2016/06/28 のログ
■尋輪海月 > 「……ひっ」
【肩に触れられればその長身に見合わない細い声が。
言葉を土下座のまま聞いて、ゆーっくり、それはもうゆっくりと顔を上げた。】
「……え、……て、てっきり、ぶ、ぶった切られて学園どころか今世からの退学を申し渡されるのかって……」
【盛大な退学処分を申し渡されるというとんでもない誤解をしていた事。オブラートにも包まないで告げたもので、はっとして、】
「い、いやすいません、こっちこそとんでもない早とちりで……!!」
【弍び頭を下げた。ところで土下座は続行している。しかも座る場所の上でである。色々置いておいて、決して女子大生のしていていいような格好ではない。ある意味風紀を蹴っ転がしているような様でなくもない。】
■不凋花ひぐれ > 平気だろうか。手前が粗相をしていないだろうか。
出来る限り穏便に済ませられるよう、殊勝穏やかに。
「ここを何だと思ってらっしゃるのでしょう、この人。」
揶揄を込めて口元を緩め笑った。それはそれはとんでもない誤解だ。
ここは監獄島でも何でもなく、ただの学園のある島なのだから。
――まぁ、悪い事をする奴に学園側としては容赦はしないが。
「いえ、それはこちらのほうこそ。恐がらせる要因は不味かったですよね」
手をひらひらとさせながら肩をすくめて見せる。
そうし、まるで修行僧のように礼儀正しく――否、正しすぎて振り切れてる体勢なお相手に。
「楽にしていてください。ここは詰めどころではなく休憩所ですよ。
……こちらに来たのは最近のお方でしょうか、お姉さん?」
風紀がどうとかそういうものを正す気にはなれん。どうにも相手はまだなれてない様子だったものだから。
■尋輪海月 > 「……あ、う」
【……取り敢えず、楽にしていてください、という言葉の直後、ゆっくり起き上がって、座り直した。
改めて相手を見据え、その眼が……じぃ、とそちらの顔を見つめている。
そちらの顔を見つめている。
そちらの顔を凝視している。】
「………ぅあ、え、えっと、は、はい!つ、つい最近……といってももう一ヶ月位……あ、いや、やっぱりぎりぎり一ヶ月経つか経ってないかおおよそ一ヶ月くらいになりますけど、転入してきたんです、けど……」
【……慣れない敬語を使っているような、微妙な訛りというか、ぎこちなさというか。きっと貴女が風紀委員である為にか、終始緊張でどことなく角ばった口角。】
「……来たばっかりで、右も左も全然分かんなくて、それに、なんだか私よりよっぽど此処に来るのに紆余曲折あっただろうなって人ばっかで、私なんて全然ちっぽけなアレで此処に……あ、いや、すいません、なんでも、なんでもないです……っ」
【おくちにちゃーっく。みたいなエモーションで、慌てて首と手を振って謝った。よく誤り、よく慌て、よく土下座しかねない。見た目的にはそこそこ成熟もしているはずだが、何処か……そう、目の前のこのやや身長高めの女は、丁稚であった。
……と、】
「……え、あれ、……お、お姉さん……?」
【……いや、身長は兎も角それで自分がお姉さんと言われるとは、如何に。
自分がややデカなだけで、相手はきっとこの学園のそれに違いなく、きっと何らかあって自分より年上だけど身長はこの通りなんだと思って。】
■不凋花ひぐれ > 凝視の視線が痛いほど照りつける。気持ち高くなった場所からの眼線。まざまざとこちらを見る眼がなぜだかこそばゆく思える。
瞬間的に確認した限り、娘と相手はそう年の差はなけれど、相手のほうが幾分か大人に思えるはずだのに。
借りてきた猫みたいにまごついた言葉で喋るものだから、はて、どうしたものか。
「一月、ですか。ならまだ慣れていないのもよく分かります。この学園は色々と特殊ですから、すぐに慣れろ、というのも難しいでしょうし。
色々ドタバタしていたかもしれませんし……ここに来る方々はまぁ、色々あるお方なので深くはお聞きしませんけど」
言葉を区切り、相手の言葉を最後まで聞くよう。お口にチャック的ムーブメントと手のモーションが為されるまではうんうん、と頷いていた。
「この学園に来たからには安心してください。私たちは歓迎しますよ。どこを向いていいか分からないならば、私が介助してあげます。」
そう口にしながら、くたりくたりと首をかしげた。髪に挿した鈴がしゃなりと音を鳴らす。
「はい、お姉さん。それともお名前で呼ぶほうが良かったでしょうか。申し訳ありません、意図を汲み取れず。
私は不凋花ひぐれと言います。身形はこんなものですが、風紀委員をしています。そろそろ2年次上がる予定の16歳です」
■尋輪海月 > 「……はい、それはもうドタバタと……通う為の定期券だとか、奨学金の云々だとか、それから単位の話だとか……退学になるアレだとか……」
【学生が実に学生らしい学生の悩みを学生らしくなく深刻に悩んでいるようであった。視線がだんだん心なしか下がっていき、終いに思い出したように虚ろにふふふと笑みすら浮かぶ。……余程苦労のあったと汲み取れるかもしれないが、
取り敢えずこの女は、見た目よりずっと頼りないらしい。年上とはとても思えない】
「……っ」
【安心してください。歓迎しますよ。 そこが何処かこの女の扉を叩いたようだ。何やら眼を見開いた後、わなわなと若干震えながら、
ばっとそちらの手を両手で取ろうとしながらに、】
「いやもうそんなん気にしないでくれていいんです!!尋輪海月って言いますッ!!委員会……は、まだ何処にも入れてないというか多分入っても三日かその辺でぽいされそうですけど……よ、宜しく、お願いします……!」
【ねっつれっつな握手をかわさんとしてくる。】
■不凋花ひぐれ > この学生(ひと)、学生らしいことを強く悩んではいるが年相応以上に色々大変な苦労があったらしい。
否、この学園になら矢張り珍しくもなかろう。最終的にドロップアウトするか、真面目にこつこつ頑張るか、無軌道ながら自分なりに進むとか、色々道はあるのだけど。
果たしてこの人はどんな風になるのだろう。願わくばその気質自体は大切にしてもらいたいものである。
自信喪失といわんばかりにネガティブな方向に捉えやすい人なのだろうか。難しい人なのだろう、きっと。
と、思えば彼女は顔をばっと上げてくる。そうしてこちらの手を取ってきた。
今度はこちらが震える番だった。驚嘆したという意味合いで。
「勿論、所属していないお方もいますから、そこはのびのびとしていただければ。
勉強や色々大変なこと、やりたいこともあるでしょうから、あなたのペースで進めればいいと思います。
……それと、よろしくお願い、します」
超熱烈な握手を交わした。ぎゅっぎゅ。
……ここまでねっつれっつなスキンシップを学生同士の間柄で執り行ったのも初めてな気もする。握る手を薄めがちにじーっと見つめていた。
なるほどどうして、人の手とはかくも温かいものか。
■尋輪海月 > 【仄かに暖かい……というよりも、なかなかこの女の掌は普通よりかはちょっとだけ更に暖かいような気がしなくもない。熱でもあるかというと、それは確かに熱でも出してなければこんなやや過剰な位のネガティブや握手なんてもんしてくるはずもないし箍の外れてそうな行動だって取りはしないもんだろうとも。
……否、目の前の女は熱など出してはいないようだ。】
「っはい!まずは色々此処に適応してくところと、学食でいい加減食券を買い間違えて食べれもしない量を買わないように気をつけられるように……」
【思わず目元を抑えてのけぞりたくなるようなところからの出発点。目で無ければ頭、頭で無ければ胸を抑えたくなる。
握手をするだけしてからぱっと離し、ぐし、と鼻頭を指で擦っている】
「……ええっと、ところで……」
【……問題は何も解決していないのである。】
「……さ、最近図書館かその近くかで、月刊バイクオーっていう、二輪車の雑誌とかって、置きっ放しになってたとかいうのって、ありませんでした、か?」
【……件の無くした本についての事のようで。
貴女の風紀委員という役職柄、忘れ物について位の事ならば耳にも入ってそうなものだと考えての事らしく。
……雑誌がどっかに置き去りになってて誰かが回収して届け出られていたという話を耳にしててもいいし、あったようななかったような。はて。と記憶の中から自然淘汰しててもいい。悪いのは無くした目の前の女生徒である。】
■不凋花ひぐれ > 常人のそれよりも熱の篭った掌。眉を顰める程度に留めながら握られる手に首肯した。
まぁともかく、この人は風邪ではなく、気を張ったが故に突如として病的な発熱したわけでもあるまい。
おおよそ『そういう能力者』なのだろう。そう仮定して片目を開く。
それが、己の感情の揺れ幅によって揺れ動き発動するタイプの能力であるのなら、不思議と熱は次第に収まろうか。
果たして自分の体温の変化に気付けるかは計り知れぬところである。
「それは……もしや結構抜けていらっしゃるのでは」
ふいと呟いた言葉もそこそこに手を離せば、相手はどこか――先と然程態度は変わらんようにも見えるが――申し訳なさそうに言ってくるのだ。
「はぁ、バイクオー……」
そういえば、ここに来る途中にバイク雑誌が外のラウンジに置きっぱだとかどうとか聞いた覚えがある。
一応返却処理はしておいてキープしておくだのなんだの、と。
聞き耳程度に覚えがあるので、この話で何となく思い出した。
「その雑誌でしたら図書館の方が返却処理をしておいてくれているようです。
事情を改めて説明しておけば貸し出しのペナルティも無いでしょう」
■尋輪海月 > 「……はい、その、それは自分で、も……?」
【……何となく感じた違和感でもあったかもしれない。不自然に途切れた言葉と共に、掌をぐーぱー。
首を撚るだけひねり、】
「……!!」
【そんな事など些事であった、とばかりに、返却処理という辺りの単語でもう素早く反応した。
ぱっと顔を凝視、目を真ん丸くして聞き、……ほああ、と、大変間抜けな声と共に、そのまま溶けていくんじゃないかという程にぐったりと脱力して、椅子の上でくずおれる。テーブルについで、顔をどつっと打ち付けるように突っ伏して、】
「……っ、よ、……良かったァァ……!!」
■不凋花ひぐれ > 違和を覚えた彼女の挙動にはいくらか既知である。
しかしてその違和感の正体をぬぐいきる前に、彼女は随分と間の抜けた声と挙動と態度を示したのだから世話しない。
随分と感受性豊かな人だと、思う。
「えぇ、良かったですね。退学にならなくて」
当たり前だが冗句の範疇。これが禁書クラスを借りパクして詠唱した等等があればそれは退学ものだっただろうが、今回においては些細なことである。
テーブルに突っ伏す、どころか打ち付けるよに鈍い音が響く。
これくらい元気なほうが羨ましい気がする。見ているだけで面白いと思える。
「少々オーバーですね。心境の内では退学がかかっていたのだから肝を冷やす気持ちは分かりますけど。
今度からは気をつけてくださいね、海月さん」
■尋輪海月 > 「あ、あはは……はい、それは、もう……ホントに……っ」
【自分の抜け加減は言われる程に染みに染みるし実際染みに染みきっておでんのつゆの底に沈んだ大根が如くであると。
突っ伏した格好で掛けられる言葉で、】
「は、はい……肝にきっちり命じておき、ま……」
【 直後。】
「――はアアアアーーっ!!!」
【溶けてくんじゃないかという様から一転。
オーノォォォォ!!とばかり起き上がり、だつんっと椅子と机の間で膝を強打するのさえ構わず立ち上がる。
というか顔がムンクじみたそれになっている】
「い、今の時間……」
【休憩室の壁掛け時計を見た。】
「やばいやばいやばいッ!この後奨学金申し込み手続き説明会あるんだった!ていうか継続願の書類すらまだ申請してないッ!なんで忘れてるんだあたしィッ!」
【さっきの、奨学金云々という件もあったが、まさかこの除生徒。終えたとばかり思っていて実は終わっていませんでしたとか恐らくそういう事でありそうだ。
恐らく貴女の返答を待たずして、荷物をまとめ、】
「ご、ごめんなさい、不凋花さん!なんかすっごいドタバタしちゃってますけど、い、行かないと……!!」
【どたあっ、ばたばた、どたたた。
今度こそ風紀をバットで場外ホームランするような慌てっぷりに休憩室を飛び出さんとして盛大にすっ転んだりして、】
「す、すいませッ……あ、有難う御座いましたーッ!!」
【……嵐が如く、何処かへ突っ走っていくその背中。
果たしてその突っ走っていった方向が、そういう奨学金やら何やらの説明会を行う教室とは真反対の方向であった事、一縷の不安のあるやもしれなかったそうだ。】
ご案内:「休憩室」から尋輪海月さんが去りました。
■不凋花ひぐれ > この人は何度も驚かせてくれる。奇声と共に強打音、慌しく立ち上がるのにまたまた吃驚してしまう。僅か一歩後ずさり。
眼孔が黒く、体が異様に細く見えるのは錯覚のせいだろう。
やがて彼女は説明会だのなんだの、ありがとうだのと告げてくれた後に慌しく去っていってしまった。
最後の最後まで騒乱沙汰であったこの場所に残された娘は衣の裾を揺らして見送る手前、数秒ほど呆然と佇んでいた。図書館の併設施設ということで、食事は自由に摂って良かろうが静かにする前提が根本から覆されている状況である。
「……図書館ではお静かに」
指先を立てながら口元に沿える。なんて、と嘲笑を零してから眼を閉じた。
あぁ一応、借りた本人から連絡があったので返却処理をした本を正式に処理して良いと告げてから、手前も図書館から出ることにしよう。
なおも響く駆け足の音が、予定されている会場とは真逆の方向にあることに気付いたのはそこからであった。
ご案内:「休憩室」から不凋花ひぐれさんが去りました。