2016/01/21 のログ
ご案内:「図書館」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 放課後。
蘭は以前借りた医学書を返し、そして授業の参考資料の本を借りるために図書館を訪れていた。
「ありがとうございました」
まずは返却カウンターに行って、医学書を返す。
■美澄 蘭 > 医学書からは、良くも悪くもさほど新鮮な知識は得られなかった。
蘭の生物学の知識が中学レベルで止まっているのもあるが、やはりその研究自体にさほど収穫が無かったのだろう。
蘭は、法学の棚の方に行き、参考資料を探し始める。
■美澄 蘭 > 「あ、あった…これ」
「現代法学入門」と書かれた、新書よりやや大きいくらいの本を書架から取り出す。
蘭が履修している法学概論は、前期では「法とは何か」の抽象的な講義が多く、具体的な法律を例に挙げた議論は少なかった。
具体的な例を挙げた入門書として講師がこのタイトルを挙げていたので、更に理解を深めるために借りることにしたのだ。
そして、貸出手続きのためにカウンターの方へ向かう。
■美澄 蘭 > カウンターで、いつものように貸出手続きを済ませる。
何だかんだで獅南先生の「宿題」はあの後すぐ終わってしまった。
負担がなくなった気持ちの軽さからか、どこか気分良さそうな様子で自習コーナーに向かう。
ご案内:「図書館」に黒兎さんが現れました。
■黒兎 > 自習コーナーに入って来る足音を聞いて、私、黒兎は顔を上げた。
一応、どんな人間だろうかと確認しておこうと思ったのだ。
読み途中の本は開いたまま、しげしげと観察する。
―――特に別段見覚えはない。
現代法学入門という明らかに小難しそうな本を抱えているあたり、頭はいいのだろうか。
「………それ、読むのか?」
私は問いかける。
稀にいるのだ、カッコつけの為だけに、
難しい本を開いて座っているだけの者が。
■美澄 蘭 > 獅南の「力を試してみたいとは思わないか」の問いには、「まだ早い」と答えた。
それは、「将来的には試す気がある」という意思表示を兼ねうることを知っていたし、蘭自身、そのつもりでそう答えた。
そして、その目標を諦めないためには、魔術学はもちろんのこと、魔術を行使するのに便利な周辺の知識を身につけなければならない。
治癒魔術の行使に重要な生物と、元素魔術の応用に欠かせない物理は来年に回してしまったので、ひとまずは魔法薬等に関わってくる化学と…魔方陣学などに必須となる、数学である。
蘭の取っている数学基礎は、「他の講義の課題と重なると死ぬ量の課題が毎週出る」と評判だ。
…と、借りた本を抱えたままだったので、その小難しそうなタイトルに興味を惹かれたのか、黒髪の女子生徒が話しかけてくる。
「…ええ、後で、講義のノートを見ながら」
「小難しい本」という意識が希薄なのか、聞かれたことがさも不思議のようなきょとんとした表情で、答えた。
■黒兎 > 「成程、頭がいいのだな。」
小難しい本、基、現代法学入門から、
彼女の持っている、恐らくこれから手をつけるのであろう課題に視線を移す。
今、私が苦心している、数学基礎の課題のようだ。
法学は文系の科目であるが、数学はバリバリの理数系である。
なにしろ、理、数の数だ。万能の天才、と言う奴だろうか。
はたまた、努力家なだけだろうか。……いや、どちらも、と考えるのが自然だろう。
「突然するにはぶしつけなお願いで悪いのだが、
出来れば、その手に持った課題、一緒に解くことは出来ないだろうか。
―――私は文系科目は得意だが、数学はどうも苦手でな。
急ぎ足の講義では、悔しいながら完全な理解には至らん。」
私はやれやれと首を振る、実の所ほぼチンプンカンプンである。
長い時を緩慢に過ごした私は、限られた時間で多くの事を覚える事が出来ないのだ。
なにせ、そこまで急く生きる必要がないのだから。
■美澄 蘭 > 「頭…そうね、勉強はそこまで苦手じゃないけど」
何でもない風に言うこの言葉で、過去にこの少女が何人敵に回してきたか、定かではない。
「数学…ああ、あなたも熊谷先生の数学基礎をとってるの?」
わさっと、ブリーフケースから数学基礎の、今回の課題のプリントを取り出した。
プリントの中をのぞき見ると、7割くらいは進んでいるのが分かるだろう。
「でも、数学が得意じゃないのに熊谷先生の数学基礎をとるなんて…あなたも急いで勉強したい事があるの?」
そう、黒髪の女子生徒に聞き返す。
■黒兎 > 私、黒兎はプリントを覗き込む。
どうやら、7割方終わっているようだ。
いや、しかしながら、これは、うつしてもいいんだろうか。
……兎も角、この女子生徒が居るうちに、せめて7割8割までは進めなければ。
「ふむ、苦手じゃない、という程度とは思えんがな。
数学と法学、特に関係性が強い科目ではない。
法学系の道を歩むのなら数学は受験科目から外れるしな。
其れなのに態々その二つを取るというなら、
尋常ならざる知識欲か、何か特別な事情の何れかが無ければあり得なかろう。
そういう者は得てして頭が良いモノだと私は思うがな。」
そう答えながら、私は、顏を苦々しく歪める。
いかんせん、学校の説明なんてろくに聞いていなかった為に、講義は適当に選んだのだ。
数学基礎、と書かれている以上、まぁ、基本的な事だろうと踏んでいたにもかかわらず、
内容は兎も角として、速度が尋常ではない。
「よくある講義の選択間違いだ。
……途中でやっぱり分からないから辞めます、なんて、
恥ずかしくて言い出しにくいではないか。」
私はそう答えながらも粛々と鉛筆を取り出して、
覗き込んだ答えを自分のプリントにかき込みはじめる。
■美澄 蘭 > 「まだどの道を進むか決めきってないから、基本的なことは一通り分かるようにしておこうってだけよ。本土の普通科高校と同じ感じ。
あなたの二択で言うなら、一応前者寄りなんでしょうけど…そこまで、大したことじゃないわ」
そう言って、はにかみがちに笑む。
自分のプリントの回答がしっかり見られていることには、まだ気付いていない。
「講義概要はちゃんと読まないとダメよ…まあ、私も進度がゆっくりの講義のシラバスはあんまりしっかり見なかったんだけどね」
「でも、それでも投げ出さないのってすごいと思うわ、熊谷先生の数学基礎だもの」と言って少し笑んでみせた後
「…どこで詰まってるの?」
と、黒兎のプリントの方を覗き込もうとする。
■黒兎 > 「成程、それでどちらも基礎、か。」
高校生ならば順当、いや、分からないならば全てと学ぶ意欲を見せるのは、
やや大人びていると見るべきか。真面目な人間なのだろう。
―――つまり、うつしてるとバレると、面倒な事になることは
火を見るより明らか、百発百中、間違い無しである。
「それで、今の所は何が面白いと?
数学か?法学か?それとも、他の何かか?」
私は質問を投げかけながら、一先ず幾つかの問題の答えを写し終える。
何、如何にもこの頭の良さそうな女子生徒の事である、間違いは心配しなくても大丈夫であろう。
「うむ、次からはそうしようと心に硬く誓っている。
説明はやっている内に分かるであろうと読まない主義なのだが、
こういう場に限っては実に重要であるな。」
投げ出さないだけで、授業内容はさっぱり分からず、
大体は放心して机に座っているだけである。
何がすごいものか、と、思わず苦笑いを浮かべた。
「ん?」
―――と、そこで、私の視界に茶色い物がうつりこんだ。
どうやら、近くに居た女子生徒のものであることに気がついて、
私は大慌てで次の問題を指差した。
「こ、ここだ、全然解けなくてな。」
■美澄 蘭 > 「ええ、大体基礎とか、入門とかばっかりよ」
「専門的なことはこれからね」と言って、楽しそうに笑む。
真面目というべきか、知識欲旺盛というべきか。
ちなみに、写しているのがばれた場合、面倒にこそならないだろうが、少々呆れたようなリアクションが返ってくることは間違いないだろう。
「今面白いもの」を聞かれると、少し考えて
「今は………そうね、ピアノも捨て難いけど魔術かしら。
実技はコゼット先生の元素魔術と、後は獅南先生の魔術学概論で、魔術文字を少しだけだけど。
数学も、魔術の分野次第では必要になるから頑張ってる、っていうのが大きいわ」
と答えた。
「そうね…私も、専門を絞る時にはそうするつもりよ」
「次は説明をしっかり読む」と黒兎が言うと、くすりと、楽しそうに笑んで頷く。
…と、どこか慌ただしい様子で黒兎が次の問題を指差すと、それを更に深く覗き込んで。
「…ああ、これはさっきまでの問題と使う公式のパターンが違うのよね」
「これを使うのよ」と言って、プリント内の公式が示された部分を指差す。
■黒兎 > 「おお、そうか、ありがとうな。」
公式に目を移して、少しばかり唸る。
物差し、ハサミ、電子レンジに炊飯器。
それらあらゆる道具は、使い方が分からなければ、
精々原始人か猿のように振り回してみる事しか出来ない。
この世の万物は須らく武器なのである。
この公式もまた、私に突き刺さる武器であった。
剣で言うならば刃の部分を握りしめる私には、
この武器をどう使っていいかが分からない。
分かりやすく言えば、公式の使い方が分からなかった。
鉛筆の先で公式をかつかつとつつきながら、女子生徒との雑談に戻る。
いや、戻ってはいけないのだろうが、解けないモノは解けないのである。
「ふむ、魔術か。
それにしてもピアノまで弾けるとは、
本に多才極まりないな。」
これはまた、古風で真面目な印象な彼女にしては随分とハイカラな趣味である。
ある程度一般的になったとはいえ、未だ世間に知られ始めてきたばかりの、未知の力。
―――少し前の例えを出すのなら携帯電話である。
それを進路とするという事は、挑戦者であり、開拓者になるという事だ。
であるのならば、さぞ崇高な理念を持っているに違いあるまい。
「魔術を覚えて、何をするつもりだ?
少なくとも、覚えるだけですむものではあるまい。」
■美澄 蘭 > 「そう、その公式のこの部分に数字を入れてね…」
ありがとうという言葉の割に計算の手が動かない黒兎の様子を無意識に察してか、ご丁寧に公式と問題の数字の対応を、人差し指を忙しく動かして示す。
「ピアノは一応小さい頃からやってたから。
実家にいた頃ほど練習しやすい環境じゃないけど…だからこそ、やりたくなるっていうか。
魔術の方は、こっちに来てからなんだけどね。
全く無縁ってわけでもないんだけど、本土では自分で使う用事もなかったから」
「お母さんは結構治癒魔術使ってたんだけどね」と付け足しつつ。
黒兎ほど魔術を学ぶことに気負っていないのか、「何をするつもりか」と聞かれれば、悩むように眉をよせ。
「………何をするか、は…まだ、これからね。
元をたどれば、この島で過ごすための護身術のつもりだったんだけど。
魔術って、それだけにおさまるものじゃないみたいだし………
何だろう…今は、「やり方の違う科学技術の使い方」を勉強してる感じが強い…かしら」
と、少し戸惑いがちに言葉を紡いだ。
■黒兎 > 「おお、成程な。」
忙しなく動く綺麗な人差し指を目で追って必死に覚えながら、私は再び鉛筆を握る。
指先が綺麗なのは、ピアノを嗜んでいたからだろうか。
一度わかれば、後はそれに近しい内容である。
次の問題、次の問題、と鉛筆を走らせる。
不肖黒兎、しっかり説明さえして貰えれれば地頭はいいのである。ふふん。
「まだ決まっていないなら、しっかり考えておくとよいぞ。
力、というのは、一度持ったら持つ前には戻れぬからな。
護身術程度、と思って身につけたものであれ、あれば戦えてしまう。
中途半端に身につければ、あるいは、しかと行き先を見定めなければ、
身の程を知らずに妙な事に首を突っ込む事もあろうぞ。」
「………私が数学の講義を受けてしまったようにな。」
我ながら、苦い経験である。
『身の程を正しく知る』というのは、実に大事な事なのだ。
良い意味でも、悪い意味でも。
「さて、そろそろ日も落ちる。
勉強の礼に飲み物でも奢ろう。
「ありがとう」と言うのは、恥ずかしいからな!!」
私は広げていた課題をまとめると、席を立つ。
確か自動販売機が外にあったはずだ。
そこで何かあったかい飲み物でも買って、そのまま帰れば良いだろう。
■美澄 蘭 > 少女の指は白くて細く、そして少女の割には長い。
手全体も少女の割には大きめであろう。
それなりにピアノに向いた手である。
「良かった」
黒兎が解き方を把握したのを見て、柔らかく笑む。
…が、「力」の話になれば、表情を引き締めて、
「…ええ…練習の中でも、結構びっくりしちゃうことが多くて…
だから、「力」と向き合うためにも、色々考えることは大事だと思って」
「これも1つの向き合い方だと思うの」と、先ほど借りた本を軽く持ち上げてみせる。
…が、黒兎の「私が数学の講義を受けてしまったように」のところで、思わず吹き出してしまった。
無論、吹き出したあとに「ごめんなさい」とは付け加えるが。
「そんな、大したことはしてないけど…
………でも、折角だから、お言葉に甘えちゃおうかしら」
「もう少しお話もしたいし」と、黒兎について外に向かう。
飲み物をご馳走になったあと、入れ替わるかのように自習コーナーに戻ってきて、少しだけ課題をこなして帰ったのだった。
ご案内:「図書館」から黒兎さんが去りました。
ご案内:「図書館」から美澄 蘭さんが去りました。