2017/04/20 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > 「いただきます」
昼食どきの職員室。自席に弁当箱を広げ、手を合わせるヨキの姿がある。
ステンレス製のフードキャリアの中身は、昨晩仕込んだバターチキンのカレーライスだ。付け合わせにサラダとヨーグルト。
かつてカレーライスと天ぷらそばからのカツ丼にエクレアを頬張った獣人時代に比べれば、遥かにまともな食生活だろう。
開け放された窓辺でカーテンが揺れ、春のぽかぽかとした風が吹き込んでくる。
人々の朗らかな声が交わされる中、こっくりとしたカレーの香りがふんわりと漂う……。
「――んまいっ」
贅沢に丸鶏をまるまる一羽使ったカレーが、朝から働き詰めの舌に美味くない理由がなかった。
■ヨキ > 今日はカレーライス。
残った分は冷凍して、ドリアやカレーうどんに使おう。パンに挟むのもいいし、パイを焼いたっていい。
揚げてコロッケにするのも大いにアリだ。
毎日のことながら、食事をしているヨキはとにかく機嫌がよい。
いわゆる「ながら食べ」もせず、まるで生まれて初めてカレーを口にしたような、幸せいっぱいの顔で頬張っている。
ご案内:「職員室」に宵町 彼岸さんが現れました。
■宵町 彼岸 > 「職員室……ん、ここ」
お昼時、皆が休憩を謳歌する中、職員室の前に佇んでいる一人がいた。
片手には写真と丸、そして書きこみをされたメモを軽く握り、
もう片手に持つのは……自身の名前が記入されたとある紙。
「……えと」
これを提出するか否か、しばらくの間迷ってしまった。
拒否されるかもしれないと思うとそのまま帰ってしまった方が良い気もする。
けれど……そんな事を考えながらとうとうここまで来てしまった。
小さく息を吸うと控えめに扉を読んどノックし、静かに扉を開ける。
「……おじゃましまぁす。
ヨキ、せんせ、探してるですけど、いらっしゃいますか」
職員室というのは意外と便利。
誰が誰かわからなくても名前を呼べば講師が対応してくれる。
と言っても極力音をたてないようにドアを開けてしまったので
もしかしたら気が付かれないかもしれないけれど。
■ヨキ > 昼間とあって、行き交う者は多い。
やってきた彼岸の姿に通りすがりの女性教師がすぐに気が付いて、ヨキ先生ならあすこよ、と指し示してくれる。
背後で聞こえた声に、職員室の中ほどの席で食事を続けていたヨキが振り返った。
「……おや」
行儀のいい咀嚼のあとに嚥下して、食器を置く。
明るく笑って、軽く掲げた右手で手招きしてみせた。
「やあ、ヨキはここだよ。
――こんにちは、カナタ君。ヨキに何か用かね?」
■宵町 彼岸 >
「よし、帰り……あ、無理なやつぅ……」
一瞬気が付かれなければいいと矛盾した思いを抱え
踵を返しかけるも彼女自身が滅多にこんな場所に来ない上に
家庭環境の関係でケアが必要と思われている生徒。
そんな生徒が向こうからやってきたのだからそれはもう思いっきり気が付かれた挙句、
とても親切に場所を示され、案内までされては逃げる事も出来ない。
完全にホイホイされている。
「あ、えっと……」
そうしていざこうして向き合ってみると視線が泳ぐ。
講師の間では物忘れの激しい点はあるものの
大人しく人懐っこい学生として通っていたはずだ。
勿論意識はしてそう振舞っているけれど……
実際に自分がそうなってしまったかのような錯覚すら覚えるのはどういうことなのだろう。
「……ご飯ちゅ、邪魔、でしたか?
あの、中断するほど、の事ではない、ので
気にしないで、ほしーです」
……一体何しに来たのと普通なら突っ込まれるだろう。
とりあえず話題でもと思って自分でもちょっと変な事を口走った気がしていた。
■ヨキ > 遠慮がちな彼岸の言葉に、平然と笑う。
口を拭って、茶で喉を潤して。
つい先ほどまで、カレーに首っ丈だったのが嘘のようだ。
「邪魔?いいや、そんな筈があるものか。
ご飯は大事だが、それ以上に学生のことはもっと大事さ。
このヨキを直接訪ねて来てくれたのなら、尚更にね」
彼岸が手にしていた紙を一瞥する。
「ほら、ちょうど椅子も空いているし。
よかったらお座りよ」
隣のオフィスチェアを引っ張ってきて、彼岸の前に据える。
眼鏡の奥の眼差しが、(それで、何の用事かな?)とばかり、話の続きを促している。