2015/09/20 のログ
■千代田 > 「助ける……」
主人格たる畝傍は、石蒜/サヤを助けるため奔走し、闘い続けていた。
それは畝傍と記憶を共有する千代田にもわかっている。
再び顔を上げれば、座っている石蒜の顔をまっすぐに見つめて。
「……分かりました。千代田も……方法は探ってみますわ」
千代田は、自身の目的のため他者を使うことに負い目を感じるほど性格が良くはない。
だが、どのみち千代田一人では事態の解決はままならないだろう。
励ますような石蒜の言葉に、どこか憂いを帯びたような表情を変えぬまま返す。
「尤も……いつまた新たな『星の子ら』の襲撃があるかわかりませんし、もし荒事が起きたなら……その時は千代田に任せて下さいまし。千代田なら、何とかできますから」
"千代田"として行使する異能――『不浄の氷炎』<イーリディーム>にもまた、支払うべき代償は存在する。
しかし、それについては石蒜にまだ告げずにいた。
■石蒜 > 「私も、出来る限りのことはします。一緒に頑張りましょうね。」と人懐っこい犬めいた笑みを浮かべる。
畝傍に会えないのは寂しいが、恩を返せると思うと、少しだけ嬉しかった。
「何を言うんですか、命を狙われているんです、手助けしますよ。」心外だ、といった調子で
「私だって剣士です。確かに、不定形の相手には手を焼きますが、生身の人間相手なら遅れはとりませんよ。人刃一刀流の免許皆伝ですからね。」足を組み替えて、胸を張る。
実際その称号を手にしているのはサヤだが、記憶と経験を共有しているため、石蒜も同じ程度の腕前なのだ。極度のマゾヒストのために、攻撃をわざと食らう癖があり、勝率は芳しくないが。
■千代田 > 石蒜の言葉を聞き、胸を張る様を見れば、ようやく千代田の顔は綻ぶ。
「では……その時は、お願いしますわね?」
上がった口角を保ちつつ、石蒜へと告げた後、
千代田は畝傍がしていたようにヘッドギアに触れて操作、頭上に収納ポータルを開き、その中を漁る。
やがて取り出したそれは、寮内の自室で石蒜が絵を描いていた画用紙のサイズに合わせた額縁であった。
「……っと。これ……昨日、畝傍が買っていたものなんですの。貴女が前に描かれてらした絵……それが出来上がったら、収めるためにって」
そう伝え、画材店の大きな紙袋に入ったそれを、石蒜へと両手で差し出す。
■石蒜 > 「ええ、任せてください。」頼られたことが嬉しいのか、ニコニコと笑う。しっぽがあればパタパタと振っていることだろう。
相手がポータルへと手を伸ばすのを見て、何をするのかと見つめる。
一見畝傍と同じだが、僅かに違和感を覚えるその動作に、目の前の人物が畝傍ではないことを再確認して。表情には出さず、寂しく思った。
そして、紙袋を渡されれば「額縁、もう買っちゃったんだ。気が早いなぁ、出来上がってからでいいのに。」口では呆れつつも、その表情は嬉しそうだ。紙袋ごと、額縁を抱きしめる。
「ありがとう、早く完成させないといけませんね。畝傍が戻ってきたら、見せられるように。」
■千代田 > 「礼には及びませんわ。……そう、ですわね。千代田も……」
可能な限り早く、畝傍との繋がりを取り戻し、人格の交代を行わねばならない。
その間に『星の子ら』の一員が襲いかかってくれば、それを打ち払わねばならぬだろう。
この日は保健室へ駆け込んでしまったが、他の生徒や教師へ事情を説明する必要もある。
『狩り』の依頼が舞い込めば、それにも赴かねばなるまい。千代田は多忙であった。
しかし、畝傍の一番の親友が千代田にも協力を申し出てくれたおかげで、どうにか希望が持てる。
それ以上言葉を続けぬまま口を閉じると、かすかに見えたその希望を石蒜にも示すように、また口角を上げた。
■石蒜 > 「色々大変とは思いますが、手伝えることがあれば遠慮なくどうぞ。お手伝いしますから。」宝物のように額縁を抱き締める。
千代田のタスクがどれほど積み重なっているかを察したわけではないが、いくら記憶を共有していても、別の人間になってしまったのである、苦労は多いだろうとおぼろげに感じていた。
話が一段落して、ちらりと時計を見た。
「あ、そろそろ次の授業、ですよね。私はこの時間取ってないので、まだ居られますけれど。」サヤと石蒜はまだ日本語の読み書きが不自由なために、取れる授業は少なく、休みが多い。畝傍の時間割は把握していないが、授業があるかもしれない。
「あ、そうだ。夕飯、食べに帰りますよね…?作って、待ってますから。」事情を把握した今、家に帰らない理由はないと考えた。やっぱり一人で食べるのは寂しかったので、出来れば帰ってきて欲しかった。
■千代田 > 「授業……ええ、そうでしたわ。千代田は、この後も少し」
千代田は昨晩までの畝傍の記憶を探ることこそできるものの、
畝傍との交信が途絶えている現在、千代田の見聞きしたモノについての記憶が畝傍と共有できているかは定かでない。
なので交信が戻った時に備え、少しでも多く授業に出ておく必要があった。
ベッドから立ち、扉へ向かって数歩歩くと、石蒜のほうを振り向き。
「そうですわね。事情も話したことですし……今日からは、また部屋に戻ることにいたしますわ。……では、また放課後に」
そう言って扉を開け、橙色に身を包む少女は保健室を後にせんとする。
■石蒜 > やはり授業があったらしい、時計を見ておいて良かったと胸をなでおろす。
組んでいた足を下ろして、ぶらぶらと揺らしながら、相手を見送る。
「ええ、また会いましょう。」にこやかに答えた。
また、と言えることに、安らぎすら覚える。
畝傍が居なくなったわけではなくて良かった。確かに今は会えないが、いつかまた会えるのだ。
千代田が出て行って、扉が閉められれば
「大丈夫、また会える。」言い聞かせるように、つぶやいた。
ご案内:「保健室」から千代田さんが去りました。
ご案内:「保健室」から石蒜さんが去りました。