2017/04/04 のログ
ご案内:「教室」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 「ほいとこせっ、と!
よぉーし、大体こんなもん……か?」
新年度、新学期へ向けての教室の準備を手伝いに来た七生。
人手が足りずに一人で作業していた所為かもうすっかり外は夕焼け空である。
「やっぱ広い学校だけあって教室の数も多いもんなー」
ひぃふぅみぃ、と机の数を数えて規定通り揃っているか確かめつつ独りごちる。
あとは生活委員に報告しておわり、だ。
指定の時間までまだ少しだけ余裕があったので、適当な机に腰を下ろして無人の教室を眺め始める。
「早くて来週くらいにはまた授業が始まるんだよなあ。」
■東雲七生 > 「つーか、俺もいよいよ三年生なわけで……。」
あんまり実感ねえんだよなあ、と呟いて天井を仰ぐ。
時間の経過は嫌でも理解しているのだが、如何せん何か成長したかと問われると困る。
背だって伸びてないし、何か表彰されたわけでもないし、ついでに童貞だし。
いやまあ最後は関係無いオブ関係無いなのだが、それにしてもこのまま三年生になり、四年生になり、そして卒業していって良いのだろうか、と考えてしまう。
「何か、こー……具体的な目標とか決めないと、かなあ……。」
かと言って一年二年で何とかなりそうな目標、と言われると決められない。
腕組みして悩んで悩んで、大きく後方へと体を逸らしていって、
今腰掛けているのが机の上だ、と思い出す頃には七生の身体は机から転げ落ちていた。
■東雲七生 > 「いてて……折角並べたのになあ。」
一緒に倒れ込んだ椅子を起こしながら小さく頬を膨らませる。
その姿はとても高校三年生には見えず、だいぶ使い込まれた制服を着ていなければ新入生と間違われるだろう。
去年もそうだったので、本人としては今年こそ間違われない様にしたいのだが。
「そうだ、もうちょい大人っぽくなろう。
背とか伸びなくても良いから、いや伸びて欲しいけど。
あと20センチくらい欲しいけど、それはそれとして大人っぽい雰囲気とか出せるようになろう。」
ぐっ、と握り拳を固めて決意する。
具体的にどうすれば良いのか分からないが、二年あればそこそこ良い感じにはなれるのではないだろうか。
根っこが素直すぎる少年は、疑いもせずにそう信じた。
■東雲七生 > 「あとは自転車──バイクを手に入れないと、か。」
そちらの方は順調だった。
元々運動神経の塊のような少年は自分の体を用いる事にかけてはしばしば天才的な学習能力を発揮する。
試しに、と友人に乗らせて貰った自転車も、一度派手に素っ転んだだけで後は難無く乗れる様になった。
あとは自分の自転車をどうにか入手し、手足のように使いこなせれば第一関門はクリアと言っても過言ではないだろう。
……本人がそう思ってるだけかもしれないが。
「あとは髭が生えたら伸ばす!……生えんのかな。」
つるりとした顎を撫でる。
流石に産毛くらいは生えているが、一度も髭らしいものが生えてきた試しが無い。
明日こそは、明日こそはと期待を胸に就寝する日々が半月ほど続いて若干諦めかけてる気配すらある。
■東雲七生 > 「あとは……あとは……」
やっぱり何も思いつかない七生である。
きっと周囲に参考に出来る「大人の男性」が少ないのも原因の一つだろう、と七生自身も解ってはいるのだが。
大抵身体的スペックがあまりにも足りてないから参考にしようにも参考に出来ないのだ。主に身長的な意味で。
「うーぬぬぬぬ……まずは落ち着いた言動からかな。
落ち着いた言動……そうだ!自分の事を俺から私にしてみるとかどうだろう。
あとはもっと語尾にですますを多用して、うん、イケる気がする!」
東雲七生、高校三年生。
見える地雷にも平然と突っ込んでいくお年頃。
■東雲七生 > 「よし、それじゃあ早速試してみようかな。」
時計を見ればそろそろ生活委員に報告に行かなければならない時間。
さっき転んだ拍子にズレた机をきっちり整えてから教卓の上に投げておいた鞄を手に取り、七生は教室を後にした。
数分後、早速『大人っぽさ』を重視した口調で生活委員に報告し、
その場に居た生活委員の生徒全員の腹筋を鍛え上げて意気消沈して帰る七生の姿があったという。
ご案内:「教室」から東雲七生さんが去りました。