2015/09/19 のログ
ギルゲイオス > 構わねー、って奴じゃなかった場合不味い、ってのは今ので身に染みたのである。
(ややと大仰に、肩を竦める仕草と)

……相変わらずの、見事な現金さである。
我もアルバイト暮らしで、余り金が無いのだがな。
もっとも、カワイーやえのいい構図、をレンズに納める事が出来たのでな。
コレぐらいは、安い支払だと思うとするかの。
(言葉尻に交える、笑い声。
携帯を掌の中で弄ると、そのままポケットにへと突っ込んだ)

ははー、流石でござりまするのである!
(なんて、崇めるようなポーズの後)
いや、本当は一年で終わらせないといけないのであるがなっ
(しっかりと、突っ込みも忘れずに入れておく)

んむ?
(指に示されるように視線を動かせば、目に入る三文字)

宗教学、であるか。
あー、なるほど……確かに、正解も不正解も無いのであるな。
こんないい方すると、学者に助走をつけて殴られるかも、知れぬが。
つまるところ、ヒトが作り上げたおとぎ話、のようなモノであるからな。
解釈のしようは、千差万別、とでもいうべきか……
(片目を閉じると、喉元に小さく唸り声。
もっとも授業として、出ている訳で。
過去の宗教家が出した『答え』を正解として扱う、のであろうが)

鏑木 ヤエ > 「勿論。
 ガクセーのうちにきちんと失敗できてよかったですね、魔王様。
 身を以て学べる常世島ってのは中々にいい島ですねー」

(圧倒的なまでの棒読みであったが微塵も気にすることなく言葉を紡ぐ。
 「余計なお世話ですよコーハイ」、とちいさくひとつ)

「んー。
 やえが助走をつけてぶん殴るかもしれねーですね。
 実際御伽噺であるのだろうとは思いますけど。

 やえは「答え」が導けなくてですねえ。
 センセイにはお前向いてねー、とまで言われたのにこうして講義を取ってるんですよ。
 やりたいこととやれることは違う、ってのを身を以て体験しましたね。
 常世島サイコー、ってヤツですね。腹立たしい」

(特に腹立たしそうな様子もなく淡々と言葉を並べる。
 クッキーを抓みながらぼんやりぼんやりと外を見遣った。燃えるような夕景)

「かみさま、ってなんなんだろう、とか。
 かみさまはやえを助けてくれるのか、とか。
 そーんなツマラナイ話に思考を向けてしまうのでやえはラクダイセイなんですよ。
 模範解答、ってのがやえには書けなければイイコチャンにもなれないものですから」

ギルゲイオス > まさかこの歳になって、そんな学び方をするとは思わなかったのである。
もっとも、我の居た世界と、此方の世界は違い過ぎて。
普段から体当たり学習の連続、であることに間違いはないのだがな。
(ものっすごい感情の乗っていない言葉に、一瞬と目を丸くした後。
口の端を上げれば、顔を緩くと横に振った)

我が殴られるの!?
(物理的なお話に、一瞬と声が大きくとなって)

前に話した時は、答えの出ない問題が好き、と言っておった気がするのだが。
あぁ、そうか。
自分が答えが出ない、と思っているのに、授業では答えを求められる。
それがどうにも合わない、という事か。
確かに、思考を手繰るのと、授業を受ける、では全く勝手は違うしな。
(何についての悩みなのかと、ぼりぼりとクッキーと一緒に噛み砕けば、ははぁん、と納得して。
大体そういう事であるかな、とばかりに立てた人差し指をくるくると回した)

かみさま、であるか。
実際に神と名乗る存在に遭遇した事はあるが、ここで言う「かみさま」とはまた別なのだろうな。

一般的な認識であれば、世界やら生き物を作り出し、たかーいたかーい所から見下ろしている存在、とはまぁ良く言われるのであろうが。
何故作りだしたのか、見下ろして何がしたいのか、何故信じる者だけを救うのか、謎だらけであるな。
全能と謂われるのに、全ての民が神を信じている訳でもなく、向ける救いの手は限定的。
(此方の宗教に関しては、そうと詳しくもない。
本やらで齧った程度の言葉から、自分なりに思う事をつらつらと口にして)

……かみさまに助けて欲しい事、でもあるのかな?
(ちょいと視線を、相手へと向けた)

鏑木 ヤエ > 「そうですそうです。
 読心の術でも持ってやがりますかね、なんて。
 
 そうですね、正確に言うならば答えを出しちゃいけない、とやえは思うんです。
 だったらこの講義を取るな、って話になりますけどね。
 好きこそーってヤツを期待してたのもあればいろんな人の答えが聞けるのが楽しくて。
 人其々であるものに正解も不正解もないでしょうて。
 アマノジャク、って言えば一言で説明解説模範解答なんでしょうけどね、やえ」

(困ったように口元をほんの少しだけ吊り上げた。
 ゆらゆらと差し込む陽光に目をふ、と細めて)

「かみさまやっぱりいますよねえ。
 やえもこないだ教会でなんかかみさまだか天使だかと会話しましたよ。
 安っぽくなるからかみさまなら喋んじゃねーです、って言ってきましたけど。

 やえにとってのかみさま、ってなんなんですかねえ。
 それすらも曖昧なのにやえはかみさまに祈るんですよ。
 自分に理由を求めたくないから。圧倒的な責任の押し付け先がかみさまです。
 ぜえんぶ、かみさまのせいにしてしまえばシアワセですからね。

 そんな謎の多いかみさまについて知りたいけどやえは知りたくねーんです。
 なんせやえはアマノジャクですから」

(くるりくるりと髪の毛を弄ぶ。
 回しては解き、回しては解き。また回し)

「………どうなんですかねえ。
 それすらも今のやえにはワカンネーかもしれませんね」

ギルゲイオス > ふふん、中々凄いであろう?
こうやってこうすると心の中全てを……
(両手の指をウネウネと動かして)

ま、流石にそれは冗談であるが。
先も言ったが、前に話した内容から、察した範疇であるよ。
(二つ目のクッキーを口に運ぶと、砕く音が小さくと響く)

答えを出してはいけない、か……まぁ、世の中の宗教学者達も、答えの出ない問題をこねくりまわして、なんとなく答えに近そうなモノを生み出しているだけ、だとは思うのであるがな。
はは、教える教師にとっては、面倒くさい事この上ない生徒であるな。
教えた傍から、あれやこれやと捻くれる姿が、目に浮かぶ様であるよ。
(くくっと、隠しもしない笑い声と)

我の知る限りであれば、創造神と破壊神が。
今語る限りにおいては、前者が比較的近いのかもしれぬがな。

安っぽくか、確かにな。
神とは超常の存在である、と定義すれば、だ。
人々に語りかけた瞬間、目線が人と同じになってしまう。
つまるところ、こいつ何考えてるのかさっぱりわかんねー、ってのが神という存在、と言えるかもしれぬ。
(わけのわからないなにか。
なるほ、答えが出る訳がない)

ふむ……
(ぼりぼりと、また齧る音と共に、間が)
少々極端、になるが。
「ヤエの祈る神様」が、ヤエにとっての神様、なのだろうな。
理由もなく、ただ押し付ける為の存在としての、かみさま。
例えば自然崇拝であれば、洪水を神――つまり、災害を起こした存在と捉えた。
そしてイケニエを捧げる等して、鎮めた。
つまるところ、これはわけのわからないモノに責任を押し付けた、ともいえる訳で。
「ヤエの祈る神様」に良く似ているかもしれぬな。
ま、我の想像の話で、勘違いかも知れぬがな。
(一通りと言葉を紡げば、大きくと息を吐き出し。
ちょいと、肩を竦めた)

まさしく、それも答えの出ない問題、といった所か。
……少なくとも、今のところは、かもしれぬがな。
生きる、富、愛、その他もろもろ。
人が神に求めるモノはそれぞれであるし……何かの切っ掛けで、強く求める何かを、見つける事になるかも知れぬな。

鏑木 ヤエ > 「やえは『何故』が大好きだので。
 気になることがあったらそりゃあシツモンしたくなるでしょうて。
 質問もせずに教えられたことを鵜呑みにする生徒が果たしていい生徒か。
 それは中々に怪しそうですけどね。やえが捻くれてるのは否定しませんが。

 獅南蒼二の魔術の講義しかり、ヨキの美術の講義しかり。
 ぜえんぶ一度自分の中でぐちゃぐちゃに噛み砕いてからにしたいんですよねえ」

(目をやや細めて口元を吊り上げた。
 少々ぎこちないながらもどこか愛おしむような笑みをふ、と浮かべた)

「ははあん、創造神と破壊神。
 これまたマンガかソーサクか、って感じですねえ。
 ギルゲイオスの言葉を借りるなら御伽噺、とでもいいましょうか。
 ああ、でも今目の前にいるのは魔王様でした。
 このセカイも中々随分現実と夢物語の区別がつかないモンですねえ。
 実は全部夢でした、って言われても納得できますもん、やえ」

(ばりぼりと煎餅を食うが如くクッキーを食らう。
 それこそばきばきに噛み砕いているのだがどこぞのクッキーモンスターを彷彿とさせる。
 美味しいが汚い)

「そうですねえ。
 貴方のかみさまに祈りなさいな、なんて言葉もあるくらいですから。
 天使さまともまた違うかもしれません。やえのかみさま。
 自然崇拝、ああ。ニホンでもなかなか多かったと勉強してますよ。

 ただ、やえのいた場所は沢山教会があって、たくさんの人が祈ってたんです。
 死して三日目で復活する救世主さまに。
 でもやえはそれがかみさまには思えなくって。
 ………、きっと、きっとアマノジャクだったんでしょう。やえは」

(とんとん、とテキストをそろえて乱雑に鞄に突っ込む。
 さて、と小さく呟いておもむろに彼の頭にぽんと手を置いた)

「……ムズカシーこと考えすぎましたね。
 さ、学食行きましょう学食。今日は日替わりのどんぶりがおさかななんですよ」

ギルゲイオス > 自分の納得できない事は徹底的に追及する。
何故を追い求める。
我としては良い事だと思うし、つまるところ『学問』の基礎であるな。
ま、良い生徒か悪い生徒かは別として。
扱いにくい生徒ではあるかもしれぬ。
そういう意味では、宗教学を教える教師の力量不足、も有るのかも知れぬな。
(小さくと笑いを含めた後に、なんとなく悪い笑みに変った)

お主にとてはお伽噺や夢物語に見えても。
その創造神や破壊神――そして魔王にとっては、現実であるよ。
節操なくごちゃ混ぜになりすぎ、と言えばそうかもしれぬがな。
(世界の坩堝、を通り越して混沌と化しているこの島。
緩くと顔を横に振った後……ものっ凄い勢いでクッキーを咀嚼する姿を、若干驚きを含めた表情で見ていた)

ふむ、そういう言葉があるのか。
神とは、貴女の心の中に居るのです、みたいな感じであるかな?
我の世界でも、自然崇拝する種族はおったし、魔族自体宗教観が色々であったのでな。
案外、日本とはそういう意味ではなじみ易いかもしれぬな。

ん~……
(片目を閉じて、顎を撫でる)
それは、救世主、であって、神ではない、からではないかな?
死んで三日で生き帰るのは確かに凄まじいとは思うが、それはあくまでそういう力をもった人物なだけで、なにがなんだかよくわらかない存在、とはまた違う気がするのである。
(こてんと、頭が横へと倒れた。
どちらかと言えば、自分の世界に有った、初代魔王に対する崇拝、に近い様にも思える)

ぬぐぁ!?
(身長では此方が勝っている筈の相手、その掌が頭に乗っけられると奇妙な声を発する魔王様。
そのままスイと、視線をあげて)

たしかに、考え過ぎると腹が減るのであるな。
しかも、我は転移荒野に行って帰ってきたばかりであるし。
そろそろと、腹の虫も鳴りそうである。
(なんて言うまに、ぐー、っと音が。
小さく笑い声を含めると、ゆっくり立ち上がって)

それじゃま、行――の前に。
(そろりと立ち上げれば、一歩と踏み出しかけて。
自分が授業で使っていた席へ小走りで向かうと、一枚のプリント手に下げて。
同じ位の速度で、戻ってくる)

ご案内:「教室」から鏑木 ヤエさんが去りました。
ギルゲイオス > (という訳で、学食へと向かうご一行。
どんぶりなり、お魚なり。
奢る事となったのは……言うまでも無いだろう)

ご案内:「教室」からギルゲイオスさんが去りました。
ご案内:「保健室」に千代田さんが現れました。
千代田 > 「……困りましたわ……」

昼間の保健室、そのベッド上に座り込んでいる、橙色に身を包んだ少女が呟く。
眼帯に覆われたその左目からは、冷気を帯びた灰色の炎が溢れ出していた。

千代田 > 昨夜の住宅街での戦闘において、その命を狙う襲撃者を討つため、
本来の人格である"畝傍"から肉体の主導権を譲り受けた彼女――"千代田"であったが、
襲撃者を討ち果たした後、畝傍の人格と交信不可能な状態に陥ってしまった。
そしてこの日、交信途絶以前の畝傍の記憶を頼りに教室へ顔を出してはみたが、
主人格たる畝傍と異なり銃を持たず、年齢相応の話し方をし、何より常に左目から灰色の炎を溢れさせている彼女を、
同級生は案じる者もいれば、その様子の変わりようを見て避ける者もいた。
こうした状況への対応に慣れていない千代田は、逃げ込むように保健室へ足を運んだものの。

「……はぁ……」

未だ畝傍と交信することはならず、ただ溜め息を漏らすばかりである。

ご案内:「保健室」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > 昨夜以降、畝傍からの連絡は無かった。
やはり何かあったのかもしれない、と街中を探しまわってから、普段よく行く所から探すことを思いついた。
手始めに近場である学校をうろついていたところ、覚えのある匂いに気付き、それを辿って保健室までやってきたのだった。

静かに扉を開け「畝傍?」とたどってきた匂いの主の名前を呼ぶ。
「大丈夫?怪我してるの?」声量を落とした声で呼びかける。
きょろきょろと室内を見渡せば、ベッドに腰掛けた相手が見えるだろうか。

千代田 > 保健室の扉が開き、声が聞こえれば、千代田はその方向へと振り向く。
その左目から溢れる灰色の炎が、彼女――石蒜の視界にも移るかもしれない。

「……いえ。"千代田"は……大丈夫でしてよ」

少女のほうへ顔を向け、あくまでその肉体には怪我がないことを伝え。

「ただ……畝傍は」

俯き、意味深げに語る。灰色の炎は静かに揺らいでいた。

石蒜 > 「…。」畝傍の声、だがその喋り方は別人。再開の喜びは鳴りを潜め、警戒が首をもたげる。軽く腰を落とし、つま先に体重をかける、いつでも戦闘に移れる体勢。

「チヨダ……そしてその灰色の炎…畝傍から聞いています。混沌の力を嫌う、とも。」石蒜はかつて混沌そのものへと変じていた、今はその力は残っていないが、縁は残ると、とある腹黒シスターから何度も言われた。
もしかすると攻撃の対象となるかもしれない。ちらりと後方を見る、飛び退いて下がる空間があるか、確認した。

「畝傍に、何があったんですか。」警戒と、微かな敵意を覗かせながら、問う。
自分の経験からして、もう一つの人格というものは主人格を敵視するものだ、畝傍を無理やり封じて体を乗っ取っている、そんな可能性が頭をよぎった。

千代田 > 「ええ。話してくれていたようで……助かりますわ。……安心してくださいまし。千代田とて、あの子の親友を焼いたりなどしませんわ」

千代田自身もまた、視界に映る褐色の少女からはかすかに混沌との繋がりを感じていた。
しかし廃教会での一件が原因で畝傍から釘を刺されていた千代田は、混沌と繋がりのある者だからといって誰彼構わず焼く事はしない。
そもそも、いくら千代田であれ、畝傍にとって一番の親友であるこの少女を焼いてしまおうなどと考えることはできなかった。

「……わかりました。話しましょう」

顔を上げ、しばし間を置いたのち、千代田はゆっくりと口を開き。
畝傍と『黒フード』なる人物の命を狙う『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>と呼ばれる少女たちの存在、
昨夜の住宅街で畝傍を襲撃した『星の子ら』の一員にして異能者、淀・ツェツィーリエ・ハインミュラーとの交戦。
その戦闘において、畝傍が異能の行使によって自らの正気を焼かぬよう、
千代田が代わりに異能を行使するため、肉体の主導権を譲り受けたこと。
そして淀にとどめを刺す事はなったが、それ以降畝傍の人格とは交信できていないこと。
それらすべてを、石蒜に話す。

石蒜 > 「そう、ですか。」信じるに足る要素は少ないと考えたが、あからさまに警戒していては話が進まないと判断し、体を伸ばして二、三歩歩み寄る。

「そんなことが…。」畝傍が命を狙われていたことに驚くとともに、助けに入れなかったことが少々悔やまれた。助けていれば、千代田に交代せずとも済んだかもしれないのに。

そして、話の時系列から「では、あの"めえる"はあなたが打ったんですね。」と気付く。
こちらを心配させまいと、わざわざ畝傍の文面を真似たことに、僅かに残っていた警戒を解く。おそらく悪人ではないのだろう。
適当な椅子を引っ張ってきて、座った。

「原因は何か、思い当たりますか。畝傍が出てこれなくなった原因。」
足をぶらぶらと揺らしながら、問う。「私は…サヤが出てこれないように封じていたことはありますが、出てこれない、というのは…。」
自分の場合とは全く違うパターンに、自分では特に原因に思い当たらなかった。

千代田 > 「……ええ。そうですわ」

昨夜石蒜に送ったメールは、千代田が慣れない手つきで打ち、送信したものだ。
『炎』の化身たる千代田には、自身に善性が備わっているという自覚は無い。
ただ『炎』としての本能に従い、『混沌』とそれに通じる邪悪を焼き滅ぼすことこそが自身の唯一の目的であり存在意義であると、考えるまでもなく感じていた。
千代田の視界に座す褐色の少女のような、ごくわずかな例外を除いて。

「原因……いえ、まったく……」

と続けそうになった言葉をいったん打ち切り、しばし思考する。
肉体の主導権を譲り受けるまでは、畝傍との会話が通じていたのだ。――となれば。

「……もしかしたら。千代田が表に出たのは、ゆうべの事が初めてでしたから……」

千代田はこれまで、畝傍の脳内に自身の声を響かせ、会話を成り立たせていた。
しかし、表に出ている人格が完全に交代したのは、昨夜が初めてだ。
故に思い当たる節があるとすれば、お互いに慣れない人格交代の影響ではないか、と考えるしかない。

石蒜 > 「わざわざ気を使っていただいて、ありがとうございます。あの"めえる"がなかったら、きっと私はすぐに飛び出して、あてもなく畝傍を探しまわっていたことでしょう。」軽く、頭を下げた。
落第街や転送荒野にも向かっていたかもしれない、そうしていたら何かしら危険に遭遇していただろう。
石蒜は基本的に自己中心的だが、感謝の心ぐらいは持ち合わせているし、今はそれを出すべき時だ。

「初めての交代だった、と。」顎に手をやり、親指で顎の下をこすりながら、考える。
「ううん、人格の交代か……。私とサヤの場合ですが、ええと…言葉にするのは難しいですね…。魂が別ですし、体に入っていない方は刀に宿ってますから、それを交代するというのが、近い感覚ですが…。」石蒜の語彙ではうまく言い表せず、言葉を探しながら自分の人格交代を説明する。

「千代田さんと畝傍の場合、どうなんでしょう。2人ともその体に入っているんですよね。」

千代田 > 「ええ。千代田も畝傍も……ひとつの体の中に存在しているものですわ」

石蒜から受けた説明をしっかりと聞いたのち、答える。
畝傍と千代田は、石蒜とサヤのように表に出ていない人格を収める何らかの媒体を持っているわけではない。
一つの肉体、その精神の中に二つの人格が存在している、『二重人格』と聞いて思い浮かぶ典型的なイメージに近いだろうものだ。

「もっとも……千代田は後から入り込んだようなものですけれど」

俯きがちに呟く。千代田の人格は、畝傍が自らの異能――すなわち、『炎』の力――を行使し、
正気を代償として消費することによって、少しずつ形成されていったものであった。
それが一定に達した決戦以後、千代田は初めて、畝傍の精神世界にはっきりとした姿を現したのだ。

石蒜 > 「うーん……。」両手の指先を合わせて、弄くりながら考えこむ。
そういえば、石蒜が生まれた直後は、サヤと石蒜が同時に体内に存在していた。あれはサヤの魂がほとんど消えかかっていた時だから1つの体に収まっていたのだが。
その頃を感覚を思い出そうと記憶を辿ってみるが、まだ人格が安定してない頃だったためか、うまく思い出せない。

「それを言ったら…、私もそうですよ。壊れかけたサヤの魂の欠片から生まれた、異物です。」そして邪悪であった、千代田のように主人格を思いやることなどせず、消そうとしていた。遥かに質が悪いと言っていいだろう。だから、サヤを消すか、自分が消えるかしかないと考えていた。一緒に生きるには罪を重ねすぎたから。
「でも、畝傍は私のことを好きになって、救ってくれました。サヤとも和解して、今の私とサヤがあります。きっと、今度は私達の番なんです、千代田さんと、畝傍を助けなくちゃいけないんです。負い目を感じる必要なんか、どこにもありませんからね。」励ますように、元気づけるように。