2018/11/21 のログ
■木里嶺 静織 > 「━━━━…………そう、ですね」
━━傷ついて、孤立して。悲嘆に暮れて、その中の微かな自分の守れたことへの気が逸れていたなと。
……少しの間の後、微かに色を取り戻した声が響いた。
夢の話。だからそれらを、泣きながら話すことはしない。夢だから。夢。
「……間違って、なかった……なら、そうなら、お兄ちゃんは、悲しみなんて……」
しなかっただろうか。
あのまま、される事を受け止め切った後で。どうなっていたかは分からないけど。
……そうなっていたら。兄は?
「………………そう、だと、いいなって、思います」
……答えは出ない。これから答えを、探る気にもならない。
置かれたカップに、カーテンの隙間から伸びる、細く、白く、小さな手が。震えながらカップを握る。
━━━━┯掴んだまま、力むような息と。ビクともしないカップ、揺れる水面。
■白鈴秋 > 「間違ってなかったから。兄さんはその程度で済んだんだ。もし怪我以上だったら……悲しむなんてレベルじゃすまなかったかもしれねぇんだからよ」
少しだけ真面目なトーンでそう答えた。
自分がそうだから、彼女の兄にそうなってなど欲しくは無い。
「まぁ友達に関しちゃ今すぐには難しいかもしれねぇから。もう少し周囲が落ち着いてから話して見れば良いさ……夢の続きを見たらの話。だけどな」
と、とってつけたように付け加える。
友達については確実とはいえないが。少なくとも兄にとっては無事帰ってきてくれた。それだけでそれ以上など無いと明言できる。
それからカップの様子を見る。動かないカップ。重い……わけは無いから怪我の関係で持てないというのが正解だろう。
少し配慮が足りなかったなと頭を掻き。
「飲むなら飲ませようか。怪我、結構辛いみてぇだしよ。カーテンの中に入れりゃ良いってだけなら入れるだけ入れるが」
ビクとも動かないのを見てそう声をかけた。結果カーテンという壁は外れてしまうわけだが……まぁ聞いた上でなら問題ないだろう。
■木里嶺 静織 > ……泣く以上が浮かばなかったのかもしれなかった。
ただ、カーテンの向こうの人ら、ゆっくりと半身を起こして、マグカップと奮闘していた。
「……お兄ちゃんの、そんな姿は、見たく、ないです。……友達とのことより、ずっと、私、お兄ちゃんの……っ
」
「━━━━…………入って。も、大丈夫です。……でも、カップを、手に置いてくれれば、ちゃんと、自分の手で、飲みます、から」
自分の力で、自分の手でその程度も出来ないのが、少し悔しかったのかも、しれなかった。
■白鈴秋 > 「だろうな、家族なら当然だ、だからそうならなかったんだから間違ってねぇんだよ」
とだけ言うとそちらへと近寄る足音。
カーテンを開けてコーヒーを差し出す顔はそんなつもりは無いが酷く不機嫌そうな顔。
「……話を聞いてじゃねぇからな。この顔は生まれつきだ」
変な勘違いをされたくないのでそう断るとコーヒーカップを手元に置く。
本人が言うなら問題は無いのだろう。
「ほら、こぼすんじゃねぇぞ。服の代えの場所まではしらねぇから明日、先生にコーヒーまみれの姿みて怒られる羽目になるぞ」
そう言って椅子に座る。包帯を巻いた右腕を軽く握ったり開いたり動かしたりとしていた。
■白鈴秋 > 「さて、俺はそろそろ行くか。一応けが人って大義名分があるお前と違って俺はバレると面倒な事になりかねねぇからな」
コーヒーを飲み終え、Tシャツの上からジャージを羽織り、椅子から立ち上がる。
「……あぁ、あれだ。大体昼休みは屋上にいるから。もしまた変な夢みて話したくなったら来い。話くらいは聞いてやる」
初めからがんばれと言って突き出して上手く出来るわけも無い。だから初めの間位は話し相手も必要なはずだ。
だから、変な夢を見たら―つまりは教室に居づらいのなら―話し相手くらいにはなる、そんなニュアンスでそう伝えると歩きだす。
コーヒーのカップをサッと洗い。部屋から出て行った。
ご案内:「保健室」から白鈴秋さんが去りました。
ご案内:「保健室」に木里嶺 静織さんが現れました。
■木里嶺 静織 > ━━━━━珈琲の匂いに、少しだけ平穏を得て。
少女は名前も知らない相手との一時に、その日の終わりに、ようやくの安堵の眠りを得た。
「…………お昼、休みに」
━━……今度は、ちゃんとしっかりと話せるように。
ご案内:「保健室」から木里嶺 静織さんが去りました。