2016/09/19 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 日もすっかり暮れた夜の屋上。
転落防止用のフェンスに寄り掛かり、複雑そうな顔で佇む少年が一人。
形容するなら、“悪い物でも食ったような”顔をしている赤毛の少年は、
事実、悪い物を食ってしまっていた。
「………んん。」
腹──鳩尾のあたりを手で押さえ、眉を顰める。
やっぱり何でもかんでも口にするのは良くないな、と独りごちながらゆっくりと天を仰いだ。
■東雲七生 > ──遡って時間は昼過ぎ。
秋の連休を謳歌していた七生は、『ちゃんと』自分の異能と向き合おうと悪戦苦闘していた。
何しろ相手は自身の血液の操作。日常生活では中々に使いどころの無い異能である。
怪我をしなければ使えない、という最大の壁を前にこれじゃあ向き合うもクソも無いだろうと、
半ばお手上げだった七生はふと先日の学校での出来事を思い出した。
夜の校舎で戦闘になり、自身も負傷し友人が大怪我を負った一件。
その時に攻撃を仕掛けてきたモノ、自身の肩口に刺さったそれを七生は密かにくすねていた。
自らの体を棘の様に変質させ射出して来たからには、きっと体の一部なのだろうとは思うが、
七生が病院を後にしてからも、霧散するでもなく、手元に残っていたそれ。
どうするか暫し悩んで、3日ほど手に余らせていたのだが。
『……まあ、うん。もしかしたら何か解るかも』
と、特に確信があった訳でもないただの「思いつき」で、
食べちゃったのである。
■東雲七生 > 得体の知れない物体を平らげた感想としては、『やめときゃよかった』が第一である。
食感も何とも言えないし、味も何とも言えない。塩か何か掛けてから食べれば良かったかもしれない。
一番似通ったものでいえば、転移荒野に現れた巨大な蜘蛛の脚、あれが一番近かった気がした。火を通せば良かった。
そして時間は数時間進み、現在。
鳩尾の辺りに鈍い痛みのような、重さのような物を覚えていた。
トイレに行きたい訳ではないけれど、何だか凄く気分が落ち込んでくる。
無性にイライラしたり、悲しくなったり、悔しくなったりする。情緒不安定というやつだろう。
普段、そのような感情に苛まれる事の無い七生にとっては、風邪と引いたのと同じくらいの驚きだった。
とはいえ、未だ風邪を引いた覚えは無いのだけれども。
■東雲七生 > 「んんー………。」
ぺしぺし、とシャツ越しに腹を叩いてみても気が晴れる感じは無い。
試しに軽く運動をしてみたけど、それでも気は晴れなかった。
原因はやはり、昼間食べたアレだろう、と七生は軽く溜息を吐く。
「……毒、って感じじゃないけど、うーん。
やっぱりもうちょい詳しい話を聞いてからにすりゃよかった。」
何でもかんでも口に入れたらよくない。
また一つ賢くなった気がしつつ、それでもやっぱり倒した物は一部だけでも今後も食べて行きたい所存の七生である。
あからさまに食べられ無さそうな物は、やめとくけど。
■東雲七生 > 「はふ。」
何だか妙に溜息も出てくる。
自分の体の慣れない変化に戸惑いつつ、七生はゆっくりとフェンスから離れた。
そろそろ夕飯時である。家に帰って用意されてる夕飯を食べよう。
そして少しでも気を紛らわせる為に、一度島をぐるっと走ってみよう。
そんな事を思いながら、校舎へと続く扉を開ける。
見回りの先生に気付かれずに外に出るにはどうしたら良いか、色々考えながら、屋上を後にする。
先に言ってしまうと、小さな体躯が功を奏して誰にも気づかれず普通に校舎を後に出来たのだが、
七生はこの結果にだいぶ納得がいかないようだった。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。