた、彼女が発する匂いの所為……なのだろうか。
「分かった、分かったよ。
俺の負けだ、まったく。」
両手を上げて降参のポーズ。
淹れたばかりだったコーヒーも、すっかり冷めてしまった事だろう。
まあ、冷めきってしまっても美味しいから良いんだけど。
「まぁったく、そうならそうと最初に言えば良いのに。
いや、言われたところであしらってた可能性は否定できないけどさ。」
でも流石に、今ここまで言われては袖には出来ない。
俺は小さく息を吐くと、着ていたシャツの襟を緩めた。
■咲月 美弥 > 「ええ、最初から言ったら絶対に本気だと受け取ってくれなかったでしょう?
貴方を誘惑する為の軽口だとあしらわれるのが目に見えていましたもの」
クスリと妖艶にほほ笑む。
辺りに漂う香りがわずかに変わった事に貴方は気が付くかもしれない。
ヒトはどちらが惚れたとかどちらが好きかとか
そういったパワーゲームが好きだ。
それそのもの自体は彼女自身も決して”不得意”ではないけれど…
彼女にとってそれは些細なこと。
「ちゃぁんと『本気に』しました、よ?」
そう、当たり前。
最初から何処までも本気だったのだから。
後ろから回した手を顔へと伸ばし引き寄せる。
同時に自分は少しだけ背伸びをして……
蛍光灯の元、二つの影の口元が一つに重なった。
「……ちゃんと、私を奪って……くださいね?」
再び影が二つになった時
見上げた表情は今まで見た中でも一番の
期待に満ちた蕩けるような表情だった。
■暁 名無 > 「そりゃあ……まあ、確かに。」
そこは素直に反省しておこう。俺に非がある。
でもな、ここ数年異性から好かれることに縁が無かった身の上を考えても見て欲しい。
そんな立場で面と向かって言われてもからかってるものだと思うだろ。
「ん、まあ及第点だな。」
唇が重なって、離れる。
此方を見る顔は、直視すれば心を全部持って行かれそうで。
誤魔化す様に俺は目の前の少女を抱き上げた。
勿論、ベッドに運ぶために。
■咲月 美弥 > 「大変だった、のですから」
そういう対処するから余計言われなくなるというのは
この際言わない事にする。
野暮なことは今必要ない。
「及第点?
まだ終わってないですよ?
……むしろこれからが本番、でしょう?」
もう漂う香りをセーブする必要もほとんどない。
正直に言うと抑えるのも結構しんどい。
今必要なのはお互いに奪い合い貪る事。
ただただ願いと欲望の通りに身を任せる。それだけで良い。
抱き上げられながらも首元に腕を回し
奪うように口づけを強請る。
「……ん」
静かにそのままベッドに横たわり
浮かれたような熱をその瞳にて見上げた。
ベッドに降ろされたまま乱れた着衣も直さずに
悪戯な笑みを浮かべて。
■暁 名無 > 「まあ、確かにその通りだけども。」
奪う様に口付けを交わし、ベッドに横たわらせた身体を見つめる。
お互いに衣服を身に着けている事がこの上に無く邪魔に感じつつ、
逸る気持ちを抑えて彼女のシャツのボタンを外していく。
少しづつ匂いが強くなり、そしてそれを求める様に俺の手は動いていった。
「シャワーとかは……良いかな?」
勿論部屋の中にシャワーなんてものは無い。
けれどまあ、万一の事を考えて俺は彼女へと訊ねてみた。
■咲月 美弥 > 肌に触れる指先に少しくすぐったそうな様子を見せながらも
その瞳を、顔をじっと見つめる視線はそらさないままで時折キスを強請る。
じゃれる様な口づけを交わしながら徐々に露になった肌の面積が広くなっていく。
その途中に投げかけられた言葉にふと少しだけ表情を曇らせた。
「……シャワーは……有るのであれば……」
魔性の香りはともかくとしてやはりそういう物は気にかかるもの。
思う所があるのか少しその瞳が揺れる。
それこそ近くの部室棟や……この島の保健室に関しては
必要処置の幅広さから設置されている場所も実はあったりもするが
この部屋にあったかどうかは定かではない。
とは言えこれから起きる事を考えるとやはり少し欲しい……
なんて考えてしま……
――――閲覧申請を認証しました。
後日所定のルームにて閲覧が許可されます。
ご案内:「保健室」から咲月 美弥さんが去りました。
ご案内:「保健室」から暁 名無さんが去りました。