2016/07/02 のログ
■獅南蒼二 > 誰の目にも,進む先には破滅しか存在しない。
一つだけ,選択肢があるとするのなら,
己が破滅するか,もしくは世界が破滅するか。
世界がそのいずれを選ぶのか,それだけの話だろう。
「………………。」
どこかで,進むべき道を誤ったのだろうか。
■獅南蒼二 > 手のひらに視線を落とす。
それぞれの指にはめられた指輪はぼんやりと光を放っている。
その1つ1つに,想像もできないほどの魔力が込められている。
それこそ,この部屋を消し飛ばしてしまえるほどの,膨大な魔力が。
「……理想………,理想か。」
美術教師と皮肉を言い合いながら,そして酒を酌み交わしながら,語った言葉。
神に,いや,魔術学に誓っても,その言葉に一切の嘘は無い。
だが一つだけ,誰にも語ったことのない,もう一つの理想があった。
獅南蒼二らしからぬ,しかし他の何よりも彼らしい,理想。
それはあまりにも子供じみていて,あまりにも単純で,
彼自身もそれを理解できていなかった。
魔術師として劣等生であり,両親にも捨て置かれた彼は,
ただ,魔術師として,己の努力と研鑽によって何かを成し遂げて,認められたかったのだ。
■獅南蒼二 > だがその理想は【レコンキスタ】の思想と,様々な時の流れや己の劣等感,そして憎悪によって歪められ,
誰にも認められることのない,もう一つの理想を形作ってしまった。
しかしそれもまた,正しく獅南蒼二の理想の形なのである。
あの美術教師を殺したいという思いも,
2つの理想が複雑に絡み合って燃え上がった欲望に他ならない。
不器用な獅南にとって,己が究めた魔術であの男を殺すことこそがあの男に“認められる”方法であり,
同様にしてあの男を己が究めた魔術で殺すことこそが,己の理想の世界へ近付く方法なのである。
「………………。」
壁にもたれかかり,ポケットから煙草を取り出した。
禁書庫の中だというのに,火をつけて…静かに紫煙を燻らせる。
その瞳には疲労の色が浮かんではいるが,僅かな迷いさえも浮かんではいなかった。
ご案内:「禁書庫」から獅南蒼二さんが去りました。