2015/09/14 のログ
■東雲七生 > 「へぇ~……親子で仲良かったんだ?」
頬杖をついて目を細める。
自分には過去の記憶、家族との思い出なんてものも無くなってしまったのだが。
目の前の彼女にはそれがある事を、少しだけ羨ましく思ったりもしながら。
「んまあ、多分ね。そうなんじゃねーかなぁ。」
独り言を拾って、苦笑交じりに肯いて。
「──えっと、何かアイツについて知ってる事とかある?
正体とか……具体的な事じゃなくても良いんだけど。」
ちらりと辺りを見回して。
他の利用者の邪魔にならない程度の声量で話をしようと。
■焔誼玖杜 >
「うん、たぶんよかったと思います。
家族で遊びに行くことも多かったし」
【家族との思い出は、いくらでも思い出せた。
まさか隣の友人が、記憶で悩んでいるとは思いもせずに】
「……ううん、私にも、良くは。
私や、その、私の能力の大本から生まれたらしい、と言うくらいは、分かってるんですけど」
【――なにかあったんですか?
と小声で、緊張しつつも、心配そうな表情を向ける】
■東雲七生 > 「そっか……
盆と正月くらいには帰れたら良かったのになあ?」
苦笑しながらも、思った事を率直に言う。
帰れる場所を覚えている、それだけで羨ましくもあったのだが。
それでも親元を離れてこの島に居る事の、彼女の心細さ自体は察せなくもなかった。
だから、努めて笑顔で。
「いや、そいつが自分は何なんだろうって悩んでてさ。
似てるんだから、焔誼に聞いてみりゃ良いって言ったんだけど。どーも直接会えないみたいなこと言ってたから。
……俺が代わりに訊いてやるよって約束しててさ。」
焔誼の能力から生まれたのか、と復唱して軽く肯く。
心配そうな顔に、そんな心配する事じゃない、と笑顔で言いながら。
■焔誼玖杜 >
「あ、ううん、夏休みには一度帰ったんですよ?
でも色々あって、あまり一緒にいられなくて……」
【今の玖杜には元の世界に帰っても、自由な生活は存在しない。
とはいえ、そんな重たい話をするのもはばかられる】
「……えっ?」
【悩んでる、と言うことはやはりしっかりとした人格があるのだろうか。
自分が一度見たときとは、随分と変化しているのかもしれない。
――いや、それよりも】
「東雲さんは、その子と、良く会ってるんですか?」
【――あの、バケモノと。
大切な友人が、人を喰うバケモノとあれからも関わっている。
それはかなり、ぞっとする話だった】
■東雲七生 > 「ああ、そうなのか?
……んまあ、予定とか合わないと大変な家もあるらしいな。」
実家で何か経営でもしてるのだろう。
そう都合の良い解釈をして、うんうん、と頷く。
「ん?
んまあ、それなりに……まあ。
何やかんやあって、だいぶ懐かれてるというか……。」
さてこれこそどう説明したものか、と視線が泳ぐ。
七生からしてみれば、焔誼が心配するほどの危険性は迦具楽からは感じていないものの。
以前迦具楽が自称していた通りに彼女は化け物なのだろうし。
最初(迦具楽曰く二度目)に落第街で遭遇した時に、自称するだけの現実は見せられてはいるのだが。
「お前が思ってるほど、危ない奴では無いと思うぜ……?」
ただ すごいきょりが ちかいんだけど。
そう付け加えるか否か悩んで、そっと飲み込んでおいた。
■焔誼玖杜 >
「……うん、そうだね。
もっと一緒に、居られたらいいんだけど」
【そのために、ここで学んでいるわけなのだが……それにはまだ暫く、時間が掛かりそうだった】
「そう、なんですか。
懐かれて……」
【一体どんな状況なのだろう。
流石に想像がつかない。まさか、頻繁に抱きつかれて甘えられるほどに懐かれているなんて、思い浮かべることもできず】
「……でも、アレは、人を食べてました」
【危なくない、とはいわれても。
玖杜にしてみれば、目の前で人間を溶かして殺した、ただのバケモノでしかなかった。
それ以降も色々変化しているみたいだったが、玖杜の抱いた印象は変わっていない】
「本当に、大丈夫なんですか?
何かされたりとか……」
【玖杜にあるのは、バケモノへの恐怖と、自分と同じ容姿だというこの気持ち悪さ。
そして、友人への純粋な心配だった】
■東雲七生 > 「まあ、両親が健在なら卒業すりゃ無事に会えるようになるんだしさ!」
それまでの辛抱だ、と自分の事は直向に隠しながら笑顔を続ける。
自分の両親は健在なのか、そもそも両親なんていうものが本当に存在しているのか。
それすらも分からないが。
「うん、懐かれて……」
人を食べていた、と言われれば。
そういう事も確かにしたんだろうな、と、少し表情を曇らせる。
そういう側面は自分の前で出さなかった、というそれだけの事だろう。友人が、焔誼が嘘をついている様にも思えない。
「何か……というと。」
思い出す。大体抱き着かれて甘えられて。
まあそれはもう慣れっこなので除外するとして、主立って深刻な物と言えば。
「………えっと、頬に、その、キスを……」
されました、と真っ赤になりながら。
■焔誼玖杜 >
「ですね、今の調子でちゃんと卒業しないと」
【そう言って笑うが、やはり少し、寂しげだっただろうか】
「……へっ?」
【――今、東雲さんはなんと言ったんだろう。
うん、懐かれてる。
それはわかった。優しい人だから、きっと相手が何であっても、変わらず接するのだろうから。
でも今、何か凄いことを】
「――えええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
【――キス!? なんでキス!?
図書館だというのに、かつてないほどの大声を出して驚けば。
数少ない利用者の視線が集まるけれど、それすら気づかないほどに、呆然として。
ガタン、と思わず立ち上がってしまうほどの、衝撃を受けたのだった】
■東雲七生 > 「そうだな、まずは卒業だよな。」
うんうん、と頷きながら。
やっぱり寂しいんだろうな、とその表情から読み取る。
気持ちは……わかるような、わからないような。
「いや、焔誼! しーっ! しーっ!!」
ここ図書館内だから!と声を殺しながらも大声を上げる友人を窘める。
利用者が少なくてホント助かった、と胸をなで下ろしながらひとまず座る様に促して。
「そこまで驚かなくて良いだろ……
いやまあ、確かに見た目異性からキスされたのなんて初めてだったけど……。」
■焔誼玖杜 >
「…………」
【窘められれば、なんとか着席するが。
まさに開いた口が塞がらないという状態。
そして、続く少年の言葉には問題はそこじゃないといいたかった。
驚かないわけがないのだ。
今の玖杜にある情報といえば、その『カグラ』は人食いのバケモノで、目の前の友人に懐いていて、自分の姿と瓜二つ――あ、これはダメだ】
「――はうっ」
【ボン、と言う音と共に。
玖杜の頭が爆発炎上した。
そしてそのまま、炎とそれ以外で顔を真っ赤にし、目を回して机に突っ伏した。
……まあ幸いにも。いつも通り物に燃え移るようなことはなかった】
■東雲七生 > 「あっ」
目の前で友人の頭が文字通りの爆発炎上。
幾ら容姿が似ているとはいえ、
焔誼は焔誼、迦具楽は迦具楽、と割り切っている七生にとっては、何故焔誼玖杜が撃沈したのかが解らない。
「お、おい?焔誼?しっかりしろ。
大して気にしてねえし、そもそもお前にされたわけじゃねえんだからさ。」
突っ伏している肩を、とんとん、と軽く叩いて声を掛ける。
まあ別の相手に唇まで奪われている今となっては、頬のキスくらい挨拶みたいなものだろう、と。
■焔誼玖杜 >
「う、ぅぅ……」
【珍しく、炎はすぐには鎮火しない。
不幸中の幸いが重なるが、この図書館では何度か見られた光景。
慌てる利用者も図書委員も居ないのは幸運だったか】
「……だ、だって、キス、キスですよ?
東雲さんに、き――」
【突っ伏したまま何とか肩を叩く少年に視線を向けるが。
そのまるでなんとも思って居なさそうな表情が視界に入り、そしてその頬にぐいっと焦点が合わさってしまい】
「――あ゛ああああぁぁぁぁぁぁ」
【呻くような声があふれ出て、再び机に倒れ伏す。
出来ることなら、このまま頭を抱えて悶え転がってしまいたい。
むしろ、燃え尽きて灰になって消えてしまいたいくらいの心情だった。
たしかに、確かに玖杜とは別人で、少年にとってはなんでもないのかもしれないが。
魂を分けた相手で、見た目が瓜二つで、ともすれば同一人物と言ってしまえかねない相手がである。
目の前の、心を許した友人にキスしたといわれれば。
どうしたって、想像してしまうのだった】
■東雲七生 > 「ほーむーらーぎー」
本当にどうしたと言うんだろうこの友人は。
周囲の注意を引かないよう、それとなく積んでた本で焔誼を隠す様にしてから対処を考える。
とりあえず火が出ている現状だけでもどうにかしなければ。
取り敢えず安心させよう。危害らしい危害は受けてない、と。
──と、どっかズレた決意をして。
「落ち着けって。大丈夫だから、俺は。
それにさ、普段から割と抱き着かれたりとか、顔が近かったりとか、慣れっこになってるし。
別段俺も迷惑に思ってないからさ。」
犬か猫がじゃれ付いてる認識になってるから、と。
平然と燃料を放り込んでいく。
本人にそのつもりは無いのだけれど。
■焔誼玖杜 >
「――だ、だっ!?」
【――一体何をしてるの、あのバケモノは!?
さらに追加された燃料によって、玖杜の羞恥心はますます刺激される。
もちろん、火が消えるはずも無いどころか、勢いは増すばかり。
無意識にとはいえ、燃え移らないよう制御できるようになっていなかったら、今頃大惨事だっただろう】
「う、うぅぅぅ……もう、いいです、いいですから」
【頼むからそれ以上、余計なことを言わないで欲しい。
ただでさえ、どんな関係になっているのかとか、普段どんなことしてるのかとか。
不必要に想像してしまって大変なことになっているのだから。
出来るなら今すぐ逃げ出してしまいたいが――顔が上げられない】
■東雲七生 > 「えっ、あ、おう。」
火の勢いが増した事に気づき、怪訝そうにしながらも肯いて話を止める。
何か友人の怒りに触れることを言ってしまったのだろうか、と見当違いの心配をしつつ。
「まあ、お前がアイツの事どう思ってるのか、何となく察しはつくけどさ。
確かに化け物で、人を食ったりしてたのかもしれないけど。
俺の前では極力そういう事を感じさせないようにしてるしさ。きっと、ちゃんと分かってくれるって。
だからそんな、怒んなよ。な?火が凄い事になってっから」
ほら、どうどう、と宥める様に焔誼の背を撫でながら。
ひょいっ、と顔を覗き込んでみたりする。
■焔誼玖杜 >
「……はぁぁぁぁぁぁぁ。
――はい、そう、ですね」
【盛大なため息が、長々と一つ。
いくらこう、今までにないくらい照れやら恥ずかしさやらで大変なことになっていても。
こうまですさまじいほどに見当違いの心配をされつづければ、少しずつ冷めては来る。
長いため息が静まれば、火の勢いも衰え静まって行き】
「すみません、なんとか落ち着――」
【ようやくのところで、顔を上げれば。
妙に、やたらと近い距離に、友人の顔。
今の状況だとか、距離だとか、逃げようとか、顔を背けようとか。
そんな思考をめぐらせるまもなく、玖杜は急激に顔色を、はっきりと分かるほどに赤く染め。
体温を過去最高の70度台まで上昇させて、完全にフリーズした】
■東雲七生 > 「落ち着いたか?」
良かった、と少女の眼前でパッと笑みを浮かべる。
それは普段、迦具楽と会話する時の距離で。
やはり知らず知らずのうちに混同してしまっているのかもしれない。
「──って焔誼ぃー!?」
完全に処理落ちした友人を見て、これはただ事じゃないと察した様子。
とりあえず軽く肩をゆすりながら、保健室にでも連れて行った方が良いのだろうかと思案して。
……どうやって連れてけば良いんだろう、と暗礁に乗り上げた。
■焔誼玖杜 >
「…………」
【揺すられようと声を掛けられようと。
どうにも戻ってくる様子のない玖杜は、肌に触れれば火傷しそうなくらいヒートしており。
視点も顔を上げた直後からまるで動かないほどの硬直ッぷりを見せ付ける。
とはいえ、何時までもそのままではいられない。
程なく、すっかり茹で上がったCPUは辛うじて動きはじめ】
「――ご、ごごごごめんなさい!
あ、ああ後でまたメールしますっ!」
【ガタン、と椅子をひっくり返しながら立ち上がると。
真っ赤な顔で湯気を放ちながら、魔術すら使って凄まじいスピードで逃げ去っていくのでした】
■東雲七生 > 「あっつ……」
額に触れようとした手をひっこめながら、
はてさてこの状態を如何としたものか、と視線を巡らせる。
都合よく保健課の人間でも居ないだろうか、出来れば耐熱性に優れた……と探していたら。
「あっ?
えっ?ちょ、焔誼? 焔誼ーっ!?」
何だか凄い勢いで復活を遂げた友人が、
復活を上回る勢いでその場を去っていった。
「……な、何だったんだろう。」
残された少年は一人、呆然と呟く。
■焔誼玖杜 >
【そんな全力全壊での逃走をした後、玖杜は自室へふらふらになりながらも帰り着き。
まさかの冷たいシャワーで何とか体温を下げて冷静になると、ようやく携帯を取り出し】
『”カグラ”について、話せることがあるかもしれません。
ただ、ちょっと事情がありまして……都合がいいときに、また部屋まで来てください』
【そんな、珍しく顔文字の無いメールを送ると、ぐったり倒れて朝まで力尽きるのでした。
それでも、翌日はちゃんと朝起きて二人分の弁当を用意するのは、真面目なのか、ただの習慣か。
しかし、その味付けは……凄まじく辛かった事だろう】
ご案内:「図書館」から焔誼玖杜さんが去りました。
■東雲七生 > やっぱり女子ってよく分からないから怖い。
焔誼の去った後の図書館でそんな感想を改めて胸に抱きながら。
読みかけで止まっていたケルト神話を再び読み始めたのだった。
メールに気付いたのは、大体キリの良い所まで読み終えて、
さて、帰ろうかと思い図書室を出た後だっただろう。
明日の午後、暫く誰とも口が利けなくなったのはまた、別の話──
ご案内:「図書館」から東雲七生さんが去りました。