2016/06/09 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 平日の真昼間に屋上に入り浸るのは不良の特権とかなんとか。
そんな記述を何かの雑誌で見かけた気がしたけれど、生憎と東雲七生は不良は不良でも成績不良の方で、
素行は最近すこぶる良い方だ。模範生には程遠いけど。

「よーし、一丁やってみるかー!」

やたら気合を入れて屋上に設えられた広場の中央で腕まくり。
今日は何をするかと言うと、一言で言えば“魔術の練習”である。
どうしてそんな事をするのかといえば、

「あのイオ●ズンってやつ、ぜってーやってみたい。」

ゲームに影響されたのでした。

東雲七生 > というわけで、朝一で図書館に行って『初心者にもできる!』とか銘打たれた魔導書を借りてきて、
こうして屋上陣取って早速特訓だ!と相成った訳だったのだが。

「さーて参ったぞ、何書いてあるのかさっぱり分からん。」

魔導書を開いて僅か数行。
理屈が解らないとか、そういうレベルではなく。
そこに書かれた文字が何の文字なのかすら、七生にはさっぱりなのであった。

「なるほどなるほど、つまりこれはあれだな?
 誰でも簡単に魔法が使える様になったら困るから、
 それを防ぐための、いわばせきゅ……せきり……せきりゅ」

ぱたん、と本を閉じて。
やっぱり魔法は一筋縄じゃいかねーな、なんて訳知った顔で頷いてみたりしている。

東雲七生 > 後で返しに行こう、と魔導書を鞄に放り込んで、
それでも折角屋上に来たのだからと、何か出来ることが無いか思案する。
これが訓練施設などであれば幾らでもやれることはあるのだが、
どうせ大した事は出来ないと高を括って屋上を選んでしまったのだ。

東雲七生、自分が出来ないと思う事に関してはとことん信用しない主義である。

「んー……筋トレ?」

他に出来るような事もないし、と袖を捲った腕を見て呟く。
毎日の様に筋トレはしているが、どうにも筋肉がついている様には見えない腕だった。

東雲七生 > 「いや、ダメだ。昨日、一昨日とやり過ぎの気がする。」

ここ数日間の自分のトレーニングメニューを思い出す。
七生としては入学してからずっとやってる、“いつもの”なのだが、
その実、運動部でもそうそう真似出来ないような運動量らしい。
その事を授業で聞いて心の底から驚いたのは確か春先の進級したての頃だったか。

「ウォームアップで島一周って……普通はしないのか。」

神妙な顔で呟くと、他の人は一体どんなトレーニングをしてるのだろう、と少しだけ気に掛かる。

ご案内:「屋上」に霧依さんが現れました。
霧依 > 己の身に現れた謎の能力。
その真実を知ろうと思ってやってきた島ではあるが、やはり生徒という身分は少々堅苦しい。
一応それなりに生徒らしく振る舞おうとはしているのだけれど、なかなかに難しい。

きゃっきゃと騒ぎながら教室やら学食やらで昼を楽しむ級友の声を避けるように、屋上へとやってくる。
………休憩なら青空の下でしたいもの。………建前だけど。

まあ、つまるところ煙草に火をつけようと思ってやってきたのだけれど。
おや、と口に加えていた煙草を指の中でくるくる回して、うんうん唸る少年の背後に近づいてみる。

東雲七生 > 「普通は屋根の上を走ったりもしないらしいし……」

その“普通”をどこまで信用していいのか、決めあぐねて空を仰ぐ。
背後に近づく気配にも気づかないまま、真っ赤な髪を風にそよがせて。
時折、唸り声に合わせて頭が左右にゆっくり振れる。

「んー……ぁー……。」

中途半端に伸ばされた、筆のように束ねられた襟足が尻尾の様に遅れて揺れる。

霧依 > 「少年、何か悩み事かな。」

そっと膝に手を当てて前かがみになりながら、背後から声をかけてやる。
煙草は流石にポケットにしまいこむ。

この学園の生徒が、一体どのようなことで悩んでいるのか、それには興味がある。
好奇心の赴くままに声をかけて、さて、どんな反応があるのやら、と試してみる。

本当は悪戯をしたかったが、ちょっと流石に控えておいた。
いくら自由人と言っても、社会通念上でいう常識その他は弁えて………多分、多分。

東雲七生 > 「ひぁいっ!」

突然声を掛けられて頓狂な声を上げる。
まさか人が、しかも後ろに、居るなんて。
慌てて振りかえると、わたわたと両手を動かして

「あっ、いや、べつに……!
 ちょっと、一般的な運動量ってどのくらいかなーとか。」

頻りに両手を意味もなく振りながらの回答。
大した事じゃないんです、と締めくくって。少し落ち着きを取り戻したのか、大きく深呼吸をした。

霧依 > 「嗚呼、驚かせるつもりはなかったんだ、ごめんね。
 どうにも、悪戯しようと思っていないのに悪戯になってしまう。」

いけないいけない、と、自分の薄く青のかかった灰色の髪をこつん、と叩いて。
涼やかな目元は力の入っていない、ゆるい雰囲気。
第一ボタンを外した夏服からは、薄い褐色がかった肌の、長身の女。

一般的な運動量、と言われて、即座に、

「昼の? 夜の?」

と聞いてしまう女。 しかも素の顔のままで。

東雲七生 > 「いや、もう……大丈夫です。」

不意打ちに弱いのは己の明確な弱点だ、と胸の裡で反省する。
今迄も何度か注意が散漫になっているところに声を掛けられて醜態を晒した事があった。
何も今回が初めてではない、とゆるゆると首を振って。

「いや、……ええと……夜のって?」

昼と夜で何か変わるんだろうか、と首を傾げて鸚鵡返しを。
確かに昼間は学校で授業だから、普通に考えれば夜なんだろうかと少しだけ考えた。
目の前の女の言葉の真意など全く見当もつかないといった風で。

霧依 > 「なら良かった。
 悩んでいる人がいるなら、声を掛けたくなるものだから。」

穏やかな語り口のまま、大丈夫だという少年に頷いて。

「………ああいや、昼も夜も根本は同じかな。
 何、人間に限らず動物の身体は、辛いと感じると運動を止めるように痛みや辛さを与えてくるものだから。
 何事もやり過ぎは良くないってことだね。」

相手の表情から、柔らかく話題をズラしていく女。
いじわるをしたつもりもないのだから、堂々としたものだ。

「そうでないなら、目的で考えるといいと思うよ。
 痩せたいならば、同じ痩せたい仲間に合わせるように。
 強くなりたいならば、強くなりたい仲間に合わせるように。

 ……僕はほとんど歩いているだけで、運動はしないんだけどね。」

ベンチにぎしり、と座りながら言葉を返して。

東雲七生 > 「そんな深刻そうに見えたっすか、俺?」

そんなつもりは無かったのだけど、と首を傾げる。
一々動作がオーバー気味だから必要以上に感情を大きく見せてしまいがちなのだろう。

「ふ、ふーん……?
 なんか解ったような解らないような……まあ、いいけど。」

何か違和感でも覚えたのか、僅かに眉根が寄る。
しかしそれもすぐに、気にしても仕方ないと判じたのかきょとりとしか表情になって、

「目的……目的は、まあ強くなる事なんすけどね。
 強くなりたい仲間ってのが、いまいち思いつかなくて。」

ベンチに座る女へと振り返りながら答える。
追い付きたい強さはあれど、それは人間の範疇外であった。

「ていうか歩いてるだけなのにそんなに大きくなるんすか。」

上背。
羨むような視線が向けられる。
同時にやはり自分はやり過ぎなのだろうか、と。

霧依 > 「いいや?

 ただ、声は聞こえてきたからさ。
 例えば…‥…小さい悩みで言えば、お昼のお金を忘れてしまったとかね。
 そういう悩みなら、僕でも解消できるだろうし。」

相手の言葉にゆったりとしたテンポで返しつつ、ふむ、と唸って相手の言葉を繰り返す。

「強くなる。

 ………成る程。 一人で強くなろうとするのは、きっと大変だろうけど。
 その話しぶりだと、部活に入って、というのとはまた違うみたいだね。」

相手の意図を推し量りながら、少しだけ首を傾げて。

「どっちのことかな。
 どっちも、意識はしていないよ。」

右手を頭の上に当てて。左腕で胸を抱えて聞いてみる。

東雲七生 > 「なるほど。
 ホントに何て言うか……“気にしい”なんすね。」

くすくすと笑いながら肩を竦める。
本人が言った通り、悩みの大小関係無く、悩んでいる人物が要れば話し掛けてしまうのだろう。
そういう人は、善し悪し以前に好感が持てる。

「そっす。
 ……部活に入ってたら、やっぱり部活の枠組みの中で、の話になっちゃうじゃないすか。
 
 そういうんじゃなくて、もっと、枠にハマらない強さじゃなきゃ駄目なんす。」

はっきりと、それでいてどことなく不安げに答える。
そんな風に強くなれるか、自分自身が半信半疑なのだろう。

「えっ、いや、背の方っすよ背の方。
 ていうか普通背の方だと思わないっすか!?」

胸なんて羨む理由がまるで無い。
いや、大きいのは嫌いじゃないけど。

霧依 > 「好奇心は猫をも殺す。
 僕は殺される方だと自覚しているよ。

 ……心配というより好奇心が強かったことは、正直に言っておこうかな。」

なんて、少しだけ笑いながら話す。
女は少しだけ首を傾げながら、そうだな、と一人呟いた。

「強さを追い求めるんじゃあなくて。
 そういう強さを手に入れた人を追い求める方がいいのかもしれない。

 いろいろなところを歩いてきたけれど、誰も歩いたことの無い道は、前も後も分からなくて大変だったからね。
 道を知っている人を探す方が、目的がはっきりしていて、気分がいい。」

できるよとも、無理だよとも口にはしない。
穏やかな言葉を投げかけながら、ぎしりと空を見上げるように。

「いやなに、どっちも同じくらいの比率で言われるから。

 どちらにしても、………体格は悩んでいてもなかなかね。
 僕は歩く前から大きかったんだ。 ……どっちもね。」

なんて、悪戯にウィンクしながら舌をぺろりと出して見せる。

東雲七生 > 「あははっ
 ……でも、結果的にこうやって相談に乗ってるんすから。

 嫌いじゃないっすよ、そういうの。」

釣られる様に笑いながら、おどける様に小さく肩を竦める。
そして続く言葉に神妙な面持ちになって、

「そういう強さを手に入れた人、か……
 それじゃあまだ足りない……ううん、まずはそこから、かなあ。
 
 結局行きつかなきゃいけないのは、誰も辿り着いた事が無い様なとこなんすよ。
 ……それだけは、はっきりしてるんすけど。」

どういう風に言えば良いのか、言葉を探す様に視線を彷徨わせる。
自信が無いという訳では無いが、不安ではある。そんな風に。

「それこそ、背と同じなんすよ。
 ……いずれ伸びるかもしれないし、伸びないかもしれない。


 そして、元から大きい人には如何とも言えない事なんす。」

それは分かってるんすけど、と俯きがちに言ってから、ぱっと顔を上げた。
そこにはつい今まで浮かべていた揺らいだ表情は跡形もなく。

「そういえば、まだ名乗ってすら居なかったすよね。
 俺、東雲七生っす。おねーさんは?」

霧依 > 「分からないけれど、その人のやったことを超えればいいんじゃないかな。

 誰もたどり着いたことが無い場所に行くことは大変だから。
 たどり着けるところまでは、誰かの作った道を歩く方がいいんじゃないかな、とは、僕は思うよ。
 誰も見たことのない山の頂上まで行くために、麓の道がない場所を切り開いていたら、なかなか辿り着かないからね。」

相手の言葉に少しだけ頷いて。

「僕が不安になる時は、目的はあるのに、目的地がわからない時だから。
 君は僕よりずっと大変な物を追いかけているようだから、もっと不安なのかもしれないね。

 ……背については、何とも言えないことだね、確かに。」

相手が顔を上げれば、相変わらず肩の力が抜けたまま足を組んで。

「霧依って名乗っているから、それでいいよ。
 お姉さん、はちょっとくすぐったいね。

 東雲君と呼べばいいのかな。 それとも、学園に来たばかりなんだから、東雲先輩?」

東雲七生 > 「あー、ううん……何かやったなら、確かにそうなんすけど。」

何とも言えなかった。
そもそも全てに於いて規格外とも言えそうな相手である。
分かりやすい目標とするなら、他の人を据えた方が良さそうな気すらしてくる。
やっぱり、まずは別のところから取っ掛かりを探そう、と溜息と共に決心して。

「あははー……でもまあ、なるようになるしかないんすよね。
 なかなか辿り着かなくとも、いずれは辿り着けなくちゃいけないんす。
 もし本当に誰も目指した事すらない道だとしても……いや、道ですらなくっても。」

ふぅ、と溜息を吐くがその顔は少しだけ吹っ切れた様で。

「霧依……さん、っすか。
 あ、えっと……そうっすよね、俺のが先輩ってことになるんすよね。
 ……でも、ええと……あんまり年上から先輩呼びされるのもなんだかくすぐったいな……。」

気恥ずかしげにはにかみつつ、頭を掻いたりして。

霧依 > 「難しい話だと思うよ。
 僕は、ある場所から別の場所まで行くことしかしていないから、似ているようできっと違う。

 そうやって信じられるかどうかが、最も大事なことじゃないかな。

 道じゃない道を歩いていると、ふと思うんだ。
 この道は目的地に向かっているのか。 逆方向じゃないのか。 通りすぎていないか。
 この先に熊がいるだろうか。 蛇がいるだろうか。

 そこに道が無いと、そういう不安と戦えるのは自分しかいないから。」

囁くような声で呟きながら、力の抜けた涼やかな目線を向けて軽く立ち上がり。

「僕のことはなんとでも呼んでいいから。
 あんまり可愛い反応をすると、いじめてしまうよ。東雲先輩。」

なんて言いながら、逡巡する様子も無く、少しだけ腰を下げてよしよしと頭を撫でてあげる。

東雲七生 > 伸ばされた手は思いの外柔らかな猫っ毛に触れるだろう。
本物の猫には到底及ばないが、人間の髪にしては中々の手触りである事は自負している。

「あうぅ……」

撫でられながら顔を赤くしつつ、掛けられた言葉を反芻する。
結局のところ自分と自分を形作るものを信じるしかないのだろう。
上手くやれるかという不安はあれど、失敗するんじゃないかという恐怖は無い辺り、自分でもそれは解っているのかもしれない。

「うわ、えと、……先輩いじめは良くないと思う、ます!」

年上の後輩から言い様にからかわれる羞恥から逃れようと、
少しばかり強く出ようとして、結局実年齢を考慮してしまった。

霧依 > 「それじゃあ、先輩いじりかな。
 僕はどうも口も悪ければ手癖も悪いようだから。」

相手の言葉にくすくすと笑いながら、すい、とベンチから立ち上がる。

「次はもうちょっと悪戯しようかな。
 今日も、耳に息をかけたくて。 我慢したんだよ、これでも。」

からり、と笑いながら事実を暴露しつつ、ん、っと伸びを一つ。

「可愛くない後輩だろうけれど、今後共よろしく。
 それじゃあ………また。

 先輩が道を走りきれることを祈って。」

そんなことを言いながら、もう一度ぽん、と髪に触れて、背中を向ける。
昼休みはいつの間にか、終わりかけていた。

東雲七生 > 「別に口は悪いって感じしなかったけど……?」

きょとんとした顔で一度見上げて、続く暴露には反射的に耳を隠した。
はわわ、と慌てた様子で声を荒げて

「そ、そういうのはもっと親しい間柄だけにしときなっての!!」

むむむ、顔を真っ赤にしたままと唸りつつ。
髪に触れられ、背を向けられれば、ようやく少しだけ微笑んで。


「ありがと、……霧依。
 またなっ!」

ぶんぶん、と大きく手を振りながらその背を見送る事だろう。

ご案内:「屋上」から霧依さんが去りました。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。