2015/06/27 のログ
ご案内:「教室」に阿賀佐 メアリさんが現れました。
阿賀佐 メアリ > 私語の飛びかう教室の扉が開く。
制服を着崩した少女に視線が集まるとピタリと私語が止む。
代わりに聞こえてくるようになったのはささやき声だ。

■女子生徒A「あの疫病神まだ学校にいたんだ……」
■女子生徒B「やめなよ聞こえたら殺されちゃうよ……」

いずれも少女のことを中傷するようなものばかり。
少女の名は阿賀佐メアリ。この学園の二年生である。
この教室に入るのも数日ぶりだ。

阿賀佐はささやき声を気に留める様子もなく席へと向かう。
他の生徒と離れた席へと腰を下ろした。

阿賀佐 メアリ > こうしたささやきの中傷は阿賀佐にとっては日常茶飯事ではあるが気にならないというわけではない。
本音を言えばあまり教室に足を運びたくはない。
それでも学業というものは大事である。
テスト期間も近い、怠って成績が下がるという惨めな思いはしたくないものである。

講義に集中する。
本当はポケットにある耳栓を使いたくなるがそれでは講義を受ける意味が無い。
それに無視し続ければささやき声も減ってくる。
あちらもそれ以上は何もしてこないというのだから。

阿賀佐 メアリ > こうして授業に集中していれば自分の異能についても考えなくても済む。
この古典の講義は苦手な教科のため頭を抱えるが。
漢字の羅列を理解するために頭を悩ませるのは平和的なものなのだと。

こうして長くもあり短く感じられる講義もお終わり、生徒たちは教室を私語混じりで退室していく。
阿雅佐はそれに混じって出て行くことを避けてしばらく教室に残っていた。
五分ほどもすれば出入りも少なくなるからだ。
こうして人との接触を避けるのだ。それまでは窓の外を眺めている。

ご案内:「教室」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > その時である。プラチナブロンドの少女――阿賀佐の視線のはるか先から、教室の方向へ何かが飛来しつつあった。
そして――CRAAAAASH!窓ガラスを突き破り、橙色に身を包んだ少女が突如として教室内へ乱入する!
その少女、畝傍・クリスタ・ステンデルは、先日異邦人街で購入したばかりのフライトパックで試験飛行を行っていたところ、
未熟な飛行技術と慣れない飛行へのプレッシャーから、つい慣性制御を誤ってしまったのだ!
窓ガラスの破片でボディスーツはところどころ破れ、右の頬からは出血!
さらに畝傍の肢体はフライトパックの噴射に振り回されるように8の字を描いた後、阿賀佐へと迫る。このままでは衝突は避けられない!

阿賀佐 メアリ > 教室に響き渡る窓ガラスの割れる音。
飛び込んできた何かの存在を認識した瞬間に阿雅佐は確信した。
『こっちに飛んでくる』と。

「はぁ……」

諦めのため息。
席に座った状態で避けられるはずもない。
せめて被害を抑えるように腕を構えてそのまま衝突に備えて―――

吹き飛んだ。

途中で起動がブレたのか直接激突することはなく接触する形となった。
いくつかの机を巻き込んでそのまま床へと仰向けに倒れこむ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍はしばらく気を失っていたが、気付くと、まずは抱えていた上下二連式ショットガンを取り落としていないことを確かめる。
このショットガンはある養護教諭から借り受けているもので、無くしたとなれば大変だ。
手触りを確かめショットガンの無事を確認した後、倒れている阿賀佐の姿が視界の隅に入り、駆け寄って声をかける。
「だ……だいじょうぶ!?ごめん……ほんとにごめん。けがはない?」

阿賀佐 メアリ > 上半身を起こして立ち上がる。
周りには数枚の黒焦げになった呪符が散らばっている。
頭が朦朧としているのか手で抑えている。

畝傍が駆け寄ってくるのがぼやけた視界に移ると静止させるかのように手のひらを突き出す。

「別になんともないわよ……構わないで」

あしらうかのような口調、足元はややふらついている。
頭を打ったのか額から血が一筋流れる。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「でも……血がでてるよ。今、保健課のヒトをよぶから」
端末を操作し、保健課に連絡をとろうとする。
畝傍は狂人ではあるが、良識を失っているわけではない。
眼前に怪我人がいればなるべくとれる手段をとるし、自分のせいで傷ついてしまったなら尚更そうせねばならないと思っていた。
しかし今、畝傍には医療用品の持ち合わせはない。なので、保健課に連絡する程度が精一杯だ。

阿賀佐 メアリ > 「……要らないから……要らないから!」

二度の拒否、それは拒絶の意志であった。

「こんなの大丈夫よ……」

ハンカチを取り出して頭の傷を押さえる。
その様子を見ていた残っていた生徒のささやき声が聞こえる。

■女子生徒C「あーぁ、またいつものね……」
■女子生徒D「人が窓から突っ込んでくるのは珍しいけど……」

声を気にしてか阿賀佐は教室から出ていこうとする。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……わかった。キミが、そういうなら」
端末の操作をやめ、仕舞い込んで。
「まって。キミ、なまえは?」
その場から去ろうとする阿賀佐に、畝傍は名前だけでも聞いておこうとする。

阿賀佐 メアリ > 「……なんであんたに教える必要があるの?」

最後まで拒絶の言葉で返して阿賀佐は教室から去っていった。


■女生徒C「あはは、あの疫病神に名前を聞こうとしたって無駄だってば。」
■女生徒D「そうそう、いっつもあんな感じだもんね。 関わりたくないけど」

その様子を見ていた女生徒が笑いながら声をかけてきた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……いっちゃった」
名も告げず去って行った阿賀佐の様子を呆然と見送ったのち。

「……やくびょうがみ?」
声をかけてきた女生徒の言葉に、畝傍は疑問を抱く。
畝傍の表情はやや険しくなった。
「それって、どういうこと?」

阿賀佐 メアリ > ■女子生徒C「そのままの意味よ。 あいつは不幸を招くのよ」
■女子生徒D「そうそう、周りにも被害が出るからたーいへん」
■女子生徒C「だから関わらないほうがいいわよ」

女子生徒が言うには阿賀佐のあの様子はいつものことらしい。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ふこうを、まねく……」
畝傍はいくつかの可能性を考えた。
それが彼女の持つ異能だろうか?あるいはそういった体質なのか?
いずれにせよ、阿賀佐に対する女子生徒の発言は、畝傍の価値観として好ましく思えるものではなかった。
「……ふうん」
関わらないようにする、などとは決して言わない。畝傍はそういったことを好まない少女だ。
一旦ショットガンを近くの机に置いた後、黙って教室内のロッカーを開け、箒と塵取りを取り出すと、飛び散ったガラスの破片を集めだす。

阿賀佐 メアリ > ■女子生徒C「べつに死にたければいいんだけどねー」
■女子生徒D「でもアイツそういうのめっちゃ嫌がるけどねー」

阿賀佐が居ないことをいいことに笑いながら語っている。
そのときチャイムの鐘が鳴る。

■女子生徒C「あっ、次の講義始まっちゃう!」
■女子生徒D「それじゃあ掃除がんばってねー、自業自得ー」

女子生徒たちは慌ただしく教室から出て行った。

ご案内:「教室」から阿賀佐 メアリさんが去りました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「(……なんかヤだな、あのヒトたち)」
阿賀佐に対して言及していた少女たちの印象は、畝傍にとって決して良いものではない。
むしろ、畝傍は阿賀佐のことが気になっていた。
「(あのコ……おなじニオイはしなかったけど。たぶん……ひとりなんだ。……むかしのボクと、おなじだ)」
自分に名も告げず去って行ったあの少女は、きっと孤独なのだ。畝傍はそう感じていた。
畝傍はヘッドギアを操作し、頭上に開いた円形の収納ポータルから新聞紙とガムテープを取りだすと、集めたガラス片を新聞紙に包み、ガムテープをしっかり巻いた上で捨てる。

畝傍・クリスタ・ステンデル > その後、置いていたショットガンを再び手に取ると、畝傍は早足で教室を後にしたのだった。
割れた窓ガラスの修繕費は後日、畝傍が『狩り』で稼いだ資金から支払われることとなったらしい――

ご案内:「教室」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。