2016/06/09 のログ
ご案内:「教室」にリビドーさんが現れました。
リビドー >  
 時は昼過ぎ、午後一番。 
 食後の満腹感と差し込む陽射しが眠気を誘う。
 寝こけている生徒もそれなりに居るものの、気にせずに続ける講義を教師が一人。

「……ふむ。大分時間が余ったな。」

 予想以上に質問が含まらなかった事もあり、大分時間を余らせてしまった。
 さて、どうしようか。教師リビドーは思案する。
 

リビドー >  
「……ああそうだ。少し早いがグノーシス。
 いや、グノーシス主義と言うべきだな。これについて軽く触っておこう。
 コイツはコイツで厄介な主義であり神秘だが、哲学の上では振れない訳にもいかん。
 その上で、何時ものように主義に優劣を付けないと明言しておく。いつも以上に明言しておく。」

 グノーシス主義。
 はっきりとそう口に出してみせ、黒板の空きスペースに文字を描いてみせる。

「グノーシス主義そのものが大雑把な分類っちゃ分類だが、
 雰囲気を掴んでもらう事を軸にするからな。更に大雑把になる。
 胡乱な話として聞いておくと良い。」
 

リビドー >  
「さて、このグノーシス主義を大雑把に言うならば、
 霊肉二元論を基軸にし、尚且つ肉――"この世界そのものを悪として捉え"、
 精神や神秘・魂――"霊の世界こそが善であると"提唱する主義であり、哲学であり、奇蹟や魔術となる神秘だ。」

 そこまで言い切ってから周囲を一瞥する。
 何かを確認してから、講義を続ける。

「この主義が招いた諸々の問題、そして他の哲学や神秘との関連・類似性は今は置いておこう。
 世界や精神の話をする以上どうしても似通るし、必要なものは今後講義で行う。
 だから、今日はグノーシス主義の性質と、魔術としての強みの話をする。」

リビドー >   
「この主義の特徴は"神秘に重きを置きながらも現世にある神秘を零落させる"事だ。
 ……ああ、イデアの扱い方とも大分似通るな。イデアの概念を踏まえていると言う説も有力だ。」
 
 そう言い切ってから、一つ補足を入れる。

「改めて言うが、哲学や神秘・思想に優劣を付ける気はないからな。
 その上で、ボクが"神秘"と言う時は宗教・神性・魔術・霊的な思想や概念として語っているつもりだ。
 同列に扱わせていただくため、暫定的に神秘としている。」

「さて、話を戻そう。
 この世にあるものはすべて悪で、どこかにある霊の世界こそが至上とする思想だ。
 この世界すら悪だ偽だと定義してしまう故に、大分苛烈な性質を持つ。」

リビドー >  
「さて、ここからが本題だ。"どうしたこんなものが産まれたか。"」

 姿勢を直し、真正面から生徒を見据える。
 軽く脅かすような、改まった姿勢だ。

「……ボクの論として前置くが、これは恐らく"現世への絶望から生じた神秘"だ。
 "謳われる理想足りえる道徳"と"凄惨で苛烈な現世のギャップ"から産まれ出た絶望かもな。」

「だけど彼らは理想を捨てきれなかった。
 だから、この世界にはないだけで何処かにあると願った。
 結局神などいないし救いなどないと皮肉りながらも、心は間違いじゃないと想いを馳せた訳だ。
 そう思わない人にとっては痛烈な皮肉だからこそ、時代によっては異端とされた。」

 

リビドー >  
「この主義を持つ人々の振る舞いは大体2つに分類される。
 "だからこそそれを体現しよう"と、極端に精神を律する方向に振れたもの。
 "だから悪の世界では悪として振る舞おう"。と、不道徳の方向に振れたもの。
 私たちがこの世に霊を体現しよう と どう振る舞おうが関係ないの差だな。」

 喋り倒して、一息入れる。
 筆記の音が止んだ事を確認してから、言葉を続ける。

「これを知っておく事は、ギャップを認識する事に繋がる。
 道徳や神秘は極端に理想を求める事があるからな。現実から離れすぎてしまう。」

リビドー >  
「もちろんこの辺りの観点はグノーシス主義に限った話ではないが、
 代表的なものとして覚えておくには良いだろう。
 ……ふむ、少々まとまりのない話になってしまったな。本題として扱う時はもう少し整えるよ。すまないな。」

 ――講義の終了を報せるチャイムが響く。
 ここまでだ、と云わんばかりに崩した姿勢を取ってみせた。
 
「"理想通りでないのならばどうするか。"それを考えたり、押し付けたりする哲学・神秘だな。
 この主義の側面を持つ分類されるものの範囲も広いし、色々と激しい歴史も持つ。
 当然優劣を付ける気はないが、扱いには注意しておきたい所だな。……以上だ。」
 

ご案内:「教室」からリビドーさんが去りました。