2015/07/29 のログ
ご案内:「保健室」にサイエルさんが現れました。
サイエル > ダダダダ――

廊下は走っちゃいけませんの看板をスルーして
もう疾走。息を切らしつつ、最短距離。
すれ違わなかった――つまりはもうすでにいるか
もしくは違うところで仕事かのどっちか……

――いるなよいるなよ……

念じつつがらっと扉を開いて――……

「っ……はぁ、はぁ……」

タバコを吸ったあとからかそれとも歳だからか。
息が切れつつ開けて顔を上げれば……

「せーぃふ……か?」

少なくても、誰もいない。
よしよしと頷いて。
いつもの隠し場所を確認。
ある、ひとつもかけてない。

「……ふぃー……」

安堵の溜息。
そっと椅子に腰掛けて。酒を取り出しつつ。
とぽとぽと注いで飲む。

「あぶないあぶない――」

ウォッカが最高である。
安心も合わせて、格別だ

サイエル > 「さて、と――」

三ヶ月分の仕事をするべく、データを開く。
ID入力。入院患者のリストを閲覧。
退院者、学校の中にある要注意の欄をチェック。
家庭訪問――いや、”偶然”を装って接触。
診察した者達のデータを記しつつ。
来月までの、金銭的負担にならないよう
薬、診察の回数の打診。
同時――異能の異常などないかを財閥に上げるために資料を作成。
もうひとつおまけに本土への報告書を作っていく。

「――……」

くぴっと、酒を飲みながら。
光るディスプレイ。それを目に映しながら
言葉通り、3ヶ月分、仕事をこなしていく――

――ま、冗談ではあるが実際あったら設けもんだしなぁ

とか下心8割だが。

やればできるのだと、文句を言いつつ。
黙々と……

声をかけられてもきっと気づかないくらいに集中しつつ

サイエル > 「――そういや、蓋盛先生の専門って精神疾患、だったっけ?」

確かそうした”建前”のはずだ。
表では、おそらくそこまで褒められたそれでは無いが
ここではとても有効だ。いや、危うさはあるが
異能という特殊な問題を抱えた子が多い中
蓋盛先生の治療は、ある意味画期的とも言える。
自分の身を使うのと、それと同時。
”生徒の心のウェイトを占めてしまう”のが問題ではあるが
うまくやっているのだろう。今のところ不味かったという報告はない。
あぁ、あともう一つ。する側も中々に病んでしまうこともある
というケースも有るか。

――もう少し触れてみるべきかもしれないか

まぁ、きっとあの歳だ。若い先生。彼氏や彼女とかいるだろうし
そこがいそうなら一線引いて他愛のない話をすればよし。
見た感じ元気そうであったが、それこそ危険のサインという場合もある。
ある意味、いいキッカケかもしれない。今回のことは

「にしても、そうか。吹っ切れたかな」

クオン先生の言葉を思い出しつつ。
別の安堵を酒とともに、飲み干す。
ひっかかっていたが、大丈夫そうだと聞けば
自分が無理に接触することも無い。

――えっと氷、どこやったかな

と、冷やす様の氷をビーカーに入れて
とくとくとウィスキーを汲みつつ――一息……

サイエル > 本土への報告はいつも通り
”異常あり”と記して。
これで大体は終わりだ。
三ヶ月分。
デスクワークは得意だ。
一日あれば事足りる。
本気を出さないだけなのだ。でゅーゆーあんだーすたんど?

「うむ、明日本気出すって言葉を考えた人は偉大だ」

常々、そう思う。
便利な言葉だとつぶやいて。
パタリとPCを閉じた。
さて――

「何しよう」

ご案内:「保健室」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > 「うわあ……」
トマト味のプレッツェル菓子をかじりながらのんびりと現れる。
回り道ついでに諸用を済ませていたら保健室に戻るのは結構遅れた。

「仕事してた……」
ドン引きである。

サイエル > びくぅ……

ウィスキーを傾けながら、ぎぎぎっと後ろを見る。

「や、やぁ。さっきぶりですね?」

妙に硬い。ちょうどPCを閉じたところでもあり
机の上にはおつまみとか、柿の種とか煎餅とかお酒とか
どこに隠していたのか嗜好品の山である。

「シゴトシテマシタヨ、ええ」

どうだっと、胸をはるが
隠し切れないものもあるゆえにどこか頼りない

蓋盛 椎月 > 「別にそんなビビらなくたっていいですよ……
 あたしも似たようなことしてますし」

呆れた様子で丸椅子を引っ張りだして座る。
プレッツェルの抜け殻の菓子箱をゴミ箱に放り入れ、
机の上のせんべいをかすめ取る。
不良の保健室勤めが二人居ても案外仲良くはなれないのかもしれない。
同族嫌悪とでも言うのだろうか。

「仕事してる姿マジで初めて見たかも……」
三ヶ月毎日仕事をするのと、
三ヶ月に一回三ヶ月分の仕事をするのとでは、同じようで全然違う。
もちろん前者のほうがいい。理由はあえて解説するまでもないだろう。
それを説教できる立場に蓋盛がいるわけではないが。

サイエル > 「まぁ、そうでしょうねぇ……あっはっは」

ならよかったと、つぶやいて。
あ、こっちの煎餅のほうが美味しいですよとのんきに進める。
諦めたのと、納得したのと。
この辺りの速さはさすがとも言えるかもしれない。

「人に初めて見られましたねぇ。それなりに気を使っていましたが
 やれやれ、気を抜きすぎた。安心しすぎたかもしれません」

なんて冗談のように言いながら。
ビーカーを傾ける。

ご案内:「保健室」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > 久しぶりに保健室に来てみると、
珍しく『相談実施中』の看板が下がっている。誰か先
生が来ているのであれば、丁度相談したい事があるの
で都合が良い。先客がいる可能性を考えて、そっと扉
を開けて中に入ると、先生が二人いる。

「あの・・・お邪魔でしょうか?」と尋ねる陽子。

蓋盛 椎月 > 「……なんだか仕事をしている姿を見られたくないみたいな口ぶりですね。
 あれですか、サイエル先生はがんばってるところ見られたくない中学生男子ですか」
(ちゃんとわかりやすく働いてくれたほうが連携取りやすいのに)
という善の蓋盛と、
(別に連携とか取る気なんてないからどーでもいいけど……)
という悪の蓋盛が胸中で呟いた。

「うんにゃ別にぃ。何かご用事?」
現れた陽子にけだるい様子で返事する。
保健室内には明らかに不健全な倦怠ムードが漂っているのが見える……

嶋野陽子 > 『何かご用事?』との蓋盛先生の言葉に、

蓋盛先生の生徒に関する話なので、
蓋盛先生の方に向き直って話す陽子。

「ありがとうございます。実は蓋盛先生の生徒の蘆迅鯨
先輩についての相談なのですが・・・」と切り出す。

サイエル > 一応仕事の用件で来ているのだったと今思い出す。
酒を出したあたりで、引っさげておくべきだったかもしれない。
顔を覗かせたのが女生徒だと見るや
まぁ、ある意味都合がいいのかもしれないが。

『そんな若く無い。あとはそーだなぁ。あんま仕事したくないのと。仕事してるのを見せると生徒。遠慮しちゃうでしょ
 あぁ、あとPCのデータあとで見せますね。入院患者だった生徒の健康状態。把握しておいたほうがいいでしょう』

と蓋盛先生にだけ聞こえるように。

「――私も聞いて大丈夫なことかな? 席を外したほうがいいなら外すけれど」

と、一応告げて。蓋盛先生と同じようにくったりしつつ

蓋盛 椎月 > 「そりゃまあそうですけど教員仲間にまで
 そうする必要なくない?
 ……あ、お手数かけます」
呆れ顔は継続のまま、同じようにサイエルにだけ聞こえるように耳元でそう囁く。
あえて必要以上にヒマそうに装っているのは蓋盛も同じではあるのでよくわかるのだが。
仕事したくないというのも含めて。

「たちばな学級のあの子か。うん、いいよ、続けて」
せんべいをそのへんに置いて、聞く体勢を取る。

嶋野陽子 > 『うん、いいよ、続けて』と言われると、
陽子は昨日蘆先輩と初めてカフェテラスで遭遇し、
彼女が就寝時にテレパシーの制御が出来ないために、
寮で寝ることもままならないと聞いた事を話す。
「その問題については、今週登録した私の新機能がお
役に立つかも知れません。ちょっとご覧ください」
と言うと、陽子は先生から3mほど離れて立つと

(精神波バリア、up)と思考する。
陽子の腰辺りを中心として、直径3m程の、淡い桃色
の球状のバリアが出現する。

「これは、私を精神攻撃から守る精神波バリアです。
もしこれで蘆先輩のテレパシーをブロックできるの
ならば、蘆先輩はこのバリアの内側で安眠できるの
ではないでしょうか?」と説明する陽子。

サイエル > とりあえず、静かに異能で音をシャットダウンする。
聞いてもいいことなら、後で説明してもらえばいいだろう。

「とりあえず、私は何も聞いてないから。デリケートな問題もどうぞ」

そういう”異能だから”と、付け足して。

『どこからもれるかわからないでしょ。徹底的にですよ。まぁ、彼女のお話に集中して
 こっちは後で、どうとでもできますし』

異能で”音”を蓋盛先生にだけ伝播して、しゃっと視線を遮るように
ベッドのカーテンを開いて、ヘッドフォンをして――

蓋盛 椎月 > 「お疲れ様です」
と儀礼的に言葉を送る。

(そんなに徹底する必要あるのかなあ……)
さすがに保健医がマジでなんの仕事もしなくていいと考えている生徒は稀だろう。
それなのに徹底して仕事を隠すというのは、蓋盛の言う中学生男子ではないが
『本気の姿』を少しでも人前で晒すのを嫌っているだけなのではないか、と考える。
とはいえそれを踏み込んで問いただすつもりはない。
他の教員に期待するところなど別に何もないのだ。

「ふむ」
展開された、精神波バリアと呼ばれた帳をしげしげ眺める。
迅鯨の抱える異能の問題についてはもちろん知っている。
精神波バリア、については詳しくはわからないが、
彼女の説明する通りであるならそれは一部解決できそうだ。

「悪くない考えなんじゃない?
 そのバリアを生成する装置を迅鯨さんの寝床に設置できるなら。
 ……どちらかというとあたしよりも迅鯨さんにする相談に見えるけど」

「それとも何か副作用か問題でもある?」
考えられる問題としては、装置を動かすのに何らかのコストが発生するとか
精神波バリアが迅鯨の異能に有効かとは限らないこと、だろうか。

嶋野陽子 > 『それとも何か副作用か問題でもある?』
という蓋盛先生の質問に対して、

「先生、このバリアの中心がどこにあるか、よく見て
下さい」と言うと、ゆっくりと身体の向きを変えてい
く陽子。バリアの中心は、陽子の体内、子宮の上辺り
に位置する。

「生憎と、このバリアの発生装置は内蔵型で、エネル
ギー源と、他のバリアなどとセットで私の体内にある
のです。そして、複製はほぼ不可能です」と問題点を
告げる陽子。

蓋盛 椎月 > 「ああ」
把握した。あくまで『自分を守る』ための装置か。
バリア装置を切り離したり複製したりすることはできない、と。

「つまり添い寝するしかない、ってことね。
 だとすればますますあたしに相談するべき問題じゃないな。
 迅鯨さんの意思次第だよ」
話は終わったかな、とばかりに煎餅を再びかじり始めた。

嶋野陽子 > 『迅鯨さんの意思次第だよ』
と言われた陽子は、キョトンとして、

「つまり、後は二人で相談して、事後報告だけで良い、
という事ですか?」と確認する陽子。

蓋盛 椎月 > どこか呆けたような様子の質問には、
今度は蓋盛が意図をつかめなかったらしく、きょとんとした表情を浮かべる。

「ん? そういうことだけど。だって個人間の問題じゃない?
 それとも若い女の子同士が同棲して添い寝だなんていけない、
 みたいな説教をしたほうがよかった?」
首を傾げて薄い笑みを浮かべた。

嶋野陽子 > 蓋盛先生の言葉に、
「いえいえ、早速蘆先輩と実験してみて、結果次第で
その先についても相談します。ありがとうございま
した!」と、慌てて礼を言う陽子。

「サリエル先生にもご迷惑おかけしました!今度お詫び
にスコッチでもお持ちします。」と奥のサリエル先生に
も声をかけてから退出する陽子。

当然、陽子はサリエル先生の異能については知らない。

ご案内:「保健室」から嶋野陽子さんが去りました。
サイエル > 扉が閉まる音がすれば、静かにカーテンを開けて
着替えをしている女子高生のように顔だけ出す

「終わりました?」

声だけをシャットダウンしていたので、状況はわかる。

「込み入った話ではなかったです?」

蓋盛 椎月 > 「名前間違えてるよー」
慌ただしく出て行く姿を見送る。
確かに迅鯨属するたちばな学級で授業をやっている身ではあるが、
別に学級の生徒を管理しているわけではない。
生徒間で解決できる問題はそうしてもらったほうがありがたい。
仕事も減るし。テクニカルな話題はぶっちゃけた話苦手だ。

結局彼女が相談したかったことはなんなのだろうか。
いまいちつかめないままにぽりぽりと煎餅をかじる。

蓋盛 椎月 > 「あ、どーも終わりましたよ。
 まあ女子高生の茶飲み話ぐらいには大したこと無い話でしたね」
いまいちよくわからない例えを使って、サイエルに手を振る。

サイエル > 「いまどきの女子高生は怖いですよ
 きっと茶飲み話の内容はおやじ狩りですよオヤジ狩り
 あーこわ……」

なんて言いながら出てきて
静かにPCを開く。

「まぁ食べながら目を通してくださいな。今年度の入院、退院した生徒たちのリストです。要検査まで含めて結構いますよ
 精神側の方はまだそこまで把握してませんが――肉体的にはここにあるのがだいたい」

そっちはどうです? なんて呑気に柿ピー食べながら

蓋盛 椎月 > 「オヤジ狩りって何世紀前の流行語だよ……」
ぼやきながらもPCを覗き込む。
サボるときも徹底なら仕事するときも徹底だ、と感じる。
極端な男だ。

「厳密にリストにまとめたわけじゃありませんけど。
 一応見ます? 参考になるかどうかはわかりませんが」
資料棚を開けて一冊のノートを取り出して広げて見せる。
蓋盛の書いている保健室日誌だ。来客とその相談内容についても簡潔に記されている。
カウンセラーは別にいるが、保健室で応急手当やくだらないお喋りをしている間に
会話内容が深刻な相談にシフトする場合も多い。

サイエル > 「げ……そんなに古いの……やだぁ、おじさんの年バレる……」

なんて言いながら、ばりっと煎餅をかんで。
静かに。渡された日誌に手を通す。

――なるほど、結構だ。人数は少ないが……

「先生のお体や、精神の方は大丈夫ですか?
 ちゃんと、保ってます? いろいろ」

さり気なく訪ねてみて。

「なるほどなるほど。なんだかんだでやっぱ傷がある子が多いですね
 まぁ、若い頃に特別があれば普通か……」

顎をジョリッと撫でながら、目を細めた

蓋盛 椎月 > 「大丈夫か、か」
いくらでも解釈を広げられる言葉である。ちらちらと瞬く蛍光灯に目を向ける。
「大丈夫じゃなくなりそうになったらかわいい系の生徒の手を引いて
 ついたての向こうのベッドにしけこんでますよ」
教師としての倫理に真っ向から唾を吐くようなセリフを平然と口にした。

「今更するまでもない話のような気もしますけど。
 努力とか修練とかなく、文脈なく力を手に入れると歪むんですよね。
 自分は特別、みたいな勘違いとか。
 制御できずに周囲に被害をもたらしたりとか、そういう」
冷蔵庫からカルピスを取り出してコップに注ぐ。

「サイエル先生は確か……音を操る異能でしたっけ。
 その異能とは付き合ってどれぐらいになるんですか」

サイエル > 「それで晴れるなら、いいですがね」

ふむ――だいぶ危ないなと、推察する。
だがふむ。踏み込むべきかと、悩む。
ホンの少し悩んで――

「本当にそれができるんであれば、何も言いませんよ。ええ」

軽く。ほんの少しだけ軽く。ノックだけしてみた。

「あぁ、そうですね。そういう子も確かにいる
 しかし、それはまだ”わかる”からいい
 他人が認識できる。把握できる。振る舞いを見れば
 しかし、一番困るのは――」

その上で、かくして普通になる子たちだと。
暗に告げる。
明るく元気に”なんら変わらない”
自覚した上でも、だ。
一番、普通が――異常なのだ。

「あぁ、音って言っても伝播と遮断だけですが
 私は、人生の半分以上の付き合いですよ。そんなのより
 女性と付き合いたいですが――」

なんていいながら……そっとウィスキーで喉を焼いた

蓋盛 椎月 > 「おやおや、疑ってらっしゃる。
 これでも二年目ですからねえ。うまくやってみせますよ。
 養護教諭というのはなかなか楽しい遊びですから」

口元だけで笑う。

「仰りたいこと、わかりますよ。
 でも、『見える異常』を剪定、治療するのがあたしの仕事だと認識してますから。
 ……もちろん、『見えない異常』を『見える』ようには、努力しますけど。
 ……仕事、多いのイヤでしょ? サイエル先生も」
つまり、すべてを救うことはしない、と言っているのだ。

「半分ぐらいかあ。あたしも半分ぐらいですね。
 ……女性、ねえ。でもお付き合いできたらできたで
 相手をするのが面倒だとか言い出すんでしょ」
意地悪な笑みを浮かべる。

サイエル > ――うまくやる……

その言葉はどこか、自分に言い聞かせているように見える。
気づかないようにしているようにも――
そういう言葉を吐く人間をいくらでも診てきた……が。

「ふむ。まぁ、なら診断はやめておきますか」

他にもおそらく支えはいるだろうと。
ここは一旦引いておく。無理に迫っても良くない。

「……まぁ、そういうことです。ということで役割分担は、明白ですな
 見えてるのはお願いしましたよ。養護教諭。見えないのは、まぁそれなりにしておきましょ」

いいんじゃない? と肯定する。
別にすべてを救うとか自分にも無理だ。
だから、役割分担。せっかく二人もいるのだし連携が取れるのだから。

「……昔それで失敗したので言いませんよ。
 その面倒が、楽しいことだと失って気づきましてね?」

なんてらしいことを言ってみた。
いや似合わないことこの上ないが。

蓋盛 椎月 > 「お気遣いどうも。
 ま――うまくやれなくなったら、養護教諭やめて
 どっか旅にでも出ますよ」
幸いにして、うまく使えばいくらでも金にできそうな異能を持っている。
実際そうやって放浪していた期間は長い。

「おや、やる気充分ですね。
 見えないのを治療に導くの、結構難しくないですか?
 見えてるほうだって手はぜんぜん足りてないんで、
 別にこっちやっていただいてもいいんですよ」
少し意外そうに、サイエルの青い瞳を覗き込む。
真意を探り出そうとするように。

「なんだわかってるじゃないですか。
 あたしは面倒なのどうしても苦手なんで、長続きしないんですよね。
 続いて半年ぐらい?」
前にある女生徒に言った経験人数は十人とかだったか。
本当はもっと多かったかもしれないし少ないかもしれない。
ハッキリと覚えていないのだ。

サイエル > 「……いや、ソッチ以上に――」

まぁ、いいか。うん。
出れる状態ならまだいい。
しかし――そうは行かないのが青い春である。
まだ若い女性に、それがないとは言い切れないが
もちろん、彼女が、ではなく。相手が話してくれない場合だってある。
まぁその時はその時だろう。

「……やる気?」

はいい? っと不可解な声を上げて。

「見えないのを調べてるっていいわけになるでしょ
 いやー、よかったよかった。今引き受けてもらえてとってもよかった」

なんて茶化すように。目を細めて――

「こっそりいただくとかそんなー。こんなおっさんじゃうまくできないですよ」

と付け足して……

「おや、経験豊富そうなお言葉。まぁ、その面倒なのが良くなったら運命のお相手かもしれませんね?」

蓋盛 椎月 > 「言い訳、ね……
 それでごまかしきれるほど世の中甘いといいですけどね」
苦笑い。
見えない異常をいくら取り除いたところで加点対象にはならない。
少なくとも蓋盛はそう信じている。
だから自分は見えている異常に手を出しているのだ。

……まあ、今の彼の言葉をすべて信じているわけではないが。
あくまで底を見せようとしない、というのはわかった。

「運命、ね。さぁて、どうかな」
どこか馬鹿にするように笑って。

「さて、保健室で教員が二人でだべっててもしょうがないな……
 別のとこ行ってきます。あ、ゴミはちゃんと片付けといてくださいね」
丸椅子から立ち上がる。
堂々としたサボリ宣言にも見えるが養護教諭には保健室以外にも仕事はある。
やっぱりサボリ宣言かもしれないが。
ともかく蓋盛は保健室を後にした。

ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「保健室」にヨキさんが現れました。
ご案内:「保健室」からヨキさんが去りました。
サイエル > 「……あっはっは、ええ、ええ。任せておいてくださいな」

笑って見送る。静かに、PCを閉じた。

「甘くするのがサボり云十年の手腕ですよ。ええ、異能と同じくらい、この手のは慣れてますから」

そう告げて、一つ。考えた。
どうして、そこまで見えるに固執するのかと。
蓋盛という女性のプロファイリングとして。
見えているということは、自分だけではない。
周りにもあることだ。それをどうにかするということに悦を感じる?
いいや、違うな。もしかしたらもっと”深い”のかもしれない。
分からないが――

「あ、仕事したのに……ぐぬぬ、デートすらしてもらえないとは」

本当に悔しそうにつぶやいて。
しずかに――

「ねぇ、蓋盛先生。見えているのに見えないものは、どうなさるおつもりで?」

ぎしぃっと深く椅子に体重をかけてから
ぽつりとつぶやいて――

誰も来ることがなければ、そのまま適当に時間を過ごすだろう

ご案内:「保健室」からサイエルさんが去りました。