2016/05/21 のログ
ご案内:「教室」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > ──眠かった
七生にとって、どういうわけか今日は格別眠かった。
最近は夜はしっかり眠れていたし、授業中に居眠りする事なんて殆ど無かったのだが。
昨日もさほど夜更かしをした覚えは無い、それでも授業中眠くて眠くて仕方なかった。
だから、授業が終わってからすぐに空いてる教室を探して、一眠りすることにした。
──七生が目を覚ました時、外はすっかり夜の帳が下りていた。
■東雲七生 > 「参ったな……今、何時だろ。」
──夢を見た気がした。
殆ど覚えてないけれど、何だか懐かしい夢だった気がするが目を覚ますと同時に忘れてしまった。
どうにかして思い出したい様な気もしたが、それすら意識が覚醒していくごとにどんどん遠くへ行ってしまって。
欠伸を一つする頃には、夢を見た事すら思い出せなくなっていた。
時計を見ればまだ思ったほど遅い時間でも無い。そのことにひとまず安堵する。
■東雲七生 > 「まだ晩飯前か……結構寝た気がしたけど、思ったほどじゃなか……ふあぁ。」
もう一つ欠伸をしてから、目を擦り。
まだ眠いな、なんて思ってから我に返る。まだ、眠い?
「……ん、なんか。おかしいぞ。」
体感的には半日ほど寝入っていた気分なのだが、それでも眠い。
十分すぎるほど寝たと思うのに、まだ寝足りない。
酷く矛盾しているのが、妙に気持ち悪く思えて、そしてその感覚すら眠気に蝕まれてくる。
「……ん、ちょっと、顔、洗お……。」
■東雲七生 > 鞄を教室内に残したまま、廊下に出て水道を探す。
さほど離れていない水道場で顔を洗えば、少しだけ意識がはっきりしてきた。
バイトや課題や、その他諸々の気疲れが今頃来たのだろうか、と首を傾げつつ教室へ戻り、
「……ふあぁぁぁ。」
欠伸を、一つ。
■東雲七生 > 椅子に座ったらそのまま寝れる。
どこか冷静な頭の隅で、そんな事を考えながら机の上に置きっ放しにしていた鞄を手に取り、
「さて、帰───」
──何処へ?
「……ええと、深雪んち、だよな。」
あれ?と首を傾げる。
一瞬、ほんの一瞬だけ自分の中から何か消えそうな気配がした。
その気配は自覚する前に消え去って、違和感すら残らなかった。
■東雲七生 > ──で、帰ってから。
些細な違和感はきっと眠い所為だと思う事にして帰ってからの事を考える。
夕飯食べて、風呂入って、宿題して──
「ああ、本土の親父とお袋にもメールを……」
それなら今やった方が良いか、帰りながらでもメールは打てる。
普通に歩く以上に前方に気を付けて、人にぶつからないように──
「……は?」
端末を取り出しかけた七生は、明らかな違和感を覚えて手を止める。
■東雲七生 > ──おかしい。
上手く言葉に出来ないが何かがおかしい。
昨日までと、今日、今、この時で。
明らかに自分の中で何かが変わってしまっている。
ぞわ、と首の産毛が逆立つのを感じて、七生はひったくるように鞄を手に取った。
「……待て、待て待て待て。
何だ、何かおかしいぞ。何がおかしいんだ。」
分からない。分からないが、何かがおかしい。
その“何か”が分からない事が重要で、同時にどうしようもなく恐ろしい事だと直感的に七生は思った。
■東雲七生 > ……思い出そう。
七生は決意する。
きっと違和感の正体を探るのは、不可能だ。
本能的にそう悟って、次に考えたのは、違和感の原因。
何も理由が無いのに突然違和感を覚えることは無いだろう、と考えての事だった。
「今この時から遡ろう、そこで普段と違う事を見つけられれば、それは手掛かりになる、はず。」
鞄を腕の中で強く抱き締め、大きく深呼吸する。
この教室で仮眠する前、午後の授業、昼休み、午前の授業、通学中、朝。
きっと家に居る時に何かあったということは考えられない。仮に同居人が何かしたとして、
そんな事をして楽しむほど性格が悪い人物では無い、と七生は信じている。
……というか、やるならもっと直接的に困らせてくる。
「……昨日は、家に帰る前。商店街で先生と会って、学校、訓練施設で松渓と会って……」
遡る。覚えてる限りの行動を、普段と変わっていたところを見つけるために。
■東雲七生 > 「……頭いてえ」
ふへえ、と重々しく息を吐き出して、七生は額に手を当てた。
寝起きで思い切り頭を働かせた所為か、はたまた精神的な重圧がそうさせたのか鈍く重い痛みが頭に走る。
考えるのは一旦止した方が良さそうだ、と鞄を持ち直すと椅子には座らず、机に腰を下ろした。
「しっかし、……何なんだろうなこれ。気持ち悪。」
違和感を残したままで居ることに顔を顰めながら、
七生は真っ赤な髪を無造作に掻き毟った。
■東雲七生 > 「……んん、気分転換にどっか寄って帰──」
ぐらり、と視界が歪む。
車酔いに似た感覚に思い切り顔を顰めて、机から飛び降りた。
どうにも、今日は気分が最悪だ。
「ああくそ、はぁ。体動かして帰ろうかなぁ」
まだ寄り道するだけの時間はある筈だ。
しかし、一応遅れるかもしれない旨を伝えておこうと七生は改めて端末を取り出した。
■東雲七生 > 慣れた手つきで端末を操作し、メールを送信する。
これでひとまず帰宅が遅くなっても飯抜きを受けることは無いだろう。
ただ、相応の報いは受けることになるかもしれないが、もう、慣れたものである。
「そりゃ、もう半年以上居候して──」
なんで俺は、あの家に居るんだっけ。
ふと端末を仕舞う手を止めて考える。しかし、すぐに頭痛が戻ってくる気配がして慌てて考えを追い払った。
■東雲七生 > とりあえず、今は動こう。
ここでぼーっとしていたところで、時間がただ流れていくだけだ。
七生は鞄を持ち直すと、ゆっくりと教室を後にして──
「そういや、今月の仕送り幾らくらい残ってたっけ。
……お袋にもうちょっと減らしても良いよって言っとかないと。」
そのままゆっくりと、廊下のうす暗闇の中へと消えていった
ご案内:「教室」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > 「――では、今回の講評会は以上。質問のある者はいつでもヨキのところへ来るように」
異能で造り出したという指示棒が、音もなくとろけて手のうちへ溶けて消える。
新学期が幕を開け、粘土で自画像ならぬ自分の首像を作る授業が終わったところだった。
今後の授業への楽しみを見いだしたらしい者や、未だ手ごたえを掴みきれていない者を前に、
にんまりと笑う口はいやに大きく見えた。
「と、ヨキの授業はこんな感じだ。教えるところは教えるし、言わんところは言わん。
その代わり放課後のデザートへの誘いはいつでも受け付けるでな」
時計を見れば、終了のきっかり五分前だった。締め括って、学生らが各々片付けに入る。
長身で、馴れ馴れしく、その割にルールに厳しい、獣人の教師。
人数はそれほど多くはないが、こうしてヨキの授業は今年も地道に続いていた。
五月の陽気に、美術室の扉は開け放されている。
和やかな空気が、廊下にも漏れ聞こえてくることだろう。
■ヨキ > 間もなく作品や道具類が壁の棚や準備室へ仕舞われて、室内ががらんとする。
そこで丁度よく授業が終了して、美術教師は満足そうに笑った。
まるで授業の時間配分というゲームに、勝利でもしたみたいに。
「今回は小品であったが、次からは素材もサイズもどんどん増やしてゆくからな。
楽しみにしているがよい」
諸手を広げて一礼。
先生じゃあね、お疲れさま、と退室してゆく学生らを見送った。
「さて……」
伸びをする。昼飯からそれなりに経ったが、日が暮れるにはまだ早い。
「おやつにしよう」
ひとたび決まれば、後はあっという間だ。
準備室から緑茶のペットボトルとコンビニのエクレアを取ってきて、
空いたスツールを心地よい風が吹き込む窓際に据えた。
■ヨキ > 大きな口で、生クリームがたっぷりと盛り込まれたエクレアを頬張る。
窓の下では、陸上競技の授業に打ち込む者たちの姿が見えた。
「んまい」
決行するなら、晴れた夜がいい。
梅雨に入るとローブが汚れる。
冴えた空気に血の臭いが飛ばぬうち、手早く、スマートに。
騙される婦女子の増える前に。
男は手に掛けた後にすることがない。女のように、犯して尊厳を損じることが出来ない。
肉は食っても美味しくないし、何しろ体毛が舌に絡む。
だがヨキがやらねば誰がやる?
長身で、馴れ馴れしく、その割にルールに厳しい、獣人の教師。
悪の手を落第街やスラムの外へ広げようとする不貞の輩を排除する、
正義の人こそこのヨキである。
悪事を裏通りで済ませれば、ヨキに殺されることもないものを。
揃いも揃って、どうして表へ出てくるやら?
そのようなことを考えながら、鋭い牙がもしゃ、とエクレアを食んだ。
■ヨキ > ヨキがその「もう一つの仕事」を人に明かさず、人気のない夜にすべて事を済ますのは、
何のことはない、“見られるとびっくりされちゃうから”である。
彼は標的を殺害した後には現場を隅から隅まで徹底的に掃除するし、
どんな相手でも肉の一片すら食べ零さず、相手がどんなにレアなCDを持っていたって盗みはしない。
正義の味方が悪に染まってはならぬからだ。
これから先いい教え子になりそうだ、と思っていた女子を食べた口でエクレアを頬張り、
スーパーのセール時間を考慮しながら次の計画を立てる。
このヨキには何の憂いも、悔いも、躊躇いもない。
秩序を毒する彼らは最早ヨキの、そして常世学園の学生ではないのだから。
「ごちそうさまでした」
指にはみ出したクリームを舐め取って、茶で喉を潤した。
甘味を摂取した顔が、土気色ながらイキイキと輝いている。
ご案内:「教室」に鏑木 ヤエさんが現れました。
■鏑木 ヤエ > 「こんにちは、久方ぶりですね」
久方ぶりに顔を合わせるというのに、昨日も近所の公園で話をしたような口ぶりだった。
腰まで伸びた重たいロングヘアは今や肩までで短く切り揃えられている。
特になんだって理由があって立ち寄った訳ではない。
何でもないようにあれだけ出来なかった進級が出来てしまって、
何でもないように苦手だった早起きも出来るようになってしまって。
そんな――"なんでもない"一介の学生になってしまったゆえに思わず、である。
「やえのぶん、残ってねーんですか」
ずかずかと押し入り踏み込み、美術室の机に頬をついた。