2016/10/08 のログ
ご案内:「廊下」に学園七不思議―【ヘルメットさん】さんが現れました。
学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
放課後。夕日の差す校舎の廊下に人影が一つ。
学園の制服を身に着け、学生カバンを手に廊下を歩くその姿は何の変哲もない女子学生そのものである。
しかし、彼女はヘルメットを被っていた。
フルフェイスである。
首から下は極々普通の生徒であるにも関わらず、ヘルメットを被っているというだけで抜群の存在感。
そう、彼女こそヘルメットさん。
特に何をするわけでもないがいつの間にかいて、いつの間にか居なくなっている、そんな学園七不思議(自称)の一つである。

「さーてさて。こんぐらい人が居なくなれば校舎の中でも思い切って色々出来るってもんだよねぇ!
 いやー、神聖な学び舎を汚す背徳的な行為に手を染めるこのアウトロー感…いいね」

何だかよく分からない価値観に浸ってご満悦である。
廊下のど真ん中で仁王立ち。首を捻って今日は何をしてやろうかと考える。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「ガラスを割る…なんてのはちょっとやり過ぎかな。
 さすがに後で請求来ても困るし?学園に居場所がなくなるのはもっと困る。
 何かこう、本気で怒られるまで行かないぐらいの絶妙なラインの何かは無いものか…」

スケールがとんでもなく小さい。
日夜様々な超常現象や事件が起こるこの常世島に於いて、彼女が行う悪戯などは話題にも上らないのであるが―

「よしっ、思いついた!」

彼女はそれに気づかない。
今日も余りにもしょうもない悪戯を思いつき、大きく頷いた。
鼻歌など零しながら手ごろな教室のドアを開ける。
中に誰も居ないのを確認すればそのまま教団へと歩を進め―

「ふっふっふ…我ながら結構悪どいこと思いついちゃったもんだよね」

学生カバンからビニール袋を取り出し、黒板へと向き直り―
手にしたビニール袋へとチョークをおもむろに詰め始める。

彼女が今日思いついた悪戯、それは―

「一晩にして学校中のチョークが消えたら結構ミステリーだよねぇ」

余りにもしょうもない内容であった。

ご案内:「廊下」に真乃 真さんが現れました。
学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「ぃよっし、これでこの教室のは全部だね。
 ふふん、明日チョークが無くて困惑する皆の顔が目に浮かぶねぇ」

一つ目の教室のチョークを回収し終えたヘルメットさん。
そのまま隣の教室のチョークも回収を始める。
翌日の皆の困惑ぶりを想像してクスクスと笑い声を零すが、彼女はある事実に考えが至っていなかった。
この学園にある教室はあまりにも数が多いということを。
そしてその教室すべてのチョークを回収するには、彼女が持っているビニール袋では容量が足りそうにもないということだ。

「思い返せば此間の落書きも結構良い感じだったよねー。あんなところにどでかく描いちゃってさ!
 後で一人で消しに行かされたのを除けば大成功と言ってもいいよね。
 あれで大分私の存在も知れ渡った気がするしー…今回も黒板に何か書いちゃう?」

2つ目の教室のチョークを回収し終わったところで目の前のまっさらな黒板に目が留まるヘルメットさん。
ビニール袋に詰められたチョークを一本取り出し、黒板いっぱいに「ヘルメットさん参上」との落書きを残して次の教室へ取り掛かる。

真乃 真 > 「そこの君!何をしてるんだい?」

廊下に差す夕日を背に受けて、白く異様な長さのタオルを風もないのに靡かせて
無駄にカッコいいポーズを取る男がいた。

「そんなに袋にチョークをいれて…
 さては!」

その少女の手に持った袋にはチョークが大量に入っている。
そして、そんな事をする理由は一つしか思い浮かばない!

「さては!君は明日の授業が始まる前に全ての教室の短くなったチョークを新しいものに交換するつもりだね!!」

なんていい子なんだろう!!
ヘルメットで顔を隠しているのも良い事をするのを周囲に見せびらかさないために違いない!!

「そういう事なら手伝うよ!!いいや、手伝わせてもらうよ!」

凄い思い込みの激しさである。
無駄にカッコいいポーズを取りながら言う。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
背後からの声に振り向けばそこには煌く夕日をバックにマフラーを靡かせる少年。
悪戯の現場を目撃されたヘルメットさんの第一声はと言えば―

「か、カッコいい……っ!!」

であった。
何が彼女の琴線に触れたのかはイマイチ分からないが、ともかく乱入者のポーズに見惚れている間に何だかとんでもない勘違いをされてしまった。
自分は決して良い子なわけではない。
更にこの乱入者、余計な気を利かせて手伝うよ、とまで言ってくる。

「えっ、あの、えっ!?
 いやいやいや違う、違うからね!?私はその、学園七不思議でアウトローだから!
 そんな気遣いとか、優しさとか、そんなんじゃないからね!?」

両手と首をぶんぶんと振って全身で勘違いであることをアピール。
だがしかし何だろう。この発言も裏目に出そうな。そんな嫌な予感がしている―

真乃 真 > 無言でポーズを維持する。
そうだろう!カッコいいだろう!?と言外に放たれているのが伝わるだろう。
うん!このカッコ良さが伝わるとは!!間違いなく良い子である!

「ああ!分かってる!分かってるとも!」

そういう気づかいとかやさしさとかではなく。
身体がそう動かざるおえないのだろう!
つまり!根っからの善人である!!

「さあ、OKこの部屋は終わったんだろう!?ってなんだ…これは!!」

もう終わったのだろう教室を覗きこんだ時に見えた黒板に大きく掛かれた「ヘルメットさん参上」の文字!

「一体だれがこんなことを!!そしてヘルメットさんて一体何者なんだ!!」

本気で言っている。
証拠に握り締めた拳は少し痛そうなくらいである。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
もしもヘルメットさんがヘルメットを被っていなければ、キラキラとした羨望の眼差しを彼に注いでいたことだろう。
いや、実際ヘルメットの下の瞳はそうなっているのだが。

しかし、彼の無駄なカッコよさに見惚れている場合ではない。
彼の勘違いは更に加速した上に、黒板に残した犯行声明を見て斜め上にカッ飛んで既に成層圏を突破している。
どうにかこの状態から軌道修正しなければ――

「ん、ん゛ん゛っ!!」

大きくわざとらしく咳払いをして、黒板に向けられた彼の視線を遮るように存在をアピール。

「フフフ、気づいたようだねっ!
 そう、私こそがヘルメットさん!学園七不思議の一つであり、神出鬼没の怪異なのさ!」

ばーん、と自前で効果音を口ずさみながらポーズを決める。
先ほどの少年のポーズに負けじと精一杯の決めポーズである。
廊下側から差し込む夕日に照らされヘルメットが怪しく煌く。
全力の決めポーズと相まってなんとなくそれっぽい雰囲気。

真乃 真 > そう言えば!よく見たら新しいチョークもおかれていない!!
まさか!騙された!!いい事してると思ってたのに!!

「な、何だって!!学園七不思議のヘルメットさんだって!?
 …あれ、七不思議にそんなのあったっけ?いや!でも!まあ、僕が知らないだけかもしれない!!」

真はあまりそういう事象に詳しい男ではない。
それでも何となく有名な七不思議は聞いたことがある。
この常世で一番有名なのは七不思議がいっぱいあるという事だろう。
不思議な事が多すぎて七つの枠に収まらないのである。

「くっ!どうしてこんな事をするんだヘルメットさん!
 これじゃあ明日の授業の時に先生が困ってしまうじゃあないか!!」

そして、日直がチョークを取りに走る羽目になるだろう!
いや、一番脚の早い生徒かもしれないが。
とにかく困るだろう!

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
内心ガッツポーズして歓声を上げたい気分のヘルメットさんである。
地味な悪戯を繰り返してきたが、こうして話題に上ることなど一切なかった。
それが今。
悪事の張本人として認識され、問い詰められているではないか。
あぁ、楽しい。
心からそう思う。

「よーくぞ聞いてくれましたっ!
 それは全て私の存在価値を、存在意義を証明するためさ! 我々怪異は君たちに認知されて初めてその存在意義を確立出来る!
 観測者の居ない怪異なんて無いも同然!だからこそ私はこうして!おのが存在を君たちの脳裏に刻み付けているのだよっ!」


何だか小難しいことを言ってはいるが、要約すれば「目立ちたいから」である。
必死に考えて来たカッコいいセリフを言える日がくるとは思っていなかったヘルメットさんである。
セリフのトーンも演技がかっているし、ポーズのキレも冴えわたる。

「さぁ少年、君も皆に伝えるんだね…学園七不思議が一つ、ヘルメットさん此処に有りィッ!!」

びしぃ、と効果音すら聞こえてきそうなキレで目の前の少年を指さした。
決まった…もう七不思議引退してもいいかな、とすら思える達成感である

真乃 真 > 「なるほど!君の言い分は分かった!君の目的も分かった!
 だけど!だけど一つだけ言わせてほしい!!」

怪異。大変容前は存在しないと言われてたもの。
隠されて、封じられて、普通の人の目に触れないところに置かれていたもの。
確かにそれは、自分をアピールしたいだろう、自分の存在意義を主張したいだろう。
だが、だが言いたいことがある。

「何か…何かやってること小さくないかい?
 いや、確かにねこれはインパクトあるよ。一日でこんなことになってたらみんな驚く思うよ。
 ああ、驚くね!きっと騒然とするだろうね!
 でも、この学園ではもっと意味わからないことが平気で起きるじゃないか!
 きっと、これくらいじゃあすぐに忘れられるよ!
 それに、授業が少し止まって困るよ!皆困る!もう少しみんなが困らないやり方を考えよう!!

 誰も困らせない事ならいくらでも手伝うから!」

学園七不思議―【ヘルメットさん】 > 「だ、だって実際に追いかけられたリとかしたら困るし!!
 私にだって生活とか色々あるんだかんね!?この島の公権力マジヤバいんだから私みたいなのが太刀打ちできないし!
 だからこう、アレだよ!こういう小さいのを積み重ねてだね!!」

先ほどまでのキレと勢いはどこへやら。
少年の凄まじいまでの正論に思わず素が出るヘルメットさんである。
怪異、なんてミステリアスな雰囲気はどこにもなくなってしまっている。

「ってか!困らせないことばっかするってそれただの良い人じゃん!違うの、そういうんじゃないのー!
 私は!ずっとずーっと語り継がれるような怪異に、都市伝説になりたいんだってば!
 ただの良い人、なんてそれこそ一瞬で忘れられちゃうじゃん!
 それはダメ!ノー!却下!!」

両手で身体の前で大きくクロスさせて否定の意を示すヘルメットさん。
彼女は別に慈善活動がしたいわけでもなんでもないのだ。

真乃 真 > 「…そうだよね!」

確かに風紀も公安も基本的には暇じゃないのでよっぽどの事をしない限りは見逃してくれるだろう。
偶に怪異というだけで倒そうとする人たちもいるけれども…。
少なくとも真が風紀の頃ならば口頭注意で済ますだろう。

「都市伝説か…。なんだろう君はインパクトが弱いんじゃあないかな?」

都市伝説と言えばこの間、遭遇した自販機はインパクトがあった。
凄かった。色々と凄かった夢にまで出てきそうだった。

「こう?何だろうもっとオーラ的なやつを出すとか…。
 このへルメットのなかの目があるだろう部分を光らせるとか?
 まずは見た目が大事だからね!!」

凄い無茶な要求だった。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「イン、パクト……!?
 このヘルメットの姿よりも更なるインパクトを…!?」

少年の言葉に衝撃を受けるヘルメットさん。
考えてもみなかった話である。確かに歴戦の都市伝説はそこに居るだけで圧倒的なオーラがありそうなものである。
見ただけで相手が震え上がるような、そんな――

「いや無理だからね!?私にそんな不思議パワーないからね!?
 あったらそもそもこんな地道な苦労してないから!!ったくもう、これだからこの学園の生徒は…。
 いい?そんな不思議パワー持ってるような生徒ばっかりじゃないんだからね!?」

ふんす、と鼻息荒いヘルメットさんだ。
怪異だのなんだのと名乗る割には特段目立った異能や特殊能力などは無い彼女である。
よって取れる手段はこういう地味な方向性に傾かざるを得ないのである。

「どうせ君もアレでしょ?こう、ちょっとパンチしたら岩がバーン!!って弾けたりとか、
 鉄の壁がベコォ!って凹んだりとかそういうパワーあるんでしょ?
 全く、持つ人は持たざる人の気持ちをもう少し考えるべきだよねぇ」

ぷりぷりと不満げな声を漏らす。
正直知ったことか、とため息をつくのが当然ともいえる言い分である。

真乃 真 > 「だって!ドラゴンとか獣人とかいる中でヘルメットだぜ!?
 インパクト薄いよ!!」

 多分この島ではコンビニもギリ行けるんじゃないだろうか?
 ああ、おそらく行ける!!

「それじゃあ、ヘルメット被ってるだけの普通の人っていう事かい!?」

酷い事を言う。しかし、逆にレアなのではないだろうか!?
これを推していけばその希少性から逆に目立てるのでは!?

「流石にそんなことはできないよ!
 僕はどちらかと言えば普通に近い人だからね!!
 こんな事しか出来ない!!」

そう言いながら後ろに七色の後光が差す!
いつのまにか右手に持っていた魔道具の力である!

「セブンスエフェクター!!この魔道具があれば音と光を自在に操り!
 様々な特殊効果みたいなのを後ろに出すことが出来る!!」

凄く自慢げ。

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「うううううるせーーーーー!!
 悪いか!何も出来ないからせめてヘルメット被ってアピールしてんじゃないの!分かれ!分かれよ!!
 私からすれば君ら能力者の方がよっぽど怪奇だよちくしょー!!」

うがー、と叫ぶヘルメットさん。
叫んだあとにヘルメットの中に声が反響して頭を抱える姿は哀れを誘う。
そして追い打ちのようにヘルメットさんを照らし出す七色の光。
どの辺が普通に近いというのか。
後光を発することが出来る、というだけでヘルメットさんに足りない「オーラ」を出せるということではないか。
無論それだけでは収まらないような魔道具なのだろう。
これで普通に近いとか、ケンカを売っているのだろうか。
買わないけれど。

「クッソ!!!何か不思議道具の説明とかしちゃってさぁ!!
 得意げにさぁ!!くっそ、くっそ!!」

思わず地団太を踏むヘルメットさん。
物理的に怒りをぶつければ恐らく1秒で返り討ちにあうので、物言わぬ床に怒りをぶつけるのだ。

「くそっ、キミの名前!名前を教えなさいよ!!
 こんな屈辱、受けたままでいられるかってーの!!」

真乃 真 > 「落ち着いて!大丈夫だ!ヘルメットの下は実は…!
 とかそんな設定があったらまだいけるよ!!怪奇っぽい!!」

もう少し、静かな感じだったらより効果的な気がする!
脱ぐだけで悲鳴確定だろう。

「まあ、待つんだ!僕にはまだ異能が残って…
 説明いらない?そう?」

どうやら異能の方の説明はいらないらしい。
凄い悔しがってる。良い道具だものなコレ!!

「ああ、僕の名前は真乃真!
 大丈夫!君もそのうち有名になれるよヘルメットさん!!」

無駄にカッコいいポーズを取りながら言う。
その無駄にカッコいいポーズの後ろでキラキラと光の飛沫が飛ぶ!!
あまりにオーバーな演出である!!
ああ、やり方はともかくこれだけ頑張ってるのだ、報われてほしい!

学園七不思議―【ヘルメットさん】 >  
「ギャップで評判になるくらいだったらそもそもヘルメット被ってないかんね!?
 素顔でダメだから被ってるんだよっていちいち言わせないでよ惨めになるでしょーがー!!」

ひとしきり床に怒りをぶつけた次は手ごろな机をバンバンと叩いて憤りをアピールするヘルメットさん。
したところで目の前の彼にどれだけ伝わっているかはわからない。
というか多分伝わってない。
名を名乗るために音やら光やらが溢れてるのがその証拠である。

「見せびらかしたいだけじゃねーか!!ちくしょー!
 お、覚えたからね君の名前!!クラスと席と割り出して何かしらの復讐してやるんだから!!
 学園七不思議のヘルメットさんを怒らせた報い…ぜぇったい受けてもらうからね!!」

バーカ!と面白みのない捨て台詞を残して走り去っていくヘルメットさん。
頑張れヘルメットさん。この異能者だらけの学園でその名が広まるのはいつの日か。
その日までヘルメットさんの戦いは終わることはない――


つづく

ご案内:「廊下」から学園七不思議―【ヘルメットさん】さんが去りました。
真乃 真 > 「何かごめん!!」

特にヘルメットである必要とかはないみたいだった!
都市伝説ならそういう話の一つや二つあってもいいだろうけど…。

「ああ、僕も覚えたよ!ヘルメットさん!!
 なるべく君の名前が広まるように!頑張るからね!!」

そんな事を言いながら笑顔で手を振る。

「さてと!じゃあ早速広めますか!!」

次の日、学校中の教室の短いチョークが全て新しいものに取り換えられており
隅に小さく消しやすく「ヘルメットさん参上」と書かれていたことが朝礼までの話題になったという。

ご案内:「廊下」から真乃 真さんが去りました。