2016/07/04 のログ
ご案内:「図書館」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 夕刻。
いつから、この女性は図書館にいたのだろう。

正確には、午後比較的早い時間に図書館にやって来たクローデットはまっすぐ禁書庫へ向かい、先ほど禁書庫から出て来たところである。
しかし、魔術的な迷彩によりさりげなくカモフラージュされたその動向は、余程出入り口を注視していて、かつ魔術に心得がない限り見破られることはないだろう。
一応、研究用IDが使われた痕跡だけは残っているが、それとクローデットをつなげるのは容易ではないはずだ。

ご案内:「図書館」に祐樹臨助さんが現れました。
クローデット > 用件は大体済んだ。残りの調べ物は、「実物」を見ないと判断が難しいだろう。
あとは、期日に合わせて教師に研究用のIDカードを返却するだけである。

すぐに帰っても良かったのだが…調べ物が、思いのほか面白かった。
クローデットには珍しく…いや、魔術絡みであれば珍しくもないが…括弧抜きに。

そんなわけで、通常書架で関連する興味深い文献がないかと、魔法薬学とか、魔術が絡む魔物に関する書物で、未知のものがないかを物色している。

祐樹臨助 > 「漸く、半分くらい読んだけど」

厚みのある冊子の文字列を只管追走することはや幾日。
相変わらず意味の方は理解してると言えないものの、"手応え"だけはえていた。
が、これもまた相変わらず魔力の表出の証こそ確認できるが現象として形にならない。
自分がそれまでも行っていた、不恰好で無骨なただのマナの放出の様に。
腕のないものに物をつかむことができない様に、自分には何かが欠けているのかもしれない。

「ま、欠けてるなら埋めるだけだよな…」

一人ぼやいてページをめくる。
難解な文字列の海に意識を没入している為、図書館の様に平和な場所にいる今、誰の気配にも気がつけないだろう。

クローデット > 禁書にならないレベルとしては上級に当たるだろう魔法薬学のなかでも、特に「魔法」的な効果を発揮するものを取り扱ったテキストを見つけ、手に取る。
貸出手続きをすべく、受付カウンターに向かう途中…本棚の近くで軽く本を読めるような場所に居座る、長い黒髪の少年。背丈は…クローデットとさほど変わらないだろうか?
魔術言語のテキストと格闘しているように見えるが…

「図書館での実技はお薦め出来ませんわね」

…実際に発動の痕跡まであると、流石に口出しせざるを得ない。
計算されていない表出の証であれば、尚更だった。

通りがかり、少年の方に声を向けて、大きくはないがきっぱりとした口調で言い放つ。

祐樹臨助 > 「あ?」

気がつけば、背後には華美なのに慎ましいと言った印象を抱かせる服(ゴスロリ、と言っただろうか)を纏った白い髪の女性が居た。
実技の行使を窘められてはっと気がつく。
獅南先生に渡されたこの書物に記された文字列は、想起すればそれだけで魔法陣が出てくる様なシロモノなのであった。

「……ああ、やっちまったな。悪りぃな、気をつける。もしかしてアンタに何かしちまったりしたか?」

何せ背後の人間の気配にすら気がつかず魔法の発動すら気がついてないほど没頭していた。何かしていてもおかしくない。今一度その女性の外見に上から下まで視線を送り確認する。

クローデット > 「いいえ、幸か不幸か、他者に影響を及ぼすほどの発動ではなかったようですから。
…勉強熱心なのは感心ですけれど、ご自身で学ぶものの「本質」にはお気をつけて下さいね?

…魔術は、その「論理」を、「世界」をどれだけ理解するかが肝要なのですから」

ふふ、と艶と品を兼ね備えた微笑を口元に湛える。
…しかし、その瞳は少年が発動させてしまった「何か」の質を見極めようとする怜悧な知性に裏打ちされた光を宿していて、どこか冷たくすら感じられるかもしれない。

実際、クローデットは装備した探査魔術の補助も活用して、少年の力の「表出」を分析しにかかっている。
魔術を察知する能力があれば、「表出」を対象にクローデットが「何かしている」ことを読み取るのは難しくないだろう。
魔力までは使っていないので、どこまで具体的にクローデットのしていることを読み取れるかは、少年の能力次第だが。

祐樹臨助 > 「なんでもねぇか。ならいい」

取り敢えず一息つく。意識してない以上、意図的に行えない事であっても勝手に起こしている事は十二分にありえた。

「あぁ、そういうものらしいな、授業で習った。わかったつもりでいちゃいたが、理解したというには実感が足りてねえんだろうな。」

栞を挟み本を閉じて、相手と対面する。

彼は魔術の素養がない。ただ魔力を吸い込んで吐き出すだけの機構しか、少なくとも今のところは備えていない。
故に魔術的な技術の行使など、目に見えたわかりやすいものでもなければわからないだろう。
ただ

「どうだ、なんかマズそうな事でも起きそうだったか?」

何かを探り、差し込み、潜り込む様な冷たい刃物の様な視線は感じ慣れている。それだけは鮮明に理解した。
とは言っても取り立てて気分を害したわけでもない。
むしろ無意識に魔術をこんな場所で行使していたとなれば訝しむのは当然の話だ。先も述べた通りポンコツのトーシローの自分では魔術については何もわからないのだから、こうして誰かが確認してくれるというのならばありがたいものだった。

クローデット > 探査魔術の補助を得てなお、「魔術言語の計算していない発動」なのに「論理構造の欠片すら見当たらない」「魔力の表出のみ」という不自然過ぎる分析結果しか出てこず、その様相に不可解そうに片眉を上げる。

「………いえ、不自然なほどに」
(意図せず、論理構造を読み解くだけで魔力を表出させてしまう程度の「素養」がありながら、論理構造を表せないなんてこと、あり得るのかしら?よりによって、「魔術言語」で?)

先天的には徹底的に魔術の素養に欠けているのを有り余る知性で補う「同志」にして「恩師」すら、ここまでおかしなことにはなっていない。

(ただの素養の欠如ではない…何らかの阻害を疑うべきでしょうか?)

しかし、意図せず「持たされる」異能と違い、魔術は積極的に「持つ」技術である。
その修得が「阻害」されている状況を調べる研究は、異能の制御に比べれば圧倒的に規模が小さいだろう。
よほどの動機がなければ、「あえて」学ぶ必要はないのだから。

「………ところで、あなたは魔術を学んで何を為されたいのですか?」

不可解な表情を一旦奥に押し込め、限りなく無表情に近い微笑で、「動機」を確認する問いを発した。

祐樹臨助 > 「不自然……そうか。」

当然と言えば当然のこと。
『記号をひとつひとつ頭なの中で思い浮かべながら読んでいく』だけで表出していく、論理的な操作を介する魔術。
それは直感で数式の解を叩き出す様なものだ。
大凡計算という行為がすっ飛ばされたちぐはぐなモノ。
確信を持った偶然の一致とも言える行為。
どうも魔術に精通してる様に見えるこの女性からは不可解に見えるだろう。
女性が魔術を習う動機を問うてきた。
あんまりにも才覚がなくて見込みがない様に見えて、殊更魔術を習っている事が不思議に思えたのかもしれない、と感じた。

「まぁ、そうだな……ここにきて魔術習わないってのもまぁまず無さそうだけど」

軽く開いた手を握る。空をその内に込めるばかりで、虚しいものだった。

「……精通した人に聞かれたら怒られそうだけどさ。魔術はやっぱりすげえよ。便利だ。
だから俺はそれを使えるモノでありたい。
何でも出来て、どこにでも幾らでも手がとどく様な何かでありたい。」

——あまりに漠然とした、応えを吐いた。
あまりに言葉(形)にならない理想なのだった。
彼の動機は、明確な形の場所(もくてき)を持たない虚だった。

故に、彼の魔術は現実として形を成さない。
ベクトルだけバカみたいに携えられるロケット花火でしかない。

クローデット > 魔術言語で発動された術式が意味をなさないということは、当然あり得る。
ただしそれは、もっぱら「記号論理の破綻」という形で認識されうるものだ。
「そもそも記号論理の欠片も形にならない」なんて話、クローデットは聞いたことがない。

「異能を学ぶ方々には、そちらで手一杯で魔術を学ばれない方も多いと聞いておりますが」

「もったいないのは同意致しますけれど」と付け足す、悩ましげにこめかみを指で押さえるクローデット。
悩む姿をおおっぴらにするクローデットの姿は珍しいかもしれないが…目の前の少年の状態の珍しさからすれば、誤差のようなものである。

「………「便利」と一言でまとめるには、魔術の外形も、内部論理も多岐に渡るものです。
漠然と、形だけなぞるのでは、「何でも出来、どこにでも手が届く」には到底到達し得ませんわ。

………どうも、あなたの場合はそういう問題ですらなさそうですが」

そう言って、少年の方をちらりと伺う。
魔術の素養やその「阻害」が、肉体の形質的な部分へ表れ得るという学説は、遥か昔に否定…とまではいかないが、「微妙な科学(マージナル・サイエンス)」の領域に放り込まれている。
…汎用的な探査魔術で得られるものはないだろうと、少年の肉体へ探査魔術をかけることは放棄した。

「…目に見えるものを扱う魔術の修得を、優先された方が良いかもしれませんわね。

こうして初めてお会いするあたくしが、あなたの素養について断言するのも軽率でしょうけれど…
目に見えない論理を扱うことには、それ相応の「知性」の訓練が必要ですし、目に見えるものを扱う方が、あなたが抱える問題の「質」が、分かりやすいかと」

「記号論理」の意味が理解出来ないのであれば、それは「知性」の問題だし、問題がそこにないのであれば、何らかの魔術的「阻害」があるのだろう。

「…魔術言語の勉強を進めたいのでしたら、その前に、記号論理学の履修をお勧め致しますわ」

一応、魔術言語を学びたい意欲が萎えないのであれば、そのための補助線は引いてやる。
こめかみを、指で押さえながら。

祐樹臨助 > 「ああ、目に見えそうなモノは一通りやったんだけどな。てんでダメなんだこれが。」

理屈は理解してんだけどなあ、とぼやく。

「まあまた試してみるさ。記号論理学もこの前アリストテレス読んだきりだし、また手えだしてみるよ。」

アドバイスには素直に応える。

クローデット > 「…既に存在する物質を取り扱うものは学ばれましたか?
錬金術ですとか、魔法薬学ですとか」

手にしたテキストをちらつかせつつ。
目の前の少年にとっては、「遥かなる頂」といったレベルになるだろうが。

「…「何らかの障害がなければ」、学び、理解に報いてくれるのが魔術ですから。
あなたの努力に実りがあることを、お祈りしておりますわ」

アドバイスに素直に応える気質「だけ」は好ましく思い、柔らかい笑みを向けるクローデット。
そうしてから、

「…魔術の道は深奥です。
あたくしにもまだまだ学ぶべき領域がたくさんありますので…今日は、そちらに向かわせて頂きますわね。

…もし、またお会い出来たら、努力の成果、お聞かせ下さいね」

と言って、少年に背を向けて貸出カウンターに足を向けた。

祐樹臨助 > 「錬金術ね、確かに見た目にはわかりやすいよな。あんたの持ってるそれも読めるくらいにいつかなるよ。」

柔らかい笑みを向けられると、先程までの視線などは嘘の様だ。
内に秘めた邪悪さを気取る程、彼は人間というモノを理解してない。

「ま、次会える時までに何か出来てりゃいいな。障害ってのがあるなら、そいつを取り除いたりさ」

祐樹臨助 > 背を向ける女性に手を振る。
また…などと言いながら名前も聞きそびれたが、まぁ存外世間は狭い。
どこかでまた巡り合うのだろう。

願わくばそれが穏健な再会であらんことを。

クローデット > 異能者を忌み嫌いながらも、魔術を学ぼうとする者には態度を緩める。
クローデットと「同志」たる「教師」は、その点似ていると言えなくもなかった。

「…これは、魔法薬学のテキストですわ」

別れ際、女性らしい柔らかいソプラノで笑みを含んだささやきを残し。
貸出手続きを終えて、クローデットは図書館を後にした。

ご案内:「図書館」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「図書館」から祐樹臨助さんが去りました。