2017/04/19 のログ
ご案内:「教室」に宵町 彼岸さんが現れました。
宵町 彼岸 > 優秀な芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む
……誰が言った言葉だったっけ?
滅多に誰も使わない予備美術室に画架をたて
真っ白なキャンパスに無造作に筆を当てながらそんな事をぼんやりと考える。
ヒトはその殆どを模造から構成する。
歩き方を、喋り方を、食べ方を、振舞い方を……
模倣する者が優秀な芸術家なのであれば

「皆は優秀な芸術家……だったのかなぁ」

ぼんやりとした表情のまま
ぺたり、ぺたりとキャンパスに筆を当てていく。

宵町 彼岸 > 既に日は沈み、生徒の殆どは帰宅しているような時間。
そんな中部屋の明かりもつけず、ただぼんやりと筆を進めていく。
椅子の上で膝を抱え、片手でつまむような筆の持ち方で。
幸いにも今日は風は強いものの天気は良い。
差し込む月明りだけで十分視界は確保できる。
そんな中……注視しなければわからないような
ほんの僅かな苛立ちを滲ませながら筆の先端を
キャンパスに当てて呟いた。

「この色……違う。
 この色も……違う」

ただ写真のように風景を映すだけなら
それこそ筆を使う必要すらない。
今この一瞬を完全に切り取る事が出来るだろう。
それ自体はとても簡単な事。
けれど……

「違う……違う違う違う……」

焦ったようにつぶやくと筆を投げだし膝に顔をうずめる。
どうしても、どんなに書いても、書きたい色が指先で描けない。

宵町 彼岸 > 初めて月を見たあの日、初めて外の世界へ踏み出したあの日
見上げたそれは目が眩むほど大きく、美しかった。
真っ暗な世界に空いた明るい色の穴は、まるで世界に心を映したようで……

「……」

埋めたままの顔を少しだけ上げ、キャンパスを眺める。
其処には写真と見まごうばかりの月が描かれていた。
よく見ると周囲にはもう何枚も月を描いたものが散らばり、
その殆どはくしゃくしゃに丸められ、打ち捨てられている。

「こんな色……じゃなかった」

とても美しいと思ったことは覚えている。
けれど、今となってはその美しかったはずの光景を思い出せない。
だからこそ、何度も何度も筆を走らせ、あの日見たそれを描こうとした。
けれど、何度黄色く、青い光を投げかける月を描いても……

「これじゃない」

静かに首を振る。
たとえ覚えていなくとも、こんな空虚な光景ではなかったことだけは確信できた。

宵町 彼岸 >   
「……」

この月はほぼ完璧な模写。
望遠鏡で見なければわからないような制度の範囲までほぼ網羅して反映してある。
けれど、何処までも他人じみた、よそよそしい様で

「私のじゃ……なぃ」

これを芸術とは呼べないと彼女は思う。
彼女の知っている芸術とはもっと、色のあるものだったはずだ。
良くも悪くも、感情がこもって、厚みのある、滑稽で綺麗なものだったはず。
目前のコレは、ただ、色と線にすぎない。
何処までも平面の、点と線の集合体。

宵町 彼岸 > 模倣ならいくらでもできる。
映し出すことだけなら瞬きだって必要ない。
魔術的なものも、異能であっても、その裏にあるシステムごと
無理やり励起し、発現させ、作用させられる。
システムであれば、法則であれば、いくらでも真似ができる筈だった。
けれど……

「つまんなぃなぁ……」

芸術は全く真似が出来なかった。
どれだけコピーしても、その向こう側にある
言葉にしえない大きな渇望のようなものを写しきれない。
その向こうにある心を全く反映できない。
出来上がるものは技巧を凝らしたただの染み。

宵町 彼岸 > 上手な絵なら幾らでも見てきた。
美術も音楽も大好きだったから。
技術だけならいくらでも真似が出来て……
けれどいつしか気が付いた。
自分が求めているのは真似できない何か。
どれだけまねても手に入らない何かなのだと。

廊下や画廊に飾られるものはその殆どがあまり気にならないもの。
技術だけならかなり上質なものを文字通り貪っている。
それらに比べればやはり、幾分かそれらの技術が足りないという事は仕方のない事。
けれど、そんな中一握りだけ、純粋な感情が吐き出されているものがあった。

「あんな風なら、楽しいのかなぁ……」

……彼女はそれを美しいと思う。
描くことが楽しい……そう伝わってくる。

それはどちらかというと稚拙なものの方が多い。
少し腕が付くと往々にして欲が出てくるものだから。
認めてほしい。褒めてもらいたい。それ自体も立派な感情だけれど
それ自体は手段に過ぎなくて……
そんな中にほんの一握りだけ手段そのものにのめり込んでしまう者があって。

ご案内:「教室」に真乃 真さんが現れました。
真乃 真 > 夜の校舎。廊下に差し込む月明り。
電気ぐらいつけていけばいいとも思うがこんなに明るいのだ今日は必要ないだろう。

「僕としたことが!まさか用具室の整理にこんなに時間をかけてしまうなんてね!!」

まさか、あんなに汚いとは思っていなかった。
頼んできた先生からはお礼にジュースを貰ったのでまあいいけど!!

そんな感じに夜の廊下を進んで行くと部屋の一つから物音が聞こえた。
…電気はついてないみたいだけど。
そこを覗き込めばそこに広がるのは丸められた紙とキャンパスに描かれた月。

「おおっ!写真みたいに良く描けてるじゃあないか!!
 それはともかく電気ぐらい付けた方がいいと思うぜ!付けていい?」

まるでそこにあるものをそのまま映したような月。
綺麗な絵だな、なんてボキャブラリーの貧困な感想を感じながらそのまま電気のスイッチを押す。

宵町 彼岸 >   
うずくまったままパレットを投げ捨てる。
描きはじめてどれだけの時間が経ったのだろう。
それでも全く満足いくものは描けない。
陰鬱な物思いにふけっているとふいに足音が聞こえてきた。
それはこの教室のちかくで立ち止まり……此方にやってくると同時に
部屋の入り口でスイッチを探る音がし、それと同時に等を投げかけられて……

「……いーよぉ」

返事をする前に教室に明かりがともる。
普段使わないこの教室に何の用だろうとぼんやりと考え、
それを言うなら自分もそうかもしれないといつもに比べ鈍った思考で考えた。
膝を抱えていたのだから眠っているようにすら見えたかもしれない。
なら……

「……だいじょぶ。起きてるですよぉ?」

顔を上げふにゃっとした笑顔を入ってきた男子生徒に向ける。
それと同時に周りに目を向けた。
部屋の明かりがつけば月明りに照らされている以上に
沢山の紙が捨てられていて……

「あー……散らかし過ぎ?」

これは怒られる案件かもしれない。

真乃 真 > 「そうか、起きてるのか!いや、寝てるとは思ってなかったけど。
 まあ、寝てたら絵は描けないしね!!」

素人である真から見れば綺麗な月。
どこも悪いところはないだろうただ綺麗な月の絵。

「…まあ、それはあとで掃除すればいいさ!
 さっき僕が片づけてきた部屋に比べたら全然マシだ!」

丸めた紙が転がってるくらいすぐに片づけられる。
イケる!絵の具とかぶちまけられてなければ全然いける!

「この絵君が描いたんだろ?うん!月だね!!
 どっからどう見ても月だ!このまま、空に浮かべても多分みんな絵だって気づかないと思うよ!」

流石にふちとかで分かるとは思うがかなりリアリティ?がある!
凄い!上手い!!
…感想の語彙があまりにも貧弱すぎる。