2017/07/22 のログ
イチゴウ > 「失礼だな。短いだけでボクも悩むんだ。」

そんなことを言っているがこのロボットの
短い思考時間では恐らく悩みとは言えないだろう。
続けて兵器であると聞いた彼女の反応を見て

「その反応は予想通りだ。兵装も分離してあるし
制圧任務の時みたいにコンクリート壁を殴り破って
出てきている訳じゃないからそう見えないのも
無理はない。」

一応軍事用途以外も想定されているため
パッと見で兵器とわかるようなゴツゴツした
見た目になっていないという理由もある。

「少なくとも生まれからラミアであれば
成長した状態でコケかけるというのは少ないだろう。
前のキミの逃げ去り様は控えめに言って
マヌケだったぞ?それに人間以外の種が
他の種に変異するという事例を今までに見てないからな。
もし今後そういうのがでてきたら考えを更新する。」

そしていよいよこのロボットは
持っていた案の話に持ち込む。

「ボクにはIFGSと呼ばれる所謂異能ジャマーが
搭載されている。対異能の秘密兵器だ。
キミの異能の詳細は解析出来ないが
もしこれが効くならば15秒程度人間の足に
戻れるはずだ。あくまで仮説だが。」

ごく短い間だが人間の足に戻れる可能性が
あると提案する。しかしそれは
その短い間が過ぎれば再び蛇の身体へと
目を向けなければならない事を意味する。

藤巳 陽菜 > 「無理はないというか…。
 まあ、武器とかは持たない方がいいんじゃないかしら?」

あんまり似合わない感じがする。
ああそもそも兵器とか武器とかに対して遠すぎて現実感が湧かない。

「…一月であれだけいけたら及第点よ。
 それにもしかしたら骨折とかしてたラミアなのかもしれないわ。」

実際、一か月の間にあれだけの移動が出来るようになったのはかなり凄いと思う。

「何?異能を消せるの?
 何それ!使って早く!どうやって使うの?」

短い時間であってもこの蛇の足と離れられるのであればと
それにもしかしたら一回消したら元に戻れるかもしれない。
そんな希望をもって急かす。

イチゴウ > 「その点は心配ない。平時では殺傷兵装は
使えない。」

人間のような自由思考が特徴のAIだが
根幹にあるのは
やはりプログラム的な基本ルールだ。

そうしながら
このロボットが提案したものを聞いた途端に
眼前の少女の目の色が一気に変わる。
よほど現状の身体に不満を抱いているのだろうか。

「わかった、今から起動する。
念のためにボクから離れないでくれよ。」

--IFGS activated.
--Impact range ±0.95
--15 seconds left.

ロボットからまるで何かが歪むような
鈍い音が響くと目には見えないが
ロボットの周囲の空間に変化が生じたのを感じるだろう。
もしこのIFGSから放たれる物質粒子が
彼女の異能に作用すれば彼女の蛇の身体は
気づけば元の人間の足へと戻るだろう。

藤巳 陽菜 > 「…つまりこの島にいる時は使えないって事よね。」

陽菜にとってはこの島はそこまで危険なものではない。
実際、危険なのは一部だけそれ以外は概ね平和なのだ。

「なんかだ…緊張してきたわ。」

少し緊張したような期待したようなそんな表情でそのロボットに身を寄せる。

…例えば何かを壊す異能があるとする。
それで壊した物体から異能の影響を取り除いても壊れたものは直らない。
異能による変質も異能による差はあれど戻らない事もあるだろう。

…結論から言えば陽菜の身体は戻らない。

だが、それは確実に陽菜の異能を打ち消していた。
蛇の身体と人の身体その二つがつながっている歪を誤魔化す為に存在していた異能を

身体の繋ぎ目を酷い痛みが襲う。異形の身を拒絶するように引きちぎられそうな痛みが襲う。。
既に蛇の身体は陽菜のものでなく陸に上がった魚のように激しくのたうち回る。

「痛い!!痛い!!痛い!!止めて!!
 何で!こんなの!なんで私ばっか!」

叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
痛みはきっかりと15秒。IGFSとやらの効果が切れる頃には既に余韻も残さず引いていた。

「…は、話が違うじゃない!」

瞳に涙を溜めてロボットに対して叫ぶ。

イチゴウ > --IFGS off-line.

IFGSは起動した。そして彼女の異能も確かに打ち消した。
しかしそれによって明らかになったのは
少女にとってあまりに残酷な現実。

「すまない。
どうやらボクの認識が誤っていたようだ。
キミの身体は”生物学的”に変化している。
異能で変身してるんじゃなく
構造から置き換わってしまっている。
つまりボクが考え出せる限りでは・・・」

得られた事実を組み合わせ導き出される
事柄を淡々と並列的に並べていき
最後の事柄は一瞬間を空けて

「キミの足はもう元に戻る事はない。」

冷たい言葉が彼女へと撃ちだされる。
もはや彼女の変異は科学の力でどうにか
なるものではない。完了した現象が
巻き戻る事はあり得ないのだ。

藤巳 陽菜 > 「…訳の分からない事を言わないでよ。」

いや、何を言っているのかは薄々分かっている。
ただ、理解したくない。そんな事聞きたくない。

言わないでそれ以上言わないで

そんな想いと関係なく言葉は機械的な音声乗せて紡がれて
決定的な一言を

『キミの足はもう元に戻る事はない。』

湧き上がってきそうになる諦めを無理矢理に言葉で押さえつける。

「そんなはずない!だって、だって!」

無理矢理に絞り出した言葉は根拠も何もない
ただ出さずにはいられなかった言葉というよりそれは悲鳴に近かった。
これ以上この場にいればきっと理解してしまう。諦めてしまう。

少女は逃げた、以前と同じようにそのロボットから距離を取った。
…蛇の身体での走り方は以前よりもずっと上手くなっていた。
…蛇の身体に以前よりもずっと慣れてしまっていた。

ご案内:「ロビー」から藤巳 陽菜さんが去りました。
イチゴウ > 逃げゆく彼女を一体のロボットが
じっと見つめ続ける。

「果たしてキミはいつまで『人間』を
保っていられるんだろうな。」

ボソッと呟く。確かにあの少女は
人間から蛇へと着実に変異していっている。
まるでそうなる事が定められているように
一方的な方向性で。

「しかしこのような絶対的な事を
突きつけても認めずに抗い続ける。
何故諦めない?気付いているだろう?
これだから人間は興味深い。」

恐らく彼女はこれからも自信の運命に
抗っていくのだろう。
そして宿命に抗う事をしらない機械は
彼女のことを理解できないだろう。

ご案内:「ロビー」からイチゴウさんが去りました。