2015/09/13 のログ
ご案内:「屋上」にアルスマグナさんが現れました。
アルスマグナ > 屋上に備え付けられた喫煙スペース。そこで一人ぷかぷかと紫煙をくゆらせる男。
ベンチに片手をついて座り、曇りがちな空をずっと見上げるアルスマグナ。

もう片方の手にはスマートフォン、その画面には風紀委員が出した指名手配犯についての掲示。
指名手配犯の名前はサイエル・ミラー 39歳 男性。少し前にこの屋上で話したこともある同僚だった保険医だ。
罪状は内乱罪、どちらかといえば……保険医として常世島に侵入し外部へ情報を流していたスパイではないかとアルスマグナ個人では考えている。

今吸っている煙草の銘柄は異邦人たちが好む独特の甘い匂いがきつい一品。
ついさっきまで禁煙していたものだ。それを久々に買い求めて封を開けた。久々のヤニは悪くなかった。
気まぐれにぷかぁっとわっかを作って吐き出してみる。

アルスマグナ > 「なんだよぉ、サイエル君が禁煙のお手伝いしてくれるっていうから期待してたのにさぁ……
 君のせいで開けちゃったじゃん。んもぅ……」

この場にいない相手に向けて恨みがましいような冗談のような独り言をつぶやく。
とはいえ個人的に付き合いはそれほど深い相手でもなかった。ただ少なからず同じ期間同僚だったし、思うことがないわけではない。
正直相手の正体がなんだったとか目的がどうだったとかそういうこともどうでもいい。

ただまぁ、去っていくなら一言ぐらい残しておいてほしかったなぁとかそんな女々しい感想が思い浮かんだのだ。
そういう感傷に耐え切れなくなって思わずひと箱開けて吸ってしまった。やけに煙がちょっと目に染みる気がするが気のせいだろう。

大人になれば嫌になるほど長く続く縁のほうが希少だということを思い知らされる。
自分だってただここに流れ着いただけの異邦人で、またいつどこかに流されゆくか知れたものではないのだ。
たまたまここで出会った人々ともただひと時の出会いにて過ぎ去りゆくだけの相手がほとんどかもしれない。
一期一会とはこのことか。

アルスマグナ > 一本吸いきるまでもなく、乱雑に灰皿にぐりぐりと煙草を押し付けてもみ消した。
もう一本吸おうか吸うまいか悩んだが、懐から箱を取り出しかけたところでやめた。ぐしゃりとややへこませた箱をそのまま内ポケットにしまう。

くあっとあくびを一つすると、やれやれと重い腰を上げてベンチから立ち上がり屋上を後にした。
あの一瞬こそが幸運だっただけで、またここで悪い大人たちが集うことはもうないのかもしれない。

ご案内:「屋上」からアルスマグナさんが去りました。