2015/07/23 のログ
■服部ローニャ > 「うむ。天職である上、昼は1生徒、しかしそれを装って夜には《SHINOBI》になる。
密書なぞ、《SHINOBI》が読むものではないぞ。それこそ主に逆らうようなものだ」
ホゥ、という鳴き声を微かに漏らして腕を組みながら自信満々に語る。
そもそも主と呼べるような人物に出会えるのかはこれからのローニャ次第ではあるのだが
「故に、拙者はこの学園に入学したのだ。
他の学生と違和感が無いように《ミョウジ》というものも頂戴しておるしな」
少女の語りは中々止まる事はない。その中身が《SHINOBI》に関する事なら尚更である
そもそもこの少女は《SHINOBI》に徹する為に苗字まで手に入れたのは周りに溶け込むというのが第一なのだが
この苗字にしたのはただの憧れで選んだというのはまた別の話である
「しかし同類であるなら拙者達は看破出来る…いやしてみせるぞ。ヨキ殿!拙者は仲間を見つけてみせるぞ!」
何故か意気揚々と仲間を見つける宣言をする。
それだけ、ニンポウについてや文化について知りたいだろう
そこに視界の端から動く人影が見える。どうやら青空教室が終わったらしく、生徒が一部解散していくような影が見える
「…うむ。拙者はそろそろ行くぞ。
あまり、ヨキ殿の手間をかけさせるのも良くないのでな。
また機会があえば出会おうぞ、ヨキどノッ」
少女の《SHINOBI》像というものは建物の窓から飛び出そうとした所、窓枠に足を引っ掛けて顔から地面に落下していく
少女は負けない。再び外からヨキの方へ振り返って元気よく
「サラバだ!ヨキ殿ー!」
《SHINOBI》にあるまじき大声でそのままどこか外の世界へ溶けこんでいくのであった
ご案内:「職員室」から服部ローニャさんが去りました。
■ヨキ > 「若くして、世を忍ぶ仮の姿とはな。格好良いではないか?
ゆくゆくは常世島の平和を守る一員となってもらうか」
(なあ、と、小首を傾げて微笑む。
語る声とは異なる梟の鳴き声を耳に留める。たしかに梟だ、とばかりに)
「そうか、服部君、というのはあとから手に入れた名前であったか。
このヨキは独りゆえ、ヨキにも姓はないでな」
(好きなものを輝くように語り尽くす様に、ひとつひとつ頷いて応える。
ローニャのきっぱりとした宣言に、本を小脇に抱えて拍手する)
「頑張ってくれたまえ、ヨキは君のように前向きな生徒を応援するぞ。
ヨキは忍者には明るくないが、他の話なら出来るのでな。
いつでも遊びに来るがよい――
!!」
(そのままにこやかに見送――ろうとしたところで、窓を越えたローニャの身体が一回転するのが見えた。
彼にしては慌てた様子で窓枠へ駆け寄り、外を見る。
ローニャが立ち上がって手を振る様子に、些かほっとして息をつく)
「おお、また会おうぞ。気をつけるのだぞ、……前を見よ!」
(ローニャが転ぶことのないように、大らかに手を振り返す。
その姿が見えなくなると、やれやれ、と優しげに笑って手を降ろす)
■ヨキ > (やがて独り残ると、窓から離れて席へ戻る。
ローニャに見せた画集を、ぺらぺらと捲って微笑む。
本が増えた分、捲る機会も少なくなったものであったが、ローニャの晴れやかな顔を思い出しては微笑む)
「…………、」
(本を、立てられた他の本の中に戻す。続けてもう一冊を引き抜く。
絹の上に鮮やかな色彩で描かれた画が、大判で収められたもの)
「……………………」
(付箋や目印はない。が、目的のページをすぐに見つけ出す。
本文には、日本語に似て非なる、曲線の絡み合った文字が連なっている。
一枚の画。
武器を振り上げる民衆に囲まれて、焔に灼かれる黒い犬。
この世界のいかなる文字体系とも異なる、キャプションのひとつを読み上げる)
「《邪霊の》――《調伏せらること》」
(笑うでも怒るでも、悲しむでもなく、ただその画を見下ろしている。
しばらく眺めたのち、目を伏せて表紙を閉じる)
「…………。忍者、か」
(笑う。
『門』の向こうを思い出して、呟く。
書物の上に描かれた日本の歴史と、似た根を持つであろうかの山々を)
「――ヨキを討たんとするような主を、くれぐれも見つけてくれるなよ」
(このヨキが、君の敵とならぬように)
ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。
ご案内:「ロビー」にビアトリクスさんが現れました。
■ビアトリクス > 鳴る終業のベル。教室から吐出される生徒たち。
その中にシャツにスカートのいつもの服装の彼もいる。
たどり着くのは入り口ロビー。
人の集まっていない長椅子を見つけ、そこに腰を下ろす。
鞄から、スケッチブックと鉛筆を取り出す。
紙と書くもの、最低限のこの二つがあればどこでだって絵は描ける。
授業と授業の間隙を縫って、軽く何かを素描する。息抜きだ。
あまりにも日常的すぎて、すでに身体に染み付いている一連の所作であった。
■ビアトリクス > 本当は紙も、書くものもいらない、そう母が言っていた。
描画魔術は――現実というキャンバスに思念を描画するように
現象を引き起こすからそう呼ばれるのだ、と。
キャンバスが現実なら、筆は自分自身、ということか。
その境地に至るには、あまりに未熟すぎる、とビアトリクスは思う。
鉛筆を走らせる。
というよりは、走る鉛筆に指と腕が引きずられるような動き。
自分で自分の動きがあまりに自動的すぎて、
この肉体は、絵の奴隷でしかないのではないかと思う時がある。
手癖で画用紙の上に生み出されるのは、小さな天使のイラスト。
デフォルメされた等身。柔らかく丸っこい筆致。見えない表情。
■ビアトリクス > 天使という題材をビアトリクスは好む。
いや、題材としてだけではなく――存在自体への憧憬。
人の姿形をしながら、人の煩悶からは解き放たれた高次で美しき存在。
それに――強く、なりたい、と思う。
神と名乗る存在とは話をした。
しかしビアトリクスにとっては少し強い力を持つ翼の生えた幼女にすぎない。
あるいは彼女は本当に神であったのかもしれないが、
だとすれば神とは零落し陳腐化してしまったものだな、と思う。
神を信じる? 会った。常世で。
天使は画用紙の上で膝を折り曲げる。
ご案内:「ロビー」に叶 明道さんが現れました。
■叶 明道 > 疲れた様子で響く不規則な硬質。
ロフストランドクラッチを床に突き立てる音のその後に、
必ず右足の、引き摺るような足音がついてまわる。
「はァ……」
ため息混じりに、廊下の向こうから人影がひとつ。
改造された制服。耳に開けられた二つのピアス。
やや間の抜けたシャツを抜かせば、ちんぴらとは言わずとも不良然としたスタイルであることは伺える。
彼はつかれた様子で、ロビーに据え付けられた自動販売機に硬貨を投入する。
横目に辺りを見回せば――スケッチブックに筆を走らせる少年、いや、少女の姿。
思わず、
「ハッ」
嘲笑めいた笑いが漏れる。
同時、スポーツドリンクのボタンを押した。
■ビアトリクス > 一人では寂しかろう、などと感傷的なことを考えたわけではないが
ページの上にもう一人天使を増やそう――とさらに鉛筆を動かしかけたところで、
着崩した装いの男子生徒と視線が合う。
嘲弄を吐き出すような笑い声を、耳聡く聴き入れてしまった。
「……、何か気に障ることでも?」
再びスケッチブックに視線を落とす。
■叶 明道 > 「気を悪くしたならすまないね」
てんで悪びれた様子もなく肩を竦めてみせる。
その息ややや荒く、明らかな疲労が見て取れた。
厄介事が嫌いな少年は、けれど疲労の回復を優先したらしい。
少女の近くのシファに座り込んで、スポーツドリンクの蓋を開けた。
「青春だ、と思ってな」
その指には迷いが走っているのか、苦悩が走っているのか。
少なくとも少女なりの想いが載っているに違いない。
明道の気だるげな表情の奥には、明らかにそれを軽んじる色が混じっていた。
ソファの横に立てかけたクラッチ。
その柄を撫でながら、明道は缶の中身を一口呷る。
■ビアトリクス > 画用紙に接した鉛筆の先が、滑る。
「青春、ね」
眉を寄せた。
そう深淵な考えに没頭していたつもりでもなかったが、
ずいぶんと安い言葉でまとめられたものだ。
顔を上げ、横目で様子を伺う。眼に入るのは硬質の杖。
「つまらないやっかみはやめてほしいね。
自分が満足な青春を送れていないからって、さ」
枯葉のこすれるような声。言葉を選ぶつもりはなかった。
■叶 明道 > 満足な青春を送れていないから。
なるほど、道理だ。少女の言葉は至極当然のように突き刺さる。
けれど、そんなものは痛くもないのと同じこと。
壊死した神経にはさほどの痛痒も与えはしない。
「じゃあおたくは満足してるわけ? 俺がやっかむぐらいに」
クラッチは撫でたまま。少しだけそれに体重を預けて笑う。
頬をひきつらせるような、そんな笑い。
一瞬、そのスケッチブックに視線を移した。
■ビアトリクス > 放った刺には手応えを感じない。
(悪意には慣れている、か)
先日話したのが善意と慈悲の塊のような人間であったことを考えると、
ひどい落差であるなと内心笑う。
それを除いても最近は、善良な人間とばかり話していた。
こういう相手と言葉を交わすのも、バランスを取るために必要かもしれない。
「そう訊かれるとわからないな。
そもそも、満足なんて比べられるもんじゃないし」
スケッチブックを覗けば――
鉛筆の黒で描かれた、膝を丸める、小さな翼と光輪を持つ天使。
ビアトリクスの信じる善性が結実したような、繊細な像。
「……でもあんたはそういうの関係なしに、
あらゆる何もかもが嫌いなんじゃない?」
視線を合わせずに、冷ややかに言う。
■叶 明道 > 「…………」
目を丸くした。眠たげで、据わった瞳が少しだけ開いた。
「へえ」
棘が刺さったわけではない。だが、少年の心の外側を撫でた。
「美術屋の観察眼って奴? 初対面の相手に随分な言い草だな」
肯定はしない。否定もしない。認めようが認めまいが同じことだ。
態度が変わるわけじゃないし、ましてや心を許すなんてことはない。
だから、
「あんたは逆に"それ"が好みか。ウブなんだな」
あくまでも俗っぽく、乱雑な言い回し。
スケッチブックの天使を揶揄しながら身体を傾ける。
スポーツドリンクの冷たい感覚が身体を降りていく。
■ビアトリクス > 「あんたみたいな奴は、よく知っているからね」
振り回す手が届く何もかもを適当に殴りつけているようなものだ。
自分の抱えるそれを戯画化したような、目の前の少年の隠さない悪意。
似通っているからこそ、冷静に見据えられるし、親しみすら覚える。
無遠慮な言葉に、長椅子の上でわずかに身じろぎを見せる。
「……さて、ウブかどうかはわからないな。
するとあんたは、肉と脂がこってりと乗ったような女体が好みなのかい」
■叶 明道 > 「そこまでの異常者を気取るつもりもないけど。そういうのも悪くはないんじゃない?」
くつ、と笑みを漏らす。
抱くには幼くとも熟していても、まあ楽しみの分類は違う。
流石に描かれた天使を抱いては犯罪者にすぎるというものだが。
クラッチを指で叩くと、スポーツドリンクをもう一口。
唇を湿らせながら、視線を滑らせる。
「顔は、描かないのかい」
■ビアトリクス > (あくまで自分については何一つ語らないんだな)
スキを見せない男だ。まあ、行きずりの会話などこのような物だろう。
興味がないわけではないが、わざわざ対価を支払って踏み込むほどでもなく。
指先で鉛筆をくるくると回す。ため息を一つ。
「描かないさ。描くと絵から“出て”くるかもしれないだろ。
それが怖いんだよ」
冗談とも本気とも取れるような平坦な口調で、その問いに答える。
■叶 明道 > 「"出て"くるね……」
じっとそれを見つめる。
真意は知れない。ただ、興味深そうに。
少しだけ。五秒ほど、だろうか。見つめて。
不意に目をそらした。いつの間にかクラッチを握りしめていて。
「なるほどね。……そいつはどういう天使なんだい」
スポーツドリンクを呷る。そのまま、口元を隠すようにしながら尋ねた。
■ビアトリクス > どういう天使なのか――か。
どういう天使でもない。ただ指の動くに任せて描いただけだ。
そう簡潔に答えても問題はないだろうが、どうしてか、そうする気にはなれなかった。
少しの間、思索に沈む。自分にとっての天使とはなにか。
「天使ってのはそもそもキリスト教美術で扱われたモチーフなんだけど。
今日イメージされるエンゼルにそういう宗教色はないよね。
じゃあ現代人にとっての天使、というのはなんなのか、というと」
やや意識的に主語を大きくする。
「人間は空が飛びたい、って一度は夢想するだろ。だから翼がある。
白く透き通った身体。これは無辜の象徴だ。
そして、いつのまにか生まれた、無性である、という思想。
これはつまり人間的な欲望から解き放たれていることを意味している、
そうは考えられない?」
「前置きが長くなったな。
つまり、この天使は、どんな天使でもない、ということになるね。
単に憧れが仮託され、像として結ばれただけの、絵にすぎない」
一息に語り切る。
鉛筆を手にしていない方の手で首の後ろを揉んだ。
■叶 明道 > 「欲望から解き放たれた自由な天使、ね」
そこで、ようやく初めて。少年の瞳にまともな色が灯った。
澱んだような。怯えのような。或いは呆れのような。
それはほんの一瞬で、軽く瞼を閉じて開けば元の通り。
あっという間のうちに体勢を立て直す。
少年にとっては。その天使の表情は笑っていたように見えて。
百の言葉よりも痛切にその心を打ちのめした。
「つまりあんたはこいつに憧れてるわけか。
無垢で、無辜なこいつにさ」
改めて、例の引きつったような笑みに戻し。
そこでようやく缶を下ろす。
「芸術屋ってのはもっとひねくれてるもんだと思ったけど」
■ビアトリクス > 少年の微かな変容に気づいているのかいないのか、
平静な調子で言葉を紡ぐ。
「いや、ひねくれ者ばっかだと思うよ。
ピカソの女性観とか、現代的な価値観に照らし合わせたら
最低なレベルでねじれてるから。
……ただ、根底にある思いは真っ直ぐなことが多いと思う。
いや、一般論だけどね」
目を閉じる。想起するのは『ピュグマリオンとガラテア』。
命を得た乙女の像に接吻する彫刻家。
あれほど純粋な想いが絵画の形になったものも、そうはない。
「まあ、ぼくの話をすると。
確かに憧れているよ。天使の翼を得て飛び立ちたい、そう思っている。
自分の犯した罪が、追いかけてこないような高さまで、ね」
力強い語り方、とはいえない。しかし堂々とした声。
誤魔化すことはできる。嘘をつくこともできる。そうはしない。訊かれれば、答える。
好きなもの、憧れるものを偽ってはいけない。
それは、この学園に来て、学べたことの一つだ。
■叶 明道 > 「ふゥん……」
堂々と告げる少女の姿。
それは明らかに、己とは違うそれだ。
偽らずに、好きなものを好きと告げるその言葉。
それはどう足掻いても少年の手には届かぬ態度。
「やっぱり青春だな」
最初の繰り返し。声色は低く響き、クラッチを握る力は強くなっている。
そこに、馬鹿にした色はない。
それでも最初の繰り返しを選択したのは――。
じわり、と。アキレス腱が痛む。最早感覚すら麻痺したかのように思えたそこが。
「は」
息切れなどとうに終わったはずなのに、熱を持ったように痛むのだ。
「得られるといいな」
馬鹿にした言葉でも、激励する言葉でもない。
ましてやビアトリクスのあこがれを祈願する言葉でもない。
皮肉か、賞賛か。或いはそれ以外か。
明道はゆっくりと身体を持ち上げながらそう投げかけた。
クラッチのきしむ音とともに、ゆらり、と立ち上がる。
■ビアトリクス > 「羨む程度には満足に見えていたかい?」
肩をすくめる。
その言葉が繰り返された理由はわからない。
ほとんど、独り語りに等しい長広舌だった。
どのように受け取られたかなど、ビアトリクスの知る由もない。
少年の最後の言葉への反応は、無言で手を振るだけに留める。
そろそろ、次の授業が始まる。スケッチブックをしまい、席を立つ。
お互いに立っていると、向こうの顔は見上げなければいけない高さにあることがわかる。
頭ひとつぐらいは違うだろうか。
別れの挨拶のひとつもなく、明道へと背を向け、歩み去っていく。
ご案内:「ロビー」からビアトリクスさんが去りました。
■叶 明道 > 「なんだ」
背を向け、こちらも歩き出す。
「自惚れる程度は出来るじゃないか」
満足しているかどうか、分からないとは言いつつも。
つまるところ、そう返す事が出来る程度には。
熱を持った足はくたびれて。
クラッチを突き立てる音が不規則に響き渡る。
どうにも足が疲れてたまらなかったから。
火のついていない煙草を口に咥え、保健室へと足を運ばせた。
ご案内:「ロビー」から叶 明道さんが去りました。