2016/07/08 のログ
美澄 蘭 > 短冊を笹にかけるのと、ほぼ同時だろうか。
自分の名を呼ぶ、よく知った教師の声を聞いた気がした。

「…くくる先生?」

きょろきょろと辺りをうかがう。

雪城 括流 > 廊下と言うか、窓と言うか。むしろ壁面と言うか。
いやでも床は歩かないので廊下を以下に定義するかと言う問題に

とりあえず一階の窓の辺りにいるようで。

「こっちだよ。
見つけたからつい声をかけちゃったけど、取り込んでいたところかな。」

位置をはっきりさせるために呼びかける。笹と校舎はそう距離も離れていない、と思うのだが。

美澄 蘭 > 「あ、こんにちは」

更なる声で窓のあたりにいる括流を見つけると、人懐っこい表情で小走りに駆け寄ってくる蘭。
多分、大きさ故にぱっと見で分からなかったのだろう。不意にかかった声だったし。

「取り込み…ってほどでもないですよ。
短冊も書いちゃいましたし、後は帰って試験最終日に向けてラストスパートってくらいなので」

「もう、そこまでしんどい教科は残ってませんけどね」と、人の良さそうなにこにこ表情で答える。

雪城 括流 > 「こんにちは。
願い事を見ちゃうのもまずいかなと思ってね。ちょっと肩いいかな。」

そう尋ねて。承諾すればぴょん、と肩に飛び乗ってくるだろう。
地面に這うことを厭うわけでもないが、高さがあれだし下生え次第ではもっと見えにくくなる。

「そっか。もうしんどい教科は残ってないんだ…。お疲れさまだね。
七夕と試験もなかなか絶妙な時期にあるよね。単位取得を願うには絶好の行事なんだけど。
もしくは、今日が最終日、と考えるとちょうどいいかな?」

小首をくるんと30度ほど傾けて。試験の労をねぎらう。

美澄 蘭 > 「あはは…そうですね。
確かに、ちょっと恥ずかしいこと書いちゃったかも。

肩ですか…良いですよ」

季節的には下生えが元気な頃合いだ。会話をスムーズにするためもあって、屈託のない表情で承諾する蘭。

「ありがとうございます…獅南先生の魔術学とか、確率物理学とか、結構大変でした。
物理基礎、引きずられてないと良いんですけど…。

…単位を願うのも考えたんですけど、ちょっとそれは自分の努力に対して恥ずかし過ぎるかなって」

あはは、と、苦笑いを浮かべる蘭。
それでも職員会議でロックオンされるレベルの講義を継続履修しているあたり、何というかである。

雪城 括流 > 軽い感触が肩に乗る。小さな蛇にたいした重さはなく。

「七夕の願い事はね。
由来の一つとしては女性が織姫に芸事の上達を願ったものなんだ。
変遷があるからそれだけでもないけど、織姫に見守って欲しい努力を書く、というのが元の意味合いに近いかもしれないね。
逸話からすると二人の恋人に願いを叶える力があるわけでもないし…ああ、でも恋をかけて恋愛ごとを願うのももちろんいいはずだよ。」

一応、興味がありそうに小さな蛇の視線は笹のほうをむいている。
もしくは、蛇の視力でならば願いも見えるのだろうか。

美澄 蘭 > 「…芸事、なんですか…織姫って機織りが仕事だったから、「女性の仕事」が上手くいくことをお願いするものだったと思ってました」

括流の説明を聞くと、意外そうに目を瞬かせる。
…が、「恋」の話をされると、その大きな目を更に開いた後…

「…恋かぁ…願えるくらい大人だったら良かったんですけどね」

「私にはまだ早いです」と言って、困った笑みを顔に刻んだ。

雪城 括流 > 「それはさらに元々のほうだね。
広まるにつれ、全ての地域が機織りを嗜みとするわけでもなかったからその願いの幅が段々広くなって行ったみたいだよ。」

さすが、という声音でこくこくと頷く。
そして恋への返事に苦笑するように、口をあけ。

「美澄さんらしい、というか。
普通はそこは大人びたい年頃だと思うけど。でも早い、というのはちょっと違う。
気付く時に気付くものだから、そう言って目を逸らすのだけはやめておいたほうがいいかもしれないね。」

自然体でいいんじゃないかな、と付け加えた。

美澄 蘭 > 「あ、そうなんですか」

自分の認識の方が起源が古いと聞いて、それはそれで目を丸くする。
確かに、機織りが出来るのは糸を紡いで衣類を作れる地域に限られるか。

「…うーん…目を逸らしてるつもりはないんですけどね。「憧れ」なら、ないとは言いませんし。

…ただ、普通の人がそういうことに本格的に目覚めるんだろう中学校の頃に…その、色々ありまして。
今は、男の子達と普通の友達になる感覚を取り戻す方に意識が向いてるっていうのは、あるかもしれません。
…「恋」のつもりで危ないところに落ちないためにも、必要なことだと思いますし」

苦笑しながら、そんなことを語る。

固定のクラスの意味合いが薄く、人間関係が流動的なこの学園は、人間関係を程々に繋ぐ訓練場所として、蘭にとっては有難い環境だ。
…蘭にとって今はまだ、「失った時間を取り戻す」段階なのかもしれない。

雪城 括流 > 「もとがアジア系ではないからそれほど詳しくはないけど。
たなばた、と言う言葉は日本の神話の言葉らしくてね。
そして行事も日本の主に中央に伝わったから、京で機織りするひとはあまりいなかったみたいだね。」

専門ではない、と述べつつ。なお念のため鵜呑みにはしないように。
たなばたかそれ以前か、という区別について解説する、その様子は教師らしく。

「そう戒めるほどでもないんだけど。
もし、そのことに気付こうとした時に『まだ早い』って思っちゃわないかが、心配になっただけなんだ。
…異性との関わりは以前に一度あると、難しいね。もちろんその慎重さも、忘れなくていいと思う。」

もしやそれが彼女の人間関係の傾向に関与しているのか、と考える。
彼女が失った時間を取り戻す、そのような感覚を同じく覚えていた。

美澄 蘭 > 「あ、くくる先生ってアジアじゃない地方のご出身なんですか?」

そこからか、という感じだが、馴染んでいて違和感を覚えなかったのだろう。意外そうに目を瞬かせる。

「…でも、そうですね。税を納める農民は地方にいるはずだから…」

それでも、括流の説明に納得したように頷く。
お勉強ができる子は話が早い。

「………小学校の頃みたいにはいきませんからね。色々難しいです。

…でも…私自身が、その頃と違う関係を望むことも、いつかあるんでしょうね。
怖いですけど…興味はありますよ」

「私も、多分思春期には違いないので」と、少しだけ悪戯っぽい笑みを見せた。

雪城 括流 > 「織姫と彦星も思春期の過ちなんだしね。
あの二人は文字通り恋に落ちて、そして分かたれたんだ。目の前に前例に関わるものがあるんだから、そこはありうると保障できるよ。」

竹笹を見つめつつ、そう楽しげに。
そうなったときにはきっとあの願いも叶うんじゃないか、などと思ったかもしれない。

「あ、うん。そうだよ。」

輪廻転生あちこちしてきたがアジア圏の経験はほとんどない。
じつは括流の変な鳴き声、漢字が鳴き声に由来するという誤った知識のたまものだったりもするのだった。

「もとはたどれば…ヨーロッパのあたりかな。」

そして由来を一つに絞ることもまた、難しかった。コアはギリシャだが、ちょっとだけ回答を濁す。

美澄 蘭 > 「思春期の過ちが伝説になっちゃったら…私だったら恥ずかし過ぎて辛いかも」

括流の楽しげな笑みと比較して、こちらはちょっと苦笑い風味。
まともに恋もしていないのに心配の気が早過ぎやしないだろうか、この少女。

「ヨーロッパのあたりですか………あれ、「もとはたどれば」?」

出身を聞いて、頷いた後少ししてから…不思議そうに首を傾げる。
括流の神格がどうとか、魔方陣術の本質がどうとか、そういった話を蘭はまだ詳しく知らないのだ。

雪城 括流 > 「七夕の話もそうだったけど。
くくるも いろいろと混じっちゃってる からね。」

神族精霊の類だとは以前言っただろうか。おそらく異邦人ではないとはわかっているはず。
その前提を説明したかおぼろげだけど、こう説明すれば七夕に類するところから理解はできると思いつつ。

うーん、と首をくるりとさかさになるほど回してみせる。
もちろん捻るのには胴体も含めて。

「その恥ずかしさは織姫に直接聞いて見たいね。
常世ならいてもおかしくないけど…いたららぶらぶカップルしちゃってるかな…。」

その場合は見ないほうが周りのためかもしれません、なんて遠い目をちょっとしてしまう括流でした。
恥ずかしがらないように、とは彼女の事情を鑑みて、言わない。

美澄 蘭 > 「………混じる………?」

怪訝そうに眉を寄せつつ。
とりあえず、括流の存在のあり方が通常の生物と違うのだけは察したようだ。今更だが。

「………いたら、色々気まずいですね。
伝説として知られてることとか、この風習とか、書かれた願い事とか…

…2人が孤独でないなら、それはそれで良いことだとは思いますけど」

曖昧に笑って色んな意味での気恥ずかしさを誤魔化す。実質的には誤魔化せていないだろうが。
「まさか」なんて一笑に付すわけにいかないのが、この学園の恐ろしいところである。

雪城 括流 > 「混じったり、変遷したり…私の在り様についてはちょっと変わった魔術にも関わってくるから、そうだね。
今度機会があれば…魔術学基礎については、もちろんとっていたよね。」

世界観において全ての魔術をひとつにまとめた『魔術学』なるものはあるらしく。
魔術師なら知っているだろうその話が前提となるのだろう。

いまはただ今度話すということだけを伝えて。

「七夕という願いの本質を考えると、存在していて願い事を見てもらわないと意味がなくなってしまうけど。
盛大な祭りになっているのは二人にとってよかったのか、悪かったのかはわからないよ。」

うーん、と願いぬしにそっては織姫と彦星が存在していなければ願いはただの飾りであり。
そしていれば言うとおりのことになってしまうという問題点を指摘しつつ竹笹のほうに頭を向ける。

そこにちょうどよく織姫っぽい人物が願い事を見て去っていくところかどうかは、神のみぞ知るというか。

「あ、そろそろ行かないと。予定があるんだ。
だから在り様については、また今度、ね。物理基礎や確率物理…獅南先生のはどう評価しているかわからないけど
いい成績がとれるよう、願っておくよ。」

竹からすぐに目を離し。
七夕だしね、と言い残してぴょん、と飛び降りた。
目で追いかけなければすぐに、草のなかに見えなくなってしまうだろう。

美澄 蘭 > 「ええ…ちょっと科目名が違いますけど、同じ趣旨のものは」

「魔術学基礎」の履修について尋ねられれば、頷く。

「…私が当事者だったらちょっと嫌ですけど…まあ、その辺は人によりけりかもしれませんね。

…私の願いは、叶えてもらう、というよりは自分の中で立てた「誓い」に近いものがあるので…実のところ、あんまりその辺りは気にしてないんです。
…2人がいたら、失礼な話かもしれませんけど…
願いって、運も絡むとはいえ基本的に他人任せじゃいけないと思うので」

そう言って苦笑する。

「あ、はい…色々面白い話を聞かせて下さって、ありがとうございました。
くくる先生のことについても…機会があれば、是非」

肩から飛び降りる括流をある程度目で追い、頭を下げて礼を述べて、見送った。

雪城 括流 >  
ピンク色の尻尾が返事をするようにぴょこ、と草の上に飛び出して。
数回横に揺らされて しゃらしゃら と響くと。すぐに下生えに隠れて見えなくなった。
 

ご案内:「廊下」から雪城 括流さんが去りました。
美澄 蘭 > 括流の姿が見えなくなると。

「…さて、ラストスパートね」

蘭は、図書館の自習スペースに向かって歩き出した。

試験が終われば、夏休みがやってくる。

ご案内:「廊下」から美澄 蘭さんが去りました。