2015/06/19 のログ
ご案内:「屋上」に万車堂さささんが現れました。
万車堂ささ > 昼下がりの屋上。入り口の扉を小さく開け、若干挙動不審気味に周囲の様子を伺う少女が一人
万車堂ささ > 人気が無いのを確認して、ぱたぱたと陽の下に出てくると、肩から提げた鞄の口を開く
『出ておいで』
にゃぁ、と小さな声がして、茶トラの毛並みの子猫が外へ飛び出した

万車堂ささ > 飼育小屋を諦めた後、運良く手頃な物置を見つけ、仮の宿を移すことには成功した
休み時間の度にちょくちょく様子を見に行き、授業が無い時には、こうして外に連れ出したりもする

『なかなか見つからないね、新しいご主人』
鞄から取り出した猫じゃらしを踊らせると、子猫は面白いように食いついて床の上で転げ回る
飼い主探しを始めて一週間余り、進展は…あまり無い

万車堂ささ > 『猫……嫌いなのかな、みんな』
勿論、皆が皆そうであるとは思っていない
飼いたくても飼えない人だって大勢いるはず……だと思う
現に、自分がその一人なのだから

『お前は、どんな人がいい?』
尋ねてみても、当人は揺れては弾む緑のもしゃもしゃに夢中だ
猫って本当に猫じゃらしでじゃれるんだ、これは最近まで知らなかった発見のひとつである

万車堂ささ > 正式名称:エノコログサ
イネ科エノコログサ科の一年草
市販の玩具ではない、天然物である

万車堂ささ > 本で読んだ記憶によれば、エノコロは確か犬の意味だったはず
もしかして犬も好きだったりするのだろうか
どうでもいい事を思いながら、もじゃもじゃを動かしていると、隙を突かれて捕獲された

『あっ、こいつ、離さない…!』
ぐいぐい引っ張っても、子猫は噛み付いて離そうとしない
初めて見た頃に比べたら、体も大きくなって力も強くなってきたような気がする
痩せっぽちで弱々しかった頃に比べると、見違えるように元気になった

万車堂ささ > 諦めて猫じゃらしの所有権を手放すと、子猫は緑のもじゃもじゃにわしわしと小さな牙を立てる
『…美味しい?』
と思ったら、すぐに興味を無くして放り出してしまった

『きまぐれ』
というわけでもなく、単純に動いていないものに興味が無いのだろうか
あれだけ欲しがっていたのに、いざ手に入ると興味をなくしてしまうなんて
ともあれ、猫じゃらしが付かず離れずの精妙なテクニックを要求される遊戯であることは理解した

ご案内:「屋上」に神崎 聖さんが現れました。
神崎 聖 > 暇なのか、戯れなのか…。
生徒会の一員である人間は
屋上で暇を潰そうとしていた。

「さて、何をするか」

そう考えていた。

神崎 聖 > ドアを開けると…。

既に先客がいたようだ。
見てみると猫もいるのが見える。

「猫…。」

万車堂ささ > 猫じゃらしを拾い上げようと手を伸ばしたところで、不意に物音が耳に届く
誰かが屋上で上がってこようとしている

(やばい…!)
急いで猫を隠そうとするが、捕まえようとした手をひらりと避けて、ちょろちょろと跳ね回るばかり
『ちがう…!そういう遊びじゃなくて…!』

扉が開く音に、顔を上げる
(あ…)
目が合い、しばし沈黙

闖入者、神崎聖の足元で、子猫がにゃあと鳴いた

神崎 聖 > 「あ」

足元でねこが鳴いた。
一体どういうことなのか…。

「すまないが、説明できるかね?」

万車堂ささ > 『え……あの……ねこが…』
言い淀む声もテレパシー、神崎聖の頭に直接聞こえてくる

『ねこと……あそんでました』
説明にならない説明を引き出すのが精一杯だった
そんな仮の保護者の気持ちも知らず、子猫は甘えるように聖の足へと頭を擦り付ける

神崎 聖 > 「ふむ…。」

頭に声が聞こえる。
いわばテレパシーだろうか。

猫と遊んでたのも事実だろう。

しかし…。

「この猫…。随分私に甘えてるようだが。」

万車堂ささ > 『…人懐っこい…から』
この猫は基本的に人をあまり恐れない、だから公園でも人気があったのだが

聖を見上げ、円い目でなぅーと鳴く子猫
『撫でたりしてあげると…よろこぶ』

神崎 聖 > 「なるほど。」

頭を撫でてあげる。
なるほど、たしかに可愛い。

「しかしこの猫はどうしたのかね?
何故ここに?説明できるかな?」

万車堂ささ > 『んぅ………』
問い詰める言葉に、窮する答え

『行くところが無くて……いまは学校にいて……外に出れないとかわいそうなので…』
『あ、でも、でも、いま飼い主探してて……今だけ、今だけここにいて……!』
飛び飛びに言葉を繋ぐため、その返答は文章としての体を成していない
それでも端々の単語から、この猫が学内で匿われているらしい事は推察できるだろう

『内緒に…できない?』
恐る恐るといった表情で、女生徒の顔を窺い見る
彼女が生徒会役員であることも、まるで知らず

神崎 聖 > 「ふむふむ…。」

テレパシーで伝えたいことは把握できた。
飼い主を探しているようだが、私なら飼うことは
出来るがさてさて…。

「分かった。内緒にしよう。
しかし、里親が見つからないとなれば…。」

すこし考えるように…。

「私で良ければ構わないかね?
すこし異能の影響を受けるかもしれんが。」

神崎 聖 > 「と、いってもその猫が悪影響受ける訳じゃないよ。」

そう付け足しておく。

万車堂ささ > 『…?』
一瞬、言葉の意味を受け止めかねて
虚を突かれたように、ぱちくりと瞬き
『いい……の…?』
あまりにも以外なところから申し出が来たため、戸惑いがちに意思を再確認する

そしてもう一つ、気になるのは
『影響…って、どんな…?』

神崎 聖 > 「ああ、別に構わないよ。」

私自身は別に猫を飼っても大丈夫だし、
猫喘息の知り合いもいないだろうし。

「んー、すこし頑丈になったりとか
しゃべれたりとかかなー?」

私自身もよくはしらない。
たが、悪くはないはずだ

万車堂ささ > 告げられた内容を、しばし頭の中で反芻する
頑丈になる…それは、たぶん悪くない…
しゃべれるようになる…?喋る動物の実例はこの島でも確認されている
それの良し悪しは分かりかねるが、もし、この子と会話ができたら…とも思う
迷って、迷って、考えた結果
足元に来た子猫を抱き上げて

『………おねがい、します』
神崎の方へ、差し出した

『あの……かわいがって、かわいがってあげて、ください……!』
半分をマフラーで隠したままの表情、それでも強く懇願している様は、両眼にはっきりと現れている
この子が気に入ったのなら、きっと悪い人ではないはずだ、そうであってほしいと思う

手の中の子猫は人間たちの心を知ってか知らずか、小さく一声、にゃあと鳴く

神崎 聖 > 「ふむ。よろしく頼むよ。子猫さん。」

子猫を受けとると、抱き上げる。
ふかふかしていて気持ちがいい。

「うん、大事にするよ。」

猫はどちらかと言えば好きだ。
なによりこの少女。万車堂ささだったか。
その眼をみて確信した。絶対に大事にする。

「そうそう。名乗り忘れてたね。
私は神崎聖。生徒会の人間だ。」

私の事を話しておこう。

万車堂ささ > 生徒会、という名称に少し驚いた
思い切り違反をしてしまっているような気もするが、よかったのだろうか
それはさておき
『万車堂、ささ』
こちらも、と名乗り返す。名前を知られているとの認識は無い

『えと…何かあったら、連絡とか、いつでもしていいから』
聖の眼を見上げ、携帯端末の連絡先等の交換を申し出る
『困ったことあったら、手伝うし』
ここしばらく、ずっと行動を共にしていた子猫を手放すということで、どうにも落ち着かない様子

神崎 聖 > 「ささね。よろしく頼むよ。」

名前は知っているが、まぁ聞くのがセオリーだ。
そして連絡先を交換を申し出られた。
当然交換するつもりだ。
スマホを取り出し。

「これが私の連絡先だ。後はパソコンの連絡先も送って置こう。」

ささの携帯端末に連絡先を送っておく。
ついでに私の住所も送っておこうかな?

万車堂ささ > 『ん、ありがとう…』
一通りの事務的処理を終えると、手持ち無沙汰になる

『それじゃ…どうしよう、今連れてく…?』
彼女がその気なら、それでもいいかもしれないが
学園内はまだ、人目が多いだろうと思われた

万車堂ささ > ――――結局、彼女に預ける、その前に
最後に一晩だけ、猫と過ごさせてもらうことになった
もちろん、こっそりとだけど

明日にはもういなくなる、そう思うとなんだか心に隙間ができたようで
そうなってようやく、自分が寂しいと感じていることを理解する

『…大事に、してもらえるといいね』
心の声で呟いて、ふわふわと暖かな毛並みを抱きしめて眠りについた

ご案内:「屋上」から万車堂さささんが去りました。
ご案内:「教室」にアンジュ・キシモトさんが現れました。
アンジュ・キシモト > 【教室棟の一角、大講義室。
こちこちと鳴り響く時計の秒針。教壇を底として、すり鉢を半分に割ったような席はいつもの通り、半分ほどが埋まっている。講義の時間帯もあって、船をこぐ生徒が多い。これもいつものこと。

チョークが黒板を叩くリズミカルな音が響く】

「いったん、まとめますね。2045年より突如始まった日本の軍国化。それによる憲法改正、軍備拡大。
これに反対運動が巻き起こり、デモ活動は次第に凶悪なテロリズムとして激化します。『復憲党』の発足ですね」

【簡略な年表を書き終わり、アンジュは振り返る】
「質問、ありますでしょうか……?」

【静寂。もういっそ騒いでもらったほうが気楽なレベルの静寂が講義室を包んでいる。痛みを伴う空気だ】

アンジュ・キシモト > 【静寂を質問なしと捉えたらしき講師は、若干顔をひきつらせながらも話を続けていく。これも、だいたいいつものこと。】

「えー、と。
この『先進生体工学史』はこの私がもといた世界の、生体工学に関する技術の歩みを紹介する講義だ、と初回の講義で説明させていただいたかと思います。
なのになぜ、こんな異界の情勢歴史を説明されるのか、とお考えの方もいるかと思います……」
【いない。そもそも真剣に聴講する生徒は皆無だ】
「しかし、これは大いに関係あることなんです。それを、今からご説明します」

【アンジュは再び黒板に向かい、大きく文字を書き始める。
『中央テレビ局爆破テロ事件』と、綴られた】

アンジュ・キシモト > 「私達の生きていた“日本”は、この事件によってほぼ内紛状態へと突入しました」

【けだるい空気に満ちていた講義室が、わずかに今までとは違う静寂でもって揺れる。机に突っ伏していた生徒が、わずかに身動ぎする】

「様々な規模の戦闘行為が、国内の各所で頻発しました。そんな時に、フランスから配備されたのが『a.n.g.e.』」

【えー、えぬ、じー、いー。と彼女は読み上げる】

「5体の、対テロリズム生体戦闘兵器でした。かつて日本にて発達していた生体工学技術を利用し、フランスで完成されたそのロボットが、日本に送り込まれてきたのです」

アンジュ・キシモト > 「日本政府内部には、『a.n.g.e.』とそのメンテナンス員、『管理者』によって構成される対テロリズム特別対策室『cerisier』(スリズィエ)が発足しました。
はじめはロボットに守護されるということに抵抗感を覚えていた国民たちも、試金石的に現場へと投入される『a.n.g.e.』たちの活躍を見て、次第にそれらを英雄視するようになっていきます」

「彼らの活躍によって逮捕、また殺害されたテロリストの重犯罪者たちが山と積まれた時、ついに国民たちはただのロボットを英雄視するようになりました。
――天使が降りてきた、と。奇しくも2045年問題が恐れた自体は、そのとき現実のものになったのですね」

【そう言い、アンジュは無意識的に微笑む。生徒には見えないほど微かで、そして痛々しい笑み】

アンジュ・キシモト > 「国内のテロリストたちが完全に排除されるのは、時間の問題でした。国内で『a.n.g.e.』は、まるでアイドルのようにマスコット視されるようになります。
……なにせ、そのロボットたちは外見も言動も一切の違和感なく、ヒトとして振る舞うことが可能でしたから」

【アンジュは黒板の脇にあるタッチパネルに触れる。黒板に書かれたチョークが綺麗に消え去り、落ちた粉はそばの吸気口に吸い込まれていった】

「……さて、みなさんは先週の講義の内容を覚えていらっしゃるでしょうか。

自分たちは安泰だと、『a.n.g.e.』によって守られていくのだと安心しきっていた国民たち。
日本という国そのものが、諸外国の戦闘兵器試験場になっていると気づくものは、いませんでした」

アンジュ・キシモト > 【チャイムが鳴り響く。まるで結界のような、奇妙な静寂に包まれていた講義室は突如がやがやと喧騒に満ちる。】

「あ……そろそろ考査の時期だったかしら……まぁ、皆さん他の講義もあるでしょうし、この講義のテストはあんまり難しくしませんからね。ノートを読み直すくらいの復習だけ、しておいてね」

【三々五々出て行く学生たちに手を振る】

アンジュ・キシモト > 「……」
【講義室は本当の静寂を取り戻す。
アンジュは教卓に戻り、ひとつため息を付いて講義日程の用紙を見つめた】

「――いけませんね。思い出話に、花が咲いて」

【ぽそりとつぶやき、ブーツの音を響かせて講義室から出て行った】

ご案内:「教室」からアンジュ・キシモトさんが去りました。
ご案内:「教室」にスピナさんが現れました。
スピナ > 第三大教室棟にある教室のうちの一つ、特別講座室。
主にこの世界の常識やルール
世界観に慣れてない人向けの特別講座が行われている。

今日の生徒は一人
少女が、鉛筆を片手に何か書いている。

スピナ > 「あ……い……う……え……お……」

発音をしながら、ノート代わりの紙に、ひらがなを書いている。

今日のお勉強は文字。
この島で活動するならば、文字の読み書きは必須スキルだろう。
少女も、それを身につけなければならなかった。

『ほら、また"あ"と"お"が逆になってますよ。
 点がないほうが、"あ"、あるほうが"お"ですよ。』

……ここは学園である。保育園ではない。決して。

スピナ > 「あ、ごめんなさい。
 えと、あ……お……」

『あとおの形は似てるけど
 書き方はちょっと違うから気をつけてね。
 あの書き方は……』

付いている教師は一人。入学時の手続きに相手をした教師と同じだ。
教師もなかなか苦戦しているようで、丁寧に書き順を教えてあげている。

「えと、つぎは、か……き……く……」

『それは"き"ではなく"さ"です。一本足りませんよ。』

スピナ > 初めて文字の読み書きをするもので、少女もなかなか苦戦していた。ひらがなに。
形の似てる"あ"と"お"をよく間違えるし、"ぬ"と"め"もどっちがどっちだかわからなくなる時がある。
だが少女はわりと楽しんでいた。

『つぎはさ行ですね。さ、し、す、せ、そ、の5つよ。それじゃ書いてみて。』

「はーい。えと、さ……あ、これは、き、だ。
 んー、し……す……せ……そ……」

一度書いて、なんとなく覚えてしまえば
あとはすんなりと飲み込めてしまう。
十分くらい経った後には、ひらがなもだいたい書けるようになっていた。

スピナ >  
『すごいわ。一回二回書いただけでもうおぼえちゃうなんて。
 これなら、今日中にカタカナも覚えられるかしら?』

教師も、覚えの早さに関心している。
海の精霊故なのかはわからないが、教える側としてもそこまで苦労はしなさそうだ。

「うん、わたし、カタカナも、がんばる。」

一方スピナ、褒められて張り切っている。
スピナはきっと、褒められてぐんぐん伸びるタイプなのだろうか。

スピナ > その後も、文字を発音しながら書いて、間違っては直し、もう一回書いて次の行へ……
という練習を繰り返し、ひらがなとカタカナをだいたい覚えることが出来た。

『おめでとう~。これでひらがなとカタカナは大丈夫ね。
 それじゃあ今日のテスト、いこうかしら。
 好きな言葉……なんでもいいわ、おもいついたものを、ひらがなか、カタカナで書いてみて。』

「すきな、ことば……」

首を傾げる。
新しい言葉はここ最近でいっぱい覚えた。
が、覚えすぎてどれか一つを思い浮かべる時、どれにしようか迷っていた。

「うーん、うーん……」

「……あっ!」

何か思いついたようだ。
ちょっと危なっかしく鉛筆を持ち、紙に書き始める。

スピナ > しばらくして……

「コーラ!しゅわしゅわしておいしいの!」

紙には【コーラ】と、でかでかと書いてあった。
すっかり気に入ってしまったようだ。主に炭酸に。

『あらあら……コーラ、すきなのねぇ。』

これには教師も思わず微笑んだ。
てっきり、自分の名前でも書くのかとばかり思っていたから、これは不意打ちだった。

『おっけーおっけー合格よ。
 それじゃあ今日はここまで。また明日も、同じ時間にね。』

「はーい!」

元気よく返事をして、今日の授業はおしまい。
荷物……らしき荷物もなかったので、軽くお礼を言ってから
スピナも教師も、教室を後にした。

ご案内:「教室」からスピナさんが去りました。
ご案内:「職員室」に薄野ツヅラさんが現れました。
薄野ツヅラ > 深夜の学園の廊下にかつり、かつりと杖の音が響く。
音が止まったのは職員室前。

(よし、人はいないわねェ───……)

おもむろにしゃがみこみ、鍵のかかった扉に金属棒を差し込む。
カチャカチャと音を鳴らして鍵を開ける。
────俗に云う不法侵入と呼ばれる其れだ。
赤いジャージにヘッドフォンをした少女が暫く鍵と奮闘していれば、
ガチャリと開錠の音が響く。

(開いた───ッ!)

すくりと杖に体重を掛けつつ立ち上がる。
失礼するわぁ、と呟いてずかずかと中に入りこむ。

薄野ツヅラ > 「ンー………久々の登校は良いものねェ」

のんびりのんびりと職員室を歩き回る。
なんせ天下のテスト前。学生は欲しくて堪らないであろう解答。
────其れを求めて少女は深夜の常世学園に忍び込む。
彼女は頭が悪いわけではなかったものの、より楽な方へと舵を切る。
真面目に勉強して対策をするより回答をそのまま写す方がずっと楽だ。

(取り敢えず成績優秀だけは保っておかないとねェ──…☆
 登校してないの自体は書き換えさせて頂いてるけどぉ───)

取っている授業の出席は教師の認識を"書き換えて"誤魔化している。
其れ以外にも通常のペーパー──定期試験に関しては出席をしないといけない。
能力でごり押せない時はこうして自ら足を運ぶ。

「ん、あった───頂戴するわぁ☆」

薄野ツヅラ > 「ちゃんと仕舞ってない方が悪いのよぉ、ボクは悪くないしぃ──…」

誰に云うでもなくぽつり、呟く。
肩から下げた鞄からワインレッドのノートパソコンを取り出す。
職員室の隅にぺたりと座り込むとコンセントにケーブルを挿す。
おもむろにパソコンを立ち上げてパスワードを打ち込む。

(ローカルに繫がせて頂いて───……)

カチカチとクリック音だけが響く。
教師が使用していると思われるクラウドネットワークに接続。
デンッ、と云うエラー音に舌を打つ。

(そう甘くてもやりがいがない訳だけどぉ───……☆)

にやり、口元を歪める。
其れは其れは、此れ以上ないほど楽しげに笑っていた。

薄野ツヅラ > 暫し奮闘しながらもパスワードを無理矢理こじ開ける。
8桁の数字をブルートフォースアタック───総当たり攻撃で突破。
本職のハッカーが見れば可愛い程度だが、
落第街の違反商店街で販売されているアプリケーションはそこそこに有用だ。
1億の選択肢を一気に叩きつける。

(ビンゴ───……☆)

タンッと楽しげにエンターキーを叩き込む。
開くのは各教科で纏められたテスト問題と回答のファイル群。
ひゅう、と楽しげに口笛を鳴らしながらどんどんとデータを吸い上げていく。

「自分の分は此れでいい筈だけど───……」

薄野ツヅラ > 「………此のデータ売ったらちょっとは面白いことになるかしらぁ」

ふと、頭を過ぎる。
本来なら時間を掛けすぎずにさくっと盗んで何事もなかったかのように落第街に帰宅する筈だったのだが。
目の前にある"面白いもの"の前に目が眩む。

(普通の教師なら見られても能力で如何にかなるし適当に誰かに擦り付ければいいし───)

自分の分だけでない、余計なデータも吸い上げる。
自分一人が楽になるのは本当に多少の罪悪感が芽生える。
そんなのは紛れもない建前だが────

「回答ゲット──……☆」

深夜の職員室に間延びした、楽しげな声が反響する。

薄野ツヅラ > かつり、杖を鳴らして立ち上がる。
無事、何事もなく今回も答案の奪取に成功した。
広げたパソコンとコード類を鞄に仕舞いこむと、よいしょと呟きながら立ち上がる。

「じゃあお邪魔したんだゾ───……☆」

侵入の形跡なんて知ったことかと職員室を後にする。
鍵のかかっていたことも忘れて大人しく戸を閉める。
上機嫌に杖を鳴らして、夜の学園を後にする。

薄野ツヅラ > ────落第街方面でテストの回答が高値で取引され、

職員室に不法侵入者が入ったと大騒ぎになるのは、また別の話なのであった。

ご案内:「職員室」から薄野ツヅラさんが去りました。