2016/05/11 のログ
ご案内:「教室」に佐伯貴子さんが現れました。
■佐伯貴子 > (非常勤講師、エンシェントドラゴン「ファフ先生」の講義である。
「古代竜による講義」という趣旨の分からない授業だ。
黒板の位置にモニターがあり、マイクとスピーカーで生徒と会話する。
ファフ先生の本体は学外にある。
ガイダンスでは、先生のいた世界や自己紹介を語ってくれた。
野生の猪やクジラを食べていたこと。
ここで言う人間が繁殖し始めて山奥にこもりがちになったこと。
人間が生け贄を捧げるので、村に返そうとしたら、
「一家が殺されるのでやめてください」と泣いて懇願されたこと。
その生け贄に知識を与えて遠くの国に送り届けたこと。
平穏な生活を取り戻した矢先、自分を討伐しに人間が現れ始めたこと。
辟易していた頃にこの島に召喚されたことなど。
ファンタジー小説のようで面白くもあった。
さて、今回の課題は「好きな書籍、電子書籍、webページを予め提出しておくこと」であった。
それからレポート課題を出すのだという)
ご案内:「教室」に水月エニィさんが現れました。
■佐伯貴子 > 〈今日も私の講義に来てくれてありがとう。
レポートはひとりひとりにメールを送っておいたから確認してください。
もちろんメールが見えない生徒のためにも、紙配布や記憶転送なども行っているよ〉
(ファフ先生が言う。
佐伯貴子が机に設置されているタブレットを操作すると、
課題が送られてきていた)
「レタスが食べたいわぁ…」
(そういったのは隣の席に浮いている巨大なナメクジ、「ピピリビリガラバ」通称ピピである。
彼女は風紀委員に欲しいほど強力な能力を持っているが、
この世界にどうやって溶けこむかを悩むのに忙しい異邦人である。
ちなみにレタスが食べたい時は気分が悪く、
キャベツが食べたい時は気分がいいらしい。
体表面の粘液を振動させて発声するので大声は出せないという)
■水月エニィ > 「ふん……。」
( 顰めた顔で講義を受けながらもノートを取る少女。
最近編入したばかり故に、誰にとっても見かけない顔だろう。)
(竜の教師ね。噂には聞いていたけれど でかいし渋い声ね。)
その表情のままノートを通して講義の要点を読み返す。
はて、これをどこまで信じるか。
教科書向けのお話は、大概格好良く整えられているものだ。
……と、水月エニィはレッテルを張っている。
(竜、竜ねぇ……)
■佐伯貴子 > 「私は他の授業で買うことになったテキストを出したんだけど…帰ってきたのがこれよ…」
(ピピは念動力…サイコキネシスでタブレットを傾けた。
そこには
『【微分積分応用問題集】設問12、25、36、39、52、72を解いてください。(配点70点)また、例題22を参考にして設問28の解説文を作り、友人に見せてその反応をログに記録して提出してください。(配点30点)』
とあった)
「問題を解いて単位は取れるわねえ…
それ以上の点数が欲しければお友達とお勉強会ってことかしらぁ」
(触角の先の目玉を伏せながら、ピピは複雑そうである)
■水月エニィ >
正直受講の決定も直近で、
課題を知ったのも半日前だ。
ざっくりと捏ね上げた提出物の結果帰ってきたものがこれだ。
『【赤ずきん 】
1.オオカミはおばあさんに何故化けたかを答えてください(配当70点)
2.3つ、誰かの身体的特徴を尋ね、その答えを聞いてください。
その内容と、相手の氏名を記入してください。この際、相手の同意を得てください。(配点30点)
相手の同意を得る事が望ましいですが、報告だけでも認めることにします。』
率直に言ってこの講義は難しそうだ。
自分のことは"編入直後の根性曲がった負け犬不良お嬢様少女"
ぐらいに思っている。故にまぁ、直ぐに友達を作れるなんて思っていない。
「……1番だけ解けばいいわね。」
■佐伯貴子 > (新入生が苦戦していることを知るよしもなく、こちらの雑談は続いていた)
「ボクのも見てよ!」
(合成音声でそういったのは、隣の席のタブレットにいる情報生命体DP。
0と1からなる付喪神の一種であるという。
常世財団本部のネットワークに侵入したところを捉えられたらしい。
少年の姿をしている。
タブレットにはこう表示されていた。
【GAAニュース】『大変容以前の日本国の経済の歴史を20MB程度の文章や画像でまとめてください。(配点70点) また、同じ題材について最も正確と思われる情報をまとめたサイトを1GB程度で作成して2週間公開し、友人や閲覧者の反応のログを提出してください。(配点30点)』)
「まとめるのは簡単だけど、これも他人との協力が必要だね…」
(画面の中の少年DPが腕組みをする。
情報生命体というからには簡単なのだろうが、自分にはとても無理だ)
私のはこれだが…
(そこで初めて、佐伯貴子は二人にメールを見せる。
【一人暮らしのおもてなし料理】『21ページにあるメニューを作る動画を提出してください。(配点70点) また、そのメニューを友人と一緒に食べている様子を提出してください。(配点30点)』
紙媒体の書籍なのに、ファフ先生は全て内容を把握しているらしい。
3人の課題の共通点は、点をとるのは簡単だが、
プラスアルファが欲しければ他人の協力が不可欠ということだ)
この先生、何を考えているのかわからんな…
(自分も二人と同じく困惑を隠せなかった。
これでは来年からSNSの「単位が楽に取れる講義一覧」にさっそうと現れるだろう。
わざわざすべての生徒の提出した書籍を把握したうえでこんなレポートとは、
学術的に何の意味があるか怪しい)
■水月エニィ > 「……この竜とやら、相当根性座っているわね。」
耳にする悲喜交々。科目の名前は兎も角として、
ぼんやりとこのやり口に思うところはある。
ひねた少女からすれば―――。
("相手の土俵で問題を出す。"
"尚且つ他者の手を要する設問を設ける。"
……どんな得意分野でも一人で出来ない事があると言いたいのかしら?
ほんっと、長く生きていなければ出来ない御業ね。)
捻じ曲げて捉えてから、その場で課題を書き上げる。
――"おおかみはじぶんはばけものだとわかっていて、おばあさんをにんげんだとしっていたから"
■佐伯貴子 > (人間の風紀委員と巨大ナメクジと情報生命体の雑談は続く)
「紫陽花の葉が食べたいわぁ…」
(ピピが聞いたこともない台詞を話す)
「ちょっと生活委員会の領域を借りようっと」
(DPは案外抵抗がないようだ)
〈さて、静かにして聞いてくれるかな。
このレポートで単位をあげるのだが、期限は一ヶ月にしようか。
高得点者が多かった場合、レポートを追加しますが、
得点が振るわなかった場合はこれで終わりにします。
質問はないかな?〉
(ファフ先生がそう告げると、生徒たちはざわめき始める。
成績が良ければ続いて、悪ければ打ち切られる講義。
しかもレポートは、点を取るだけなら簡単。
まったくもって意味が分からない講義である。
ある意味で本質を付いている生徒が約一名いるのだが、
普段の授業になれているとそれが見えてこないものなのであった)
■水月エニィ > (目立つのも癪だけど、そうね。)
静かに手を挙げ、質問の意を促す。
「……講義の大意と、先生の意図が分かりません。
含意を暴く事も知識の蒐集に必要な要素ではあると思います。
ですが他者の協力を前提とする課題を出すのでしたら、認識の共有のために大意だけでも説明しておくべきではないかと思います。」
普通ならば懲罰モノの態度だ。
底意地が悪いのも分かっている。
とは言え、つい感情に任せてしまった。
「試練を与え無力さを教え、
右往左往を愉しむトリックスターが竜であるなら話は別ですが――
――失礼、言葉が過ぎました。どうせ私にとって1度目の講義ですから、不可にしてくれてもかまいません。」
行く当てもない。
卒業後のめどもない。
多少捨て鉢でも、構わないだろう。
■佐伯貴子 > 〈はい、水月さん…良い質問ですね。
この講義の意図が聞きたいと判断してよろしいかな。
恐らく君はこう思っているのではないのでしょうか。
「人間は一人では生きていけない、誰かの協力が必要になる。
それを説教のように叩きこもうとしているのだ、この竜は」…とかね?〉
(モニターのドラゴンはゆっくりとした口調で言葉を続ける)
〈半分は正解で、半分はちょっと違う。
「生き物は一人で生きていけないこともない。
しかし、他者と協力すれば、より多くのものを得ることが出来る…」
そんなところでしょうか。
講義の点数では人生経験と言うにはあまりにもちっぽけですけれど、
そんなことが少しでも伝わればいいなと私は考えるのです。
そんな風に課題を出したつもりですが、どうかな?
言葉が過ぎるなんてとんでもない。
水月くんには加点します。
質問するということは勇気が必要であるし、
今後の人生できっとこの質問を思い出す時が来るでしょうからね〉
(ドラゴンの返答はこうであった。
佐伯貴子はここで初めて、この講義の方向性を理解するのであった。
生徒たちは質問した女子生徒とモニターのドラゴンに
視線を集めるのであった)
■水月エニィ > 「……ありがとうございました。」
頭を下げ、言葉を切る。十分だ。
所詮15年2つ分合わせた程度の身だ。
対して、目の前の竜は"単独でも君臨し長い時を独りで生きてきた竜だ。"
その上で、この講義を語るのだ。と。残りは追々語るつもりなのだろう。
竜には到底及ばない。"勝てる筈もない"。そう思うが故に逃げるように頭を下げる。
「すみません、具合が宜しくないので間際ですが早退させていただきます。」
去り際に注がれる視線。
その先の彼や彼女から様々な感情を乗せたそれを受けれど、乗せるが故に人と変わるようには思えなかった。
自分が注目の的と言った"異物"になったようだと心に抱いてしまえば、逃げるようにその場を去った。
ご案内:「教室」から水月エニィさんが去りました。
■佐伯貴子 > 〈水月くん、君は伸びしろが大きい。
君のことをよく知らない私だけれど、それは断言させてもらうよ。
お大事に、健康には気をつけて〉
(去っていく女子生徒にファフ先生はそんな言葉を投げかけるのであった)
〈他に質問はないかな?
あったら私の講義用アドレスに送ってください。
それでは今日の講義はこれで終わり。
一ヶ月後にまた会いましょう、みなさん。
元気な皆さんの姿を見れることを期待しているよ〉
(ファフ先生がそう言って、講義は終わった。
質問しようにも、一人ひとり課題は違うし、
何より全員が聞きたいことは先程女子生徒が聞いてしまった。
だからあれ以上誰も質問しなかったのだった)
「キャベツ食べに行きましょ」
「ボクは青垣山の監視カメラに行きたいなー」
(変な講義はこの学園では珍しくない。
自分も席をたつことにした。
作るべきメニューは「肉じゃが」。
一緒に食べる候補は、女子寮住まいということを考えて二人。
どちらに作ってあげるべきか…
などと考えながら、佐伯貴子は教室をあとにするのであった)
ご案内:「教室」から佐伯貴子さんが去りました。