2015/08/23 のログ
ご案内:「図書館」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 「―――またご利用ください。」

定型句、通常業務、日課のような行動。
……はて、そう言って”今”が”いつも”になったのは何時だったか。

なんて、利にも成らぬ事をぽやぽやと考えながら利用客を見送る。

この時間から一度利用客が減るのも、またいつも通り。
付近に読書中の少年少女、ときどき年配の方がいるのを視界に入れて、ちょっとした休み時間か。と、自前で用意していた小説を読み込んでいく。

これが一周目。 まだ、未知の物語をわくわくと読み進めていく。

谷蜂 檻葉 > 読み進め、読み込み、投射し、飲めり込み――――

文字を読むという視界から、物語を見るという視界に移り

主人公を観るという状態から、主人公に成るという感覚に移り

紙の上の黒い文字の中に飛び込んで、広がる世界に浸っていく。


知らず。
興奮のままに虫のような綺麗に透き通った薄羽根が広がり、キラキラと回りを光点が周遊する。


主人公は人間だった。

谷蜂 檻葉 > 人間の弱さを知恵で補い、自らの手で届かぬ事象に立ち回りで解決に当たる。

力を合わせ、互いの利を飲み込み
情を打算で振り解き、悩み苦しみ、それでも信条に生きる人間。

不自由が多い人間だからこそ、不自由の壁を打ち砕く姿が鮮やかに映る。


"彼"は選択の連続だった。

皆と歩き、劣等感に打ちのめされた。

孤独に歩み、無力感に打ちのめされた。

唯一の人を探して、運命の別れに打ちのめされた。


不幸で、惨めで、哀れで……。

それでも、崩れ落ちた膝を震える手で抑えこんで立ち上がる。


熱い物語、ではなく。
どこまでも、泥臭い物語だった。

谷蜂 檻葉 > どこまでも報われない男の物語は、最期のちっぽけで幸せな灯りと、
その火を継ぐ若い男の独白の文章で終わっていた。



「――――は、ぁ。」


ほんの少し、目頭が熱い。

貸出の申し込みをする客も返却に来た客も、いないということを確認し忘れた事にそこで気づいて肩を跳ねさせて周囲を見渡すが、読み始めとそう変わらぬ様子でほっと一息。

燻るような熱を残す物語だった。
誰かと語り合いたくなるような、そんな物語だと思う。

交代の委員でも、知り合いでも。
誰でもいいから来ないかな。と、出入口に視線を向ける。

ご案内:「図書館」に雪谷 憂乃さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > (まぁ、こないか。)

そう都合の良いことはないというのは物語でも現実でも同じ事。
と、遠くに見えた生徒にまで視力が足りず。

視線を前に戻して返却本と予約の照らし合わせと整理を始める。

たまに、1週間ほど貸出期間を遅延させての返却本もあってため息が出る。

大抵そういう本は誰も借りないようなマニアックな専門書だったりが大半なのだけれど、時折連作小説の中程を借りたまま返し忘れで呼び出しを受けるような者がいる。

本読みには拷問のような所業なので早く撲滅させたい。

雪谷 憂乃 > 交代の委員というか、知り合いというか。
はてさて、お互いどれだけ知っているか、なんて分からないけれど、同じ委員として顔を合わせたくらいはあるはずか。
出入り口からひょっこり姿を現せば、片手に日傘を携えてカウンターへと。

「こんばんは。
…今日は空いてますし、適宜暇になったら早くシフト上がっても良い、…だそうですよ。」

オレンジ色の髪色の図書委員へと声掛けをすれば、
腕章を嵌めた右腕を見せて。丸椅子をカウンターの元に引きずり出す。
交代か、そうでないのかは曖昧な所だが、差し詰め私は"臨時増援"とでも言ったところか。
整理を始めた彼女を横目、カウンターにある御大層な図書館を管理しているだろう機械に手を掛けた。
結構、このコンピューターと言うものがクセになる。

谷蜂 檻葉 > 「わ。」

集中しだしたところに声をかけられ、パッと顔を上げる。

「あ、えっと……ちょ、ちょっと待って今思い出す……あー……えーっと……」

特徴的な容姿で、容姿は、覚えてる。ただ名前が出てこない。
名前が覚えるのが苦手という訳ではないのだけれど。

「ゆ―――雪谷さん、であってたよね?  こんばんは。
 はい、了解です。 私の予想だともう少しすればあの辺りの人達が借りるかそのまま戻すか決めるはずだから、そこ捌けたら交代させてもらうね。」

たっぷり二十秒ほどかけてから挨拶して、直ぐ動くかはともあれ荷物を纏める。

「さっき此処の返却本の予約確認し始めたところだから、お願いしていいかな?」

雪谷 憂乃 > 「…あ、ごめんなさい。」

驚かせてしまっただろうか。本を読むのに夢中だったか、
お仕事に夢中だったか。何にしても、悪い事をしてしまった、気がする。

「えぇ…その。」

何度か顔合わせはしたが、こうして鉢合わせになることは初めてだし無理はないだろう。

「はい、雪谷です。雪谷憂乃。一年生です。
そして貴女は、谷蜂先輩…ですよね?」

であれば、此方が相手の名前に自信がないのも無理はない。
少しばかり不安気に、溜めてから言葉を出すようにして、首を傾げる。

「はい、了解しました。後はお任せ下さい。
あ、はい。んー…どうにも、遅延が多いみたいですね。
幾つか、無断で借りられているのもあるみたいですし。
…本の追加とか、反省文とか、貸出禁止とか考えた方が良いのでしょうか。
では、始めますね。」

カタカタと、御大層な機械を弄りながらの確認。
流行りの本は、やはりと言うか人気なようで。微妙に穴が開く様な借りられ方をしたり。
こんな本読むのか?という本の予約が入っていてびっくりしたりも。

「ノミでも分かる微積分…応用編。」

こんな本読むのか?ついつい管理機械の画面に映し出された怪奇な本のタイトルを溢した。

谷蜂 檻葉 > 「ええ、2年次生の谷蜂檻葉です。 タニハチって言いづらいし、オリハさんとか先輩とか、まぁ呼びやすい感じで呼んで頂戴な?」

合っててよかった。とふにゃっとした笑みを浮かべて相手の呼び方を訂正する。
フレンドリー、フレンドリーに。

「遅延はねー……どうしても、難しいところよね。
 魔導書関連は"回収班"が行くみたいだけど、まぁ生徒証経由でメールとか呼びかけの方向が精一杯じゃないかなー。 あ、貸出禁止はあるらしいわよ?見たこと無いけど。 何回連続だったかな……警告受け続けてると回収班が行く上に利用禁止になるって。 あぁ、でも週人気な娯楽本は在庫の追加申請していくべきかも……。」

自分も、何度か忙しさに目を回してる時に呼びかけで遅延していた事に気付いたことがあった。 何かしらそういった場合も対処できる方法があればいいのだけれど。

「あー、"罵倒シリーズ"。 タイトルはアレだし中身の書き方はソレだけど、練習問題としては役に立つわよそれ。 雪谷さん、数学とか使う?」

何故か ~でも解るのところが嫌に見下したタイトルで、真面目に読者をこき下ろしてくる参考書だが、問題だけは解けば役に立つものが多い。

解説で周到な引っ掛けに対して罵倒してくるので間違えた時のストレスは相当だが。


                      カウンター  書架
―――先に予想していたグループがゆっくりとこちらとあちらに動き出す。

雪谷 憂乃 > 「ん…オリハさん、いえ、先輩と呼ばせて頂きましょうか。…いえ、やっぱりオリハさんの方が、良いですね。」

大人し目に頷くけれど、友好的なのは感じ取ったのか、小さく笑いながら。

「成程…、色々対処されていますね。
やはりというか、私はこうして貸し出している事ばかり、でしょうか。
余計な心配はせず、シフトの時だけこうやっていれば、円滑なんですね。
…回収班…お給料が良かったらやってみるのもよさそうです。どれくらいのものでしょう。
ああ、それとそれと。禁書庫って何で開け放してるんでしょうか。
ちょっと中身見てみましたけど、あれこそやばいと思いますね。
娯楽本、ですか。ちょっと顧問に言っておきます。リストに足りなさそうなヤツピックアップしておきますね。」

さっと鉛筆を取り出せばメモ用紙を一枚。
仕事の苦悩や給料への貪欲を先輩に漏らしながらさらさらと綴り始めた。

「…"罵倒シリーズ"?何ですこれ。」

滅茶苦茶嫌味としか言えない様な笑みを湛えた眼鏡のハゲ教師が解説欄で
『これくらいダニでもできるゾ♪』とか、教師のあの棒で黒板を叩きながら解説しているのが見えた。
そんなイラストいらない。
『間違えたの?お前それでテスト合格できんの?』口角を吊り上げると言うべき様な厭味ったらしい笑顔。
殴りつけてやりたいと思った。
でも、解説は分かりやすい。腹立つほど分かりやすい。

「そうですね、数学、好きですよ。ただまぁ…こんな問題集やるのは勘弁ですけど。
…おや。大移動でしょうか。」

野次馬半分に動き出した生徒集団の様なものを見えればふと。

谷蜂 檻葉 > 「結局、財団が固めてそれを私達がー …って、やってきてるからね。
 恩返しってわけじゃないけど、その辺キッチリしてると思うよ。」

言いながら、貸出に来た生徒から本を預かり、手際よく貸出手続きを済ませる。
3人ほど立て続けに終えて、定型句で見送るとまた静かな時間が始まる。


「回収班に関しては私も実は聞いてないのよね。要するに、外勤になるわけじゃない? 顧問か、本部に行って聞いてみたらどうかしら?」

『焚書班』という 禁書取り扱いの『外勤』まで居るという話だし、中々一委員会と言っても幅が広い。

「禁書庫ねぇ……。」

と、焚書班について思いを巡らせたところに噂をすれば影。

「私もよく解らないけど、自己責任っていうか……『此処(常世島)』らしいっていう感じよね。昔ながらの銃社会よりこういうところ物騒よね。」

【自由には責任が伴う】というよりは【好奇心猫を飼い主毎殺す】という感覚は、異能・魔術・危険思想が両手をつないでロンドを踊るこの島特有の物だと思う。

せめて、この島を出る前では表向きの建前だけ見ていたい。

「お給料目当てって、結構困ってるのかしら?」

雪谷 憂乃 > 「おお、…成程。
ま、結局財団の御陰ですか。」

手早く手続きを済ませるあたり、先輩と言うべきか。
関心模様に手際を見遣れば、見習わねば、なんて。

「成程。…顧問に当たってみましょうか。本部にはあまり行きたくないですかね。面倒ですし。
それに、顧問なら連絡先1人だけ知ってますから。
…色んな班やらがありますね、何処かしらに所属した方が良いでしょうか。」

努め初めて数か月だし、そろそろここの業務にも言ってはなんだが飽きが来る。
それに、今日みたいに晩ならまだしも、昼に業務を入れられたら気分が滅入るのだ。吸血鬼だし。

「銃って言うか、魔道社会…若しくは異能社会ですか。概ね。
オープンですよね、立ち入り禁止なんて表面上で。
禁書庫なんて普通の人間が入ったらミンチです。」

ここらしいと言えば、ここらしい。
時計塔なんかもそうだった。

「えぇ。…5,6か月前に来て以来、ちょっと貧困していましてね。
食べ物にも苦労することがあったのです。…流石に最近は安いところ見つけられたので食べ物くらい食べれてますが。」

やや困り顔だった。路地裏で吸血は立派な食事。無料。

谷蜂 檻葉 > 「謎だらけの財団だけどねー。まぁ、運営させてもらってる以上言いっこなしってことなのかしら。」

横から借り受けるようにPCを操作してシフトをチェック。
また直ぐ先に入っているのを頭のなかの予定表と照らしあわせて鞄を取る。

「本部は、その場その場で”お願い”されなければ楽よ? お昼過ぎた二時半ぐらいがベストよ。受付の人と、担当官以外大体出払ってるか業務に出た後になるし。
 班、ねぇ。私はこういう一般司書で十分だと思うけれど……。
 禁書担当って言ってもアレとあんまり関わりたくないし。」

今では随分手慣れたものだけれど、魔術の广も覚束ないのに禁書庫入場は本土の富士の樹海にピクニックに行くようなものだ。

「あら、そんなに。 ……前に歓楽街にも危険・高給なお仕事を見たこともあったけど……。 まぁ、あんまりお金に苦労するようだったら研究区から出てる治験とかに応募してみたら? 手軽、ではないけれどちゃんと募集人の噂を集めとけば比較的楽にお金貰えるわよ?」

一度ばかり、【ケミカル系】の異能持ち用の風邪薬の治験に付き合ったことがあった。 募集と掲示のタイミングが絶妙だったからだけれど…… 思った以上にお金がもらえてびっくりした覚えがある。

雪谷 憂乃 > 「御願い…ね。あまり良くない印象です。
おや、オリハさん、禁書担当なのでしょうか?」

さらっと零れたけれど、まさか…。

「えぇ、そんなにですね。
歓楽街の仕事なんてロクなのないでしょう?好き好んでやるような仕事じゃないですね。
研究区も少し胡散臭いですし…が、治験…それくらいなら。参考にしておきましょう。
私としては学生通りの商店街で何か努めたい物でしたが。
ああ…後、常世神社の巫女さんなんかもお給料貰えますかね。
兎も角、今はこうして通常業務と言ったところですね。」

禁書に関わる仕事とかも儲かりそうなものだと思うけれど。

「ところで、そろそろ御時間です、人の数も減ってきましたし、
あのグループも帰って行くようですし。
そろそろ、引き上げても良さそう…でしょうか。
時に…オリハさんはどちらまでお帰りに?あと、晩御飯は済ませましたか?」

谷蜂 檻葉 > 「繁華街にある本屋までメモ書きもたされて魔導書の仕入れとか、学園の農業区の方まで遅延本があったから代理受け取りに行ってきて欲しいとか……。」

まぁ、良いものではない。
断れるが、断った時の悲しい顔をするのが本部の人達は非常にうまい。

「ええ、元々一般担当だったんですけど。禁書の暴走騒動で、少し。管理用の指輪もあったし、まぁ準禁書担当、みたいな……?」

言いながら、カウンターを出る。

「ええ、そうさせてもらうわ。交代の言伝、ありがとね。

 ―――え、私? 女子寮よ?ああうん、ご飯は休憩室で戴いたわ。 ……あ、そうそう美味しくてコロッケパンが安いお店教えとくわね。一度は行ったほうが良いと思う、商店街の路地なんだけどね……。」

ささっと、受付のメモ用紙に簡易な地図を書いて差し出す。

「それじゃ、残り時間よろしくねー。」

雪谷 憂乃 > 「お給料は良いんでしょうかね…しかし農業区…遠いったらありゃしません。
転移魔術があるから楽でしょうけれど、酷いお仕事ですね、それ。」

苦笑い交じりにあはは、と答えながら。

「あら、禁書を封じ込めたのですね。
やるじゃないですか、先輩。
…えぇ、どういたしまして。あ、ありがとうございます。
商店街の…わざわざ、どうも。
明日のお昼御飯にしましょうか。」

メモを受けとれば、大人しいながらもにこやかに答える。

「はい、お疲れ様です。
…ええと、今度良かったら、一緒に晩御飯でも、どうでしょう…?」

今夜は無理だったのだが。今度会ったときにでも。

谷蜂 檻葉 > 「私、学費から差っ引きだから実は知らないのよね。
 結構な割合でボランティアで回してるし……。」

いわゆる「部内活動」に落としこんでいる活動形態である。
危険手当にも似た払いはあっても、”仕事”にしている人々に比べれば大分安い。


働き過ぎな生徒もそこそこいる。


単位などにボーナスがつくという噂もあるが、果たして。

「ええ、お疲れ様。 じゃあ、メルアド今度委員会のリストで送るから、またねー♪」


そう言って、楽しげに手を振って図書館を後にする。

ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
雪谷 憂乃 > 「はい、お疲れ様です。また何卒。」

小さく、手を揺らしながら見送って。

「…リストって、何でしょうか。」

機械音痴だったようだ。今日も今日とて、夜更けまでもう少し、私の図書委員の仕事は続く―――。

ご案内:「図書館」から雪谷 憂乃さんが去りました。