2015/09/09 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「雨……か。」

庇の下から空を見上げる。
秋雨前線の影響が常世島まで来た午後、七生は屋上のベンチに腰掛けていた。

七生の他に人影は無い様で、雨音だけが辺りに響く。
まあ静かに調べ物をするには丁度良いな、と手元の携帯端末へと視線を戻した。
液晶画面に表示されているのは、いくつかのストレッチ方法。特に肩凝りを重点的に緩和するためのもの。
先日、買い物帰りに遭遇した朝宮先生に教えるストレッチを幾つかピックアップしているのである。

東雲七生 > 「肩凝り肩凝りねえ……」

タッチパネルに指を滑らせながら呟く。
七生は肩凝りになった事がほとんど無い。
そもそも凝るほどの筋肉が上半身に足りていない、というのもあるが。
今後、筋トレを続けて筋肉が付いて行けば、必要になるだろうとも思ったので物のついでに覚えようという魂胆もあった。

「んー……先生の場合慢性的になってるみたいだし、いつでもどこでも一人で出来るのが良いよな……。」

ちょっとした運動の結果ではないらしい、というのは以前聞いた。
相変わらずその原因に関しては運動不足と過度の机仕事によるものだろうと思っている。

「肩甲骨ストレッチ……これかなあ。」

むーん、と小さく唸りながら動画説明を眺める。
ひとえに『○○ストレッチ』と銘打たれた物でも、その中身は様々だから性質が悪く思う。
いっそのこと確定してくれりゃいいのに、と思わなくもないが、それだけ人体は複雑だという事で納得しておく。

東雲七生 > 「んー……一人で簡単に出来そうなのはこんなもんか。」

おおまかに決めた後は上手く伝える方法を練る。
とはいえ、今の動画を見せれば良いのだろうけれども。
やはり他人に携帯の画面を見せるというのはどうにも気が引けるもの。何か事故が起こらないとも言い切れない。
出来るなら自分が口頭で分かりやすく説明するのが一番だろう。

「俺の異能がもうちょい便利だったらなあ。」

せめて他人の血行促進くらい出来れば。
そう思わなくも無かったが、それはそれで物騒な能力だ。
浮かんだ考えを振り払う様に頭を振って、端末を膝に乗せる。
まずは自分でやってみよう、と画面に映るストレッチを実行し始めた。

東雲七生 > 雨音を聞きながらのストレッチ。

これはこれで中々悪くないな、と思いつつゆっくりと息を吐く。
もともと凝ってないと思っていたが、案外効果はある様で、軽く一回やってみただけなのにだいぶ肩が軽くなった気がした。

「ん。……んー、へぇ。」

案外自分が気づいていないだけで血行は悪くなっているところがあるのかもしれない。
これは新たな発見だな、と脳内のメモ帳に書き留めながら端末を操作、次のストレッチを実践してみる。

そうして何種類か試し、一息つく頃には体がだいぶ軽くなっていた。
恐るべしストレッチ。これ以上軽くなったら俺宙に浮くんじゃね。
……と、誰も居ないのを良いことにいい加減な感想を口にしたりもする。

東雲七生 > 「あとはもうちょい、ネットの情報じゃなくてしっかりとしたソースが欲しいなあ。」

端末をポケットに放り込んでベンチを立つ。
効果的なストレッチ法を知ってそうな人物を思い浮かべながら、校舎内へと向かうべく扉へと歩き出した。

やっぱり人体の事だから保健課に聞くのが一番だろうか。
だったら保健課の知り合いは──

扉の軋む音が雨音の中に響いて、そして屋上は雨音だけに包まれた。

ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。