2015/07/17 のログ
谷蜂 檻葉 > 「―――よっし、これでおしまいっと。」

とん、と最後の一冊をカウンター横のカートに積んで軽く伸びをする。
時計に視線をやれば、切り良く閉館時間10分前を指していた。

まぁ、10分くらい誤差だと帰り支度するのも常である。


「それじゃ、照明落として撤収しましょ。 えーと、引き継ぎ用のメモを置いて……っと

あ、それで明後日シフトなしになったの、忘れないようにね。多分顧問から別に話し来ると思うけど……。」

普段ならかなりのんびりと作業する所だが、後輩の手前そうするのもどうかとテキパキと纏めていく。

夏の盛りの夜。
涼しい図書館の一日は、今日も静かに過ぎていく――――

ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
浦見靜 > 「お褒めにあずかり…なんてね。
あは、ありがたいお言葉ですけど、俺は影で良いです…実体って窮屈でしょ。
今はセンパイが主体ですよ。」

言いながらふとタイピングする手が止まっている事に気づけば、ごく自然に止めていた作業に戻る。
夏の長い日。図書館に差し込む夕日が、影を長く長く二人の上に落とす。影。
キーボードの上の指を止める事無く言葉を続け。

「…俺は入学して半年ですけど、それなりに物騒な噂も聞きますから。
ま、そりゃ気になりますよ。死ぬのもゴメンなんで。アンテナは常張っとかねえと。」

曰く、実験体が跋扈しているだとか。
曰く、見た事も無い生徒に殺されかけただとか。
敢えて言葉にはしないのはこの学園の生徒なら言わずとも想像がつくかと思っての事。

「さっき本運んでる時とか、重たいから気を付けて、って…癒しのアロマ系扇風機もやってくれたじゃないすか。
それに食堂アイスデートもノってくれるみたいだし。」

再び手を止めれば、クール系な相手の見せる可愛らしい反応に目を細める。
ただの後輩、から発展する事は無いし強いるつもりも無いが、こんな反応を頂ければ満足らしい。
放課後買い食いを冗談交じりにデート、と大げさに表現しつつ軽い調子で言えば、
相変わらず怒られるまで机の上を作業場にして作業を続けるだろう。
デキる女な先輩といい加減な後輩のコンビだが、きっと仕事は捗った筈。

「はい、りょーかいです。精々有効に休暇使わせて貰いますよ…じゃ、センパイ、お疲れ様でした。」

やがて今日の仕事が終われば相変わらず口は悪いものの労いの言葉をかけ、折り目正しい礼を一つ。
ちょっとしたご褒美を目当てに、図書館を後にする。

ご案内:「図書館」から浦見靜さんが去りました。
ご案内:「図書館」に春日 真央さんが現れました。
春日 真央 > (自習用の机に座って、ノートを広げていた。机の上には厚い本が数冊。
 三色ボールペンが指に挟まれたまま、ノートの上を滑ることなく長いこと止まっていた。
 かれこれ10分ほどそのままだったろうか。
 漸く動いたと思ったペン先は、上に数行綴られた文章の続きではなく、下に残る大部分の余白にヨレた文字を記した。
 「チキン」と。)

………久々すぎて、いきなり海行く勇気とかないじゃん。そんなの出ないって、いきなり。

(せっかく買った水着を着て海に行く勇気が結局出ず、こんなところに引きこもっている恨み言が口から漏れる。
 誰に止められたわけでもないから、自らを罵る言葉しか出なくて、ノートの上の「チキン」の文字をぐりぐりとペンでなぞる)

スイカ割りたい……。

春日 真央 > (式典委員会の催しものの告知が、夏の風物詩への憧れを掻き立てて早2週間。
 スイカを割ることを夢見るばかりで結局行けていない。
 入学時に持ってきていなかった水着を買ったところで勇気が終わった少女は、机に額をついてなついている)

なんで水着じゃなきゃダメなんだろうなー……。

(海だから。夏だから。浜辺だから。
 いくらでも予想される返答が頭を通り過ぎて行って泣きそうになさけない気持ちだ。
 真面目に自習する学生のための白い蛍光灯が突っ伏した頭を照らしている。
 傍から見れば自習に来て寝ているようにしか見えないだろう)

春日 真央 > (夜の静謐な図書館に響く深い溜息。
 のろのろと頭を上げると、額にうっすら机の痕がついている。
 当然自分では見えようがなくて、張り付いた前髪を払うだけで)

もったいないし。

(軽く頭を振り、勇気が出なかったものは仕方がないと気持ちを切り替える努力をする。
 余白を無駄に減らすもったいない使い方をしている「チキン」の文字をボールペンの頭でこすると、
 紙面に凹みをだいぶ残して消えた。
 よいしょと年寄りじみた掛け声をかけ、積んである本の一冊を開く。
 内容は、ヨーロッパの城についての資料。
 残りの積まれている本も同様のようだ)

春日 真央 > (集中力が切れて海に行っていた意識を引き戻し、ページを繰る。
 写真で解説されているのは、豪奢な内装の画廊。
 現代でイメージするような画廊とは違い、運動スペースも兼ねているという広い空間に、へえと声を漏らす。
 ノートの端っこ、罫線のない部分に短くそのことをメモする)

これは使えそうかな。
時代、どれくらいだろ。

(何世紀頃の建築か、数ページ前をめくり調べると、先ほどのメモの隣に数字を丸付きで書いた。
 同じように、ページを繰って部屋や廊下の写真と解説を眺めては、メモを取っていく。
 本を見ている時の目は、いつもの眠そうなものではなく、眉間にぎゅっと力が入っていて、集中していることを示している)

春日 真央 > (ひと通り眺め終わり、本を閉じる。
 目が霞むのを感じ、眼鏡をずり上げながら鼻の付け根のあたりを指で強く押し、目のこりをほぐす)

……てゆか、もう少し間取りも載ってるのないかなあ。

(役には立った。けれど、求めるものには少々足りないと。
 閉じた本を積み直し、ノートを閉じると、しっかりと手に持って立ち上がる。
 ノート以外のものはその場に残したまま、少女は別の資料を求めて、森のように立ち並ぶ本棚の中へと歩いて行く)

ご案内:「図書館」から春日 真央さんが去りました。