2017/09/28 のログ
ご案内:「教室」に時坂運命さんが現れました。
■時坂運命 > 夕日が差し込む放課後の小教室。
人気のないそこに、二つの気配があった。
一つは椅子に腰かけた少女。
もう一つは、床に座り込み少女に縋る男性……、その見た目からおそらく教師だろう。
少女は淡い笑みを浮かべて、膝に上に乗せられた男の頭を優しく、慈しむように撫でる。
男は顔を伏せたまま、ぼそりと呟く。
「本当に、こんなことをして大丈夫なのでしょうか……」
怯えるように肩を震わせた男、その反応を愉しむように見降ろして、少女は笑みを深める。
「センセー、大丈夫だよ。センセーは僕を助けるためにしてくれたんだから。
君は何も悪くない。あえて悪者を作る必要があるなら、世間知らずで考えが甘かった僕のせいだ。
センセーは生徒を助けるものなんでしょう?」
「そう……です、ですが――」
頭に触れる手を振り払うように、男は顔を上げ、声を荒げた。
だが、それを遮るように少女が言う。
『大丈夫』
良く通る声が、頭の奥にまで響いた。
少なくとも、彼にはそう感じられた。
少女の白く細い指が頬に触れ、俯きそうになる男の顔を上げさせる。
紫電の瞳が男を覗きこむ。
■時坂運命 > 怯えと罪悪感に苛まれる彼の表情は、胸の内に湧く庇護欲と加虐心を同時に煽るようだった。
内を悟られることなく、笑みを浮かべたまま少女は言葉を続けた。
「……『大丈夫だよ』先生。君は何も心配しなくていいんだ」
甘く囁くような少女の言葉を聞くたびに、思考が鈍って行くことに彼は気付かない。
毒はその心に回りきり、それをただ心地よいと感じるだけになっているのだから。
「もし、生徒としての言葉では信じられないと言うのなら、
僕は時坂運命ではなく、神の代行者として……君に語ろう」
そう告げると、少女は一度目を伏せ、また彼を見据える。
頬に触れていた手は離れ、祈る様に手を合わせ。
「貴方が犯したことは、人の社会において重い罪とされるでしょう」
下される判決に、一瞬、男の表情が歪む。
絶望の色が濃くなればなるほど、残された希望に人間は縋るものだ。
なおも温かく見守る瞳と微笑みに、男は希望を見た。
「――ですが、その行いのすべては神への献身、ただそれだけに尽きるのです。
神が貴方に罰をおあたえになることは、けしてありません。
貴方の献身に、神はこんなにもお喜びになられているのですから。
さぁ、立ち上がりなさい。神の望まれる未来のために、貴方の力が必要とされています」
優しく、そして力強く告げられる言葉に、諦観さえ浮かんでいた男の瞳に光が戻る。
それが果たして“光”と呼べるものなのか……、彼には判断できないだろう。
盲信、狂信、信仰への道を歩む敬虔なる信徒では……。
■時坂運命 > 男はゆっくりと立ち上がり、晴れ晴れとした気持ちで少女と視線を交わす。
活力に満ちた男の表情を見上げて、少女はニッコリと微笑んで訊いた。
「もう、大丈夫ですね?」
その言葉に男は頷き返す。
「はい、シスター。我らが主の御心のままに、この身を捧げましょう」
「……貴方に、神の救いがあらんことを」
その言葉を別れとして、男は軽く頭を下げ教室を後にする。
シンと静まりかえった教室の中、少女は笑みを消したかと思うと、
人目が無いことで気が抜けたのか椅子の上で膝を抱える。
「これで一つ、表側のコマは手に入った……と。
思ったよりも時間が掛かっちゃったねぇ。
これで、ポーンにもならない出来だったら、数を増やさないとダメかな。
うーん……大きく育ってくれると、いいのだけれど」
ぽつりと呟く独り言。
ご案内:「教室」に柊 真白さんが現れました。
■柊 真白 >
(教室棟を歩いていて教師とすれ違った。
軽く挨拶をして、会釈。
それに対する対応に何か不審な点があったわけではない。
彼は知っている教師だったし、彼も自身のことは知っていただろう。
それでもなぜかその教師のことが引っかかる。
どこがと言われると言葉には出来ないのだが。)
……。
(もやっとした良くわからない感覚を抱えたまま、教師が出てきた教室へ目を向ける。
その扉をしばらく眺めたあと、そちらに歩を進めた。
足音の極端に小さい歩き方で近付いて、扉を開ける。)
――こんにちは。
(その中に居た少女に会釈。)
■時坂運命 > ふと、独り言を紡いだ口が止まる。
足音が聞こえることは無かったが、少女の目には数秒後にドアが開かれるのが見えていた。
予想通り、ガラリとドアが開きそちらに目を向ける。
そこに立っていた白い少女を見て、
「おや? これはこれは、まぁなんと小さ――……可愛らしい」
つい口走りそうになった余計な一言を引っ込めつつ、楽しげに笑いかけた。
「こんにちは、君は学園の生徒かな? ああ、僕は生徒だよ。一年生だ」
椅子の上に乗せていた足を下ろし、話を続ける。
「それで、今日はもうこの教室で授業は無いらしいけれど。
忘れ物でもしたのかな?」
■柊 真白 >
(今小さいって言った気がする。
確かに学園へ届けている年齢の割には小さいことは自覚しているけど。)
――一年。
柊真白。
(彼女が学年を口にしたので、こちらも同じく学年と、ついでに名前を。)
そう言うわけじゃ、ないけど。
(あいまいな返事の後、先ほどすれ違った教師が歩いて行った方へ目を向ける。
当然もう姿は見えない。
気になったと言うのもなんとなくでしかないが、そう言う勘は大事だと知っている。
まさか目の前の聖職者の格好をした少女が原因?だとは考えもしないけれど。)
■時坂運命 > 聞こえていたのかいないのか、彼女の表情にあまり変化が無く見えるのでわかりにくいが、
簡単な自己紹介をしてくれた彼女をにんまりと笑みを浮かべて眺める。
「同級生なんだ。柊、真白……うん。マシロちゃんだね。
それとも渾名っぽく“ましろん”なんて可愛らしく呼んだ方が良いのかな?」
一度笑みを消して真面目な顔で提案した。
でも、そんな冗談はすぐに笑って崩れてしまう。
自己紹介に応えようと、少女は椅子から立ち上がり。
「まぁ冗談は置いといて。
はじめまして、僕の名前は時坂運命。
一般人で、優等生で、気まぐれで、お茶目で、可憐で、か弱いシスターさん。
巷で噂のウンメイさんとは僕のことだよ?」
と、茶目っけたっぷりに、左目を閉じてウインクを飛ばした。
楽しげに弾む声も合わされば、彼女の抱く疑念が馬鹿馬鹿しくなるか。
ちなみに、ちっとも噂にはなっていない。
「まぁ、用事が無いと入っちゃいけないなんてルールは無いから、君の好きにすると良いと思うよ?」
■柊 真白 >
どっちでも好きなように呼べば良い。
(呼ばれ方に拘りはない。
自分だとわかればそれで良いのだから。)
聞いたこと無い。
とにかくあなたが一般的じゃなくて何か力を隠してる、と言うのはわかった。
(初耳だった。
それはそれとして、この島で一般的など今更だし、大抵自分からか弱いと言う者は大抵か弱くない。
見た目的に戦闘力は無さそうだが、そうではないと思っておいた方が良さそうだ。
この島では特に。)
――さっきここから出て行った教師。
変な感じ、しなかった?
(すれ違っただけの自分より、話していたかもしれない彼女なら何か思うところがあったかもしれない。
あまり期待はせずに尋ねてみる。)
■時坂運命 > 「おいおい、真白ちゃん。
そんなことを言っていると、知らない間にとんでもないあだ名をつけられて
大切な青春の思い出が大惨事になるぜ?」
冗談のつもりだったが、あまりにもあっさり返されるとキョトンと目を丸める。
噂を聞いたことが無いと言われて、少しばかり肩を落としもしたが、続く言葉には首を傾げた。
「? この学園に在籍してる以上、多少の異能はあるけれど、僕はいたって普通だよ。
怪力でもなければ、飛んだり、走ったりとか、あんまり得意じゃないからね」
軽く肩を竦めて返し、君の方はどうなんだい?と、尋ねてみる。
尋常ではない肌の白さ、見た目に不釣り合いな冷静さ。みるからに常人ではない雰囲気を感じるが。
「センセー? いや、特には何も感じなかったけど。
体調でも悪かったのかな?
彼もそれならそうと、教えてくれれば長話もしなかったのに」
教師と言う仕事も大変だ、なんてクスクスと楽しげに笑って返した。
■柊 真白 >
別に。
知らない人からどう呼ばれても知ったことじゃないし。
それに、今更。
(そもそも青春なんて歳でもない。
とんでもないあだ名も既に吸血鬼だとかバケモノだとか、一部の心無い者達の間で噂になっていたりする。
あくまで一部での話だが、少なくとも、彼女の言う「ウンメイさん」よりは広まっているかもしれない。)
じゃあそう言うことにしておく。
私は吸血種。
血を吸った相手の異能が使えて、あと人より速い。
(別に隠してもいないので、聞かれれば答えることにしている。
答えなくても調べればわかることだし。)
そう。
(短く答えてもう一度廊下の向こうへ目を向けた。
気のせい、で済ませるつもりはない。
ないが、この島だ。
学校の裏で何か企んでいるものなど掃いて捨てるほど居るだろう。
それを探し出すほど正義感に溢れているわけでもなければ暇でもないのだ。)
■時坂運命 > 「ふーん、張りあいが無いなぁ。
じゃあ真白ちゃんのことは、思い出した時にロリっ子ちゃんと呼ぶことにしよう」
あっさりした淡白な返答を聞いて、小さくため息を吐いて適当なことを言った。
適当でも、実際ふと思い出したらその渾名を押しつけることだろう。
それもこれも、彼女が他の人間になんと呼ばれているか、知らないから出来る暴挙だ。
止めるなら、早い方が良い。
「疑り深いねぇ。 ん、んー……吸血? よくファンタジー小説に出ているあれかな?
へぇ、本物は初めて見たよ。 詳しく説明までどうもありがとう。
と言うことは、君は僕よりずっと年上と言う可能性もあるわけだね……。
あ、十字架が苦手と言うのは本当かな?」
そう言うと、一歩距離を詰めて興味深そうにじっくりと彼女を眺める。
そして、新しい玩具を見つけた子供のような笑顔を浮かべた。
「そうそう、君の気のせいだよ」
廊下へ振り返る彼女の姿を横目で見て、息を吐くように嘘をつく。
彼女が深く訊かないならこちらから言うこともない。
なにより、現状では詮索する理由も多くはない。
違和感だけなら簡単に誤魔化せてしまうのだ。
■柊 真白 >
好きに呼べば良い。
(同じセリフ。
だがロリっ子と言われた瞬間、ほんの僅かだが目が細くなる。
一瞬のことですぐ戻ったため、見えたかどうかはわからないが。)
――吸血鬼と一緒にしないで。
血で生きてる訳じゃないし、それが主食と言うわけでもない。
色が白いのはそれとは別だし十字架はどうでも良いしにんにくはむしろ好き。
あと歳は十四。
(若干のため息の後の一息のセリフ。
勘違いされることも多いが、所謂吸血鬼とは別物の種族だ。
一緒にされるのは好まない。)
――そう。
(目を細める。
直前の行動とは別の理由。
言葉に出来るわけではない。
敢えて言うならわざわざ気のせいだとこちらに言って来たこと。
それ以上に、違和感があった。)
■時坂運命 > 「…………。
うんっ、好きに呼ばせてもらうね! ましろり――おっと失敬。真白ちゃん」
一拍の間を挟んで、にやりと意地悪く笑った後に、満面の笑みで応えた。
心底楽しそうなその笑顔は、間違いなく今日一番の笑顔に違いない。
「違うものなんだね、へぇ……面白い。
血を吸わなくても生きていけるなら、人間とも共存できるわけだ。
いやぁ、良かったよ……せっかく知り合ったのに、退治しなきゃダメなんてことになったら悲しいしね?
ほら、僕はシスターさんだから、一応そう言うのも頑張るべきかなって」
彼女の溜め息を見て、その感情の変化に気付いても、
特に悪びれる様子もなく、笑顔を浮かべたまま
十字架が苦手じゃないのも良かったと、独り合点して頷いていた。
年齢の話題には、
「14なら、やっぱり僕の方が上だね。
18だから、お姉さん扱いしてくれたっていいんだぜ?」
と、胸を張って楽しげに言うのだった。
「…………。」
少女は笑みを浮かべるだけで何も言わない。
細められた目、疑心の芽を駆除するにはわざとすぎたか?
……まぁ、それはそれで、お互い邪魔をしなければ口出しはされないだろう。
彼女はそう言う存在だ。かわした短い言葉のやり取りで、なんとなくそう思えた。
■柊 真白 >
今ましろりって。
(ましろりってなんだ。
ましロリっ子か。
今度はあからさまに不機嫌そうに目を細める。)
吸血鬼だとしても、そう簡単にやらせないけど。
――普通の人間なのに吸血鬼退治できるんだ。
(一応長く生きた人外だ。
そうやすやすとやられるつもりもない。
とはいえ吸血鬼ではないし、とりあえず敵意を向けられているわけでもない。
むしろ彼女にそう言う力があるらしいと言うことの方が重要だ。)
……運命お姉ちゃん?
(首を傾げて。
こちらとしては目一杯媚びた表情と甘えた声でのボケのつもり。
だが表情は僅かにしか変わらないし、声も殆どいつもと同じである。)
――。
(こちらももう何も言わない。
彼女の考えている通り、邪魔をしなければ何もしない。
友人達が巻き込まれたり、彼女のことを邪魔だと思った誰かが仕事を持ってくればぶつかることもあるだろうけれど。
今のところは敵対する理由が無い。)
■時坂運命 > 「あ、もしかしてその渾名、気に入ったかな?
――と、まぁ、渾名を好きに付けて良いなんて言うと、こう言うことにもなるわけだよ」
あからさまに不機嫌そうな顔を見てなお、気付いてませんよと言う体で返すわけだが、
流石にやりすぎた感が否めないので、肩を竦めて苦笑して「ちょっと悪ふざけが過ぎたね」と謝罪した。
「いや、できないよ。一般人にそんなこと出来る訳ないじゃないか真白ちゃん。
でも、シスターを名乗る以上は、努力はするべきだと思ってね。
形だけでも頑張らないと」
ひらひらと顔の前で手を振って、あっさりと否定して見せた。
だからそんなに警戒しないでほしいなぁ、なんてクスクスと笑みを零す。
――仮に、もし仮に彼女と敵対せざるを得ない状況に陥れば、
行使するのは聖水などではなく、鉛弾になるのだから。
「……one more.」
ぴくり、と肩が震える。
いつになく真面目な顔でマジマジと彼女を見下ろし、ぼそりと呟いた。
■柊 真白 >
――好きに呼べば良い。
(ため息。
彼女がそう呼びたいのであれば、別に止める理由は無い。
――と言うか、一度そう口に出した以上今更やっぱりやめてなどとは言えないだけである。)
ふうん。
でも教会って来るものは拒まずじゃないの。
(鉛弾でも聖水でもどちらでも良い。
そう言う意思があるのなら人間は何だってすると知っている。
そんな考えは表には出さず、以前から思っていたその宗教の矛盾に付いて尋ねてみる。)
――――。
(今度ははっきりと半目。
呆れと馬鹿にした表情を同量混ぜて、そこへ引きを足したような表情。
心の中も似たようなブレンド具合である。)
■時坂運命 > 「ふふっ、好きに呼ぶとも。 君の不機嫌な顔が見たくなったら、いつでもね」
再びの溜息を聞いて、満足そうに微笑んだ。
彼女が意地を付き通していることに気付いていないのか、気付いているのか。
どちらとも判断できないが、とにかく楽しそうで。
「教会は避難所めいた部分もあるからね、それは間違ってないよ。
でも、それは神に愛された者に対してだけ与えられる恩恵の上にあるものだからね、
吸血鬼や悪魔、アンデッドのような“悪しき者”として扱われる物は例外なんじゃないかな?
それに、そういう人外では信仰の対象が別のものになるだろうしね。
…まぁ、僕は本物を見たことが無いから、そこまで詳しくは無いけどさ」
少し考えてから、彼女の疑問に持論で応える。
種族の壁は大きい、特に人を捕食する者に対しては、当然風当たりも強くなるもので。
結局のところ教会は人間が作ったものだ。管理しているのも人間だ。
それなら、差別だって当然存在する。自分とは異なる物は恐ろしい、 異分子は悪なのだ。
人間はそう言う単純な生き物なのだ、と。
「……あれ? 聞こえなかったかな、それとも英語は分からなかったかな?
真白ちゃん、もう一回」
ジト目で見返され、はて?と首を傾げた。
呆れられているとは思ってもみない少女は、強引にもう一度と頼み、期待に満ちた眼差しを向けた。
■柊 真白 >
(他人の不幸は蜜の味と言う。
その感覚はわからなくは無いが、人の不機嫌そうな顔を見て何が楽しいのだろうか。
別に悪意を持って言われているわけではないことはわかるのだが、だからこそ性質が悪い。
しかし言ったのは自身だと諦めることにした。)
自分達が都合の良いように作った神に愛されて何が楽しいのか。
人外でも人間の外と言うだけで、世界の一部なのに。
――あなたに言うことじゃなかった、ごめん。
(それで迫害される側はたまったものじゃない。
ついそんな愚痴がこぼれるが、彼女に言ったところでどうしようもない。
教会側の人間とは言え、彼女が何かを出来るわけではないのだから。
頭を下げる。)
そう言うことじゃない。
バカじゃないの。
(呆れるあまりつい本音が出てしまった。)
■時坂運命 > 「おっと、その顔は僕の人間性を疑っていると見た。
真白ちゃん、可愛い子をいじめたくなる感覚ってわかるかな?
もしくは新しい玩具をいろんな角度から見て楽しみたい気持ち」
ずいっと人差し指を彼女の顔に着き付けて、自ら人間性を疑われに行くスタイル。
半ば諦めが見える彼女に、あえて抗議するように言うが、墓穴を掘っているとしか思えない発言だった。
「いいよ、君が言っていることも間違ってないからね。
嫌な思いをしたなら、少しくらい愚痴を吐いたって誰も咎めたりしないさ。
実際のところ、僕も偶像崇拝はどうかと思っているから。
――でも、神様はいるよ。人間がわざわざ作らなくても、ね?」
吸血鬼の話と言い、先ほどの反応から見て、彼女は教会に良い思い出が無いのだろう。
シスターを名乗っているはずの少女は、まったく気にしたそぶりを見せずに、
むしろ納得して相槌を打っていた。
ただ、最後の一言だけは、薄く笑みを浮かべて囁くように告げる。
「おいおい、言うに事欠いて馬鹿とは酷いじゃないか。
僕じゃなかったら心が折れてたぜ?」
口では憤慨しているように語るが、その顔は相変わらずにんまりと笑みが浮かぶ。
■柊 真白 >
ちょっと前までは疑ってたけど、今はそうじゃない。
疑ってるんじゃなくて、確定した。
(今の発言で彼女の評価を下方修正。
人をおもちゃ扱いしないで欲しいと顔に書いてあった。)
別に良い。
生きていれば当然の事だとわかってるし、私もそう言う感情が無いわけじゃない。
――居たとしても、こちらから干渉出来ないのであれば、居ないのと同じ。
(良い思い出がないのは教会に対してではなく、一部の人間に対してだ。
かといって人間が嫌いなわけではない。
そう言うものも居ると知っているだけだ。
彼女の笑みにも表情を変えずにそう告げる。
こんな世界だ、神様の一人や二人居るかもしれないが、自身には関係ない。)
むしろ折れて。
世の中のために跡形も残さず粉々に折れておくべき。
(辛辣である。)
■時坂運命 > 「ふっふっふー、誤解が解けたようで何よりだ」
どっちに修正されたのか、詳しく聞かずにニッコリと微笑んだ。
「そう、まぁ愚痴を吐きたくなればいつでも言うと良いよ。僕ならいつだって歓迎さ。
そういう話を聞くのもシスターさんのお仕事の内だからね」
彼女には不要かもしれないが、来るもの拒まずなので声はかけておこう。
教会嫌いでないのなら、シスターな自分に声が掛かることもあるかもしれないし。
……その頃までに彼女に嫌われていないかが、一番の問題なのだが。
「うーん、それって幽霊を見たことが無い人が信じないとの同じ理論だね。
でも、それだとおかしいね……。
君が干渉できなくても、あちらから干渉できる以上、“居ないのと同じ”にはならないと思うよ」
理論は分かる。自分に関わってこないならいないのと同じと。
しかし、関われる距離にいたりなんかしたら……。あまり考えない方が精神衛生上良い。
本当に神様に会えます!なんて言われて会ってみたいかと言われると、半笑いになるのだし。
「あっはっはー。その徹底的に棘を刺してくる感じ、嫌いじゃぁないぜ?」
■柊 真白 >
(その言葉には答えず、ただため息をひとつ。)
気が向いたら。
(親しい友人にはあまり言えないことでも、彼女にならば気軽に言えそうだ。
良く知らないからこそ、だ。
今のところ予定は無いけれど。)
――例えば。
私の行動が全部神様とやらに決められているとして。
そうならどう動いても結局掌の上だし、そうじゃないなら何も変わらない。
結局居ても居なくても同じ――だから居ないのと同じ。
見える見えないの問題じゃない。
(当然自分の行動は自分で決めていると思っているが、干渉出来る神様とやらがいるのなら、それも含めて干渉していることになる。
こちらから干渉出来るならそれで自分の行動を変えられるが、干渉できないのであれば本当に動いているのか動いているつもりなのかの違いでしかない。
動かされている側にとって、自分が何かに動かされているかどうかなんて事は関係ないのだ。
動かされているとしても、結局はどう動くかと言うのは「自分」で決めなければならないのだから。)
――お金を払うなら、言っても良いけど。
(プライベートなら二度とごめんだが、仕事となれば話は別である。)
■時坂運命 > 「うん、そのときはお茶菓子でも出すよ」
軽い調子で頷いて返して、来るかもわからない不確定な未来を想像して肩を竦めた。
「……ふぅん、そう。
それじゃあ確かに、居てもいなくても同じだね」
そう言っておかしそうに笑った後、
一瞬。ほんの一瞬だけ、スッと瞳から感情が消える。
氷のように冷えた無感情な瞳を伏せ
「人間じゃない者の考え方って興味があったけど、ちょっとがっかりかな」
ぽつりと、溜息と共に独り言のように呟いた。
だが、それが聞き間違いかと思えるくらいの、熱の籠った心の叫びが次の瞬間に上がった。
「わかってない! 君は何もわかってないよ真白ちゃん!!
お金で買った言葉に気持ちは籠らないんだ。
偽りの愛に価値なんてないんだ!」
それは全力の訴えだった。
強く拳を握りしめ、熱く語る声は冗談抜きに本気だった。
「と言うわけで、僕はそろそろ帰るとしよう」
その勢いのまま、机の上に置いていた鞄を手にとって、帰り支度を始める。
■柊 真白 >
――人じゃないと言っても。
私は人の世界で生きてきたから。
期待に副えなかったのは申し訳ないけど、変に期待されるのも困る。
(人外と言っても色々居る。
特に自身――の一族――は種族が違う程度の人外だ。
勝手に期待されて勝手に落ち込まれるのは、あまり気分が良いものではない。)
じゃあ気持ちを籠めてそう呼ばれるような人になって。
(熱い言葉はさらりと流しておいた。)
そう。
それじゃ、私も帰る。
(自分は通り掛かったようなものだ。
それじゃ、と短く告げて廊下を引き返していく。
来たときと同じように、極端に静かに。)
ご案内:「教室」から柊 真白さんが去りました。
■時坂運命 > 「え。 ああ、ごめん。つい口に出てたね。
悪気はないんだ、ちょっと……うん。 ごめんよ?」
彼女の言葉で、思考が声になっていたことに気付いたようで、
申し訳なさそうに視線を彷徨わせ、言葉を濁した。
やってしまった…。と、今度はちゃんと心の中で呟いて、短い反省を繰り返し
「あはは、もう一度君に『お姉ちゃん』と呼んでもらえるように頑張ろうじゃないか」
言葉少なくクールに去って行く彼女の後姿に、軽く手を振って見送った。
「……。」
ぽつんと一人残った教室で、顔を俯かせながら髪の先を指で遊ぶ。
胸の内で渦巻く感情を飲み込み、消化して、
「今のは、彼女言うとおりだな。
今度からもっと気をつけないと……」
一つ大きく深呼吸をして顔を上げると、鞄を手に教室を後にする。
ご案内:「教室」から時坂運命さんが去りました。