2016/10/20 のログ
ご案内:「屋上」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > 「うん!今日も一日いい感じで人を助けられたな!」
そんな事を言いながら満足げな様子で額を拭う男がいる。
異様に長い白いタオルを夕方の風に靡かせた男だ。
自販機で買っておいた甘いコーヒー飲料を一気に飲む。少しぬるくなっているが寒くなってきていたのでちょうどいい。
ふと、給水塔の上に目をやると一人の少年の姿が見えた。
「おぉ!東雲君じゃあないか!」
知り合いだったので給水塔の上に向かって声をかけた。
「元気にしてたかい!?」
■東雲七生 > 「あれ、真乃先輩じゃないっすか。
……えーと、久しぶりっすね。こないだの、模擬戦の時以来っすか。」
此方へと声をかけてきた見知った顔に軽く手を振る。
相変わらずデカい声だなあ、と苦笑しつつもそれが彼らしいと一つ頷いて。
一瞬給水塔から降りようかとも考えたが、そうしたら彼の事を見上げなければならないので止めた。
「俺は元気っすよ、真乃先輩も元気そうっすね。」
給水塔の上から少しだけ得意げに見下ろしながら答える。
■真乃 真 > 「そう!あの死闘の末の引き分けに終わった模擬戦以来だよ!」
実際は魔力枯渇で真がふらふらになった為ノーゲームみたいに終わったんだけども!
実際よりも思い出が美しいのは世の常なのである!
「ああ、元気だよ!有り余る!」
そう言いながら給水塔から距離を取り…
一気に走り始める!
走りながら首に巻かれたタオルを右手に持てばそれは一瞬で真っすぐな棒のように形を変える…。
その棒を支点にして跳びあがり見事に給水塔の上、七生の真ん前に着地する!
棒高跳びのように!
「新しい事も覚えたんだ!次に模擬戦をするときは、まあ僕が勝つとは思うね!」
見上げる事のなくなった目線でそんな事を自信ありげな笑みで言う。
■東雲七生 > 「死闘ってほど死闘だったっすかね……?」
どうやら自分の記憶とだいぶ齟齬があるようだ、と七生は首を傾げる。
それでも、まあ真乃先輩だから、で解決してしまうのが正直この先輩の凄い所だろう。
「ホントに有り余ってるんすね……」
目の前まで跳び上がってきたことに驚きつつも、同時に呆れて肩を竦める。
そんなに元気ならもう少し人助けに走り回ってくれば良いのでは、と思わずにいられない。
「……へえ、そうなんすか。それなら、俺も最初から全力で行くっすからね。」
あの時は異能を使わなかったが、次やる時は最初から異能を使っていこう。
密かに決意しつつ、にぱっ、と笑みを浮かべる。
■真乃 真 > 「ああ、死闘だったとも!」
あの初手の『七生サイクロンキック』(命名、真)から始まった攻防は凄い死闘だった。
多分、『七生サイクロンキック』の当たり所が悪かったら今生きてここにいないだろう!
「人助けをすると元気がもらえることがあるからね!東雲君も疲れてきたら人助けすると元気になれるよ!」
その元気を使って人を助けるのだから無限ループである。
こうなると、ああ時間が足りない!!
「楽しみにしてるよ!全力だというのなら前回は使わなかった異能を使うんだろう?
知り合って一年くらいたつのに僕は君の異能を知らないからな!」
どんな異能なんだろうか?多分戦闘に役に立つものだろう凄い大食いできます!みたいなのではないはずだが…。
…というか一年か!!
「…一年か!なが短いな!」
一年はなが短い。そう長くて短い。
月日が経つのはとても早い。思えば色々と成長した気がする。
ああ、目の前の少年の背丈も伸びて…
伸びて…縮んでない?
■東雲七生 > 「……そ、そうっすね。」
何だか凄い脚色されている気がするが話を合わせておこう。
ぎこちなく頷きながら、七生は意識をどこか遠くへ飛ばした。
とても先輩らしく、別段嫌いなタイプでもないのだがどうにも合わないというか、合わせられないのだ。ノリが。
「えーと、まあバイトがてらちょくちょく手伝いはしてますけど。」
主に異邦人街周りの。
宅配アルバイトをしていれば嫌でも顔を覚えられるし、顔を覚えられてしまえばそれなりに頼みごととかも持ち掛けられる。
七生の様に軽業師さながらの運動能力があれば尚更だ。
「そりゃあ使うっすよ。ちゃんと心の準備くらいはしとこないと、一瞬で勝負が付いちゃうっすからね。
えーあー、まあ、あんまり自分の異能好きじゃなかったんで。隠してたんすよ。」
知らなくても無理はない。むしろ七生の知り合いで異能の事を知っている人の方が少ない気がする。
一緒に住んでいる少女ですら、一年以上の付き合いでついこの間知ったくらいなのだから。
「そっすね、あっという間っすよねー……今、何か余計な事考えました?」
殺気。
焔の様でいて酷く静かな殺気が七生の全身から滲み出る。
■真乃 真 > 「それはいいな!素敵だ!」
バイトがてら人助けができるのはとても良い事だろう!
趣味と実益の両立である!更にバイトでも人を助けられれば更に良い!
「異能が好きじゃないか…。
確かに戦闘型というか、戦いに向いた異能を持ってる人のな中はそういう人いるね…。
東雲君は戦いが嫌いとかそういうタイプには見えないから別の理由だね!今は触れないけど!」
そう、戦いにしか使えない危ない異能を持つことで悩む人とか制御できなくて嫌いだという人は良く見るが…
そのどちらともタイプが違うようにみえる。
一朝一夕で解決できるものではないだろうし。詳しく知らないので今はこれ以上ふれない!
「…気のせいじゃ無いかな!?
そ、そういえば初めて会ったのも給水塔だったなぁ!!
あ、あの時は、若かったなー。」
思いっ切り話題を変えて誤魔化す。
…ビビったわけではない!少し怖かったけれどもビビってはいない!
本当だよ!
■東雲七生 > 「まあ、バイト部分で時間食うから先輩にはオススメしないっすけど。」
配達途中に困っている人が居たら、きっと手を貸してしまうだろう。
そこで生まれるロスタイムを体一つで巻き返せるだけの身体能力は単純に自分の方が高いだろうと自負がある。
スタミナと俊敏さは鍛え方が違うのだ。
「んーまあ、そっすね。
別に戦うのが好きなわけでもないっすよ、一応。」
どっちかと言えば、避けれるものなら避けたいとは思う。
それでも嫌悪したりする訳ではないのは、本能的にそう言う事柄に興味があるのだろう。こればかりはどうにもならない。
「あー、そういやそうっしたね。
……先輩は変わんないっすよね、声のデカさとか。声のデカさとか。あと、声のデカさとか。」
ゆらゆらと湯気の様に立ち上る殺気が鎮まっていく。
完全に瞳孔が開いていた七生の目も、普段の穏やかな物へと戻って。
……それから懐かしむ様に頷いた。変わらず煩い、と。
■真乃 真 > 「そうか、良いと思ったんだけど…仕方ない、今の感じでいくか!」
臨時とか緊急とかに積極的に行く今のスタイルでいこう!
人助けをしながらバイトするのは確かにバイトがおろそかになりそうな気はしていた!
「僕もあんまり戦うのは好きじゃあないからね!
話し合いで済むなら全部話し合いで済ませたいくらいだよ!」
そんな機会から話し合いだけで済んだことは殆んどない。
「ああ確かに僕はあんまり変わらないかもね!
間違いなく成長はしてるけどね!」
いろいろな人から影響を受けた気がする。
だけどそれでも、真乃真は変わらない。
だけど、変わらないままで真乃真のままで前に進んでいる感はある!
影響を受けても!進みながらでも!真乃真は真乃真なのだ!
「そういう東雲君もあまり変わらないな!なんか先輩である僕への扱いが雑なとことか!」
見た目とかの話ではない!
中身の話である!この一年間で大きく変わったようには見えない。
…見えないだけかもしれないのだが!
■東雲七生 > 「先輩はその方が良いと思いますよ。」
うんうん、と頷きながら目を眇める。
人助けを最優先に、とする姿勢はきっと七生には出来ない。
「そもそももっとみんな妥協して生きればいいんすよね。
どうせ寿命だってそう変わんないんだし、学校生活だって永遠じゃないんだし……。」
やれやれと肩をすくめてみせる。
小柄なので肩を竦めると更に小さく見えるが、本人は気付いていない。
「ん!まあ、先輩はそれで良いんじゃないっすか。
その方が先輩らしいっつーか、今の自分に充分満足してるって大事だと思うんすよね。」
声のデカさを除いて。そう言い掛けて口を噤む。
まさに今、扱いが雑だと言われたばかりである。いや、確かに雑だという自覚はあるけど。
「……んん。まあ、それだけ先輩後輩とか、そういう肩書きじゃなくて一人の人間として対等に思ってるって事っすよ。
って、これだと何か上から目線っぽいっすよね。良いんすけど。」
真乃先輩の生き方は七生には真似出来ないものであると思う。
自分に出来ない事が出来る人には、素直に尊敬の念を抱くのが東雲七生という少年だった。
まあ尊敬しているからといって扱いが変わるかと言ったら案外そうでもない。そうでもないのである。
にこにこと人の好さそうな笑みを浮かべる赤髪の少年は、成程表立った変化はない様に見えるだろう。
それでもだいぶ変わったのだ。それを表立って見せるのが、凄く苦手なだけで。
■真乃 真 > 「妥協、妥協か…
その言葉はあまり好きじゃないな…もう少しお互いに譲りあうべきだって言うなら良い事だと思うけどね!」
何かネガティブなイメージがある。
譲り合は良いと思う。でも、互いに譲れないものがあるという気持ちも分かる。
生き方って難しいな!もっとみんなシンプルに生きればいいと思う!
「ああ!正直、自分に対しての満足感ではこの島の誰にも負ける気がしないね!」
更に成長しているという…ああ、自分の満足が怖い!!
偶に自分に満足しすぎて悩んでる人に申し訳なさを感じたりするレベルである!
「なるほど!そう言われると何か嬉しい気がする!」
人間として対等。
真はこの目の前の少年を師匠と呼んだこともあるくらいには影響を受けたのだ。
そんな相手から対等だと言われれば素直に嬉しいとは思う!
…でもそれはそれとして先輩として!
先輩としての扱いも期待したいのが人の心だと思う!思うんだ!
「さて!結構話したな!そろそろ僕は行くよ!そろそろ行かなきゃいけない気がする!!」
そう言って給水塔から飛び降りる。
そこそこの高さはあるが着地の際に音はたたない。
地面にぶつかる寸前に異能を使って止まったのだ!
ああ、特にバイトがあるでもないし。特に予定があるでもない。
ただ、何となくどこかで誰かが困っている気がする!
…多分気のせいだろうけど!
■東雲七生 > 「あー、譲り合い。
言葉の感じとかあんま気にしたこと無かったすけど、確かにそっちの方が良いかもっすね。」
自分で言っておいて、妥協とは正反対の位置に居る少年。
まあ相手が居て成り立つ妥協なら、確かに譲り合いと言った方が正しい気はする。
「そいつは凄いや。俺は全然満足には程遠いっすから。」
あはは、と子供っぽく笑う。
成長をしていないとは思わない。でも、まだ足りない。
どれだけ成長を重ねても全然足りない。そんな貪欲さが無邪気な笑顔の下にはあるのだが。
「でしょでしょ。俺もいずれはそう見て貰いたいもんすね。」
今度は苦笑を浮かべた。対等に話したい相手が居る。でも、きっと届かないものだとも思う。
自分が人に与える影響力なんてちっとも考えた事もない少年は、ふんわりと夕焼けに染まる街を見て。
「おっと、また「いつもの」っすか?
空回りして変な失敗しないでくださいよー。」
給水塔から真乃が飛び降りたのを見れば。
へらりと笑みを浮かべて、軽口を叩きつつ、ひらひらと手を振った。
■真乃 真 > 「満足し続けてる僕とは大違いだ!
そういうのも良いと思う、けどキリがいいところで止めときなよ!」
上には上がいる。この学園ではそれがとても分かりやすい。
努力も才能も更に上の努力と才能によって塗り替えられてしまう。
上をみてもキリがないならば自己満足するしかない。
一回ずつで満足して次の満足を求める真もある意味キリがないのだけども!
「一回決まったイメージはなかなか崩れないからなあ!
そうとう、変わったところを見せないと変わらないと思うぜ!」
誰に見せるのかは分からないが。
言い方からするに上の人、つまり先輩である。
一度ついた後輩感を拭い去るのは至難の業だろう。
「ああ、任せろ!空回りもするし、変な失敗もするかもしれない!
それも平常運転さ!」
給水塔に背を向けたまま無駄にカッコいいポーズを取ると。
屋上のフェンスを給水塔に登った時のように加速をつけて飛び越えた。
そして、異様に長い白のタオルを靡かせて男は屋上から落ちていくのだった。
ご案内:「屋上」から真乃 真さんが去りました。
■東雲七生 > 「そっすねえ、キリが良い所で。」
どこだろう。
……割と本気で分からない。キリが良いところ、何処だろう。
それ程までに目指す先はもっともっと高い所だ。一生かけて、届くかどうか。
「んまあ、良いんすよ別にー。
気付いてくれる人は気付いてくれますし。ねっ。」
ふふん、と含みある笑みを浮かべる。
大丈夫だ、きっと見てくれているから自分も頑張れる。
どれだけでも無理が出来る。少しだけ、寂しいけど。
「あはは、ホント……相変わらずなんだからなあ。
大したもんだよ、あそこまで自信に満ちてるとさ。」
屋上から飛び降りて行った真乃を見送って。
給水塔の縁に腰掛けながら、七生は目を細めて呟いた。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。