2016/06/01 のログ
■寄月 秋輝 >
不覚にも捕まった。
がっちりつかまれた。細い手に。
「明らかに保健室の人による招き方じゃないですよね。
何かおかしいですよね」
とはいえ、そろそろ怖くなってきたので中に入ることにした。
多分地の果てまで追いかけられる。
■雨宮 雫 > 「だって暇だったんだものかな、かな。
もっとお客が来たらこんなことにはならなかったかな、かな。」
兎も角。
保健室の中に招くと、烏龍茶のグラスも怪しい中国語の本なんて存在しなかった。
綺麗で清潔な保健室だった。
とりあえず、椅子に招きつつ。
「ところで、儀用事は何だったのかな、かな?
見た感じ、怪我も病気も無さそうなのだけども……」
■寄月 秋輝 >
「……保健室って過疎な状態のほうが平和なのでは……」
雲行きが怪しい。のは元からだが。
若干警戒しつつも中に入って、ちゃんと席に着いた。
「あぁはい。少し古傷が痛むので鎮痛剤と……
さっき腕を切ったので消毒を……」
袖をめくる。真っ赤に染まったティッシュ。
それを外すと、ぱっくり裂けて血が漏れていた。
5センチほどの長さ、深くはないが出血はそれなり。
■雨宮 雫 > 「まぁそうなんだけどね…… ボクが暇なのが問題なわけで。
ぉっと、結構血が出てるかな、かな。」
さっきからロクなことを言ってない。
が、傷を見ると顔つきを変えて、棚から消毒薬やガーゼや、テープやら、を一式持って戻ってくる。
客もとい怪我人の前でテキパキ準備。
まずは、脱脂綿に消毒薬を染み込ませて、ピンセットで持って傷と周りを綺麗に消毒するところから。
「ちょっと染みますよーだね、だね。
こんな怪我してるならさっさと入ってこればよかったのにーだね、だね。」
■寄月 秋輝 >
「医者や保険課の人がヒマなのはいいことでしょう……
公安や風紀と同じで……」
呆れた様子で腕を出したまま呟く。
消毒。
痛むはずだが、眉一つ動かさない。
「この程度の怪我だと思っていたんですが……
そういえば、こちらの世界では治癒術というのはあまり普及していませんでしたね。
早く治さないといけないのを失念していまして」
ちょっと腕にぴくぴく力が入る。
けど声は上げない。強い子だ。
■雨宮 雫 > 「まぁまぁ、暇の話はいいとして。
こちらのー?ということは、他所世界の出身の人なのかな、かな。
確かに一瞬で塞ぐとかは、レベルの高い魔法か異能が必要になるからねぇ……あんまり見かけないかな、かな。」
ちょんちょん、と消毒薬の染み込んだ脱脂綿で傷を綺麗にし、血も拭いて。
傷の大きさが絆創膏では収まらないので、ガーゼを当ててテープで巻いて固定していく。
よく手馴れた手際であった。
「あと、古傷だっけ?
どんな傷か分からないと薬が出し辛いのだけど、外傷だったヤツ?かな、かな。
そういうのの薬なら在庫あったけど。」
■寄月 秋輝 >
「ええ、数年前に飛ばされてきましたね。
転移荒野にいつの間にか居たという形でこの世界に来ていましたね。
……あぁ、怪我はガラス片のせいですが、欠片は中に入ってないので大丈夫です。助かりました」
世間話程度の声のトーンである。
傷を治されるのも慣れた様子というかなんというか。
終わったら軽く指だけ動かして調子を確かめた。
「はい、外傷だったものですね。
一応ふさがってはいるのですが……」
おもむろに立ち上がり、服を脱ぐ。
上半身裸になると、その体は驚くほどに鍛え上げられたものであることがわかるだろう。
さらに全身に刻まれた大小さまざまな傷跡がかなり目立つ。
中でもひときわ大きい、左の肩口の傷を指差してみせた。
「これですね」
幅と長さからして、心臓まで届いていたであろう傷である。
■雨宮 雫 > 「そりゃあ難儀なことなのだね。
帰れないなら可哀想な話かな、かな いえいえ、これが仕事だからね、ひひっ。」
使ったピンセットや汚れた脱脂綿なんかを纏めてトレイの上に。
脱ぎだすのを眺め……
"いい実験素材になりそうだなあ"
とか考えつつ、指差された跡に視線を向ける。
常人なら致命傷にしか見えない、傷が大き過ぎる。
「これは酷い傷だね、死ななかったのがおかしいかな、かな。
まぁ痛いのも納得だから、鎮静剤出してもいいと思うのだね、だね。
ちょっと用意するから、そこの利用者カードに名前とか書いておいてくれるかな、かな。」
トレイを持って立ち上がると、テーブルにあるボードに挟まれた紙、ボールペンを顎で示して、また棚の方へ行った。
■寄月 秋輝 >
「いえ、大したことではありませんよ。
こちらも住み心地はいいですしね」
などと答えながら。言われるがままに、ペンでカードに名前を書き込む。
割と綺麗な字。
「僕も、死なずにここに来ていたことが最初は不思議だったのですが……
よくわからないけど治っていたので、もしかするとちゃんと骨とかがくっついていないのかもしれないですね」
もう一度席に着き、小さく息を吐く。
そういえばこの傷のこともあまり話した相手がいなかった気がする。
■雨宮 雫 > 「本人がいいなら、いいけども。
あら、それはちゃんと検査した方がいいかもしれないね、だね。
どこか歪だったりちゃんと直ってないと、体の成長にも影響が出るからね。
背が伸びなかったり、いつまでも痛かったりするから……」
棚から持ってきた薬を分けて、小さい袋に入れる。
よく薬局とかで渡される薬の袋で、表に名前と個数を、さらさらーっと書いていく。
チラっと、カードに書かれた名前を見て
「寄月ね、記載ありがとうかな、かな。
とりあえずこれ、4日分くらいの鎮静剤だね。
用法容量を守って飲んでかなー……あとまぁ、生きてて良かったね、うん。」
にこー と笑いかける顔は、本当に、嬉しそうであった。
表面的には。
■寄月 秋輝 >
「……背が伸びないのはそれも遠因かもしれませんね……
中学時代に鍛えすぎたせいかと思っていましたが。
正直もう少し伸びてほしかったです」
ばさっと服を着直す。
そして薬の袋をもらった。
「ありがとうございます。
生きていればやれることも多いですからね、感謝しています」
無表情。
なんというか、ちょっと怖い。お互い。
■雨宮 雫 > 「背を伸ばしたいの?
へぇ……」
目が、ちょっとキランと光ったのが見えたかもしれない。
自分の服の袖から名刺大のカードを取り出すと、そこにサラサラとボールペンで何事か書き付け、薬の袋に追加で差し出す。
「ココにはそんな便利な薬はないけど。
人生苦労してそうな、そんな寄月には、イイコトを教えてあげるかな、かな。
本当に背を伸ばしたいかなーと思うなら、ボクがここの当番終わった後に、またお話しようだね、だね。
体の健康、成長を促すのは東洋医術の得意ジャンルだから、個人的に相談に乗るのだね、だね。
だから乗り気ならお電話かメール頂戴だね、だね。」
さっきよりも、笑顔が強くなっている。
素敵な笑顔で営業に入った。
■寄月 秋輝 >
「はぁ、まぁ」
ぴた。と口を閉じる。
似たような顔を、知っている。
危険?なのか?
本能がもう一度警鐘を鳴らす。
だが。
「……わかりました。
ではまた今度、僕の都合があう日に連絡させていただきます」
カードの連絡先を見て、小さく頷いた。
そしてぺこりと礼をして、静かに保健室から退室した。
■雨宮 雫 > 「ご連絡をお待ちしております、だね、だね。
大丈夫だよ、期待は裏切らない自信があるからね、ボクは。」
手をにぎにぎ、グーパーして保健室から出て行くのを見送った。
扉が閉まって、立ち去った後……
トレイを見る。
血のついた脱脂綿やティッシュがある、つまり、サンプルは取れる。
ちゃんと連絡をくれるのなら、試したい薬の実験ができるだろう……自然と、笑いがこみ上げてきた。
「けひひ…… ぁ、ボク、すっごい楽しみかもかな、かな、けひひっ」
ご案内:「保健室」から雨宮 雫さんが去りました。
ご案内:「保健室」から寄月 秋輝さんが去りました。