2016/05/07 のログ
■美澄 蘭 > (また連休が入るし、新しい本借りようかなぁ…)
そんなことを考えながら、書棚の間へ向かっていく。
特に目的が定まっていないので、背表紙を見ながら惹かれるものを探す算段だ。
ご案内:「図書館」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 「ちわーす……さっき借りた本返しに来ましたー」
数冊の本を持って図書室の扉を開けた七生は、軽く欠伸を噛み殺しながらカウンターへと歩いて行く。
途中、何人かの利用客の中に見知った姿が見えた気がしたが、まずは本の返却が先決と少しだけカウンターへ向かう足を速めた。
■美澄 蘭 > そうして書架の中を彷徨いながら、文化人類学のコーナーに辿り着く。
(あ、これ面白そう)
文化的性差の観点から文化人類学を論じる本を見つけて、手に取る。
そして、貸出カウンターの方に向かった。
■東雲七生 > 「あれ、美澄じゃん。おっす、久し振りー」
本の返却処理を終え、ふぅ、と軽く息を吐いた七生は貸出カウンターへ向かう姿に気付く。
先程書架の合間に見かけた姿だとすぐに気づき、軽く手を上げながら声を掛けた。
「美澄も何か課題?」
■美澄 蘭 > 貸出カウンターに向かう途中、聞き覚えのある声がかけられる。
大きく目を瞬かせてそちらの方を見て…その顔をほころばせた。
「あら、東雲君。少しぶりね」
「元気そうで何よりだわ」と、柔らかく笑む。
それから、課題かと尋ねられると、楽しそうににこにこしながら首を横に振り
「ううん、趣味の読書。週末でまた授業ないし、せっかくだから」
蘭が抱えるハードカバーの本の表紙には、「女の文化人類学」というタイトルが書かれている。
…蘭は、本当に楽しそうだ。
■東雲七生 > 「趣味……そっか、なんか美澄っぽいな!」
にっ、と笑みを浮かべる。
その本のタイトルをチラッと見たが、七生には到底理解が出来なさそうだ、という事くらいが分かっただけだったが。
「……そういや、こないだの演奏会。凄かったな。
俺さ、初めて演奏会っての行ったんだけど、聞き入っちまったよ。」
よくああいう事やってんだな、と感心したように頷きつつ。
■美澄 蘭 > 「小さい頃から本が好きなの。おじいちゃんも両親も読書趣味があるから、きっとその影響ね」
「中学校の国語の先生ともそれで仲良くなったのよ」と、やっぱり楽しそう且つ無邪気な感じでにこにこ。
大人びた趣味に似合わず年相応の表情で、どこまでも本人に悪気はない様子だ。
…そして、改めて演奏会のことを言われれば、ちょっとどきっとしたように表情を強張らせ、わずかに頬を赤らめて。
「…そうね…ドビュッシーは、好きな作曲家なの。
妥協して本命曲で出るか、仕上げられそうな曲にするか結構ぎりぎりまで悩んであのプログラムにしたんだけど…何とか仕上がって、良かったわ」
「仕上げられそうな曲でも、あんまり簡単なのにはしたくなかったしね」と、ここでやっと、はにかむような笑みを、少しだけこぼした。
■東雲七生 > 「ふーん……遺伝、ってやつか。」
だとしたら自分の両親も、体を動かすのが好きなのだろうか。
そんな事をふと考えて、軽く首を振る。また顔の無い家族“の様な物”を思い出したくはない。
「ドビュッシー、っつーんだ?作曲家……ええと、あれか。音譜とか書いた人の事だよな……?
俺、音楽関係の事はよく分かんねえけど……うん、良かったと思うぜ。」
もっと他に言うことがあるのではないか、と七生自身も思ったのだが、
如何せん理屈が分からない。その為、とても単純な感想を述べるのみになってしまう。
その事が少し恥ずかしく、苦笑めいた笑みを返した。
■美澄 蘭 > 「遺伝もあるかもしれないけど…それよりは、環境じゃないかしら。
家に一杯本があって、親とかが普通に手に取ってたら、自分も真似するでしょ?
最初はそんなものよ、きっとね」
そう言って、少しいたずらっぽく笑う。
「美澄 蘭」というパーソナリティーは、一朝一夕では出来上がらないということだろう。
…そして、「作曲家」がピンとこないらしい七生の様子を見て、少しだけ困ったように笑って、
「そうね…音符の並びとか、それに伴うテンポや表情の付け方の指示とか、そういうのを書いてまとめた人ね。
ドビュッシーは、「印象主義」っていう、雰囲気とか気分「そのもの」を表現するような音楽派閥を作り上げた1人なのよ。
…私、あの長調とも単調ともとれない響きが好きなの」
最初は子どもに教えるような初歩的な語りだったが、どんどん話がマニアックな方向に進んでいく気配である。
蘭はいつの間にか無邪気な笑顔になっているので、多分これは無自覚なヤツだろう。
■東雲七生 > 「環境……」
小さく復唱して眉根を寄せる。
だとしたらなおの事分からない。分からないのだから、考えても仕方がない。
そういうものなのだろう、と納得してしまう他無いのだ。
「……ほえー……。」
そうでもしないと続く知識の本流に着いて行けなくなる。というか、それでもついていけなかった。
元々あまり頭の宜しい方では無い七生は狐につままれたような顔で美澄の話を、時折頷きながら聞いている。
■美澄 蘭 > 「印象主義もそうだけど、新しめのクラシックとかジャズって、今のクラシックの基本的な理論が確立する前の和音とか調…あっ、曲の基本の音階のことね、そういうの使ったりするのよ。
明るいとも暗いとも言えないけど、響きに独特の透明感が生まれてね…
………って、こんなにいきなりべらべら喋られてもピンとこないわよね。ごめんなさい…」
専門用語を解説なしで使わない、という最低限の抑制はかけつつも畳み掛けるように語っていたところで…七生の表情に気付いて我に返る。
つい暴走してしまった羞恥に顔を赤らめ、ちょっと俯いてしまったり。
七生の表情に、彼の生育暦に起因するものがあるところまでは、流石に察しがつかないようだが。
■東雲七生 > 「えっ、あ、いや、その……
ごっめん!俺、馬鹿だからあんまり芸術とか音楽とか詳しくなくって……!」
──唐突に謝られて、我に返った後に狼狽した七生はぶんぶんと音が出そうなほどに首を振る。
俯いてしまった少女の両肩に、半ば無遠慮に手を載せると、
「確かに理屈はよく分かんねえけどさ。、
演奏会の時といい、今そうやって喋ってる時といい、美澄が楽しいってのもホントに好きなんだってのも伝わって来たから!
だからだろうな、全然聞いてて不快って訳じゃないぜ?」
それだけで十分だから、と満面の笑みを浮かべる。
誰かが楽しそうなだけで自分も楽しい。
──東雲七生はそういう単純さを持った少年であった。
■美澄 蘭 > 「………ううん、いいの。
夢中になると、相手を置いてきぼりにして話し込んじゃうの…昔から、悪い癖で」
『小難しいこと喋れりゃえらいとでも思ってんのか?』
『大人が読むような本読んで出来るヤツ気取りかよ』
離れてから一年以上経つ、「あの頃」の記憶が蘇る。
どこか思い詰めたように眉を寄せかけた…そのとき、両肩に手がかけられる。
「…え」
そして、少年のフォローと、満面の笑み。
「………」
感極まったのか、蘭の目元が少し潤いかけて…
流石に、場所やら何やらで、抑制がかかった。
「…そう言ってくれると嬉しいわ、ありがとう。
………とりあえず、この本の貸出手続き、してきてもいい?」
そう言って自分が抱えた本を指で示し、少し気まずそうな笑みを浮かべた。
■東雲七生 > 「あ、ああうん!
そうだな、早いとこ借りてきなよ!
悪いな、呼びとめちゃってさ!」
慌てて肩から手を離し、何度も何度も繰り返し頷く。
そして謝る。もとはと言えば自分が声を掛けたからなので当然ではあるが。
「にしてもなー、俺はそうやって夢中になって話せるようなものって無いからなぁ。
少し美澄が羨ましいぜ、ホント。」
■美澄 蘭 > 「ううん、いいのよ。
顔を見れて嬉しかったし」
「それじゃあ」と、ぱたぱたと貸出カウンターの方に向かう。
少しして、貸出手続きを済ませると、蘭は気持ちを切り替えたのか、幾分落ち着いた様子で七生のところに戻ってきた。
「そうね…私の周りの近い大人は、大体私の「好き」を大事にしてくれたから。
「雑音」はあったけど、「好き」に打ち込んでる方がそういうのは忘れてられたしね。
………東雲君は、まだそういうものが見つからない感じ?」
首を傾げて、七生に問う。
■東雲七生 > 「好きなものかー……
それを言えば俺はさ、体動かすのが好きだからさ。
……でも体動かすことを人にあんまり話したりとかってねーじゃん?そもそも話すこともあんまりないし。」
戻ってきて、こちらへと問い掛けてきた美澄へと少し考えながらも七生は答える。
「だから、別に「好き」なものが無いってわけじゃねえんだ。
それが説明とか、そういう事出来るような物じゃない、ってだけなんだと思うんだけど──」
ううむ、と腕組みして眉根を寄せる。
「……つまり、それって見つかってないのと同じだな。」
■美澄 蘭 > 「身体を動かすのが好き…そういえば、最初に会った時もゴミ箱に綺麗なシュート決めてたわね」
思い出したのか、くすりと楽しそうに笑んで。
「身体を動かすことでお話………そうね、効率的な鍛え方とか、身体の動かし方のコツみたいなものとか?
…突き詰めると、スポーツ科学みたいになるのかしら」
顎に人差し指をあて、思案がちに上目遣い。
…七生の顔は、別に蘭の目の上方にあったりはしないが。
「「語れるか」には「語彙」…言葉をどれだけ知ってるかも関わってくるから、見つかってないのと同じ、って言っちゃうと流石に乱暴ね。
「語れ」た方が「好き」を色んな形で活かせるとは思うけど………うぅん、何て言ったら良いのかしら。
………とにかくね、東雲君が焦る必要はないっていうか、「好き」があるなら、それはないことにしちゃいけないと思うの。
「これから」を考えるためにもね」
時折考えるように眉を寄せながらも、真剣な眼差しと口調で、七生に告げた。
■東雲七生 > 「あはは……まだ覚えてたんだ。」
少し照れたように頭を掻きながらも、続く美澄の言葉を頭の中で噛み砕いていく。
つまり、今の自分は語彙──ひいては知識が圧倒的に足りていないのではないだろうか。
……いや、実際その通りなので何をいまさら、と思わなくもないが。
「効率的な、とかコツ、とか言われてもな……
ほとんど感覚っつーか、直感というか……本能で動いてるからさー。」
つまりはまず、自分の動き方を客観的に知るところから始めるべきなのだろうか、と考える。
それ以前に語彙を増やすべきなのだろう、と考えて、そこで更に告げられた言葉に、我に返った。
「焦ってるって訳じゃなかったんだけどな。
ただ、羨ましいなーって思っただけでさ。はは。
ううん、まあまだまだ俺には足んない物がいっぱいあるみたいだから、それに気付けただけ良しとすっかな。」
サンキューな、美澄。
にっ、とトレードマークの子供っぽい笑みを浮かべて礼を言った。
■美澄 蘭 > 「「友達」と初めて会った時のこと、そんなに簡単に忘れないわ」
くすくすと楽しそうに笑う。
…と、「羨ましい」と言われると、気恥ずかしそうに薄く頬を染め、
「………そんな、大したことじゃないと、自分では思ってるけど…改めて言われると、少し、恥ずかしいわ。
…東雲君に得られるものがあったなら、良かったけど。」
と、少し弱めの声で言った後。
「…私は逆に、身体を動かすことについては、あんまり分かってないから。
…だから、今度東雲君の「感覚」とか「直感」とか…その辺りの話、聞かせて?」
そう言って、何とかはにかみがちの笑みを浮かべた。
■東雲七生 > 「出来れば余計なところは忘れてて欲しいけどな……」
苦笑しつつも、少し嬉しさもあって感情が綯交ぜになった笑みになってしまう。
照れ隠しに一つ大仰に頭を掻くと、深呼吸をして。
「ああ、全然構わねーよ?
と言っても、上手く説明出来るかわかんねーけどさ。」
あはは、と笑いながらも快く了承した。
■美澄 蘭 > 「その辺の取捨選択って難しくない?」
「良い意味での適当って難しいわよねー」と、年相応の軽さで笑う。
そして、快諾してもらえれば、楽しげに笑みを広げて。
「良いのよ、東雲君の話が聞いてみたいだけだから。
…それじゃあ、楽しみにしてるわね」
そういうと、蘭は女性らしい所作で小さく手を振り、図書館の出口の方に向かうのだった。
ご案内:「図書館」から美澄 蘭さんが去りました。
■東雲七生 > 「ううう……まあ、良いけどさ。別に。」
言うほど恥ずかしい事でもない。転んだとか、そういう訳ではないのだから。
少し気を静めようと、深く息を吐いて。
「ああ。そんじゃーな、美澄!」
図書室を後にする友人を見送って、自分も書架の方へと向かった。
ご案内:「図書館」から東雲七生さんが去りました。