2016/07/08 のログ
ご案内:「図書館」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 「……あら、時間ね。」

夏も盛りが近づいて、一つだけの太陽が顔を隠すのも早くなった7月の始め。
卓上扇風機を弄んでいた少女は、時計の長針が水平になったのを見てポツリと呟いた。

『閉館』

正式には人も入ってこれるし灯りが全て消えるわけでもないが、委員会活動としての職員(生徒)が退席する時刻。人によって定める時間も違えば、日によってまちまちではあるがおおよそ夜には彼らは席を外し、図書館はその機能を大きく失う。


もっとも超人、人外、その他諸々……
常世の理に身を置いてなおその理から外れるような人達にとっては、さしたる意味は無いのだけれど。

ご案内:「図書館」に高峰 士さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 「まもなく図書委員は退席するのでー、借りるものがある人はお早めに―。」

大して人もいなくなった閲覧席に、声が静かに通る。

(……ん、それじゃ全員居なくなったら私も帰りましょ。)


そうして、何人かがその声で席をたつ中でカウンターの裏に潜り込むと鞄をいじり始めた。

高峰 士 > あちこちをキョロキョロと見回しながら、やってきたのは常世学園の指定学生服……ではない制服とキャスケット帽を被った少年。
閉館との看板を見れば、ちっと小さく舌打ちし。

『まぁ、でも人はいるでしょうからねぇ……お話くらいはできるでしょう』

独り言を呟いて、ひょっとしたら目当ての人がいるかもと周囲をうかがう。

高峰 士 > 「とりあえずは、人がいるうちに聞き込みを……。
 まだ委員の人が残っているといいんですけれど」

ちょっぴりおっかなびっくりしながら、カウンターへ向かいます。

「あの、すいません。
 少しお聞きしたい事があるんですけれど……?」

谷蜂 檻葉 > 「――そういえばアレ片付けようって…… あら? はい、なんでしょうか。本のお探しですか?」

ゴソゴソと、受付としては在るまじきことに周囲から見えない位置で鞄を片付けていた檻葉は、何かを思い出したように急に立ち上がると、同時にかけられた声に首だけを向けて応える。

「ふふ、丁度良かったですね。そろそろアガるつもりでしたからギリギリセーフ、ですよ♪」

他の人ももう用事はないみたいですし、とことん付き合っちゃいます。
と、笑顔で軽く拳をキュッと握って笑いかけた。

高峰 士 > 「本というか、人を探してるんです。
 高峰司って人なんですけど……ご存知ありませんか?
 ええと、こんな感じの人なんですけど」

胸から下げているロケットの中には、不貞腐れてしぶしぶ写っているといった感じの少女。

「知識は武器だって公言しているような姉ですので……ルーンとか魔術書関連の貸し出しとかで覚えていらっしゃるかな、と思いまして」

谷蜂 檻葉 > 「人、ですか?」

さあこい。と、身構えた返しに切り出された要件は、
これまた意外な切り込みでぐっと身を乗り出した姿勢のまま、キョトンと首を傾げる。


「タカミネ? ええと、どれどれ……。」

少年が差し出されたロケットを見つめるが、かしげた首は大してその角度を戻すことはない。

「タカミネ……タカミネ……生活科の高峯さんじゃあ、無いわよね。2年の高嶺さん?んー、弟さんがいるって聞いたこと無いし第一あの子の髪色ぜんぜん違うものね……。

―――ごめんなさい、ちょっと覚えがないわ。

此処に魔術書関連の貸出で来る子も一杯いるしね。 それに私が来てたのは3時からだから、午前中に来てたりするとわからないの。 昼前の子に、携帯で聞いてみる?」

ううん、と姿勢を戻すと眉をひそめて頬に手を当てたまま、そんなことを提案した。

高峰 士 > 覚えがないと言われると、肩を落とした。

「いえ、大丈夫です。
 今日に図書館に来たとは限らないので……」

慣れてますから、と少しだけ寂しそうに笑ったものの続く溜息は飲み込めなかった。

「本当に、人を避けてるんだなぁ姉さん。
 ここなら有力情報が得られると思ったんですけれど」

ありがとうございました。 と頭を下げた。

「……あの、不躾で申し訳ないのですけれど。
 素質がまったくないような人が身につける魔術ってどんなのがありますか?」

谷蜂 檻葉 > 「そう? ならいいのだけれど……あ、そうだ。
 知り合い程度には伝言もできるし、連絡先を教えてくれれば見かけた時にすぐ教えられるわよ?」

SNSとかで良いなら、と取り出した携帯を軽く振る。

ともあれ。

「ん、不躾とか気にしなくて大丈夫。なんでも頼って貰って……ええと?」

先の問が『誰か』の為であれば、次は『彼』の為の質問だろうか。


「素質が全く無いような人が、ねぇ……。」

それは、『翼がないけれど、どう空を飛べばいい?』という問なのだがさてどう返すべきか。
けれども人がない翼を仮に見立てて飛んだ実績はそこかしこに在る。

「素質が全く無い―――っていうなら、”魔法使い”的なことは出来そうにないわよね。
 近代にまで発展を続けたような魔術よりも原始的な『まじない』事が一番いいんじゃないかしら?

 ほら、【丑の刻参り】みたいなタイプの。 類型分け《ジャンル》なら 儀式魔術……って奴ね。

 素質よりも、型を重視するタイプの魔術だから比較的身につけられるんじゃないかしら?
 あぁ、勿論その、100%じゃないし、覚える時は教師の人に教わって使わないと危ないわよ?」

高峰 士 > 「ええ、是非お願いします。
 ……こうやって、可愛い先輩の連絡先を教えてもらえるのだけが役得かもしれません」

少し照れて笑いながら携帯電話を取り出す。
SNSでも、赤外線でも何でもいいようだ。



「……やっぱり、そうなりますよねえ。
 儀式などを行って他者の権能や能力を借りる。
 才能がないならないと割り切って、変化を起こさないと詰みますよね、やっぱり」

予想していた範疇の回答だったようで、うんうんと改めて頷いている。

「先輩は、そういうのに詳しいんですか?
 それとも、“魔法使い”的なことができちゃう人なんでしょうか?」

谷蜂 檻葉 > 「脈なしの相手を狙うより、このミナミちゃんを口説いてあげなさいな。
 『もう年下でも年上でもオジサンでもいいから彼氏が欲しい!』なんて言ってたから。

 はい、これでオッケー。

 ……ふーん、少し古い型なのね? ま、使えればなんでもいいか……
 よし、これで高峰 司さん?っぽい人がいればメッセージで送るからちょくちょく確認してみてね。
 ちなみに、そのお姉さんをどうして探してるかとか、聞いてもいいことかしら?」

喧嘩家出?それとも言えない秘密が……?

少し腰が引けているが、その目は好奇心で一杯だ。



「本の虫に聞いてもそんなものよ。
 まぁ、一縷の”奇蹟”に頼りたい!!
 っていうなら、七不思議じみたこの島を回っていればもしかしたらもしかするかも、ね。」

一時期は願いを叶える魔法の自販機の噂が蔓延していた。
なんだそれ。

「本を読んでそれをそのまま語る程度、かしら。
 後者についてはそれその通り―――っていうか、人間よりも”こっち側”よ。」

苦笑して小さく肩を竦めるその背後には、
遠い天井に在る人工の灯りよりも明るい三対の翅が柔らかな緑光を湛えてチラチラと淡く瞬いている。

「『慣れる前に習え』……”センパイ”に近道を聞くより、
 先生方に色々教授してもらうことを一生徒としてアドバイスにさせて貰うわ。」

目尻を下げて、そう悪戯っぽく微笑んだ。

高峰 士 > 「焦らずとも良縁が着ますよ、そのミナミさんには。
 僕なんかにはもったいないです。
 携帯はちょっと買い替えタイミングを逃してしまいまして……」

冗談のように返事をしながらも。

「はい、ありがとうございます。
 その……他言無用でお願いしたいんですけれど」

言えなくはないけれど、大っぴらにもしたくない。
そんな様子。
了承すればきっと語りだすだろう。




『“奇蹟”は神の専売特許ですよ。人の身には過ぎる代物です』

軽く咳払い。

「でも、そこに希望があるなら賭けてみたくなりますね。
 ……正直、素質がある先輩が羨ましいですよ。
 あるからこその苦労もあるんでしょうけれど、ないものねだりの苦労っていうのもありまして」

あはは と笑ってから。

「先生に教授してもらうのは、ちょっと無理かもですね。
 僕はここの生徒ではないので」

谷蜂 檻葉 > 「容赦無いわね―。
 ま、あの子もなんかアプローチしてるみたいだし私もそう願ってるわ。

 っと、それなら聞くのは止めておく。
 あまり、秘密をカッチリ蝦蟇口に入れてられるタイプじゃないみたいだから。」

”妖精さん”はお喋りなの。
そう、肩を竦めて少年の言葉を遮った。

「そうね……ま、見つかった時にでも改めて尋ねさせてもらおうかしら。」



『“奇蹟”は神の専売特許ですよ。人の身には過ぎる代物です』


(………?)

あまり、信心深そうな見た目でもないが彼は『神』に対してなんらかの強い感情を持っているのかもしれない……。
ともあれ、この類の人間はあまり突っ込むことを良しとせず、君子危うきに近寄らずとかなんとか。

「あぁ、ええと―――」

なんて言おうか。
そう、迷っていると物珍しい文言を聞いた。

「―――えっ? あれ、君……生徒じゃないの?」

まさかというか、それしかなさそうだが姉を探しにこの島まで来たのだろうか……?

高峰 士 > 「恋愛で困ったら、このルーン文字を使うといいですよ。
 ギューフといって、愛情のルーンです」

そう言って指で机を×の時になぞる。
そして、おまじない ですと笑みを浮かべて。

「ええ、それでは見つかった時に改めて」

重ね重ねありがとうございます と頭を下げた。



「ええ、僕は生徒じゃありません。
 姉を探すためだけに、短気逗留してます。
 安い宿ですけれど、きちんととってますよ?」

谷蜂 檻葉 > 「お、おおー……ガッツあるわね……。」

『この島』を範囲に姉を探す。
本当に砂漠から一欠片を探すような話―――でも、ないか。

「……むしろ此処なら『千里眼』持ちの子も居そうね。」

異能、魔術で探っていけばそれこそIT技術で探すよりも早そうだ。



「……と、こんな時間。 高峰君、でいいのよね。そろそろ出ましょうか?」

そんなことを思って、何の気なしに部屋を見回せば―――もう、自分達以外誰もいない。
時計を見れば、出ると決めてから長針が半分ほど回っていた。

「そうそう、他にそのお姉さんの特徴とかってあるのかしら?」

鞄を肩にかけながら、問いを投げる。

高峰 士 > 「……この島にいるって絞り込んだのは実家の伝手ですし、僕は何もやっていないし何も為してませんけれどね」

寂しそうに苦笑した。

「『千里眼』とか失せモノ探しに明るい人がいたら教えてください。
 僕もそっちに向かいますから」

とにかく手当たり次第。
溺れるものは藁をも掴みたい。ファラオはもっと掴みたい。



「ああ、すいません。すっかり話し込んでしまいまして。
 ええと姉の特徴ですが……基本的にものすごく排他的です。
 人見知りがランクアップして人間嫌いと言い換えてもいいかもしれません」

割と言いたい放題である。

「あと……多分、僕の事は存在も知らないのかもしれません」

谷蜂 檻葉 > 「ううん、気にしないで。 別に閉館とかも元々決まってるんじゃなくて慣習みたいなものだし―――」


『ええと姉の特徴ですが……』

あ、うんうん続けて。

『……基本的にものすごく排他的です。』

(それは特徴というよりは性質よね?)

『人見知りがランクアップして人間嫌いと言い換えてもいいかもしれません』

(それは、探せるの?というかお姉さんも生徒じゃないオチとか―――)

『あと―――』

(後……?)

『……多分、僕の事は存在も知らないのかもしれません』

「ちょっ、ちょっとストーップ! えっ、どういうこと……?!
 お姉さんを探しに来て、お姉さん君のこと知らないって大丈夫なの!?

 ごめんやっぱり言わないように努力するから、
 なんで探してるか聞かないと今日眠れそうにないから教えて欲しいな!?」

何故、今後の疑問を解消するための質問で新たな疑問が生まれてしまうのだろうか。

高峰 士 > 「ですよねー……?」

何せ最新映像とか手に入ってなのだ。
髪型とか身長とかあまりわからない。

「ものすごく端折って言いますと、姉が家を飛び出しまして。
 で、実家と姉の関係性はまぁ……控えめに言って割りと最悪です。
 姉は家を嫌ってましたし、それに連なるものは全て敵か無価値の対象になっていると思うんです。
 ……だから、弟がいた事は覚えていても名前とか個人として記憶しているかと言われると、自信はありません。

 見つけて、なんで飛び出したのか とかそういった事を問い詰める―――つもりではあるんですけど。
 実際のところはノープランです。僕が納得できる理由を探しているだけかもしれません」

谷蜂 檻葉 > 「重っ……!?

 え、えぇぇぇ……また、その……凄いお姉さんね……。」

一瞬で疲れきった表情になるとメガネを外して眉間を軽く揉む檻葉。

重い。
口走りかけたが、はっきり言って重すぎる。
安請け合いで探すような案件でもないが、「あぁ、やっぱり辞めときますね」と手を引ける案件でもない。

『そんなこと言っても家族のことを本当に覚えていないわけないじゃない。』

―――などと言えるような体験もしていない。
この島は事実は小説よりも奇なりというよりは此処が”絵本の世界”だ。

彼がそう言うなら詳細はどうあれ確かにその「姉」は周囲の人物の大半を覚えてはないだろうし、対人関係も形容するに絶望的なのだろう。


「ま、なるようになるって事かしらね……。」

小さく、そう呟きながら自動ドアを並んでくぐる。
雲の少ない昼間から、夜の空は極めて透き通った群青に星々が散らばっている。

そういえば、天の川の季節だったか。


「―――よし、うん。 ちょっと私も覚悟決めて探しちゃおうかな。

 ……って言っても大したことも出来ないけど。
 ”遠見”の術が使える子には何人か話を聞いてみるね。 それに、生徒証からある程度活動範囲も聞けるだろうし。」

助けを求められたからには、全力でお手伝いさせてもらうからね!

くるりと、星空を背景に振り向いて快活に言い放つ。
華の学生生活、たまにはこうして苦労を借りるのも悪くないだろう。きっと。

高峰 士 > 「あはは、いいですよ。
 重いのは承知してます」

端折って説明した結果、高峰司が放蕩娘のようになったかもしれない。
意識的に情報を開示していないだけなのだけれど。

「幸い、夏休みも近いですし僕の方は……まぁ、時間がありますからね。
 何から何まですいません。先輩にも都合があるでしょうから、手の開いた時や気が向いた時で結構です。」

全力でお手伝い と言われると、頭を下げた。

「僕の方でできる事がありましたら、お礼というわけではありませんが協力させていただきます。
 ……だせるのは、知恵くらいですけれど」

色男でもないのに、金も力もない。
ついでに魔力も無い。高峰士には、だが。

『ええ、悔いだけは残さないようにしたいですからねぇ』

谷蜂 檻葉 > 「……?

 うん、悔いのないように一丁頑張ってみましょうか。」

―――じゃあ、短い間だけど宜しくね!

そう軽く手を振って、檻葉は居住区の方へ歩みを向ける。
ふと、聞き覚えのある声が聞こえたような気もしたが、特段気づきもせずに翅を広げてふわりと飛び立った。

高峰 士 > 「ええ、よろしくお願いします!!」

手を振り替えして、飛び立つのを見送―――

「先輩、飛んだら見えちゃいますよ!!!!」

谷蜂 檻葉 > 「見せないわよっ!」

ふわりと、端の舞うスカートは―――無間の闇が如く中は見えずに暗くなっていた。
これもまた、”魔法使い”の特権である。

ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。