2016/01/31 のログ
■クローデット > 呪術は決して苦手な部類ではないが、魔具に組み込むという発想は今までクローデットになかった。
クローデットの師である母親が、呪術をあまり得意としていなかったのも関係あるかもしれない。
(…お母様に頼りすぎず、あたくしなりの手法で魔具作成術を高めることも、考えなくてはならないのかしら?)
そんな考えが頭をよぎり、廊下の端、教室棟の出口の近くではたと立ち止まる。
クローデットは様々な分野の魔術を一端の水準で使いこなすが…それでも、師を越えられたと感じたことはなかった。まだ、なぞるだけでも精一杯だと考えていた。
魔具作成術や錬金術の師である母を。属性魔術の師である祖父を。
………白魔術の師である曾祖母を。
(…少なくとも、魔具作成の…あたくしの得意分野である戦闘に関わるものについては、再検討の必要があるのかしら?)
ご案内:「廊下」に黒兎さんが現れました。
■黒兎 > 「御機嫌よう。」
はてさて、今日も今日とて暇を持余した私は、廊下を歩いていた。
そんな折に見かけたのが、この女子生徒である。
何となく独特の雰囲気を感じて遠くから様子を伺っていたが、
立ち止まったのでこれが好機と話しかけたのだ。
―――いや、別段用は無い。ただの冷やかしである。
「生徒が職員室に行くとなれば用は大抵決まっている。
何用で行ったのだ?私の退屈しのぎに聞かせてくれないか?」
職員室にこの時間にわざわざ訪れるのは、
どうにも真面目な生徒か、あるいは何かしら呼び出されるような事をした生徒だ。
こと、私が期待するのは後者である。
■クローデット > …と、物思いに耽ってしまったのだろうか、かけてくる声がある。
そちらを振り向くと…黒の印象が強い、女子高生の姿。
「ええ、ごきげんよう」
挨拶をされれば、柔らかく艶のある微笑で挨拶を返す。
「…大した用ではありませんわ。
図書館で参照したい資料がございましたので…その閲覧許可の申請のためです」
柔らかい笑みのまま、そう答えた。
閲覧許可が必要な資料はよほど高度か、貴重か、危険なものかのいずれかなのに、この女性の表情は微塵もそれを感じさせない。
…どこか、女性の視線が黒兔の目の…その、更に奥を見ているように感じられるだろうか。
■黒兎 > 「ほう、許可申請が必要。という事は、禁書庫の本か。
あそこに入ってまで読みたい本があるというのなら、
否、読めるだけの知識があるのなら、魔術の識者であると見える。
………先日から妙に魔術師の人間と縁があるものだな。」
禁書庫の本には他にも様々なものがあるが、
分かり易く所蔵されているのは魔術関係の本である。
とはいえ、表向きに必要と思われる魔術書は普通の棚の本で十二分。
―――つまり、この女子生徒は、やや危険な魔術にまで手を伸ばすほどの実力者、という事である。
で、あるならば、私の正体に何らかの目星をつける事もあろう。
私は、女子生徒が見つめる、いや、見つめるとしか形容できないだけで、
恐らくそういった理由で見ているわけではないであろう瞳を目を細めて見返す。
この姿は幻術で作られたものである。
ある種異能のようなものである為に、基本的にバレるような事はない。
が、相手にそもそも疑われているのならその限りではない。
「―――む?どうした?そんなに見つめて。照れるではないか。
あまりの美少女であるが故に女子であっても惚けてしまうのは致し方ないし、
私は確かに、別段性別に拘りがあるタイプではない、
………然し、私に惚れると火傷ではすまぬぞ?」
とりあえず、パチンとウィンクをする。適当に誤魔化しておこう。
……先の見立てが正しければ、この女子生徒、私よりも圧倒的に格上である。
態々学園で事を起こす事もあるまいが。
■クローデット > 「ええ…あたくし、魔術の探究のために、こちらに留学しにまいりましたのよ」
そう言って、花のほころぶような、瑞々しい微笑を見せる。
公安委員会の職務外とはいえ、クローデットは外出する時には異能や魔術、そして物理攻撃を防御出来るような効果を持った魔具を常に身に付けている。
先日の落第街での一件があってから物理防御だけは異様に厚くしているが、異能や魔術についてはそうではない。
…それでも、幻術のようなものが発動しているのは、それらの魔具が教えてくれるのだ。
そして…クローデットの訓練された感覚が、目の前の女子生徒が「人間」ではないと告げていた。
「ええ…あたくしも肌や髪には気をつけているのですけれど、本当に白くて美しい肌をしていらっしゃいますものね。
…日焼けしてしまったら、大変そうなくらいに」
そう言って、くすりと笑みを零す。
はっきりいって、かなり白々しい。
クローデットの方こそ、作り物めいた、陶器のようなと形容出来そうなほど白く艶のある肌をしているのだ。
それが意味するところは、黒兔には分かるだろうか。
■黒兎 > 「ほう、まぁ、この学園はこと大変容によって現れた事象に関しては最新の情報が揃って居るからな。
―――何、別段珍しい事ではあるまい。」
私は小さく笑みを零す。
いくら魔術の研究の為、とはいえ、
禁書庫の本にまで自学で手を伸ばす、という事は―――。
………つまり、凄まじく研究熱心なのであろう。
将来有望な若者である。実に宜しい。
「た、確かに、外に出るには日傘が欠かせんよ。
然し、そちらも十全に気を使っていると見える。
―――別段、私を羨む程ではないと思うがな。
身に着けている装飾品も、どうやら一級品のようだしな。
なかなかに、お洒落には気を使う『人間』らしい。女子高生なら当然の嗜みかな。」
どどどどどどど、どうする!?
これは確実に吸血鬼である事を看破されていると見て間違いない。
幻術を見破る類の装飾品を身に着けて居たか、
はたまたこの女子生徒が素晴らしく勘、基、審美眼、
美しい者とそうでないものを見抜く能力に長けているか―――。
どちらにしても、確実に疑われている。
いや、もうほぼ8割方確信しているだろう。
………私をどうこうしようとするだろうか。一先ず、十二分に警戒しておくことにしよう。
「禁書庫の本は危険な物が多いと聞くが、そんなものを読んでどうするのだ?
一般的な魔術の研究、研鑽だけならば、普通の本でも良かろう。」
敵を知らば百戦危うからず、
一先ず、何のことは無い風に雑談に興じておこう。
敵意が無い事が分かれば、善良な生徒ならば特に何もせずに見逃してくれよう。
■クローデット > 「ええ…魔術研究に使える予算という意味でも、この学園は別格ですもの」
そう言って、楽しそうに笑む。
こういったところは、比較的邪気がないように感じられるが…。
「あたくしは、日傘までは持ち歩きませんのよ。
毎日、日焼け止めの効果のある美容クリームは欠かせませんけれど。
…あら、趣味が合いますのね?
このブローチなどは、あたくし自身で手がけたものですのよ」
そう言って、胸元のアンティーク調のブローチに手を添えて、柔らかく笑む。
…ちなみにこのブローチの金具には魔法陣が描かれていて、魔力を使う魔術の効果を増幅する効果があったりする。
ブローチ自体には魔力がないので、精緻な術式読み取り能力がないと判別は難しいだろうが。
実際のところ、クローデットは目の前の相手が「人間」でないこと…恐らくは白魔術が有効な存在であろうこと程度までしか推理していなかった。
しかし、それだけ推測されていれば、黒兎にとっては十分過ぎるほど脅威だろう。
「ええ…少し、魔具に改良を加えようと思っておりまして。
そのために、少々高度な呪術を学ぶ必要が生じてまいりましたの。
…ですから、その参考に」
禁書に手を伸ばす動機を聞かれれば、そう言って少し目を伏し目がちにする。
魔具。呪術。魔術に縁のない人間からすればヤバいワードてんこもりだ。
■黒兎 > 「そも、同様の研究者も多いしな。専門の教師も居る。
そういった道を志すならば、確かに優良な環境であると云えよう。」
邪気の無い口ぶりに、私は満足気に頷く。
どうやら、特別危ない生徒ではないらしい。
であるなら、私を敢て害そうとはしないだろう。
「研究熱心なのにも関わらず、女性としての魅力を磨く事も忘れない。
―――成程、随分と努力家なのだな。
……手ずからの作品か、どれ。」
私は眼を細めてそのブローチを見る。
アンティーク調の装飾が美しいブローチだ。
だが、どうやらただそれだけのモノでは無いらしい。
そういったものに特別詳しいわけではない、効果までは分からないが。
―――こうした状況で相手に見せるということは、武器である可能性が高い。
ハッタリでもなんでも、見ぬいて居るっぽく振舞っておいたほうが良いだろう。
「ふむ、見事なものだな。
見た目は勿論、実用性も十全だ。
―――いや、勿論、ファッションとしてのだぞ?」
私は出来るだけ意味深に笑いながらそう嘯く。
白々しいにも程があるが、これくらいで丁度良いだろう。
「成程、魔具に改良を、な。
その為に、高度な、呪術を。ふむ。」
思わず、冷や汗が噴き出す。
これは、何だか、不味い生徒に声をかけてしまったかもしれない。
多少なりとも危険、くらいならば構わない。どうせ不死である。
然し、強力な魔術師ともなれば話は別である。不死を殺す術など、いくらでもあるのだ。
「廊下で立ち話も何だ、せめて廊下に隣接した休憩所か―――。
そうだな、ゆっくりお茶でもしながら話すというのはどうだろう?」
とりあえず、人目につく場所に移動したほうが良いだろう。
廊下という場所は、時折人の目が途切れる。
その隙をついて攻撃などされたら、たまったものではない。
■クローデット > 「ええ…尊敬出来る先生もたくさんいらっしゃいますから。
毎日、勉強ですわ」
魔術の勉強についての話は、邪気が薄い満面の笑みで語る。
…それに近いノリで、呪術とか言い出しているわけだが。
「ありがとうございます…ええ、自信作ですのよ。
錬金術で作った石をあしらいましたの。特に魔術的な効果はないのですけれど」
ブローチを褒められれば、若い女性らしいくすぐったそうな笑みで。
無論、白々しいほどのリアクションと話の中身のなさから、ハッタリなのだろうとも読んでいる。
裏の思索を、おくびにも出さずに。
「興味を持って頂けて、一介の魔術師としては大変有難く思いますわ。
…ですが…」
ここで、口元の微笑は絶やさないまま俯いて。
「委員会の職務等もあって、あまり時間がありませんの。
ですから、早速図書館に赴こうと思っておりまして。
…折角誘って頂きましたのに、申しわけございません」
そう言って、美しい姿勢で軽く頭を下げる。
■黒兎 > 「先日も魔術に詳しいらしい先生から色々と話を聞いたが、
確かに、あのような先生が居るのなら、毎日勉強、と言える環境であろうな。」
私はブローチをちらちらと見つつ、どことなく上の空で答える。
が、その答えを聞いて思わず安堵の息を漏らした。魔術的な効果は無いのか。
どうも、変に疑って見てしまったかもしれない。
「ほぅ、錬金術で。呪術、錬金術、それに魔術、か。
―――随分と手広いのだな。」
手広い、というには手ぬるい範囲である。
一介の女子高生がここまでの熱量を向けるのなら、以前話した女子生徒のような漠然とした、
『進路を選ぶために知識を身に着けて居る』というレベルではなく、
何かしら、本人に目的があるタイプだろう。
「何を成そうとしているかは知らぬが、何かしら心に大望を抱いているのだな。
そうでなければ、そこまでの努力をする事は出来ぬだろう。」
私は頷くと、一礼する彼女を片手で制する。
別段、このまま会話を続ける気が無いというのなら止める理由もない。
何かしら目標の為に努力している人間の貴重な時間を、
私のような不死の者との交友で消費させるのも申し訳ない事だし、
それに、この女子生徒、正直に言って―――いや、怖くはないのだが。
いかんせん、高度な魔術の担い手であり、殺される危険があるというのがどうにも引っかかる。
「別に構わぬよ、貴重な時間を取らせてすまなかったな。」
そのまま立ち去るならば見届けよう、と、私は小さく手を振る。
もし、吸血の時にこの女子生徒に見つかれば厄介な事になるだろう。
―――そんなもの、偶然でしかありえないが。
ここで出会った事も何かの因果であるなら、そういう事もあろう。
十二分に警戒しておく事に越したことはない。
■クローデット > 「ええ…先生も、色んな方がいらっしゃいますから。
新しい考えに出会わない日の方が少ないくらいですわ」
やっぱり無邪気に、楽しそうに笑って。
「ええ…両親とも魔術師の家の出でしたので、環境に恵まれていたものですから。
得意なのは、錬金術に魔具作り、属性魔術と…白魔術ですわね。
呪術も、苦手ではないのですが」
表情は今までと変える風がないが、白魔術の名前を出す前に、無駄に一拍溜めた。
「ええ…そうですわね。
1人では、なかなか難しい目標です。
…ですから、あまり口外したくはありませんの。申しわけありません」
そう言って、はにかみがちな微笑を作ってみせた。
無論、演技である。【レコンキスタ(われわれ)】の大願を、常世財団の懐でみすみす明かすことはない。
「いえ…こちらこそ、お話し出来て楽しかったですわ。
…時間が出来たら、またゆっくりお話し出来ると良いですわね?」
そう言って、華やかな笑顔を見せると。
「それでは………また」
また、軽く頭を下げて、クローデットは教室棟から立ち去った。
ご案内:「廊下」からクローデットさんが去りました。
■黒兎 > 「白魔術、か。」
女子生徒を見送った私は、ぽつりと呟く。
一般的なイメージからすれば治癒魔法であるが、
それ以上に私としては明確な死のイメージとしての側面が強い。
不老不死、悠久に続くと見える日常の終わり、他の人間による「殺害」
不老であるからこそ、その恐怖は人間の比ではない。
―――いや、人間になった事が無い以上、想像の域を出ないが。
「………次に会う刻もまた、お互いに女子高生として出会いたいものだな。
カフェテラスあたりで、紅茶でも飲みながら。」
私、黒兎は、廊下を歩く。
ご案内:「廊下」から黒兎さんが去りました。